遥か遠く その星空へ   作:森茶民 解夏禾 フドロジェクト 山岸

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戦ぐフワンテ

 

 

「目覚めるパワー!」

 

 ヒナタ(カリキリ)が放った光球が、炎を纏い振りかぶる拳側の半身へと弾けさせて消火し、続けて放ったはっぱカッターにより相手のワンリキーは戦闘不能へと陥った。

 

 木々は紅葉し実を付け、花々はその面影を残すばかりな今日この頃、スクール卒業も間近へ迫りポケモンバトルやフリータイムも増えてきた。

 ハイスクール進学や就職への活動で余り来ない子も増えてきて、今のスクールに来るのは僕のような何と無くな暇な子や変にマジメな子、友達と遊びたいからって子とかくらいなんだけど、フラっと珍しく僕たちの前に現れた先生がヒナタが目覚めるパワーを使っているのを見て、簡易的にタイプを知れる実験──放電する空間に目覚めるパワーを放って、電気が弾けるように乱れたら“みず”、吸収されたら“じめん”、纏うような避けるような感じだったら“いわ”──をしてくれたお蔭で、ヒナタの目覚めるパワーがみずタイプを帯びている事が判明した。遅かれ早かれだったと思うけど、それによって以前よりも格段に戦い易く成って、ヒナタも目覚めるパワーはもう殆ど一瞬の内に形成できる程に使い熟しつつあり、多くの勝星を得られていた。

 

 そんなこんなで正午に至る前に終わるスクールの帰り道、ヒナタとは最近は涼し気な場所巡りに精を出していて、基本的に高所に成るからかここ最近のゲンくん(サイホーン)のテンションは殆ど上がり調子で、風を切って走り回っている。

 

 今日は思わず瞼を下ろしてしまう程眩しいけれど、空を薄く白雲が覆っていて、ずぅっと遠くを見遣ればやっと仄かに水色に染まっている事が判るような、ぼんやりとしたまるで夢の中みたいな白い日だった。そんな日は決まって眠たくなって、だから、絲獲(イトリ)山麓の小川が流れる人工林区画の小高い木陰で少しぼんやりとする事にした。

 

 仄かな木漏れ日。涼やかな風と植物たちのざわめきに、チロチロとした小川の囁やき。控えめな広葉樹たちの香りと枯れ草や土の小さな腐臭。

 

 ゲンくんに凭れて暫くそうしていると、眠気は決定的な深度へと進行し始め……ああそういえばとリュックからもしものおやつであるドライモモンとドライオボンを取り出して蓋を半開きにし、お腹空いたら食べてねとゲンくんの首元に置いて言って、本格的に眠る態勢へと入った。

 

 

 

 覚醒する時特有の頭の浮遊感だけでなくて、何故か体にも重量を片足にしか感じなくて、なんでだろうと橙の陽射しを感じながら瞼を上げれば、枝の上側が見えるくらいに高くなった視点と沈む行く夕日。下を見れば、僕の片足を少し羨ましそうな目をしたゲンくんが必死に引っ張っていて、ヒナタはそこから葉っぱを疎らに飛ばしていた。僕の脇の下には特徴的な黄色のハート型。上を見れば、薄紫の丸い体躯をした、キラキラと光る目をしたフワンテが此方を見ていた。

 

 フワンテだ。珍しい。ここ(カザナリ地方)では、気流の関係で滅多に姿を現す事が無いポケモンだけど、最近有った台風が珍しくカントーに上陸したらしいから、たぶんその影響なのだろう。

 

 そう思いながら辺りを見渡しても他のフワンテやフワライドは見当たらない。

 

 そのうえ逸れた個体らしい。

 

 正直この程度の高さなら全く問題無い。それに、マズく成ってもヒナタの甘い香りとかで気を惹いたりしてソーラービームを当てれば流石に離すだろうし……この景色が新鮮でどうしようか迷う。

 フワフワフワフワ。引っこ抜くような、力むような感触を感じられない。このフワンテが本気で引っ張り上げたらゲンくんも浮かぶかな?

 

「……もっと、頑張ってみない?」

 

 ゲンくんの首に両脚を回して、フワンテの目を見ながら言う。

 ……少し態勢が辛い……背中が伸びる……

 

 フワンテは一瞬困惑した目をしたが、すぐにその触腕が僕の体にぐるりと巻き付いて、ぐぐぐ……ぐぐぐ……と力むような動きと胸への締付けに腹が伸びるような感覚。しかしすぐに無くなってしまって、またフワンテを見れば「いやぁキツイっスよ……」と言わんばかりの表情で此方を見詰めていた。

 

 正直言うと僕も脚が辛いから、もうあんまり試せそうにない。

 どうしようかと考えを巡らせていると、ピンときた。抱っこ紐だ!最近出来た弟にお母さんがしてる胸にクロスするやつ。アレで長時間動いているんだから、アレだとあんまり辛く無いのかも?

 

 早速フワンテに伝えてみたけれど、確かに力むような動きは明らかに長くなったけど、持ち上がらなかった。

 

 残念そうな顔のゲンくんに、残念そうな顔のフワンテ、呆っと座り込んで此方を見ているヒナタ。

 

 地力が足りないって事だもんな……フワライドに成ったら出来る様に成るかな?

 

「ゲンくんを持ち上げられるように成るように、一緒に頑張ろう!」

 

 

 フワンテと仲間に成った!

 あとお腹が冷えた。空腹でも有る。

 もうすぐ陽が沈む。家に着いた頃には多分ご飯が出来ているだろうし、そこまでの辛抱だ。

 フワンテは何が好きだろうかな?

 名前はどうしようかな?持ち上げるだし、モカとかだろうか?

 

 米の炊飯臭に肉の燃焼臭や野菜の甘い匂い。何かしらの甘い香りや香辛料の辛そうな酸っぱそうな香りが雑多に混ざる帰路の中、そんな事を考えながら空を舞うヤミカラスをフラフラ眺めながら緩慢に歩を進めた。

 

 






 【零れ噺】

 カザナリ地方はホウエン以北ジョウト以南に存在し、海流の流れからホウエンの文化が比較的強い地方である。





 【零れ話し】

 このような場末の妙に気障ったらしい噺をわざわざ読んで頂き誠に有難う御座います。

 さて、この噺ですが、波に乗り切れなかった為、個人的には納得いけていない内容なのですが、実験的な締切が間近になった為に投稿しました。申し訳ない。
 つまり、この噺は手直しが予想されます。
 また、次話の投稿をもし期待して頂けれるならば、まず5年程お待ち頂ければなと思っております。申し訳ない。

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