レミール転生   作:久保田紅葉

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これにて魔王戦は完結です。


オペレーションモモタロウ with パーパルディア 下

 ミサイサ地区での避難民救出作戦と同時刻、空ではまた別の作戦が開始されようとしていた。

 

 まだ夜も明けぬ朝方、トーパ王国沖10数キロの海域ではパーパルディア皇国海軍派遣艦隊が作戦行動を起こしていた。

 

 ヴェロニア型空母2隻、フィシャヌス級高速戦艦2隻、カオシュン巡洋艦4隻、駆逐艦6隻を伴った艦隊で新造艦であるヴェロニア型2隻の甲板には最新鋭のバーバル艦上戦闘機とグレース型攻撃機、そして空母艦載機には似つかわしくない大型のヴェルダル輸送機が駐機されエンジンを回しいつでも飛び立てるような準備が整えられていた。

 

 

 

「司令。そろそろ時間かと……」

 

「うむ。攻撃隊発艦はじめ」

 

「はっ、『総員に次ぐ!第一次攻撃隊、発艦はじめ!繰り返す。発艦はじめ!』」

 

 

 

 その艦内放送を聞き甲板員が輪止めを外して一斉に退避する。訓練を積んだ1番機のバーバルがフラフラと離陸し、それに続くように他のバーバルやグレースが次々と発艦してゆき、いよいよ最後尾にいたヴェルダル輸送機の番となった。

 

 

 

『エルボー01、は、発艦します』

 

 

 

 パイロットの声が震えているが無理もない。ヴェルダルは本来陸上でしか運用しない機体である。海上、それも空母からの発艦をしようというのであり、とても正気の沙汰とは思えなかった。

 

 エンジンをフルスロットルで回しながらヴェロニアの飛行甲板を滑走していき先端から飛び立つがその姿が見えなくなる。心配そうに甲板員が見守る中、海面スレスレを飛行したヴェルダルはなんとか速度を上げて上昇していく。これにはヴェロニアの甲板員や艦橋に詰めていた上層部からも安堵の声があがった。

 

 無事に離陸できたヴェルダルは高度を取り、先行していたバーバルとグレースの戦爆連合編隊と合流し一路世界の扉へとむかっていく。

 

 そのヴェルダル機内の中では海軍特戦隊のメンバーが降下準備を着々と進めていた。

 

 

 

「全く……ロウリア王国のジン・ハークでの出撃があったと思ったら次はトーパ王国の世界の扉か……全く俺達は都合の良い駒じゃないんだぞ」

 

「副長、そんな言い草はないでしょう。これもフィルアデス大陸、ひいてはパーパルディア皇国国防のためです。それ以上言うと……」

 

「はいはい。わかりましたよパル隊長。今後は口を慎みますよ」

 

 

 

 そう言うと副長の男は何も言わなくなった。ふと眼下には青い海が広がっているが視線を移せばトーパ王国の陸地が見える。その陸地からはところどころから黒煙が立ち上っており、激しい戦闘が行われていることが明らかであった。

 

 

 

『目標世界の扉視認、進路そのまま……そのまま。目標上空!』

 

『よーし降下降下降下!』

 

 

 

 

 

 ▲ ▼ ⏰️ ▼ ▲ ⏰️ ▼ ▲

 

 

 

 

 

 一方そのころ、世界の扉では守備隊の面々が犠牲を出しつつも今だに抵抗を続けていた。しかし、すでに壁上は魔王軍に占拠され、守備隊は壁の内部、大講堂のような場所へと撤退し抵抗を続けていた。だが大砲の砲弾は尽き放棄、機関銃も魔王軍の攻撃によって破壊され、ライフル銃の弾薬も残り僅かとなっていた。

 

 

 

「状況をしらせ」

 

「第4中隊弾薬なし」

 

「同じく第2中隊残弾ありません」

 

「第5中隊、弾薬はわずかばかり残っています」

 

 

 

