追伸 色々と誤字脱字が多数ありましたので修正致しました。
パーパルディア皇国からトーパ王国への援軍は遅延なくベルンゲン港へと到着し、既に揚陸を済ませ一路友軍が防衛戦をしている城塞都市トルメスの世界の扉へと向かっていく。
「時間を無駄にするな!無駄にした分だけ友軍の命がないと思え!」
休む時間もなくパーパルディア派遣軍はトルメスへと到着する。ほぼ時を同じくして日本国の特別派遣部隊先遣小隊も現地へと到着する予定となっていた。2つの軍隊は途中で合流すると目的地が同じということで共に向かうことにした。
モアとガイは、騎士団長の命により、城塞都市トルメスの南門へ、間もなく到着する日本軍とパーパルディア軍の案内のために来ていた。
日本軍とパーパルディア軍は、王国軍騎士団の案内の元、南門に到着する予定となっていた。
南門からトルメス城までは騎士モアとガイの二人が案内を行い、その後日本軍とパーパルディア軍の観戦武官として作戦行動に同行する予定だった。
「なあ、モア、パーパルディア軍はある程度わかるが……俺たちが案内する日本軍って、一体どんな感じなんだ?それにたった小隊規模しか来ないって聞いたが、そんな少数の援軍って意味あんのか?」
「日本の軍は日本軍という呼び名ではなく自衛隊と呼ぶらしい。しかし……確かに大規模な援軍なら嬉しいことこの上ないが小規模な部隊が来て、しかも指揮権も異なっていれば混乱を招くだけのような気もするが、彼らの力が噂どおりだと、すごいことになるな。ただ、内容が内容だけに、私は半信半疑だけどね……」
「……噂って?なんだ」
「クワ・トイネとロウリアの間でロデニウス大陸統一戦争があっただろう?パーパルディア軍の活躍が多いが件の自衛隊もロウリア王国の大軍を超短時間の猛烈な爆裂魔法の投射で殲滅し、自軍の損害はゼロだったという。そしてパーパルディアよりも技術力が上らしい」
「うーん、そりゃウソだな。第一、第三文明圏の長のパーパルディア皇国より技術力が上の国なんてミリシアルかムーぐらいだろ?自国を強く見せようとするための情報操作ってやつだぜ」
「そ……そう思うか?やはりか……」
歴戦をこなしてきた傭兵であるガイは断定したように話し始める。
「それに戦死者ゼロなんて聞いたことがない。俺は幾多の戦場を見てきたから言えるが……世の中には圧倒的に強い軍もいたが、いくら武具や戦略、策略が優れていても、死者は必ず出る。それこそ勢力が塗り替わる大きな戦争で味方の犠牲がゼロなんて話は聞いたことがない」
「いくら技術を持とうが、戦略を駆使しようが、最前線で兵が死なないなんてありえないんだ。その国はパーパルディアと協力してロウリアを打倒したんだろ。まぁ、列強国と協力したとはいえ1人も死者が出ないなんて、盛りすぎだな。見栄っ張りな国ってことが手に取るようにわかるぜ。どうせ先遣隊とやらも豪華絢爛な金ぴかな鎧で来るんじゃねえか?」
「うーむ、そうか……。しかしまあ、国賓のようなものだから、嫌いであってもくれぐれも失礼のないようにな」
「へっ、解ってらぁよ」
そんな会話を交わしパーパルディア製煙草で一服してからしばらく…………。
「モア様、見えました!パーパルディア派遣軍です!その後ろには日本国軍の方が来られています!」
城門の上にいた見張り兵がモアたちに伝える。
キュルキュルキュルキュル……
キャタタタタタタタタタタ……
深緑色の鉄の魔獣たちの足音が遠くから近づいてくる。
「ブオォォォォォ……ブオォォォォォ」
巨大な生き物のような唸り声ともとれる咆哮をあげて近づいてきていた。近づくにつれ、地響きがし始め、トルメスの警護を担っていた兵たちは戦々恐々としていた。
「い、一体なんだ!この世のものとは思えない鉄で出来た化け物たちは!」
