王様戦隊キングオージャー × ブルーアーカイブ 作:ガッチャ!ヘリオスキング
そこは、『カイザーPMC』……つまり、あのカイザーコーポレーションの所有地だった。
皆は施設を防衛する兵士たちと戦うが、多勢に無勢、包囲されてしまう。
そして、しばらくすると自身をカイザーコーポレーションの理事と称する男が現れる。
その男の手によって、アビドスが抱える借金の利子が大幅に引き上げられてしまう。
理事に対して、牙を向けようとするホシノ……
だがその時、1台のヘリが現れ、そこから1人の男が出てきた…… とさ。
「……おやおや、何やら修羅場の真っ最中に来てしまったようですが………。」
その声の元に、その場の皆が目を向ける。
「カグラギ!来てくれたのか!」
「はて、なんのことでしょうか?」
僕の問いに首を傾げるが、まあこの程度ならいつも通りだ。
「先生、あいつは知り合い?」
「うん、今朝僕が言ってた『カイザーの動向を調べてもらった知り合い』だよ。
それにしても、わざわざ潜入までするなんて……。」
「じゃあ、味方で良いってわけ?」
「……ふーん。私にそうは見えないけど。」
「それよりも、ギラ殿。あなたに伝えたい事がありましてね。それは……」
「『演技などではなく、私は本心でカイザーに寝返りました』か?」
「……その通りでございます。」
「!!!どうして!?」
理事の言葉に、カグラギは頷く。
ホシノはやっぱり、といった顔で眺めているが、他の皆は驚愕していた。
……いや、僕もだけど。
「私はカイザーコーポレーション……いえこの御方、理事殿こそが、魑魅魍魎と称するに相応しい程の魔境である、キヴォトスを統治するべき御方であると悟ったのでございます。
貴方様が望むなら、この命、何時でもお捧げする覚悟でございまして!」
「な………っ。」
「クク、いい気味だ、シャーレの先生よ。信頼していた仲間が、こうも簡単に寝返るとは! さすがの貴様でも、驚きが隠せないようだな!」
「く…………。」
「さて、貴様はどうする。先生…いや、ギラ・ハスティーだったか。ここで私たちを通せば、今死に瀕しているアビドスの今後を保証してやるぞ?」
「……ふざけるな!そんな事、出来る訳無いだろ! アビドスには今、皆が未来を信じて戦っているんだ、それを……奪うなんて絶対にさせない!」
「……そうか。ならば──」
理事はそう言うと、謎の端末を取り出す。
その端末を操作しながら、
「まだ試作段階だが……奴ら程度なら、これで十分だろう。」
そう、不気味な言葉を口にする。
……と、次の瞬間、どこかから赤い飛行物体が、凄まじいスピードで飛来してくる。
その赤い飛行物体は、僕にとっては馴染み深く、親友、なんなら相棒と称した方が相応しい……ゴッドクワガタのクワゴンだった。
「………クワゴンッ!?」
そのクワゴンは、身体中に拘束具をつけられ、眼には光が無い。
それだけじゃない。いつもなら声が聞こえるのに、そんな気配もなく、もはや奴らの傀儡だ。
「あのクワガタ、ギラ先生が変身した時に出てくるやつ……?なんであいつがここに──」
「こいつの名はゴッドクワガタとか言ったな、カグラギ?
フハハ!こいつはもう貴様の仲間でも何でもない!我々の手の中だ!」
「さぁ、ギラ殿。あなたにこれが倒せますか!
あなたにとっては大切な、それはもう大切な友人!
