勇者だって転生します。   作:カオス案山子

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そういうこともあるんです。



その頃
残されたものと勇者


 

ギャルクス王国

 

それは勇者アンスルが冒険者として活躍していた時代の拠点でもあり、勇者としてまつられるようになった国である。

 

勇者の死後、数日は国中が喪に付していたがそれも数日だけ。

 

今となっては、勇者も過去の人なのだ。

 

勇者は多くの人々に感謝されていた。

 

それは魔王を倒したということだけでなく、旅の途中で多くの人々を助けてきたからだ。

 

だがそれが大多数というだけで、勇者が死んでうれしかったという奴もいる。

 

それは魔族や、後ろめたいことを生業としてきたならず者や裏の者、そして転生してきた一部の日本人たちだ。

 

魔族は言わずもがな

裏の奴らも勇者という絶対的な正義がいなくなり、活動しやすくなった。

 

転生してきた一部の日本人たちからすれば勇者は存在そのものが気に食わなかった。

 

自分たちがチートをもらい、ハーレムでも築いてうはうは生活を送れると思ったら、自分たち以上のイケメンで勇者と呼ばれていて、その上チート持ちの自分たちですら勝てない。

そんな最強が既に居たのだから。

 

そんな最強がいないとどうにもならない世界の敵ということは、滅茶苦茶強いということでもある。

チートも通用しなければ、特にモテるわけでもない。

 

その結果、やる気もなくなった性欲だけある落ちこぼれが量産された。

そしてそんな奴らは勇者さえいなければと思うわけでありまして。

 

勇者が死んだ今、そんな奴らがどんどん出てきた

 

幸い、勇者が死ぬ前に自分がいなくなった時のことを考えて、王国の警備隊に戦いと魔法、その他を教え込んでいたため、チート持ちのろくでなし共も、ゆっくりと鎮圧されつつあった。

 

 

 

 

 

 

 

@@@

 

 

 

 

 

そんな王国から外れた場所にある勇者アンスルの故郷の村

 

[ブギャルヌ村]の一つの家

そこは勇者アンスルが晩年を過ごしていた家であり、限られた一部の者たちしか知らない。

そんな場所にあった

 

その家に今、一人の女性がいた

 

「・・・・全く。部屋が汚れまくりじゃないの・・。汚いったらありゃしない」

 

文句を言いながら、アンスルの家を片付ける女性

 

彼女の名は[ルジュルン]

 

勇者アンスルとパーティを組んでいた魔法使い。所謂ヒーラーである

 

その容姿は未だ衰えず、美しい姿を保っている

 

それもそのはず。

彼女は[魔女]なのだから。

 

魔女は元々人間だった者が、自らの魔法を極めるために人間を辞めた存在のことを言う。

 

ルジュルンも元々は人間であり、普通の夢を持った女の子だった。

 

魔法を研究する者たちによって発展してきた村に生まれ落ちた彼女は、小さいころから魔法に触れてきた。

彼女には才能があった。

魔法の才能が。

けれど彼女は魔女になる気もなく、また冒険に出る気もなかった。

ただ普通に幸せな家庭を作り、家族に囲まれて死ぬ。

それが彼女の夢だった。

 

人間年齢22歳の時に結婚し、その2年後子供も生まれた

 

幸せだった。

 

奴らが来るまでは。

 

彼女が人間年齢34歳の時に、故郷は滅ぼされた。

 

魔王軍幹部と

 

魔王軍に寝返った転生者によって。

 

一つ言うならば、彼女の故郷は昔から魔王軍から狙われていた。

魔王軍からすれば、自分たちの脅威となる魔法の研究をしている存在をみすみす逃すわけがない。

だがこの村は、魔法によって秘匿されていた。

だから村は今まで見つからず、魔法の研究ができていたのだ。

 

あの日。

村は焼かれた。

彼女は復讐心から魔に身を落とし。

魔女となったのだ。

 

そんな彼女が、愛した存在がいた。

 

一人は人間時代の夫。

彼はとてもまじめだった。

特に強いわけでもない。

ただ、ルジュルンを愛する気持ちは誰よりも強かった

 

一人は自分の子供

10年しか生きられなかった子供

今でもその笑顔は思い出せる。

 

そしてもう一人

それがアンスル。

 

「・・・・・結局あなたも私を置いて行ってしまったわね」

 

アンスルの家を整理しながら、机に飾られた写真に話しかける

 

「そうねぇ・・・。あなたの奥さんは今も元気にしてるわよ。もちろんあいつらもね」

 

イスに座り、机に肘をついて話し始める。

 

「あなたが一番最初よ?全く・・・」

 

はぁとため息を付くルジュルン

 

その表情は曇っていた

 

「・・・・不思議ね。悲しいなんて感情、久しぶりよ。魔女になった時に全部置いてきたと思ったのに」

 

ふふふと悲しみながら笑う

 

「はっきり言うわ。今のこっちはクソよ。魔族は今は鳴りを潜めているけど、どうせ数年もしたら次の魔王が現れる。そしてこっちにも次の勇者が生まれる。それの繰り返し。・・・平和なんてどーこにもないわ。『詰んでいる』なんて、あるニホン人が言ってたけど。その通りよ」

 

ルジュルンは立ち上がり、アンスルの家にあった女神像に話しかける

 

「・・・・ねぇ女神さま。あなたがもし本物なら・・・私をここから。この世界から連れ出してくれるかしら?」

 

女神像は何も言わない

 

「例え詰んでいるとしても。アンスルがいる世界のほうがまだ面白いわ。さぁ、連れ出してくださる?」

 

女神像は黙ったままだ

 

「・・・・・なーんてね。こんな像がなんとかできるわけじゃないし」

 

女神像が・・・・・静かに動く

 

『ならその願い。かなえましょう』

 

「っ!?何!?」

 

『魔女ルジュルン。あなたの功績を讃えて。勇者アンスルの元に送ってあげます』

 

「誰・・・!?」

 

『あなたの第二の人生に幸あれ』

 

「何を・・・」

 

吹くはずのない突風が吹く

アンスルの家には女神像がコロンと転がっていた

 

この日、魔女は姿を消した

 

 

 

 

 

 

 




この世界が退屈ならば

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