レミール転生   作:久保田紅葉

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臨時帝前会議

「皆の者、集まったようだな。これより帝前会議を開会する」

 

 

 

 リーム帝国が北方地域を平定したとの情報が入ってから数日後、パラディス城の大会議場にて定例ではない、臨時帝前会議が開かれることとなった。

 

 いつもは欠席者がいても構わずに行なっていたが今回に限っては全員出席を義務付けるとの言葉があってか全ての外務局、内務に関係する局、臣民統治機構、国家戦略局、そして開局したばかりの新顔である鉄道局が一堂に会していた。

 

 議長の言葉で始まった臨時帝前会議。普通であれば各局による状況説明から入るが今回はルディアスが壇上へと上がっていた。対リーム帝国への備えについて話すのかと予想していたが、思いも寄らない人物の名前が上がる。

 

 

 

「時に臣民統治機構長パーラス、1つ聞きたいことがある」

「はっ、なんなりと」

 

 

 

 立ち上がるバーラスであるが心当たりが無いといった感じの表情を浮かべている。……これからのことを思えば思わず笑みが浮かんでしまいそうになるが必死に堪えた。

 

 

 

「諸君。この魔写資料をみて欲しい」

 

 

 

 職員によって手渡された魔写資料を見ると軍装の人物が女性を強制連行しようとしているものと、鞭を持ち全裸の男を拷問する人物、手足を縛られた容疑者を笑いながら銃殺する軍人。そのいずれにも『地方臣民統治機構職員による犯行』と銘打れていた。

 

 この資料に帝前会議へ出席した面々はちょっとした騒ぎとなる。当の本人、バーラスはわななわと手を震わせていた。

 

 

 

「こ、皇帝陛下!これは事実なのですか!」

 

 

 

 誰かがルディアスへ向けて質問を投げかける。もしこれが本当に行われたのであれば皇国史に残る大失態となるがルディアスは黙り込むとポツリ、そうつぶやくように答えた。

 

 

 

「残念ながら事実なんだよね。……バーラス!一体どうなっているの!説明してもらおうか!」

「え、えっと……それは、その……」

 

 

 

 言い淀むバーラスであるが、自身が不正や腐敗、暴走を黙って見過ごしていたので言い返す言葉などない。呆れたような達観したような顔をしたルディアスは小さく呟くように言い放つ。

 

 

 

「もういい……衛兵!この大犯罪人を連れてゆけ!」

 

「「はっ!」」

 

「お、お待ち下さい皇帝陛下!まだ、おい!離せ!私を誰だと思っている!貴様らの家族を逮捕してもよいのだぞ!」

 

「貴様は現時点をもって臣民統治機構長の任を解く!つれていけ!」

 

 

 

 叫び喚くバーラスが会場全体に響き渡るが誰も相手にしようとぜずに衛兵から引きずられるようにして帝前会議会場を後にした。

 

 

 

「さてと……リーム帝国との戦争が差し迫っている中、この不正と腐敗にまみれた臣民統治機構をどうしたものか……誰か提案はあるかな?」

 

 

 

 しんと静まり返った大会議場であるが一人の男が手を挙げる。

 

 

 

「皇帝陛下、1つご提案がございます」

 

「カイオスか……聞かせてくれないか」

 

 

 

 カイオスは手元にあった紙へと書き込みルディアスに見せる。

 

 

 

「このようになっている現在の臣民統治機構を解体し、国内の治安維持を行う機関、属領統治を行う機関へとそれぞれ分割してしまうのはいかがでしょうか。現在の臣民統治機構は大きすぎるので不正や腐敗が蔓延してしまっているのかと」

 

「ふぅん……さしずめ治安維持軍と属領統治軍という風に分けるのね。だけど……昨日今日で変わったからといってすぐさま腐敗が消えるわけじゃ無いよね?どうするの?」

 

 

 

 ルディアスの懸念点は分かる。自浄作用が効かなくなっていたからこういう事態となってしまったワケであるから。

 

 

 

「では専門の監査局を立ち上げるのはどうでしょうか?勿論、独立した局としてですがね」

 

 

 

 いくつかの出席者は革新的な方法に疑問符が出ていたようであるが理解のできた者はカイオスへ質問を投げかける。

 

 

「内務省として質問がある。人口統計や税収の計算も臣民統治機構に横槍を入れられていたが今後は無くなるということでよろしいか」

 

「軍としては治安維持の観点から人員を派遣した方がよろしいか?」

 

「臣民統治機構の本部を鉄道局の本部へ移管……」

 

 

 

「……んっん!」

 

 

 

 カイオスに向かって質問やら要望やらの矛先が向かって行くがルディアスの咳払いによって中断される。

 

 

 

「省庁改革は良いことだけど……ひとまずはこの不正と腐敗にまみれた臣民統治機構へ対処しなければならないね。カイオス、非常に辛いことを背負わせることなるかもしれないが頼めるかい」

 

「お任せください。第3局の後任は私が推薦致します」

 

「問題が無ければ承認しよう。異議のある者は居ない?」

 

 

 

 皇帝陛下の言葉なので反論したくともできないのであろう。特に反対意見等もなく臨時帝前会議は終了した。

 

 

 

 

 

 

 ▲ ▼ ⏰️ ▼ ▲ ⏰️ ▼ ▲

 

 

 

 

 

 臨時帝前会議が終了したその夜、私の部屋にルディアスがやって来ていた。

 

 

 

「全て私達の手のひらでしたね」

 

「うん。それにしてもカイオスの演技は見事だったね。引退したら大道芸で食べていけるんじゃないかな」

 

 

 

 くっくっと笑うルディアス。全ては私とルディアス、そしてカイオスの3人が共謀した所謂出来レースと呼べるものである。カイオスの後任にも改革派の人物が就任する予定となっていた。完全に膿を出し切る方向へと向いたのである。

 

 

 

「だけどカイオスには苦労をかけさてしまうね……」

 

「彼は臣民統治機構の改革を断固として行ってくれるでしょう。心配は不要だと思います」

 

 

 

 原作軸では憂国の士であったカイオス。滅亡寸前だったパーパルディア皇国をクーデターを起こしたとはいえ滅亡から救うという大手柄をやってのけた人物である。このくらいで音を上げるワケがないのであった。その点だけで言えば彼は信頼のおける人物といえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 中央暦1629年8月26日、リーム・パーパルディア国境付近のリーム帝国イニラ村でパーパルディア軍将兵が越境し強姦・暴行等暴虐の限りを尽くしたとリーム帝国側から一方的に発表された。リーム帝国側はこの事件を大々的に公表、首謀者の引き渡しと賠償を求めて強く抗議した。

 

 実際にはリーム帝国側が起こした自作自演であるため、パーパルディア皇国側は引き渡しと賠償を拒否、8月28日には国交を断絶が発表されたと同時に国境沿いが慌ただしくなる。そして9月2日、日付が変わらんとする時に魔導砲の砲声高らかにリーム帝国はパーパルディア領内への越境を開始したのであった。




次回からはいよいよ(国境が)ドンパチ賑やかになりますよー。果たしてパーパルディアは勝てるのかどうか
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