遥か遠く その星空へ 作:森茶民 解夏禾 フドロジェクト 山岸
長い休みが開けて新学期が始まったスクールは、ワイワイガヤガヤと、絶え間無く笑い声に話し声が響いていて、和気藹藹としていた。
今日はポケモンが貰える日。
今日この日の為に勉強を頑張ったんだと言う子も数多い。
成績が“貰えるポケモンが何になるのか?”に与える影響は少ないとは言われたけれど、成績が悪ければ、つまり、ポケモンの対処法を理解出来ていない子には、ドラゴンタイプだとか、かいじゅうタイプだとか、力強いポケモンが配られる事はたぶん無いんだろうなあ……という共通認識が有り、大概の子がそれとなく、あるいは鬼気迫る勢いで頑張って迎えた日なのだ。
種々様々だが、教室の中は既に概ねその達成感に溢れており、その気の緩みからの喧騒が、他の教室からも漏れ広がっていた。
ガラリと教室の扉が開かれて先生が入ってくる。
「はい静かにぃ。……これから君たちには、長い時間を伴に過ごす事となるポケモンが渡される事となります。今まで学んで来た事を忘れずに、シッカリとポケモンたちと心を通わせて、弱いとか、強いとか、そういうのは無しで一緒に過ごして下さいねぇ。じゃあ、廊下に並んでぇ。体育館に行くからねぇ」
サッパリ静かに成らない教室で、先生はこの喧騒をあまり諫めずに話し続けて、すぐまた廊下に出た。
こんなテキトーな感じだけれど、何人か居る多少マジメな子とか、未だに臆病な子とかが率先して声掛けしてくれるお陰か、なぁなぁで廊下に集まり、なぁなぁで体育館に到着して、いつもの場所に立った。
少しすると、校長先生と副校長先生が舞台袖から出て来て、「強い弱いじゃなく、友達として、良き隣人として、ポケモンとは確りと心を通わせて一緒に暮らそうね」とかそんな感じの事を校長先生が言い、巡回し始めたピッチングマシンの亜種みたいなロボットからコロコロ転がって来るボールを順々に受け取って、全員がある程度の距離を保てた所で開放の許可が下り、既にしていた子もいたけれど、ボールを大きくして開放釦を押した。
空気が弾ける様な音が疎らに響いたのを合図に、途端騒がしくなった空間で、僕のボールから静かに出て来たのは、鮮やかな緑色をした、大きめの葉冠によってヒョコヒョコと
とりあえず、習った通りにそっと屈み込んで目線を合わせ、名を名乗ってよろしくと礼をした。
カリキリは、少し首を傾げたまま動かない。
これホントに合ってるの?
そのまま見詰め合うこと暫し、教育への不信を募らせながらも、目を逸らさずに周囲へ聞耳をそば立てると、概ねが、ハナチャンやらミィチャンやらクロやら、なんとも言えない既に被り始めている名前でキャッキャと呼んでいるのが聴こえた。
「名前か……」
そりゃ、付けた方が良いよな……緑とか?
「……どうしようか」
というか、性別ってどっちだ?確認方法ってどんなだったかな……と、カリキリの方へと意識を戻すと、目の前至近距離にカリキリが居た。
驚いて固まってしまったけれど、カリキリは全く意に介した様子を見せずにテコテコと静かに近寄って、僕の腕に片方の触腕を触れさせながら、もう片方の触腕で、いつの間にか開かれていた陽射しが差し込む体育館の出入口を示した。
既に幾人かがその扉を潜っている。
──カリキリは、太陽の光が大好き。もしその日光浴の邪魔をしてしまったら、カリキリが放つビームによって酷い目に会ってしまうことだろう──
いつかに見た図鑑の文言が頭を過ぎる。
日向ぼっこ……
カリキリを抱き上げて問う。
「君の名前は、ヒナタにしようと思うんだけど……どうかな?」
カリキリは、我関せずと言った様子で僕の手をペシペシ叩きながら扉を示し続けた。
とりあえず名前の件は保留にして、そのままカリキリの示す場所へと右往左往するタクシーとなった。お金は取らないけど