モアとガイの前で鉄の化け物は停車する。日本軍を先導してきた国軍の騎士が馬から降り、モアに近づく。
「こちらがパーパルディア軍と日本軍の方々だ。後の案内を頼む」
「は、はい!」
話をしているうちに、日本とパーパルディアの鉄龍からそれぞれ中から珍妙な格好をした者が降りてくる。
パーパルディア軍はカーキ色の服に戦車帽、日本軍はただ丸いだけの何の装飾も無い兜をかぶり、緑の斑模様の服を着ている。
重い鎧は着ていないため、おそらく戦になったら装着するのだろう。モアの想像する騎士の格式や華のある姿の欠片も無かった。
一言で表すなら、蛮族たちの集まりであった。その蛮族は、モアの方へ近づいてくる。
「お初にお目にかかる。パーパルディア陸軍トーパ王国派遣隊を指揮しているリージャックと申す」
「私は日本国陸上自衛隊トーパ王国特別派遣部隊先遣小隊、小隊長の百田太郎です。ご案内感謝いたします」
「よ、よろしくお願いします」
モアは目の前の光景に目を疑った。何の装飾のかけらも勲章も身につけていない無い冴えない男たちが2個大隊と先遣小隊のトップだと!?夢でも見てみるのではないかと思ってしまっていた。
「と、トーパ王国世界の扉守護騎士のモアです。これよりトルメス城にご案内した後に、あなた方へ同行いたします。よろしくお願いします」
モアはリージャックと百田は挨拶を交わしそれぞれのトップをトルメス城に案内する。
城内に車両は入れないので、それぞれ2人づつ合計4人が護衛として入城し、トルメス城のトーパ王国軍魔王討伐隊長の元に挨拶へと向かう。他の隊員はあらかじめ指定されていた区域へと移動し待機する事となっていた。
トルメス城は日本が転移前にあったどこか中世ヨーロッパを思わせる城であり、この城ははるか昔……神話の時代に魔王軍の侵攻の後に建設された、歴史ある建造物であった。時代の流れと共に、今までに何度も大規模な改修を受けており、神代の面影は無いが歴史的建造物としては目を見張るものがある。
ただ……少し耳を澄ませば、遠くの方から微かに砲撃音が聞こえ、気味の悪い唸り声や気迫の篭っている声が聞こえてくるため、ここが戦場の最前線なのだと認識せざるをえなかった。
騎士モアの後をついて、何度か角を曲がった後、隊長のいる部屋の前に到着する。モアは扉をノックすると中から渋みのある声が響く。
「何用か?」
「失礼します。パーパルディアと日本の方々をお連れしました」
「……入れ」
中へ入ると円卓を囲むようにして鎧を纏った屈強な男たちが座っており、その1番奥の男が立ち上がる。
年齢40代後半、身長180センチ前後の筋肉質で白く染まった短髪。銀色の鎧を纏い赤いマントを羽織り、帯剣している男性が立ち上がる。
「おお!パーパルディア皇国と日本の方々、よくぞ来て下さった!私はトーパ王国魔王討伐隊隊長のアジズと申す」
「パーパルディアパーパルディア陸軍トーパ王国派遣隊を指揮するリージャックだ」
「日本国陸上自衛隊トーパ王国特別派遣部隊先遣小隊、小隊長の百田太郎です。よろしくお願いします」
互いに挨拶を交わし、握手をする。
一同は円卓に加わって座り、状況の報告受けていく。事前に入手していた情報との齟齬が無いかを確認するためである。
「魔王軍約4万は突如としてグラメウス大陸方面からトーパ王国管轄地『世界の扉』へ侵攻、守備隊が応戦しているが極めて劣勢と言える」
「世界の扉は健在であるもののジリ貧で撃ち漏らしたゴブリンやオークが城塞都市トルメスの北側に位置するミナイサ地区に侵入して市民たちを襲っている」
「ミナイサ地区の住民の完全避難が完了しておらず、逃げ遅れた民間人おおよそ800人が領主の館を避難所として立てこもっている」