 大隊長の元に報告が来るが悪いニュースばかりしか耳にはいってこない。その上、ほとんどの兵士は大なり小なりの負傷を負っており大講堂の床に寝かされていて、無事な者を探す方が容易であった。大隊長自身も頭部と右脚を負傷しており痛々しく包帯を巻き付けていた。

 

 

 

「友軍からの連絡は?」

 

「申し訳ありません。退避する際に魔信装置が破壊されて以降は状況は不明、ですが魔王軍がこの大講堂の扉をこじ開けようと奮闘しています」

 

「そうか……皆のもの。今までご苦労であった」

 

「隊長、何水臭い事いってるんですか。最期までお供しますよ」

 

 

 

 大講堂に笑い声が響く。一通り笑い終わったところで世界の扉全体が大きく揺れ、天井から土埃が降り注ぐ。

 

 

 

「今のは何だ?魔王軍の攻撃か?」

 

「不明ですが……魔王軍が世界の扉を破ろうとしているのではないでしょうか?」

 

 

 

 しかし揺れは数回続き、ゴブリンやオークの叫び声や断末魔が連続して聞こえてきたかと思えば雄叫びのようなものも聞こえ、また土埃が天井からこぼれ落ちる。

 

 

 

「魔王軍が仲間割れでも起こしたのか?」

 

「馬鹿いえ、そんなワケ無かろう」

 

 

 

 そんな会話をしたかと思えば天井に大穴が空き、ゴブリンとオークの死体が数体落下してきて叩きつけられる。幸いその下に傷病兵はおらず誰も犠牲にはならなかったが何事かと大講堂内部が騒がしくなる。

 

 弾薬をかき集めて動ける兵士たちがライフル銃を構えるとそこから降りてきたのは魔物の血で純白の鎧を染めあげた人物が散弾銃を片手に立っていた。

 

 それを見るやいなやトーパ王国兵が恐怖のどん底になりパニック状態となるがその一方でパーパルディア兵たちは平然としていた中で件の鎧の人物がくぐもった声で問いかける。

 

 

 

『世界の扉に派遣されていた陸軍か?』

 

「ああ、世界の扉守護派遣隊、大隊長のノーマンだ。海軍特戦隊の救援感謝する」

 

『陸軍のトーパ王国派遣隊とニホンのジエイタイも到着し反抗作戦を開始した。トルメス城までの避難路が確保できたら負傷者を搬送する手筈を整えてくれ』

 

「ああ、了解した」

 

 

 

 海軍特戦隊が世界の扉に巣食う魔王軍を掃討しつつ世界の扉へと辿り着いたパーパルディア陸軍と日本の派遣連合軍と合流、すぐさま傷病兵たちを後方の医療施設へと搬送される。何人かがたどり着く前に力尽きてしまったものの、大多数は生き長らえ生存することができた。

 

 一方その頃世界の扉の外、グラメウス大陸側でも反抗作戦が開始されていた。

 

 

 

「グギャ!……」

 

「ガハボッ!」

 

「ヒデブゥ!」

 

 

 

 グレースの急降下爆撃と機銃掃射、バーバルの機銃掃射によってゴブリンやオークといった魔王軍は確実に数を減らしていく。魔王がグラメウスから呼び寄せた増援もバーバルとグレースの空からの攻撃によって斃れていく。

 

 

 

「おのれ……おのれおのれ!下等種族の分際で!翼を手にするなど!」

 

 

 

 その顔は怒りに満ち溢れており、周辺からは黒く濁った魔力が滲み出し周囲の景色を歪めるほどであった。

 

 一機のバーバルが機銃掃射をしようと魔王に照準を定めて降下を始めた。

 

 12.7ミリ6門が魔王へと襲いかかるがその全てを弾くないし直撃寸前で受け止めた。地面に受け止められた弾丸が落ちると魔王は高笑いをしてバーバルを睨みつける。

 

 

 

