レミール転生   作:久保田紅葉

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ちょっと短いです


軍靴の足音

 パーパルディアの首都エストシラントから240キロ沖合、15隻ほどの船団がパーパルディア皇国海軍の護衛艦を伴ってロウデニウス大陸から工業都市デュロへ向かって航行していた。

 

 船団は主にクワ・トイネ公国からの農産物とクイラ王国からの石油や石炭といった鉱物資源を満載した貨物船で小口荷物や郵便を乗せたパーパルディア郵政局の船が一隻、クワ・トイネからパーパルディア皇国へ向かうツアー客や観光客を乗せた客船が一隻の船団を形成していた。

 

 その船団を護衛するのはパーパルディア海軍第十四護衛隊に所属している艦艇たちであった。ガルガオン型空母一隻、駆逐艦二隻、旧式のフリゲート艦六隻で構成されており、海魔対策としてパーパルディア海軍最新鋭装備である航空爆雷と艦載用爆雷を装備していた。

 

 

 

「司令、哨戒機が不審船を発見したようです」

 

「場所と艦名、それに所属は?」

 

「座標はここより北方7キロ付近、所属は不明であります」

 

「この周辺で遭難報告や救難信号は?」

 

「2週間前、パーパルディア船籍の貨客船『にちば丸』が消息を経っております。もしかしたらその船かもしれません」

 

「うむ。連絡をすぐに取れるようにして派遣しよう」

 

 

 

 船団本隊から駆逐艦一隻とフリゲート一隻を離合させて不審船が発見された海域へと派遣する。

 

 

 

「確かこの辺りが哨戒機が不審船を発見した海域のはずだが……」

 

「艦長!前方に船らしき艦影が見えます!おそらくですがにちば丸かと」

 

「了解した。『駆逐艦ロヴェンスより船団司令部、これよりにちば丸と思わしき艦艇に接触する』」

 

『船団司令部了解。注意して捜索せよ』

 

 

 

 艦影が徐々に近づくにつれてその異常ともいえる全景が明らかになっていた。外装は見るも無惨にサビついていたが艦名はかろうじてにちば丸と読めた。どうやら哨戒機が発見した不審船で間違いないようであったが、窓という窓はヒビが入るか割れていた。到底生存者がいるとは思えなかった。

 

 

 

「……念の為ガスマスクと小銃を携帯していけ」

 

 

 

 乗組員から突入隊を結成してにちば丸へ突入する。フリゲート艦には周囲の警戒を行ってもらう。

 

 

 

「俺とニックは艦橋へ向かう。他の隊員は船内を探索して生存者が居れば救助しろ」

 

「……あまり期待はもてませんがね」

 

 

 

 即席の突入隊隊長とニックと呼ばれた青年の海兵が艦橋へむかうと艦橋のガラスは割れて、海風にさらされたのか風化が進んでいた。

 

 

 

「隊長、この船は消息を絶ってから何年も経っているのですか?やけに腐食が進んでおりますが……」

 

「いやつい2週間前に消息を絶った……らしい。どうしたらここまで荒廃するのかはわからんが……何かしらの手がかりを探すか」

 

 

 

 とはいうものの、風化した艦橋では紙といった資料らしき資料も風化しており大した成果は得られないまま艦橋の捜索は終わる。

 

 

 

「航海日誌が見つかればよかったのですが……これでは大した手がかりはありませんね。おや?隊長、艦長室があります。もしかしたら航海日誌が見つかるかもしれません」

 

「ああ、大いにありえるな」

 

艦長室の扉が何者かが力付くで扉をもぎ取ったように蝶番が外れて打ち捨てられていた。扉をよせて艦長室入ると乾いた血糊がベッドの上で乾いており荒れ果てている。だが幸いにして執務机は健在で航海日誌は見つからなかったものの船長が記したと思わしき日記を発見することができた。

 

 

 

「これで何かわかるとよいのだが……」

 

 

 

 

 

 ▲ ▼ ⏰️ ▼ ▲ ⏰️ ▼ ▲

 

 

 

 

 

 ――12月18日 天気 晴れ

 

 清々しい青空の下エストシラント港を後にする。乗員147名、乗客280名、貨物1万トンの貨物を載せて出港する。道中フェン王国・アマノキ港を経由してニホンのヨコハマ港へ12月26日に入港予定である。

 

 

 ――12月19日 天気 快晴

 

 副船長のローマンと夜空の元酒盛りをした。この航海が終われば年明けまで休養を取る。乗組員たちにはニホンで盛大に英気を養ってもらおう。

 

 

 ――12月20日 天気 曇り

 

 これといった問題もなくアマノキ港へ入港する。乗客86名が下船し新たに20名が乗船した。いずれもニホン人で年末を故郷で過ごすために帰るとのこと。

 

 

 ――12月21日 天気 曇り

 

 アマノキ港出港、ニホンからの長距離気象通報によればこれから天気が荒れる予報が出ているので用心するよう乗組員に伝えた。

 

 

 ――12月22日 天気 雨

 

 乗組員の1人が釣りをしていると奇妙なものを釣り上げたと報告に来た。魚のようであるが体長は2メートルほどで引っ張り上げるのにクレーンを使う羽目になった。普通の魚であればコックのマイローに調理してもらうがこれは食べられるか不明なので船室の冷凍庫で保管しニホンで研究材料として引き取ってもらう予定である。

 

 

 ――12月23日 天気 雨

 

 昨日釣り上げた奇妙な生き物であるが今朝マイローが冷蔵庫へ見に行くとどこにも姿かたちが無く忽然と姿を消していた。手空きの乗組員総出で捜索したものの見つからず、奇妙な事件であった。

 

 

 ――12月24日 天気 霧雨

 

 艦橋に居た乗組員たちであるが昨日よりも少なくなっていた。ローマンに聞いてみると全員が体調不良のため休んでいるとのこと。海の上での病気は仕方のないことであるが……こんなに大量かつ同時に体調を崩すことがあり得るのだろうか?