しかし、彼を倒さない限りアビドスの皆さんは、その御友人にやられてしまう事でしょう!」
「……ッ!」
最悪のトロッコ問題。これのせいで、皆を……アビドスを救える方法は1つ。
……クワゴンを倒すこと。ただ、それだけ。
でも、それはつまり、クワゴンを殺すということ。
大切な仲間を……友達を、殺すということだ。
「ギラ殿!あなたが今ここでやらなければ、この学校は……いえ、キヴォトスは憎きカイザーに支配されてしまうのですよ、それでも良いのですか!」
「我々を倒すなど、無謀としか言えないような思想を掲げるならば、その程度の迷いは捨てれるはずだろう。さぁ、選べ!」
「ギラ殿、私はあなたの選択を尊重致しますよ。」
「……ッ。」
……僕は、皆を見る。
皆は、僕の目を見て頷く。
……そうだ、何を迷う必要があるんだ。
クワゴンが……大切な仲間が、今こうして苦しんでいる。
なら……僕がやるべき事は1つだ。
「……ああ、やってやるさ。」
そう、意を決して皆の前へ出ると、オージャカリバーを腰から抜刀する。
「ほう、覚悟を決めたか。ならば、こちらも容赦はせん!」
理事の指示を受け、僕に向かってくるクワゴン。
それに対し、僕は……
「僕は……俺様は邪悪の王、ギラ!真の邪悪の王とは、己の大切な者にも容赦はしない! 大切な友だからとて……自ら手をかける覚悟は決めた!
だから………貴様を、クワゴンを止める!」
僕は熱い想いの丈を言葉にし、クワゴンの前に真っ向から立つ。
そして、オージャカリバーを構え、カリバーのレバーを倒し……
「王鎧武装ッ!」
そう、叫んでクワガタオージャーに変身する。
You are the KING! You are the,you are the KING!
クワガタオージャー!
……しかしその時、僕の身体の中から、琥珀色の眩い光が溢れだす。
それはまるで……僕が、この姿に初めて変身した時のように。
「何だッ!?この光はっ!」
更には、クワゴンもそれに共鳴するかのように、光を発する。
そして……
「何ィ!?きっ貴様、敵は私では無いッ!何故私を攻撃してくるッ!」
さっきまでの大物感漂う振る舞いは何処へやら、理事は情けなく声を上げる。
それもそのはず、クワゴンが、僕ではなく……理事を攻撃するように動いているのだ。
そうして暴れている内に、クワゴンに付けられていた拘束具は外れ、目にも光を取り戻し、その拘束から抜け出した。
解放されたことによって、苦しそうだったさっきとは裏腹に、クワゴンは元気よく僕のいる所へ飛んでくる。
「ッ先生!あいつがこっち来てるよ!」
「大丈夫、クワゴンは良い奴だから!」
「まあ、ギラ先生が言うなら信頼してもいいよね、皆!?」
「はいっ!」「ん。」『そうですね!』
「……うーん、もうそれで良いか!」
セリカの一言に、皆も同意する。
「ぐ……ここは撤退だ、逃げるぞ!アビドス共の相手は、カグラギにでも任せればいいだろう!」
そう言い残し、部下と共にヘリに飛び乗って撤退しようとする理事。
「おうおう、厄介事を押し付けられたようですな……。」
「なっ……逃げる気!?待ちなさいよっ!」
僕らはヘリを追いかけるが、
「おっと、頼まれたからにはここを通す訳には行きません。それとギラ殿、あなたに1つ良い話を教えましょう。」
とカグラギが行く手を阻む。良い話?一体なんなんだろう……。
「私は、完全にカイザーへ魂を売ったわけではありません。」
「え?でもさっき──」
「『カイザーに寝返った』と申し上げましたが……それは嘘なのですよ。
確かに今はギラ殿の敵ではありますが、寝返ったというより、手を組んでいるといった方が近いです。」
手を組んでいるって……どういう事だ?
カイザーと僕ら以外にも第3勢力がいて、そこと組んでいるって事なのか?
