「・・・あの、名前とかって教えていただけないんですか?」
「そうね・・・・。実は私もよくわかってないの」
「え?」
窓の外を眺める女性は、アンスルの問いにそう答える
「あの時・・・事件があった時からおぼろげなのよね」
「そうなんですか?」
「えぇ。あなたがどんな人か。私がどうしてここにいるのかっていうのは思い出せるんだけど・・・こと自分のことに至っては全く思い出せないの。ごめんなさいね?」
女性は茶目っ気を少しだし、ウインクをする
「・・・・なるほど。じゃあちょっと事件のことについて聞きたいんですけど・・・」
「事件の?あなたが?・・・警察でもないのに?」
「えぇ。まぁちょっと個人的に気になるので・・・というかあんなの見たら誰だって気になりますよ」
「そういうものかしら?おばさんがただぶっ倒れてただけよ?」
「結構傷ついて。がそこに付きますけどね・・・・」
「まぁ?そんなにひどい状態だったの?」
コテンと首を傾げる女性
「・・・自分の状態をわかってなかったんですか?」
「うーん・・・そうねぇ。というよりもほとんど覚えてないわよ?いきなり後ろからガスっと何かで殴られたかと思って、気が付いたらあなた達が目の前にいて・・・それで次はここにいたの」
「え?じゃあほとんど覚えてないじゃないですか」
「えぇ。だから警察の人に色々聞かれても答えられなかったの。」
「でも俺たちの無実は話してくれたんですよね?」
「そうよ。わかってることは話すわよ。それに私を殴った人たちのこともどんな風貌だったかは覚えてるし・・・」
「ほーん・・・・」
アンスルはコイツ嘘ついてんなぁ・・・と内心思いながら魔法を使うか悩んでいた
確かに魔法の中には真実を話させる魔法もある
ルジュルンであれば初手でその魔法を使っていただろう
だがアンスルはしない
なぜなら彼は勇者だからだ
「・・・そろそろいいかしら?」
「え、あぁ。どうもありがとうございました。・・・っと、最後に一つだけいいですか?」
「えぇ。何かしら?」
「あなたが覚えてる一番古い記憶って・・・何ですか?」
アンスルが聞くと、女性はうーんと唸る
「そうねぇ・・・・子供のころ、よく遊んでたわね」
「・・・どんな遊びを?」
「よくあるおままごとよ。今も記憶にしっかりこびりついてるわ」
「こびりついてるって・・・・」
「ごめんなさいね。言い方は許してね?」
「まぁ許すも何も無いんですけどね・・・・じゃあ、お大事に」
アンスルはそういって部屋から出ていく
部屋に一人になった女性は、読みかけていた古い漫画を再び読み始めた
退出