とりあえず前回出したところまで何とか頑張ります。その後は不定期になってしまいますが・・・
カァン!!カァン!!カァン!!
関東大会で敗退した翌日の日曜日、青道高校はいつも以上に練習に取り組んでいた。
それは昨日の試合で足を引っ張った投手陣にとっても同じである。
「ふんっ!!!!」
昨日不甲斐ないピッチングをして監督に怒られ、涙を流した細野もいつも以上にブルペン投球に力を入れていた。
(昨日負けたのは自分が7失点もしたからだ。今日からはいつも以上に気合を入れて次は不甲斐ない投球をしないようにする!!!!!)
細野はそんな思いを抱きながらブルペン投球をしていた。
(5回から球が甘くなり自滅することは自分でも分かっている。何がだめなのか・・・)
一方丹波も自分に何が足りないのか模索しながら投げていた。
投手陣はそれぞれの課題に向き合いながら、夏に向けて練習をしていた。
一方武藤といえば・・・・
ぽすっ。
「う~ん。やっぱりシュートのキレがないなぁ。」
投球場から離れたところで一人ネットを立てて、変化球練習をしていた。武藤が投げたボールはかろうじて変化はしているものの曲がり始めが速く、使い物にならない変化球だった。
「う~ん・・・シュートは肘に負担がかかるしなぁ・・・けど今後のためにシュートが欠かせないんだよなぁ。」
武藤は肘に負担がかかる変化球であるシュートを投げようかどうか迷っていた。
高島さんに言っていた新しいスタイルというのは「打たせて取る」ということだった。
前の武藤の投球スタイルは三振をバンバン取る本格派だった。肩を壊して以降「出来るだけ球数・肩肘に負担のかからない」ように色々考えて投げるということにしたのだが、投げる変化球というのがなかなか決まらずにいた。
カットボール・スローカーブ・チェンジアップ・スプリットの4球種といささか多い気もするが、この4球種を高校に入るまでに練習をし使える程度にはしたのだが、シュートを投げようかどうかということに悩んでいた。
「確かにシュートは打たせるのには良いが、使い方によっては肘を壊しかねない。とりあえず今のうちは投げなくていいと思うぞ。」
「あっ、クリスさん。」
武藤が悩んでいるとクリスがやってきて武藤にアドバイスをしてくれた。
「やっぱりそうですよね。今のうちはやめときます!」
「そうだな。お前はまだ2年はある。それに他にもな変化球はある。」
武藤はシュートを投げる事をやめるとクリスに言うとクリスはにこりと笑いながらそう言ってくれた。
クリスはホントに優しいと武藤でも分かっていた。けど武藤はずっと思っていた事があった。
「・・・・ちょっといいですか?」
「うん?何だ?」
「あの~・・・「クリス!武藤!バッテリー陣は集合だ!」・・・集合かかったみたいですね。」
「そうだな。話は後で聞こう。」
武藤はクリスに言いたいことを言おうとしたときに細野から呼び出しがかかり、最後まで話をすることが出来ずに武藤たちは集合場所へと向かった。
その後も話す機会も無く、気付けば練習が終了してしまった。
「解散!!!」
『あざっしたぁぁ!!!』
監督が言った後に部員が礼をし、解散となった。
「はぁ・・・話せなかったなぁ。」
武藤はクリスと話す事が出来ず、がっくりと肩を落としながら寮へと向かっていた。
「どうしたんだよ武藤!」
「そうだよ?どうしたの?」
そんな武藤に倉持・川上が心配そうに近付いてきてそう言ってきた。
「ここじゃちょっと言えないから後で言うわ。」
「え?うん・・・」
「分かった。」
武藤がそう言うと2人も納得してくれて、夕食後の自主トレで話すことにした。
夕食後 青道高校グラウンド
「はぁ!?」
クリスが肩を痛めているんじゃないかという俺の話を聞き、素振りをしていた倉持が驚きのあまりバットを振るのをやめて声を張り上げた。
「倉持!静かに!」
「あ、ああ・・・すまん。」
川上に注意され、倉持は武藤に謝った。武藤はといえばシャドーピッチングを黙々としていた。
「・・・けどその根拠って何処から出てくるの?クリスさんが肩を痛めているんじゃないかというのは。」
川上が武藤にそう聞いてきた。倉持も聞きたかったらしくうんうんと頷いた。
「それは・・・」
そう言い、武藤は話し始めようとしたが再び誰かが武藤に声をかけてきて話がまた途切れた。
・・・しかし二度目のそれは武藤にとっては好都合だったのかもしれない。
「武藤・・・」
武藤に声をかけてきたのは同じく素振りをしようとしていたクリスだった。
「クリスさん。」