 

 

 ――12月25日 天気 霧雨

 

 昨日よりもさらに体調不良者が増えた。それに加えて乗客の間でも体調を崩す人が増えてきており、医務室はパンク寸前である。医務室長も原因不明と話しており一刻も早く陸に上がらなければならない。当初の予定を変更しヨコハマ港から海軍設備のあるサセボ港向けて進路をとることにした。

 

 

 ――12月26日 天気 不明

 

 ロバートと私も熱を上げて体調を崩してしまいベットの上で横になっている。今はコックのザラが代理艦長として指揮をとってくれている。何もできない自分にもどかしさを覚えている。

 

 

 ――12がつ  ひ てんき わかんない

 

 あつい、くるしい。ざらがしょくじもってきた。おいしかった。またねむる。

 

 

 ――12がつ27?28?ひ てんき たぶ きり

 

 少し、熱下がった。久しぶりに外、出る。きりのせいか、くらい。

 ロバートや他の人、いない。からだ、むねある。おかしいから、もう一度、寝る。

 

 

 ――12 つ   て き 

 

 ざら 裏切った。りーむ こくのもんしょう けたふね よこ いる 。じょ きゃく のせた。

 ざらのめ くるってる とびら 閉めた。 はいってこれない はず 。

 

 

 ――1

 

 ざ わらいごえ うるさい。と ら やぶられる。 さいご ひとのまま にたい。

 れて 、 さり ー あい て る。さ なら 

 これ みつ たら、 てい へか につ たえ て

 

 

 

 

 ところどころ読めなくなってはいたが執務室の横、部屋の片隅には頭を撃ち抜いた女性の遺体。死後数日は経っていると思われるがその体は新鮮そのものであった。その手には指がかかったままのピストルが握られていた。

 

 

 

 

 

 ▲ ▼ ⏰️ ▼ ▲ ⏰️ ▼ ▲

 

 

 

 

 

「「……」」

 

 

 

 あまりの内容に隊長とニックは絶句していた。隊長は顔を歪め、ニックに至っては大急ぎで外にでて海へ昼食を吐き出しに行った。

 

 

 

『隊長聞こえますか!?』

 

『ああ、聞こえているどうした?』

 

『船室を捜索しましたが生存者はいません。どの部屋にも血痕が残されていて乗客のものと思われる積荷はそのままです!』

 

『貨物室も同様です。積荷に荒らされた形跡はなく人間だけが居なくなっています』

 

『……総員生存者捜索はそこまでだ。曳航(えいこう)準備をして総員退艦するぞ』

 

『了解です』

 

「とんでもない物見つけちまいましたね……」

 

「ああ、まったくだ」

 

 

 

「こちら駆逐艦ロヴェンス艦隊司令応答願う」

 

『こちら艦隊司令部。どうだった?』

 

「にちば丸に生存者なし。加えてリーム帝国の関与が疑われる事案が発生した。現在曳航し艦隊へ合流する」

 

『……艦隊司令部了解、上空援護機を派遣する』

 

 

 

 それからしばらくして曳航作業を進めていたロヴェンスの上空にベルーナ艦上戦闘機の編隊が上空援護に到着する。

 

 パーパルディア海軍の艦上戦闘機は最新鋭のバーバル艦上戦闘機へと機種変更が進められているが船団輸送等に使用されるガルガオン型空母には配備が間に合っていなかった。

 

 そこで余剰となったベルーナ艦上戦闘機が抜擢され空中戦闘や海魔退治用の爆撃ができるように改造されたいわゆるマルチロール機というタイプにベルーナは生まれ変わったのである。

 

 そんな空中の騎士に護衛されつつ、曳航作業がすすみ、無事に船団と合流ができた。

 

 

 

「難破船一隻を曳航するとは随分と思い切った判断をしたな」

 

「人間だけが蒸発したように消えた貨客船だ。それにリームが関わってるとなれば自沈させるよりか専門家に任せた方がいい」

 

「それは確かだな」

 

 

 

 

 

 数日ののちに船団はエストシラント港へと到着する。幽霊船のような船が曳航されて来たのだからどこからか市民たちが岸壁に集まってダグボートで繋留しようとしているにちば丸の光景を何事かと見つめていた。

 

 岸壁には既に調査隊が到着しており、調査隊の中心メンバーである技研の長、レミールもおり、風化したにちば丸を眺めていた。

 

「随分と錆びついているわね」

 

「漂流してたのに加えて人間の手入れがされていなかったためでしょう」

 

「そんなものかしらね。ま、いずれにしても調査してみないことにはわからないわね。よろしく頼んだわよ」

 

「はい。お任せください」

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