「ヌハハハハッ!下種が、そんな軟弱な攻撃など吾輩には効かん!」

 

「まじかよ。12.7ミリに耐えるとかどんな化け物だよ……」

 

 

 

 パイロットは魔王の耐久力に唖然としつつも次の対抗策を伝える。

 

 

 

「こちらナイト12、機銃掃射による魔王への損害は確認できず」

 

『ナイト12了解。……旗艦ヴェロニアから各機へ、作戦空域より直ちに離脱せよ。フィシャヌ型および巡洋艦による艦砲射撃を実施する』

 

 

 

「ナイト12了解」

 

『ナイト1了解』

 

『イーグル3了解。直ちに離脱する』

 

 

 

 上空を飛び回っていた羽虫……バーバルとグレースがいなくなったことにより魔王軍から勝鬨にもにたうめき声が響きわたる。

 

 

 

「我らの力に恐れおののいたようだな!だがこれで終わらんぞ!」

 

 

 

 魔王が地面に手を置き呪文を唱え始める。

 

 

 

 「……大いなる大地の王よその絶大なる力を解放し我が配下となりし古の魔人を呼び覚ませ……いでよカイザーゴーレムっ!」

 

 

 

 大地が盛り上がったかと思えば岩の塊が現れ人の形をなていきやがて動き始める。しかしその人型は通常では考えられないほどに巨大であった。

 

 一般的に亜人最強の魔力を有すると言われるエルフの中でも最高クラスの魔導士が使役するゴーレムの身長はおおよそ2メートルくらいであるが、この魔王が生み出したゴーレムは世界の扉と同じ大きさ、20メートル近い背丈があった。

 

 

 

「馬鹿な!通常のゴーレムでさえ大軍での対応が必要というのに……。これが……魔王の力か!」

 

 

 

 奪還した世界の扉から北方貴族の騎士アボンは魔王の生み出したカイザーゴーレムのあまりの大きさに空いた口が塞がらなかった。

 

 

 

「征けカイザーゴーレム!あの忌々しい壁を破壊するのだ!」

 

 

 

 魔王の指示によって20メートルはあるカイザーゴーレムが動き出す。足元にゴブリンやオークがいるがお構いなしに世界の扉へと向かって歩き始めた。

 

 なんとか奪還した世界の扉であったがカイザーゴーレムが一蹴りしただけで吹き飛ぶだろう。そうなってしまえば魔王軍を止める手立てがなくなってしまう。

 

 誰もが絶望したその時だった。風を切り裂くような音が聞こえて来たかと思えば次第に大きくなり……

 

 

 

 

 ――轟音、爆風、熱波――

 

 

 

 

 魔王とカイザーゴーレムが居たであろうあたりの地面が爆ぜ、足下にいたオークやゴブリンも巻き込んで炸裂する?

 

「な、何だ今のは……地面で火山が噴火したのか?」

 

「いつつ……今のはパーパルディア皇国海軍による艦砲射撃でしょう」

 

「大隊長、あまり無理をなさらないで下さい」

 

 

 

 アボンの横に並んだのは頭に包帯を巻き、部下であろう兵士に支えながら立っている人物であった。服装の汚れ具合や血の滲んだ包帯からしてパーパルディア皇国軍の人間であり、部下の大隊長という言葉からして世界の扉で守護を担っていた人物であろう。だがまずその話は一旦おいておきあの大爆発の原因である。

 

 

 

「カンポウシャゲキ……ということはあの爆発は魔導砲によるものか」

 

「そのような認識で間違いないです。流石の魔王でも41センチ砲弾と20センチ砲弾の雨には耐えられんでしょう」

 

 

 

 カイザーゴーレムがいた周辺は巻き上げられた土煙と爆炎によって一時的に視界が奪われる。

 

 

 

 戦果確認のため、上空に観測機が待機しているがこれでは確認のしようがなかった。

 

 

 

『スカウトよりフィシャヌスへ、現在土埃によって確認が……』

 