武藤がそう言うと倉持と川上は驚いてクリスの方を見た。すると川上が俺に小さい声で「今言ったほうが・・・」と囁く。
武藤もそのつもりだった。
「クリスさん。今朝の言いたかったことをここで言ってもいいでしょうか?」
「ああ、かまわんが・・・何だ?」
クリスから確認が取れたので武藤はふぅと一呼吸置いて、話し始めた。
「クリスさん。あなた肩痛めていませんか?」
「!!??・・・何故そう思う。」
武藤がそう言うと、クリスは一瞬動揺した後、武藤に対してそう言った。
(やはり・・・あの反応だと。)
クリスの動揺した表情を見て武藤は予感が当たったと確信し、表情が曇る。
「スローイング時に少し従来の位置からひじが下がっていたからです。」
「ひじの位置が?」
「・・・・」
倉持がそう言って来た。クリスは話を聞くだけで黙っていた。
「うん。けどクリスさんもしっかりした投げ方にしようと、普通の投げ方になったりしていたけどその時に送球が逸れたりしていたし、後は投げる際は若干顔をしかめてたから・・・もしかしたらって。」
武藤は倉持に対してそう言った。もしそれが全て本当だとしたら武藤は言いたいことがあった。
「・・・武藤が言ったことって本当なんですかクリスさん?」
川上がクリスさんに言った。武藤はクリスのほうを見た。
「・・・・」
クリスは何も言わない。そのまま無言の状況が続いた。
「・・・・どっちなんですか?」
この空気に耐えられなくなり、武藤は語尾を強くしてクリスに対して言った。
「・・・・そうだ。」
「・・・・・っ!!」
クリスがそう言った。それを聞いた瞬間武藤はクリスに飛び掛りそうになったが、寸前のところで抑えた。
「・・・・いつ位からなんですか?」
武藤は熱くなる気持ちを静めるように、静かにクリスに言った。
「・・・・去年の冬頃からだ。」
クリスがそう言った。なら今日まで半年程クリスは痛みに耐えながら練習をしていたと言うことになる。
「どうして先生に言わなかったんですか?」
川上が思っていたことをクリスに聞いた。早くに先生に言えばこんな事にはならなかったのじゃないかと誰もが思っていたことだった。
「・・・・チームに迷惑を「チームに迷惑をかけたくないからって黙っている方がよっぽど迷惑だよ!!!」武藤・・・・」
クリスが言おうとしたことが分かったので耐えられなくなった武藤はついにクリスに怒鳴った。
「その気持ち分かります・・・・俺だって・・・中学2年のときもそうでしたから。」
「武藤・・・」
武藤は絞るように声を出していった。クリスがそれを見てそう呟いた。
クリスの気持ちは武藤には凄く分かった。
・・・武藤もあの時同じ気持ちだったからだ。実は全中予選前から肩に痛みを持っていたが、武藤は皆には黙って肩の痛みを我慢しながら中2の全中準決勝・決勝戦に登板し、肩を壊した・・・・
だからこそクリスさんに武藤と同じ思いをしてほしくなかった。
「だがら・・・・グリスさんには・・・うっ・・・」
「・・・・」
武藤は涙を抑えることが出来ずに、涙がこぼれてきてしまった。
クリスはずっと黙っていたが、暫くして武藤のほうに向かって来た。武藤の前に来るとクリスは武藤の両肩に手を載せた。
「ありがとう武藤。」
「クリスさん・・・」
クリスの一言に泣いていて声が出せない武藤の代わりに川上がそう言ってくれた。
「俺は御幸からお前が肩を壊して右投げに転向して一生懸命頑張っていることを聞いた。そのときにもし肩のことを言われるのなら武藤から言われるのだったら良いというおかしなことをずっと考えていた。」
「けどやはりお前に言われて本当に良かった。」
「クリスさん・・・」
クリスの言った事に武藤は泣きながらクリスを見る。クリスの表情は晴れやかな笑顔をしていた。
「・・・」
武藤にそう言ったクリスは素振りをせずにどこかに行こうとする。
「何処に行こうとしているんですか?」
「そうっす。何処に?」
川上がそう聞いた。倉持も同じ事を思ったのか言った。
「監督に言いに行こうと思う。・・・武藤。」
「はい。」
漸く泣き止みまともな事が言えるようになった武藤はそう言った。
「これからお前はもっと上手くなれる。しっかりと頑張れよ。」
「はい!・・・クリスさん!」
「なんだ?」
武藤も言いたいことがあり、クリスの名前を呼び止めた。
「しっかりと治してまたやりましょう!」
「・・・・あぁ。約束だ。」
武藤の問いにクリスはそう答えその場を後にした。
「・・・頑張らなければ。クリスさんのためにも・・・・」
「だな。」
「あぁ。」
クリスさんがいなくなった後、武藤たちは新たな決意を胸に刻んだ。