遥か遠く その星空へ   作:森茶民 解夏禾 フドロジェクト 山岸

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カリキリの赤い眼

 

 

「あ!レンスケ!ここに居たのか!探したぞ」

 

 ヒナタ(カリキリ)の乗り物に徹してやっとこさ腰を落ち着かせられた場所は、スクール本校から南西へと行った場所に有る園芸クラブが管理している花畑のその少し外れた部分に有って、川のせせらぎと小さな花が疎らに咲く人気の無い小さな広場だった。

 

 そんな静かな場所でヒナタと一緒に暫くウトウトしていると、足音を先触れとして、ヒトカゲを連れたイクヒロがそこそこ大きな声を出して近寄って来た。

 イクヒロはスクールで一番付き合いが長い男の子で、バトルとかに意欲的でお調子者な気が有るけど、成績も良くてかなり優しい。

 今だって、すぐそこに眠っているカリキリと、寝ぼけ眼な僕を見て、小さくごめんと謝って、慎重に抜き足差し足と寸劇の様に近寄って来る。

 

「帰りのホームルーム無しに成ったらしいけど……知ってた?」

 

 僕の横に立ってそう言って、僕の否定に「じゃあそういう事だから」と言いながら僕の横にそっと座り込んだ。

 ヒトカゲはその横に立ったままで、尻尾を上下左右にぐわんぐわん動かしながら、キリリとした顔付きで此方をジッと見詰めてきていた。

 

「……だからさ。バトルしようよって誘おうと思ってたんだけど……嫌かな?」

 

 イクヒロは少し躊躇した様子で、若干不機嫌そうなヒナタとおそらく呆っとしている顔の僕を交互に見て、控えめにそう訊いてきた。

 

「ヒナタ。どうする?不利だけど……」

 

 ヒナタは言い終わらない内にスッと立ち上がり、触腕と擬翅をはためかせてヒトカゲをジッと見詰めた。

 

「たぶん大丈夫」

 

 ヒナタからの否定は無かったからバトルする事と成り、イクヒロが僕たちから距離を置いてヒトカゲを前へと促した。

 

「じゃあ、この石が地面に落ちた瞬間に開始な」

 

 そう言って小さな石ころを緩やかに放り、その石が地面へとカツン……と接触した瞬間

 

「火炎放射!!」

 

 ヒトカゲのその小さな体からは想像も付かない大炎が吐き出され、ヒナタへと迸る。

 

「目覚めるパワー!」

 

 両触腕を上げて眉間の辺りに光球を出現させ、その火焔へと光球を放つと、光球は火焔と接触した瞬間に無数の光へと変じてその炎の勢いを減衰させてヒナタを軽く炙るだけに留まった。

 

 散らせたって事は、水か岩か地面タイプ……!他にほのおタイプに弱体化させられずに攻撃できるのは、切裂と空元気しかない。足の遅い今のヒナタで近付くのは良くないと思うから……

 

「火炎放射!」

 

「目覚めるパワー!」

 

 焼き直しが行われた。

 

 このままじゃジリ貧だ……直撃はしていないけど、掠りはしている……このまま続けて火傷からの空元気を狙っても良いけど、必ず火傷する訳じゃないし、その時に近寄れる体力が残ってなきゃ意味が無い……。どうすれば……

 

「炎の牙!」

 

 ヒトカゲは口腔から火の粉を散らして前傾と成り、猛然と走り出して距離を詰めて来る。

 

 しまった!目覚めるパワー?でも間に合うのか?なら切り裂くだけど……

 

 既にヒトカゲはヒナタの目前に居て、ヒナタは片触腕からエネルギー光を迸らせ、葉先を掬い上げる様にして迎撃しようとしていた。

 

 「っ頬を狙え!」

 

 若干水平な逆袈裟の形でヒトカゲの顎を捉えられた事で炎の牙は不発に出来たが、その漏れ出た火の粉がカリキリに降り掛かって、左半身に広く傷が出来ていた。

 

 「ひのこ!」

 

 イクヒロの瞬間的な指示により、ヒトカゲは瞬時に少しだけ上半身を起こして口腔に未だ燻っていた炎を発射した。

 

「種爆弾!」

 

 身を屈め始めていたカリキリは前傾姿勢へと一気に成って、その頭の蕾から茶色い球体を放出した。

 その球体が、カリキリにひのこが当たるギリギリの所でその残渣に掠り、その球体が爆発した風圧でひのこは散り散りと成った。

 それと一緒にヒトカゲとヒナタもゴロゴロと吹き飛んで、両者の間近へと落ち着いた。

 

 最初と殆ど同じ立ち位置。仕切り直しに近い状況だけど、ヒナタはボロボロ。ヒトカゲは多少傷は有れど未だ意気軒昂としている。

 

「ヒナタ……」

 

 もう殆ど負けの様な物。降参した方が良いように思うけど、ヒナタは擬翅をはためかせて、前へと一步二歩と戦闘が開始してから始めて歩いた。

 

 やっぱりテトテトとしていて歩幅は小さい。種族柄仕方の無い部分。体格だって、カリキリにしては大きめでも、ヒトカゲと比べれば二回りほど小さい。

 でも、この子の名付け親は僕だけど、ペットでも、子どもでもないから……対等に成れと言われても、僕たちは余りにも体が違い過ぎるから難しく思うけど、その意志の尊重くらいは、沿おうとするくらいはした方が良いんじゃないかと思うから

 

「甘い香り!したら葉っぱカッターを散らせ!」

 

 ヒナタの頭蕾が少し開き、全身をパタパタと振るう事で辺りに甘い嫌な臭いが漂い始め、少し驚いた様な顔のヒトカゲが、イクヒロの「火炎放射!」と言う指示に従い動く前にヒナタはクルリと踊る様に回転した。すると、ヒナタの周囲に緑の光を放つエネルギー塊が複数出現してヒトカゲに殺到し取り囲み、その風の流れに乗って臭いがヒトカゲへと集中した。

 大口を開けていたヒトカゲは、突然の強い香りに動きを鈍らせながらも火炎放射を放つが勢いが弱く、その旋回するはっぱカッターに当たり伝播していく事でヒトカゲを覆い隠して行き、ヒナタへと到達しなかった。

 

「目覚めるパワー!」

 

 炎幕を利用してヒトカゲの側面へと移動していたヒナタは、炎幕が弱まってチラリとヒトカゲが見えた辺りで光球を放射し、イクヒロの「横だ!」という警告空しく、ヒトカゲの胴体へと光りの散弾を直撃させる事に成功した。

 傷が増えて来て辛そうなヒトカゲは、尻尾を利用して尻餅を付いた状態から立ち上がり気炎を吐いた。

 

「火炎放射!」

 

「っ目覚めるパワー!」

 

 三度目の再演。ヒナタも少しづつヒトカゲへと近付いてはいるが……

 

「火炎放射!」

 

「目覚めるパワー!」

 

 後手後手。ジリ貧だ。

 

「火炎放射!」

 

「目覚めるパワー!」

 

 この応酬を最後として、ヒナタは火の粉を浴びて倒れ込んだ。動く気配は無い。近付くと目を回して気絶していた。最早戦闘不能。

 

 早くポケモンセンターに行ってあげなくちゃ

 

 ヒナタをボールに戻して歩き出そうとすると、イクヒロがスクールに回復装置が有る事を教えてくれた。保健室らしい。知らなかった……

 

 

 

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