『いや待て、あのゴーレム、動いているぞ!』

 

『馬鹿な、あの火力を受けて生きていられるだと!?目標は健在!繰り返す目標は健在だ!』

 

 

 

 土埃の中から現れたカイザーゴーレムは片腕が千切れ無傷な箇所が無いほどに被害を受けていたが歩くたびに周囲の岩石を取り込んで足取りは良くなり千切れていた腕も再生していた。

 

 

 

「グハハハハ……!カイザーゴーレムは無敵だ!」

 

 

 

 魔王はカイザーゴーレムの手の中にいたため無傷で艦砲射撃をしのいだようであった。

 

 

 

「なんて丈夫な化け物だ!戦艦の艦砲射撃を受けて生きているとは……」

 

「大隊長殿!ゴーレムにはコアというものがあります!そこを破壊することができればあのゴーレムの動きを止めることが可能です!」

 

「そうは言うが……艦砲射撃にそんな命中精度はないぞ……」

 

「それでしたら我々にお任せ下さい」

 

 

 

 全員が振り返るとそこには百田太郎がおり、彼は自信満々にそう言い放ち彼が考案した計画を説明した。

 

 

 

 

 

 ▲ ▼ ⏰️ ▼ ▲ ⏰️ ▼ ▲

 

 

 

 

 

 避難民の輸送を終えた陸上自衛隊トーパ王国特別派遣部隊先遣小隊とパーパルディア皇国戦車隊は即席の戦車隊を組織して出撃の準備を進めていた。

 

 

 

「準備完了!城門を開けてください!」

 

 

 

 重厚な扉が開かれて10式戦車を先頭にして出撃した。10式戦車1台、パ式改良型蒸気戦車4台が世界の扉から外へと飛び出る。

 

 即席の戦車隊の前には背後の世界の扉と同じ高さほどもある岩の化け物の姿が見えた。

 

 

 

「パーパルディアの戦車隊は遊撃で魔王軍を牽制してください。あのゴーレムは我々自衛隊が何とかします」

 

『了解』

 

『怪物退治の大役を取られるのは癪だが仕方がない了解した』

 

『わかったわ』

 

『了解した。頼んだ』

 

 

 

 各車両が散開して戦闘を開始する。そして世界の扉から現れた戦車隊を目にした魔王はその光景に見覚えがあった。

 

 

 

「あ……あれは……ま……まさか!太陽神の使いの鉄龍!」

 

 

 

「おのれぇ……人間ども!まさか太陽神の使いを召喚していたとは!だが!我は2度、同じ過ちをせん!ブルーオーガよ!オークと共にあの鉄龍を蹴散らせ!」

 

「御意!」

 

 

 

 魔王の号令で人間の背丈の倍はあろうオークの軍団と青い巨体のブルーオーガが人間の倍の速さを持って一斉に戦車隊へと襲いかかっていく。

 

 

 

『ブルーオーガとオーク軍団が接近!』

 

『ジエイタイの戦車に近づけさせるな!オークの群れへ突貫!』

 

 

 

 散開したパ式戦車隊は火力を全面に押し出してオーク軍団へと向かっていく。75ミリ主砲と12.7ミリ車載機銃の雨がオークの軍団を襲う。車載機銃には数発は耐えられたもののそれが何十発と喰らえば倒れる。75ミリ砲を喰らったオークは周りを巻き込み跡形もなく吹き飛んでいく。

 

 

 

「おのれ人間どもめ!これでも喰らえ!」

 

 

 

 近づけないことに業を煮やしたブルーオーガが岩を掴みパ式戦車へ向かって岩を投げつけた。軽い放物線を描いて飛んでいき見事に戦車の一台へ直撃した。

 

 岩が直撃した戦車は砲塔部分が凹み見るからに無事とは思えなかった。

 

 

 

「ワハハハハ!どうだまいったか!」

 

 

 

 ブルーオーガが高笑いをするが戦車は何事もないように動いている。がどうやらそうはいかないようであった。

 