「我々が魔王軍に与えた被害はゴブリン約4000体弱、オークは15体であり、こちらの損害はマラストラスという魔物によって騎士が10数人ほど犠牲者が出ている。また、世界の扉の被害を勘定していないため被害が増える可能性がある」
「ミナイサ地区に侵入してくるゴブリンやオークは増加の一歩である、早急に民間人救出作戦を行う必要がある」
「しかし領主の館までに至る大通りにレッドオーガ、もしくはブルーオーガのどちらか1体、またはその両方の目撃情報があり救出作戦は暗礁にのりあげている」
説明を聞き終えた百田とリージャックは、早急に避難民を救出する必要がある事を理解する。
「なるほど・・・事態は切迫していますね」
「そうなのだ……オーガさえ倒せればなんとかなるのだが……」
「オーガとは?」
「力は強く、人間の何十倍もあるが、問題は彼らが疲れを知らない事だ。食事が出来る限り永遠に力が落ちずに動き続けられる。さらに、奴の毛は針金のようになっており、剣や槍を受け付けない。バリスタはたぶん通るだろうが、素早い動きをする彼らに当たらないのだよ」
「早急に鬼退治をする必要がありますね」
「我々も協力をしましょう」
「協力感謝致します」
避難民救出のために早急を要し、自衛隊本隊到着まで待っていれば、避難民が魔王軍たちによって蹂躙されてしまうと判断、パーパルディア軍と協力しオーガを退治し避難民の救助を行うことを決断した。
「とりあえず準備が整いしだい我々は
「おお!列強国が動いて下さると、百人力、いや、万人力ですな。それに合わせて騎士団も出しましょうぞ」
「まずは作戦の協議を行いたいと思います」
「では、1時間後に協議に入りたいと思う。地図等準備するので、1時間待たれたい」
会議は一旦休憩に入る。
皆が席を立とうとしたその時、黒い物体が1体、窓を突き破り飛び込んで来た。
「魔王の側近、マラストラス!!!」
誰かがそう叫んだ。
会議に参加していた者は腰に差していた剣を抜き、マラストラスへ向け構える。パーパルディア軍人と陸上自衛隊員たちも銃口を向けた。
「ホホホ・・・人間の頭を討ち取るために、我が足を運ばねばならぬとはな・・・。永き時をへて、なかなか進化したようだな、人間どもよ。だが……」
マラストラスはそう話すと、騎士隊長へ向かい、手を向ける。
手の先は、魔力により空気が歪み、黒い炎が現れる。
「させるか!撃て!」
リージャックがそう叫ぶと携帯していた拳銃の引き金を引き、護衛のパーパルディア兵士がライフルの撃鉄を起こして撃ち抜く、正当防衛として自衛隊員もマラストラスに銃撃を加える。
「ガァッ!……」
断末魔をあげる暇もなく、全身を穴だらけにされたマラストラスは崩れ落ちる。そして、マラストラスの後ろの石壁も一部が崩れ落ちた。
「アジズ殿、此奴は一体……?」
「……魔王の側近であるマラストラスという。空中から振り落とされる魔法によって何人か騎士が命を落としている。まさか騎士団のトップである私を狙って単体で攻撃を仕掛けてくるとは予想がつかなかったが……ともかく!マラストラスを撃退していただき感謝する」
「いえいえ!当然のことをしたまでです」
「何をいう。そなたらがいなかったら、我らはマラストラスによって全滅していた。それほどまでにこいつは強力な魔獣であった」
こんなトラブルがあったものの1時間後に協議が再開され、ミナイサ地区の避難民救出が決定し、詳細を詰めることで会議は深夜まで続いた。
2日後、日本国陸上自衛隊トーパ王国特別派遣部隊先遣小隊は、ミナイサ地区へ城門から足を踏み入れるのだった。それと時を同じくして別の門からもパーパルディア皇国陸軍トーパ王国派遣隊もミナイサ地区へと足を踏み入れた。
