あれもこれもと色々な作品に手を出していた関係で、2話目が大分空いてしまい、申し訳ございません。
また、話も大して進まない点も先に謝罪しておきます。
今回はこの作品の背景や設定など「説明回」になっております。
今後も細々と執筆してまいりますので、引き続き、私の妄想ごとにお付き合いいただければ幸いです。
【修正】
'25年 9/6 タイトル修正/誤字脱字修正
’25年10/25 誤字修正
はてさて。どうしたものかと改めてこの状況を考える。俺は朝のSHRを複数回以上サボったことを理由にここに連れてこられた。そして、中川菜々と共にこの部のお手伝いと言う形で「仮入部」という形で期限付き……
「なぁ。中川……1つ聞いてもいいか」
「ええ。何でしょうか」
「ここってそもそも何部なんだ? 生憎と何も説明を受けてないんだが……」
そう尋ねると、中川は呆れた表情を浮かべてため息をつく。
……なんかごめんね。
「それは災難ですね。では、詳しく説明を差し上げます。どうぞ、かけてください」
「お……おぅ」
言われるがまま、椅子に腰を掛けて改めて教室内を観察すると、明らかに異質なことが分かる。一角には2次元ものが、もう一角には3次元のポスターやらタペストリーが綺麗に飾られている。
……なんか主張が強いなぁ。
とはいえ、少し考えれば誰のものかは簡単に思いつく。先ほどの説明から中川もまたヘルプでここを手伝っているということは、別の人物の物と考えていいのだろう。
とはいえ、これは俺の偏見ではある。もし、これが中川の趣味ならばトロピカるなプリキュアのペンライトを振り回す姿が想像できない。
なにせ、目の前にいる中川菜々は生徒会に所属し、役職は副会長。学業は常にトップ3位圏内にいる。つーかコイツが俺の国語1位を絶賛阻止してくれてるわけで……。
それに彼女は容姿も良く、間違いなく美少女と言っていい。髪型は長い髪を編み込んでいて、赤色の下縁眼鏡をかけている。確かに身長は低く、童顔なのだが、出ているところは出ているんだよな……。そのブレザーのサイズ、あってないよね?
いかん。万乳引力に引き寄せられてしまった。ニュートンさんは偉大なり……
頭を掻きながら数少ない彼女の情報を頭の中で整理していると、彼女はゆっくりと歩いては俺に近い位置にある椅子を引く。
「では、比企谷くん。ひとまず、この同好会の説明をします」
「お……おう」
中川は眼鏡をクイっと上げ、冷静な表情を見せると風格のある雰囲気が漂う。
……コイツはただものじゃないな。まぁ生徒会副会長も伊達ではないと言ったところか。
「さて。同じクラスではありますが、改めて自己紹介から始めたいと思います。私は中川菜々です。生徒会所属で役職は副会長です。また、貴方が仮入部したのは『スクールアイドル同好会』です。同好会という名から分かると思いますが、部員数が少ないため、生徒会が臨時で手伝いをしています」
雰囲気そのままに『出来る上司』の装いで、こちらが疑問に思う内容全てを端的に説明すると、資料をそっと差し出す。
「ほーん……。アイドル同好会ね。そんな同好会あったんだな」
「ええ。あまり知られてはいないと思います。部員もほとんどが3年生でしたので、卒業と共に残っていた部員も退部されてしまい、所属する部員も1名ほどです。ですので、今は同好会となっています」
なるほどね。どうやら、同好会なのは部員数の問題か。まぁ、どこにでもありそうな問題だな。
……なんだろうか。妙に違和感を覚える。それこそ、歯に何か詰まった感じの小さなものを。
「ところで、その部員の方は今日いないのか」
「今日はボイトレのため、放課後は音楽教室に行かれています」
「あー。なるほど。個人レッスンを受けるから、プロの先生の所に……ってことね」
「ええ。その通りです。察しが早くて助かります。さて、色々と混乱もされているでしょうから1から説明します。よろしいですか」
「あぁ……頼むわ」
中川は準備していたホワイトボードにマーカーで概要をスラスラを書いては、咳ばらいを1つする。
「さて、比企谷くん。貴方はそもそもスクールアイドルをどの程度、ご存知でしょうか」
「……名前だけなら。ラブライブ。だっけか」
「はい。ラブライブです」
えーと、確か、あれだよな。毎年夏にお台場で開催されるフェスがあって、それに出られるように各々がイベントをやるんだよな。愛する妹の小町が夏になるとなんか騒ぐので覚えたわ。グッジョブ。マイラブリーリトルシスター
「ラブライブというのは、毎年8月に行われるスクールアイドルの甲子園みたいなものです。エントリーはどの学校でも可能なのですが、各地方予選を勝ち上がったグループだけが出場できます。千葉地区は北と南で分かれています。その後、南北の代表が千葉代表をかけて競い、先ほどラブライブ本戦に出場できる1組を選抜します」
中川は説明をしながら、重要事項をホワイトボードにもまとめていく。
コイツ、説明が上手いな。それにホワイトボードに書かれている板書内容も実に分かりやすい。
「なかなか険しい戦いなんだな」
「ええ。出場校も多いですし、それよりも準備が大変になります。最も準備が大変なのは披露する楽曲です。予選で2曲。ラブライブで1曲。計3曲は準備する必要があります。曲も審査対象になりますし、衣装も曲ごとに準備が必要です。また、当然ですが、曲を披露する場はラブライブだけではありません。地域ごとに行われるフェスなどもありますので、そこへ出場するために必要な書類の作成。自作の楽曲ではなく既存の曲を使う場合は使用申請書。当然、会場で楽曲を披露する際に必要な機材も申請しなければなりません。演出面も色々と打ち合わせがありますからね」
