騒がしい夜から一夜明け
吹上は朝食のトーストを食べながら目の前の男・・アンスルと向き合っていた。
「・・信じられないな」
「あれほどお話ししたのにまだ信じてもらえないんですか?」
「いやなんというかこう・・・脳が理解を拒んでいるというか・・・」
「いくらなんと言おうと僕がここに来たことは現実なんですから。いい加減諦めましょう」
「なんでお前がやれやれって感じなんだよ・・」
ズズッとコーヒーを飲み、ふぅと一息
「まぁもうこうなっちまった以上これが現実なんだろうな・・」
「!では・・!」
「うん。めちゃくちゃ不本意だが認める。お前は異世界から来た勇者なんだな?」
吹上が確認するようにアンスルに聞くと、アンスルはえぇ!と得意げに首を縦に振る
「んで?いつここから出ていくんだ?」
「はい?」
「いやここ俺んちだし」
「・・・そうですね。そういえばそうでしたね」
「おい」
アンスルはうんうん唸り、あーでもないこーでもないと頭をフル回転させる。
そして一つの結論に至る。
「・・ではこうしましょう!」
「ん?」
「ここに僕も住みます!」
「いやなんでだよ。普通に嫌だわ」
「何でですか!?」
「逆に聞くけどなんで行けると思ったんだよ」
「だってニホン人は優しいと!ちーと持ちの皆さんから聞いてましたよ!?」
「それは最大値だっただけだろ。俺のような奴もいるんだよ。今知れてよかったな」
「そんな・・。今目の前にいる困っている人を見捨てるほど心に余裕がないのですか!?」
「いやなんでそんなに言われなきゃいけないの?さすがに傷つくぞ?」
「そんなこと言って・・・。(ボソッ)僕がめちゃくちゃナイスバディの女性だったら二つ返事で許可してたくせに・・・」
「おい聞こえてんぞ」
ブーブー言うアンスルをシッシと追い払うような言葉で答える吹上
しかし勇者アンスルもあきらめない
「大体家の買い方とか借り方とか・・。わからないことだらけなんですよ?そんな人をほっぽりだすってあんまりじゃありません?」
「んなこと言われてもねぇ。よし分かった。お前でも納得できるような理由を今から話してやる」
真剣な顔でアンスルに向き合う吹上
先ほどからの態度の違いに思わず困惑の表情を浮かべるアンスル
その脳内には大量の?が浮かんでいた
「?」
「いいか、一度しか言わないぞ?・・・・俺にお前を養うだけの金がない。以上」
真剣な表情で告げられた真実にアンスルは・・・納得できなかった
「だったら僕も稼ぎますよ!」
「いやお前働けないだろ。身分証明どうすんのよ」
そう吹上が聞くとアンスルは得意げな顔でフッフッフと笑みを浮かべる
「身分証明・・・”コレ”でできますよね?」
「な・!?お前それは・・・!」
アンスルが鎧の下から取り出したのは四角い紙だった。
少し硬く、顔写真も入ったその紙はまさしく・・・!
「運転免許証!?」
運転免許証だった。さらにアンスルは保険証やクレジットカードも取り出す。
「実は女神さまから教えていただいたのを思い出しまして。」
「女神が?いやそれよりこれ本物か?」
「本物ですよ。それに女神さまがこう言ってましたから!」
『勇者アンスル。あなたがニホンで生きた行けるようなモノはすべてあります。もちろん最低限ですけれど』
「って!」
「過保護・・・?」
「それより!これだけあれば僕も働けますよ!」
「ぐぬぬ・・・」
「別に迷惑はかけません!ですからどうかここに住まわせてください。」
アンスルが頭を下げる
その姿を見てあきらめたのか、吹上は「はぁ・・・」とため息をついて
「・・・よし分かった。」
「!」
「だがその前にやることがある」
そういって立ち上がる吹上
「お前の服。その鎧で外歩けるとおもっとんのか?」
]]]]
「・・・寒い!」
今日は東京でも珍しく0度という寒さを記録している
そんな日に男二人でそこに向かうのかと言えば安い洋服ショップだ
「大体なんでそんな身長でかいんだよ・・・俺の服全部入んねぇじゃねぇか」
「197ありますからね。偉大なる両親のおかげです」
「わざわざ身長言わなくていいだろ。俺がみじめになるだけだ」
「でもジャージなるこの服があってよかったですよ」
現在アンスルは吹上が以前、酔いながらネットショップで買って箪笥の肥やしになっていた黒ジャージにベンチコート(アンスルからすればちょっと小さい)を着て歩いている
「売るのを忘れてたやつがこんなところで役立つとはな・・・俺も驚きだわ」
二人は歩きながら洋服屋に付く
「とりあえずでかいサイズのかっときゃ間違いないだろ・・」
「案内任せますね」
そういって吹上の後ろを歩いているアンスル
しかしこんな洋服屋に高身長イケメンが来れば当然目立つわけであって・・
「えっなにあの人・・・超かっこいいんですけど・・・」
「ね!やばくない!?」
「・・・パシャ」
(なんかすごい見られてますね・・・モンスターに囲まれてる気分だな・・・)
アンスルはあまり周囲の客と目を合わせないように視線を散らしながら吹上についていく
(しかし服だけでここまで様々な種類があるとは・・・それだけ娯楽が多いという
ことなのでしょうか?・・・ッ!?あれは!)
そんなことを考えていると一枚の服が目に入る
それはアンスルにとって・・・運命のようなものだった
そこから先のアンスルの記憶はない。
吹上から何か言われていたがそんな記憶もない。
ただ気が付いた時には、吹上の家に帰宅しており、持っている袋の中には合計8色分の
[勇者]と書かれた服が入っていた。
「お前・・本当にそれでよかったのか?」
「何を言ってるんですか!勇者なんですから!これは僕が着るにふさわしい一品ですよ!」
ちょっと吹上は引いた
ちなみに吹上の身長は164くらいです。