不屈のエース~甦るレジェンド~   作:フリュード

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フリュードです。書き直したのでどうぞ!


プロローグ

『怪物現る!!』

 

『完全左腕武藤、来年も完全試合で一気に優勝か!?』

 

当時のどの新聞の見出しは全部この記事で占められていた

 

というのも1年前の中学全国大会でまだ中2だった武藤(むとう) 翔也(しょうや)が準決勝・決勝で完全試合という離れ業をやってのけたのだ

 

そのおかげで武藤のもとにはいろんな名門からの推薦の話が来たし、正直良い事づくめだった。今思えばここが武藤にとって幸せの頂点だったのだろう。

 

本当にうれしかったし、楽しかった

 

 

 

 

けど・・・・そんな幸せも長くは続くわけが無かった・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから1年後・・・

 

 

全中愛知県予選 準々決勝

   1234567計

明王 00100001

王陵 000100

 

7回裏ツーアウトランナーなし。カウントは2-2.一発出ればサヨナラの場面でバッターは4回に同点弾を放った王陵の4番・北川(きたがわ) 慶介(けいすけ)だった。

 

同点弾を打たれたのは先発の背番号『1』の武藤の甘く入ったストレートだった。だが、かといって武藤は逃げるわけにはいかなかった。

2アウトだったこともあるが逃げずに勝負することが武藤のスタイルだから。

 

だから武藤が投げた次の勝負球は・・・ストレートだった。

 

 

カキィィィィン!!!!

 

外角低めに決まったはずのストレートは捕手のミットに収まることなくいい金属音を響かせてボールは・・・・スタンドへと消えていった。

 

「・・・・・」

 

ボールが消えて行ったスタンドを見ながら、武藤の心の中ではいろんな感情が渦巻いていたが、ひときわ大きく占めていた感情は、『これが今の実力だ』という諦めに近い感情だった。

 

最後に投げたストレートもコーナーには決まっていたが、おそらく120キロに満たないだろう。中2の時には140キロ近い球速を計測していたストレートは見る影もなかった

 

というのも武藤は左ではなく、右で投げていたからだ

 

それはなぜか・・・それは全中終了後に左肩を壊してしまったのだ

それでも皆の協力もあって武藤は頑張ってここまでこれた

 

(ふぅ・・・・俺の夏もここまでか。とりあえず整列しなくては。)

 

ここまでの出来事、そして地獄のような1年間の右投げ特訓が走馬灯のように蘇る

 

それでもあきらめに近い感情が占めていたせいか涙が出ない武藤は泣いている部員に交えて整列をしに行った

 

『1対2で王陵中学校の勝ち。礼!!』

 

ーーしたぁぁ!!

 

「ナイスバッティング。次も頑張れよ。」

 

礼をした後、武藤は相手と握手をしたのだが相手はくしくもサヨナラホームランを打った北川だった。北川は武藤の発言にニコリと微笑んだ

 

「そっちこそナイスピッチ。そっちも武藤がホームラン打っていなきゃ負けてたよ。それにあのサヨナラホームランもポイントがずれてたらただの内野ゴロだった」

 

「ははは。そりゃどーも(両方とも打たれたら意味ないだろ・・・)」

 

武藤は苦笑しながらも北川に礼を返した

 

「次は高校で・・・完全復活した武藤君と甲子園をかけて戦いたい!その時はよろしくな。」

 

「!?・・・あぁ、首を洗って待っとけよ。その時は全打席三振かましてやるからな」

 

武藤は一瞬反応したが、悟られないためにそう言った

 

「あぁ。約束だ!じゃあな!」

 

北川はそう言い、自分のベンチへと帰って行った

 

「さぁ、荷物を片付けなきゃ・・・」

 

武藤も荷物を片付けるために自分のベンチへと帰った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふっ。明王の武藤翔也・・・ね。(肩を壊して右投げになったとは噂で聞いてたけど・・・右投げ転向してから1年であのストレートの“ノビ”。将来が楽しみね。)」

 

バックネットで誰かがそう言っていたが誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

球場前

 

『うっ・・・・えぐっ・・・』

 

武藤の学校である明王中学校の部員は球場に出てもみんな泣いていた。

これまで主将としてみんなを引っ張ってきた二村(にむら) 亮輔(りょうすけ)も顔を真っ赤にして泣いていた

 