「なんか聞くだけで大変そうだな……。つーか、高校生ができる範疇を越えていないか?」
今聞いただけでも、曲作りに衣装作り、書類申請。当日の演出……。これを1人でやれと言うのは無理あるわ。そりゃ、人手が欲しいわな。
「仰る通りです。そのため、救済措置があります。楽曲に関しては、各地域に運営などを企画する会社が入っていますので、その会社に申請すれば、手伝ってもらうことも可能です。他にも、衣装やPVを撮影する場所など。我々は必要な申請さえ行えば、簡単に『アイドル』になれるわけです」
「なるほどね……」
確かに書類審査だけでお手軽にアイドルになれるのか。そうなると少々疑問が残る。
「で、簡単になれるそのアイドルってやつには何やら裏があるんだろ?」
俺の問いかけに、中川は少しだけ苦笑いを浮かべる。
「裏というわけではありません。フェスなどでは提供された楽曲や衣装で出場することがあります。それこそ他校とのユニットライブなども実際には行われています。しかし、提供された楽曲ではオリジナル性がないため、ラブライブの出場はできない規定となっています。また、申請をしても許可が下りるかどうかは別問題です。許可が下りるには『社会貢献ができているか』など様々な項目があります。加えて、アイドルに求められるには『知名度』すなわち『人気』です。人気がある学校のスクールアイドルなどは申請が割と簡単に通るそうです。なので、その人気を獲得するために、自分たちでイベントを企画することやSNSで色々と発進することも必要です。また、県内で行われるフェスに参加する方法もあります。我が総武高校も、次の4月末に行われるフェスとGWで行われるフェスには既に参加することが決まっています。ただ、その先は未定です」
なるほど。確かにこりゃ部活だわ。自分たちで考えて企画し、実行し、ダメなら修正して……。うん。絶対にやりたくないわ。
「というわけで、ひとまずは4月末のフェスに向けて準備することになります。既に書類のほとんどは3月中に申請を終わらせています。ここからしなくてはいけないことはGWに向けてこちらの書類を仕上げる必要があります。これを比企谷くんにお願いしたいと思います。」
そういうと、中川はホワイトボードを反転させる。すると、そこには目を覆いたくなるほどの文字が書かれている。スケジュールは1日を午前・午後に分かれてやることが書かれている。SNS更新やら、イベントの告知やら。土日は衣装合わせに曲の振り入れ。……って多いな。何なの?このスケジュール。しかし、よく考えると、裏方のやる事は少ない。どちらかと当の本人たちの方が凄く大変である。
そして、これで先ほどの疑問が解消された。ここまでタイトなスケジュールをこなさないとアイドルにはなれない。つまるところ、部員が少ないのは、そこまで本気でやる気はない。他の高校ならいざ知らず、ここは総武高校だ。大学進学を第一に考えている人間が多い。となれば、高2ぐらいから予備校に通う人間も多く、勉強量もそれなり増えるため、そちらに時間を割かなくてはいけない。その中で、あのスケジュールをこなすには時間的に無理がある。
「説明は以上になります。何かご質問はありますか」
「いや。今のところは。まぁ、実際に取り組んでみる中で出てくるとは思うが」
「そうだと思います。その際は直ぐにご連絡ください」
「あいよ」
説明が終わったところで、中川は一礼をして再び眼鏡の位置を修正する。
……秘書認定1級も持ってそうだな。コイツ。
「では、改めて。比企谷くん。ようこそ。スクールアイドル同好会へ。GWまでひとまず宜しくお願いします」
説明を終えた中川が再び頭を下げる。なんだろう。「ご清聴ありがとうございました」という幻聴が聞こえてくるのは。しかしまぁ、1回の説明でだいたい理解できたわ。さすがは生徒会副会長様といったところか。
この業務を1人でこなすには無理がある。だから、ここの部員も生徒会に泣きついたってわけか。そこで、自主的かどうかは分からないが中川が手伝いに入り、部員と2人でやっていたのを見かねた平塚先生は強引だが俺に手伝わせようとしたわけか。今の説明を聞いたら誰でもいいから手伝わせたい理由は納得だ。
想像するに申請する書類は権利関係で調べるなどの手間がかかるのだろう。使用する機材も曲に合わせるだけではなく、会場によって大きさとかも関わってくるのだろう。となれば、会場へ下見しなければいけないだろう。より良くするにはそれなりに手間暇がかかるわけか。
……うん。これだけ聞いて「やってやるぜ」と前のめりになる人間の気が知れん。こんな膨大な仕事量なら、どう見たって私生活を犠牲にしなきゃやってられん。
「まぁ……なんだ。割り当てられた仕事は責任もってこなすつもりだ。できるだけ、一人でできるように頑張ることを前向きに検討する」
「はい。承知しました。お互い頑張りましょう」
平塚先生に言われた以上、逃げ道はない。それに、もう既に説明を聞いた以上、引き下がるのは気が引ける。それこそここで断ったら「女子に仕事を押し付けた」なんて言われる。恐らく中川の事だから言いふらすことはなとは思うが。
はぁ……。俺の平凡で平和な高校生活も終わるのか。