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城塞都市トルメス・ミナイサ地区で飯屋を営んでいたエレイは避難してきた領主の館で震えていた。エレイのほかにも逃げ遅れてしまった住人が領主の館へ避難していた。
何人か衛兵も一緒に逃げ込んできたので今のところは秩序を保てているが魔物が近づいてくればどうなるかはわかったものではない。だが隙を見て領主の館から逃げようとした人はいた。しかしすぐに見つかってしまい、その場で貪られて魔物たちの食糧となっていた。
魔物たちは食べられ叫び声を上げながら四肢をもがれた人間を指さしながら「新鮮な踊り食い、がはは、うまいうまい」などと笑っていた。
その光景を見た避難した人々は絶対救助が来るまで外に出ないことを心に決めて籠城を決め込む。だが食料と水はどんどんと減っていく。
「お腹、すいたなぁ……」
隣に住んでいた幼馴染の少女メニアがそう呟く。彼女の両親の顔を見ればやつれ始めている。きっと自分の顔もそうなのであろうと思いながら虚な目で外を眺める。人っこ1人いない大通りにはゴブリンやオークの姿、その奥にはオークよりも巨大な赤色をした魔物、レッドオーガの姿が見えた。
虱潰しに人間がいないかさがしまわっている。領主の館に徐々に近づいてきていた。
「ここらへんはぜんぶまわったな。人間はいない。次は……あの大きな屋敷が目標だ」
レッドオーガの指差す先、そこは領主の館であった。
「ま、魔物がこっちに向かってくるぞ!」
「嫌!私食べられたくない!」
「ああ、神様!どうか我々にお救いを!」
一瞬にして領主の館はパニック状態となり一斉に出入り口へと殺到する。なんとか衛兵が押さえつけようとするが800人の避難民を抑えられるはずもなかった。
「お、落ち着いてください!助けは来ます!」
「魔物がこっちに向かってきてるんだ!今逃げなきゃ俺達は食い殺されちまう!外に出させてくれ!」
「外は危険です!」
ついに扉が破られそうとなったときどこからか乾いた音が複数聞こえてきた。
▲ ▼ ⏰️ ▼ ▲ ⏰️ ▼ ▲
「目標確認!レッドオーガとその他魔王軍らしき軍団が領主の館へ接近中!」
「何!?戦車を盾にして魔王軍を撃退するぞ!戦車前進!」
領主の館へ向かっていたレッドオーガ率いる魔王軍の集団をパーパルディア皇国陸軍トーパ王国派遣隊が発見し一刻の猶予もないとして攻勢を仕掛ける。
「魔物の集団がこっちを向いた。75ミリ戦車砲射撃用意!」
迫りくるゴブリンとオークの群れをライフルと車載機銃で薙ぎ払う。オークやゴブリンは対処できたがレットオーガは車載機銃をもろともせずにトーパ王国派遣隊へ向けて突進してきていた。
「砲手!外すなよ!」
「あんな巨体外しませんよ!照準よし!」
「て――――!」
75ミリ戦車砲から放たれた砲弾は腹部に命中するとそこで信管が作動しオーガの内部で炸裂する。一瞬にして上半身が弾け飛び両側の建物をどす黒い血で染め上げて絶命した。即死であった。
「レッドオーガの撃破を確認!」
「よし!その他の魔物を掃討するぞ」
道中の魔物を掃討しつつ、パーパルディアの輸送トラックが領主の館へ直接乗り付け、避難民を続々と収容し安全圏へと向けて車列をつくる。ミサイア地区の城門まで1.5キロほどであるが歩くには遠いのでこうしてトラックへと載せて移動することとなっていた。
「今から安全な場所へと移動します!慌てず急いで乗車をお願いします!」
全員が乗車したことを確認すると一路安全圏のトルメス城壁内へ向けて車列は出発する。すると入れ替わるようにしてずんぐりとした輸送機が世界の扉へと向かい、新型機のバーバルが護衛騎士を努めていた。
「あれは、ついに来たか……海軍特戦隊!」
「ああ、勝ったな……」
次でトーパ王国はおしまいです