 

 

 

 

 

明王中学校は愛知の強豪校で、過去全中で通算10回の優勝回数を誇る超名門である。

有名なプロ野球選手もこの中学出身という人も少なくはない

 

ここ数年は明王中学校が優勝し、全国に出場していた。そんな輝かしい成績に俺たちが泥を塗ってしまった・・・その感情がみんなの心の中にあったのである

 

「・・・・・」

 

武藤は泣くにも泣けず立ち尽くしていた

 

自分がサヨナラ弾を撃たれ負けてしまったのだが、自分では気持ちの整理が付いているとは思っていてもどこか、呆然とした気持ちと言うのが武藤の心の中にはあった

 

「翔也・・・」

 

すると、武藤を呼ぶ声が聞こえたので武藤は振り返ると呼んだのは明王の監督であった水原(みずはら) 陽一(よういち)監督だった

 

「・・・勝てずに申し訳ございませんでした。」

 

「何を謝る!お前もその状態でよく頑張ってくれた!ただそれだけでも十分だよ・・・」

 

武藤が謝ると水原はそう言ってくれたが、やはり申し訳ないという気持ちが強かった

 

監督には右投げのアドバイスや試合でも辛抱強く使ってくれて武藤は水原に感謝しきれないという思いだった

 

「・・・さて、集合しようか。翔也、代わりに頼む。」

 

「はい。全員集合!」

 

水原に言われて武藤が泣いている二村の代わりに号令をかけると部員が泣きながら集合をした

 

「・・・さて、このような結果になってしまって俺は…悔しい。先発の武藤も最後まで良く投げてくれた。武藤だけじゃない。二村、佐伯・・・みんながそれぞれの実力を十分に出しながらも最後こんな残酷な結果になってしまった。これは監督である俺の責任だ。すまなかった」

 

そう言い、水原は部員の目の前で頭を深く下げ謝った。部員は「監督のせいじゃないです!!」というがそれでも水原は頭を下げていた

 

「・・・最後にキャプテンから一言をと言いたいが状態が状態だから武藤、代わりにやってくれ。」

 

水原は頭を挙げた後、武藤に対してそういったので武藤は頷きみんなの前に出た

 

「・・・・まず一つ、ここまで来たのに最後に自分がこのような投球をして負けたことを謝りたい。本当に申し訳ない」

 

武藤はそう言い、水原と同様深く頭を下げた。

 

「お前のせいじゃねェよ!俺たちが打てていなかったから・・・えぐっ・・・」

 

「佐伯・・・」

 

頭を挙げた後、チームメイトで同級生の佐伯(さえき) 道彦(みちひこ)が顔をくしゃくしゃにしながらもそう言った

それを見て武藤はさらに申し訳ないという気持ちが自分の中で大きくなってきていた

 

『やばい・・・・感情があふれそう。泣いちゃダメなのに。』

 

武藤は佐伯の泣き顔を見て心の中であふれ出そうな感情を抑えようと苦悶していた

 

「・・・お前は良くやったよ。」

 

「二村。」

 

すると先ほど泣き止んだばかりなのかまだ顔を真っ赤にしながらも、これまで武藤の球を受け続けてきた捕手である二村がそういってきた

 

「お前は肩を壊したのに、もう一度野球をやりたいっていう気持ちだけを胸に良くここまで来てくれた・・・」

「お前は誰よりも努力し、誰よりも頑張ったよ。俺はそんなお前と一緒に野球できて・・・嬉しかった。ありがとう。」

 

「!!!!!・・・・・うっ・・・・・うわあああああ!!!!」

 

二村がそう言った瞬間押し寄せてくる感情を止めることが出来ずに、武藤はうずくまり大粒の涙を流し始めた

 

『武藤さん!!!!』

 

後輩が泣きながら口々に名前を呼ぶ

 

水原も泣き他の皆も泣いていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『・・・・あぁ、俺の中学の夏が終わったのか。』

 

武藤の思いは口から出ることは無く、部員の泣く声がむなしく響いていた

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして武藤の最後の中学の夏が終わり・・・・また物語の始まりでもあった

 




また見て下さいね!
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