 

 

『パンツァー3大丈夫か!?』

 

『こちらパンツァー3、乗員は無事だが主砲塔が破損した。これ以上の戦闘行為は不可能だ』

 

『了解パンツァー3後退せよ』

 

「馬鹿な!直撃しても無事……」

 

 ブルーオーガが驚愕の声を上げる前に腹部へと75ミリ砲弾が直撃し下半身のみを残して上半身が吹き飛ばし、着実に魔王軍の数を減らしていき10式戦車に近づかせなかった。

 

 パーパルディア陸軍が奮戦する中、10式戦車は敵の巨大な岩の化け物に主砲を合わせて発射する。44口径120ミリ滑腔砲から繰り出された120mm対戦車榴弾、通称HEAT弾は初速1600メートル毎秒以上の超高速で発射され、岩石で作られたカイザーゴーレムの胴体中心部に命中、HEAT弾が炸裂して貫通した。

 

 胴体中央部に大きな穴が開き内部を破壊しつくし、岩石片を撒き散らす。一瞬でコアを破壊されたために、魔力を瞬時に失ったカイザーゴーレムはその場で魔王を巻き込みながら崩れ落ちた。

 

 

 

『目標のゴーレム撃破を確認!』

 

『スカウトよりフィシャヌスへ支援砲撃を開始せよ。戦車隊は射程内から退避せよ』

 

『戦車隊了解、退避する』

 

『フィシャヌスよりスカウトへ、着弾までおおよそ2分!』

 

 

 

 百田の作戦はこうである。現在の状況はカイザーゴーレムが世界の扉へと進撃しつつあり、ゴーレムの手のひらには守られるようにして魔王が乗っていた。まずは戦車隊をもってカイザーゴーレムを撃破、撃破した後ゴーレムの崩壊に巻き込まれた魔王を積み上がった岩石もろともパーパルディア海軍の戦艦と巡洋艦の艦砲射撃によって吹き飛ばすというものであった。

 

 その目論見通りにカイザーゴーレムは崩れ落ち、手乗りしていた魔王はその下敷きとなり岩石の下へと埋まった。後は艦砲射撃を待つだけとなったがそうは上手くいかない。崩れ落ちた岩石の中から、何かが飛び出してきていた。魔王ノスグーラであり、その顔は憤怒といっていいほどに怒りにみちみちていた。

 

 

 

「……魔界の王の名の元において命ず。魔界の獄炎の鳳凰……」

 

 

 

 魔王は魔法の詠唱を開始する。すると黒い魔法陣が魔王の指先から発生し徐々に大きくなっていく。

 

 

 

「まずい!何か攻撃を行うはずだ!」

 

 

 

 百田の指示を待たず念の為に世界の扉上で待機していた部下……犬神剛はとっさに行動を開始した。

 

 

 

 91式携帯地対空誘導弾を手馴れた手付きで、迅速的確に準備し魔王をロックオンし地対空誘導弾を魔王に向けて発射した。

 

 発射された超高速の誘導弾は魔王に向かい、真っ直ぐに飛んでいく。

 

 魔王は超高速で飛翔してくる地対空誘導弾を見て、一瞬何だとは思ったものの自身へと向かってきている攻撃だと判断すると、攻撃魔法を解除、防御魔法を発動した。

 

 魔王の周囲に淡い金色の光を放つ防御壁のようなものが出現する。

 

 

 

 光の防御壁へと犬神の放った地対空誘導弾が直撃する。魔王本体を狙ったのであるが狙いが少しそれてしまい魔王の頭部付近で爆発してしまった。しかしそれが良かったのはわからないが魔王を下方に吹き飛ばし、それに重力加速度も加わって加速したよりも速い速度で地面に叩きつけてめり込んでいた。

 

 魔王が叩きつけられ再び立ち上がろうとした時、戦艦と巡洋艦の砲弾が続々と降り注ぐ。要請していた艦砲射撃が到達したのである。

 