「と、言うわけで。そのシュゴッドは、私たちの元に返してもらいますよ。」
そう言うと、カグラギは指をパチン!と鳴らす。
すると、空中から巨大なアームのようなものが伸び……クワゴンを捕獲する。
「クワゴン!」
僕は捕獲されまいと激しく抵抗するクワゴンに掴まり、ヘリから伸びたアームを破壊して引き剥がそうとする。
シロコたちの援護射撃でのアシストを受けながら。
しかし、その激しい動きをしているものを掴みながらそんな器用な事も出来ず、それはシロコちも同じ。引き剥がせない……
「さて、改めて撤退致しますか。」
「カグラギ!」
僕はクワゴンにしがみつきながら、カグラギの方を見る。
「ギラ殿、今回はこれぐらいで撤退しますが、次会う時は戦場でしょうね……それでは。」
彼はそう言い残すと、ヘリに乗り込み、そのまま飛び去ってしまった。
そして、僕はその勢いで、ヘリから振り落とされる。
「ぐぅッ!!!」
「先生っ!」
「大丈夫ですか!?」
「だ…大じょ………」
痛みを堪えて立ち上がろうとするけど、派手に落っこちたダメージが大きくて、起き上がることが出来ない。
「先生……大丈夫?」
シロコが心配して僕に駆け寄り、僕を助け起こそうとしてくれる。
「ちょっと無理しちゃったみたいだね……。!っ!?」
「無理って……ちょ、ギラ先生!?」
突如、体が痺れるような感覚に襲われ、全身の力が入らなくなる。
そして、意識もだんだん遠くなっていく……。
ああ、まだ起きてないとダメなのに……
そう思った頃にはもう遅くて……僕の意識は途切れてしまった。
─────
目覚めた時には、僕は保健室のベッドに寝かされていた。
(う……。)
頭が痛い……。それに身体もだるい、確か僕、ヘリから落ちた気が……。
「──あの時ホシノ先輩が止めてくれたのに、自ら進んで犯罪者になるの!?」
(…………!?)
「ちっ、違……そういう意味じゃなくて……私は……ッ!」
(な、何があったんだ…!?もしかしなくても、目覚めるタイミングが悪すぎる……。)
あまりにも気まずい、悪すぎる空気の中、僕は目覚めてしまったようだ。
詳しくはわからない、けどカイザーに対抗する為の話をしていたんだろう。
僕がそう考えていると、
「……って、あっ!先生が起きた!」
そう、セリカからの歓迎の言葉が飛んでくる。
「……お、おはよう、みんな。」
「先生、大丈夫ですか?身体の具合とかは……。」
「ああ、うん、大丈夫。どこも痛くないよ。」
心配するみんなを安心させるべく、僕は手足を動かして、それが痛み無く動くことをアピールする。
「僕が寝ている間に、どんな事があったか、教えてくれるかな?無理ならいいけど……」
「…それは…………。」
アヤネはそう、言いづらそうにする。
皆も決して目を合わせようとしない、気まずい雰囲気。
「…もう、みんびピリピリしすぎだよ〜。先生、めっちゃ気まずそうじゃ〜ん。」
そんな中、鶴の一声を上げる者がいた……ホシノだ。
「うーん、まあちょっと言い争い?的なのはしてたけどねぇ。」
「……はい、すいません……。」
彼女の言葉を皮切りに、皆が次々に謝罪の言葉をかけてくる。
「……ごめん、こんな風にしたい訳じゃなかった。」
「ごっ、ごめんねギラ先生……先生が倒れたからって、揉めちゃって……」
「いや、僕もクワゴンを取り戻すことに必死で、周りをちゃんと見てなかったからこんな怪我をしちゃったんだし、セリカ達が謝るような事は何もないよ。」
「そうそう、それに私も先生も分かってるよ、みんなは良い子だってね。」
ホシノが皆を宥めると、安堵の空気が流れる。
「それじゃ、今日はこの辺りでお開きかな。ギラ先生も安静にしなきゃだしね?
さっ、解散解散!1回頭を冷やし直して、また明日、ね?」
「そうだね、とりあえず、みんな一旦帰ろう。」
「うん、先生!」「それでは、お大事に。」「また明日、ですね。」
セリカ、アヤネ、ノノミの順に、そう言って3人は保健室を去る。
「じゃ、またね、先生!」
「………。」
そうホシノが伝えて、無言でシロコもそれについて行って、皆が保健室から出ていった。
「ふぅ………。」
僕は1人になった保健室でそう呟くと、ベッドから出て、スマホを取る。
(この状況、ジェラミーの手を借りるべきかな……?)