 魔王ははじめ防御体制をとっているのか光の防護壁を作動させていることを確認ができたが、しだいに着弾の際に発生した閃光や爆風、舞い上がる土煙によってその姿を確認することができなくなっていった。

 

 いくつもの爆発が発生し、魔王軍のゴブリンやオークを巻き込みながら行われた艦砲射撃は数十分ほど続き、最後の着弾が終わった後、動くものはおらず世界の扉の外は静寂に包まれていた。

 

 

 

「……海軍の奴ら派手にやり過ぎじゃないか?」

 

「神話に出てきた魔王が出てきたんだからやりすぎってことはないだろ……ま、戦果確認をできないのが駄目なとこなんだけどな」

 

 

 

 パーパルディア陸軍の兵士がそんな軽口を交わす。トーパ王国軍は圧倒的な火力で変わり果ててしまった光景を唖然として眺めていた。

 

 

 

「百田隊長、これは我々も喜んでいい感じですかね?」

 

「まだ魔王の撃破の確認が取れていない地上に降りて捜索する」

 

 

 

 戦車を先頭に歩兵を伴っていくが耕された大地を歩く。もちろん動くものはいない。あるのは見るも無惨になった魔物たちの死体だけで正直気分の良いものではなかった。

 

「うっぷ……やっぱり魔王も吹き飛んだんじゃないっすかね?」

 

「あいつの防御魔法をみたろ?12.7ミリを弾いていたいんだ……」

 

『おのれぇぇぇぇぇ……一度ならず二度までも……!』

 

 

 

 どこからかおぞましい魔王の声が聞こえてくる。見るとそこには魔王の頭部がふわふわと宙を舞っていた。

 

 

 

「アレだけ艦砲射撃を受けて生きてるなんて……奴は不死身か?」

 

「隊長、頭だけで生きていても不死身とは限りませんよ」

 

「SF作品だと頭から再生するやつもいるから実質不死身じゃないか?詳しくは知らないが」

 

 

 

 自衛隊員が全く関係のない会話をしているのをよそに魔王の首は声高らかに声を張り上げる。

 

 

 

「おのれぇぇぇぇぇ、太陽神の使い共めぇぇぇぇ!!!1度ならず、2度までも我の野望を打ち砕きおってぇぇぇ!!!良く聞け!!下種どもよ!!!」

 

「近いうちに魔帝様の国が復活なさる!!!おまえら下種の世界も間もなく終わるぞ!!!圧倒的な魔法帝国軍によって、お前らは魔法帝国に首を垂れるだろう」

 

「現に南にあった国は既に魔帝様の臣下に降った!お前らもすぐにそうなるであろう!アッハッハッハ……………………ッ」

 

 

 

 

 声は弱くなっていき、魔王の頭は石化して崩れ落ち砂となって消えた。

 

 運良く生き残っていた魔王軍の魔物たちは、奇声とも取れる叫び声をあげて北方、グラメウス大陸へと逃げていった。

 

 しかし遠目で見ていた赤竜だけは撤退していく魔王軍を見送ってからずん……ずん……と足音を立てて近づいてくる。

 

 

 

『た、隊長、射撃許可を』

 

『撃ち方待て、ここで怒らせたら被害が増える』

 

 

 

 銃口と砲門が狙いを済ませる中、戦車隊の近くまで近づくと一瞥し、自身の身体から真っ赤な鱗を数十枚引き剥がして地面へと落とす。

 

 

 

「これを我々に?」

 

 

 

 そう問うと頷いたような仕草を見せ赤竜はグラメデウス大陸方面へと去っていった。

 

 

 

「た……倒しちまった……魔王を倒しちまった……倒しちまったぞぉー!」

 

「状況終了!我々の勝利だ!勝鬨をあげよ!」




次は報告会とあとしまつ回です。またそれが終われば閑話を挟んで中央歴1640年を迎えます。
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