そう思って彼に連絡をしようと画面をつけ、近況報告をしようと思い、先程起きた出来事についてまとめた文を送信する。
(『大変だ!さっき、アビドスの砂漠でカイザーと戦ってたらカイザーの偉い人が出てきて、そいつと一緒にカグラギも出てきて、クワゴンまで奴らに奪われた!』…って送ろう。
なんか見辛い気もするけど……伝える事の方が大事だよね。)
『……つまり、カグラギがカイザーに寝返った上、ゴッドクワガタも奴らに操られた、と?
……随分とまあ、立派な行間を読んでみせたものだ……流石は俺だな。』
意味は伝わってたけど、やはり見辛かったらしい。
『で、俺に助けを求めているのか?
別にいいが……今はほぼ俺がシャーレの書類仕事を請け負っているからな。
アビドスでのいざこざがある程度解決してお前さんもシャーレに戻ったその時、俺と共に地獄を見ることになるが……それでも構わないな?』
(……良く考えてみれば最近の僕、ずっとアビドスにいたから、2人に仕事を押し付けてたのか……。)
『あ、いや……やっぱり大丈夫、自分でなんとかするよ、ありがとう。』
僕はそう返信し、スマホの電源を落とす。
そして、再びベッドに入り、眠りにつくことにした……
─────
「ん……。」
僕は目を覚まし、身体を起こす。
窓を見ると、もうかなり暗い。
ベッドから降りて、保健室のドアを開けて廊下に出ると、少し冷たい風が吹き抜け、僕の髪を揺らす。
「もうこんな時間か……。」
と、呟いたその時。
「……あれ、あそこの教室にいるのって……シロコかな?」
僕は、教室の電気がついている事に気づき、その教室に向かう。
「シロコ、こんな時間まで何を──」
「あれっ、シロコちゃんはまだ何かやることがある感じ?」
僕の言葉を遮るように、何処からか来たホシノがシロコに問う。
「おっと、先生も来てたの?そんなに動いて大丈夫〜?まあその調子だと、大丈夫そうだけど。」
「……ホシノ先輩、それにギラ先生も。」
「で、一体何をしてたの〜?」
「……先輩、ちょっといい?」
「うへ〜、おじさんと話したいことが?照れるな〜。」
(話したいこと、か……。)
「ホシノ、僕からも良い?」
この前の事……シロコが彼女のカバンから退部・退会届を発見した事について思い浮かべ、ホシノに聞こうとする。
「うへっ、先生まで?おじさんにもモテ期が来ちゃったか〜。」
「そう言うことじゃなくって……」
「ごめんごめん、 でもさ、今日は色々あって疲れたじゃん?
また明日にしようよ、何を話したいかはもう察したから。」
そうホシノが提案すると、シロコは表情1つ変えずに
「……ん、分かった。」
と承認する。そして、彼女は僕に目線を送り、僕もそれに無言で頷く。
「ん、じゃあまた明日……。」
「……うへ〜、先生やるねぇ?私の可愛いシロコちゃんと、いつの間に言葉を必要とせずとも意思疎通が図れるようになる関係にまで進展してたんだ〜?
いやいや、やっぱり先生は侮れない大人だな〜。
おじさんは流れについていけなくてなんだか寂しいよ。」
「ちょっ……別にそんな関係じゃないからね!?
……それに、ホシノだって分かってるでしょ、 どういう事か。」
「…………。」
今までの空気とは一変、場に沈黙が流れる。
この教室には今僕と、ホシノしかいない。それもあって、その静寂はより強く感じられた。
「……ホシノ、聞いてもいいかな?」
僕はシロコから受け取った、退部・退会届をホシノに差し出し、問いただす。
かなり強引になっちゃったけど、もうホシノには真意を聞くのは今しかない、と思って、僕も覚悟を決める。
「うへ〜、いつの間に……!これ、盗ったのはきっとシロコちゃんだよね?
全くシロコちゃんったら、いくら何でも先輩のかばんを漁るのはダメでしょ〜。
先生、きちんとシロコちゃんを叱っといてよ〜、このままじゃ本物の大悪党になっちゃってもおかしくないって〜。」
「……それはそれ、今はこの退部届について、聞かせてくれないか?」
彼女の言う事は至極真っ当、当然の事。いや、そうだけど……今は四の五の言ってられる状況じゃない。
確かにシロコの行った事は到底許されるような事では無い、けど誰に伝えるでもなく、勝手に居なくなろうとするホシノもホシノだ。
「ごめんね、こんな強引にはしたくなかったんだけど……。
けど、今はホシノから話を聞き出さなきゃいけない。」
「あ、そっかー……………。」
「何度でも言うけど、聞かせてくれる?」
念には念を、僕はしつこくホシノに頼み続ける。
「うへ〜……ここまで言われたら、逃す気もないだろうし……はぁ、仕方ないな〜。」
僕の執拗な頼みに根負けしたのか、彼女はようやく退部届を鞄にしまって、やれやれと言った具合で僕の願いを聞き入れた。
「面と向かって話すのもだし、先生、ちょっとその辺を一緒に歩かない?」
「うん、わかった。」
ホシノにそう誘われて、僕は快諾。彼女と共に廊下に出る。
─────
ホシノの歩くままに、僕も後ろからついていく。
そのまま数分ほど歩いて、砂埃の立ちこめる校舎でホシノは足を止める。
「けほっ、けほっ……うわぁ、ここも砂だらけじゃ〜ん……。
ま、仕方ないんだけどね。掃除をしようにも、そもそも人数に対して建物が多すぎて……。」
「砂嵐が減らない限りは、この砂塵は消えそうにないね。」
「うへ〜、折角、青色の高校生活が過ごせると思ったらそれが全部砂色だなんて、ちょっとやるせないと思わない?」
「でも、そう言いながらもホシノは残ってるあたり、本当にこの学校が好きなんだな。」
「……今までの話の流れで、本当にそう思う?うへ、先生は変わってるなーやっぱ。」
彼女は笑って、それが僕には何かを誤魔化しているようにも見えた。
もちろん、それは僕の勘違いかもしれないけれど。
「そうかな?まあ変わってるなんて、自分で思うようなことでもないからなあ……
傍から見たら、ホシノだって結構変わってる子だと思うよ、僕は。」
「うへ〜……なら、似た者同士だね。」
「……それでも、僕はそれが悪い事とは思わないよ。だって、ホシノにだってそれほどの思い入れに、愛があるんでしょ?」
「んー、まあ思い入れというか、なんというか……この学校は、私にとって大切なところだから。
……あれ、おじさん実はこの学校のことが好き?」
そう、ホシノは少し茶化すように僕に聞く。
それに対して、僕は少し考え込んだ後、こう答えた。
「きっと、そうなんだと思う。僕は何があったのか、知らないけど……。
……それに、シロコやセリカみたいな後輩もいるから、自分のようにアビドスで辛い思いをして、嫌いになって欲しくない。だから、守ろうとしているんだと思うんだ。」
「……お見通しか。流石、先生だねえ。
でもまあ、それが全部って訳でもないケド。」
「?それって一体、どういう……。」
僕はその言葉に違和感を覚えて、そう聞き返そうとした。
しかし、ホシノはそれに被せるようにこう続ける。
「……さて、と。そろそろ本題に入ろっか?」
「え?」
「いや、だから……私がアビドスを辞めるって話だよ〜。
元より、そのつもりだったんでしょ?それならもう隠し通す必要も無いし。」
……そうか、そうだった。僕はこれについて、聞こうとしていんたんだ。
何度もだけど……こんなにもアビドスを愛しているホシノが、なぜ、アビドスを辞めようとしてるのだろうか?
「ま、少し話が逸れちゃったしね。……じゃあ、話すよ。」
そう切り出すと、彼女は語り始めた。
「私は2年前から、変なやつらからの提案を受けてた。」
「それって…!」
「そう、先生の想像通り、カイザーコーポレーションからのね。
提案というか、勧誘というか……アビドスに入学してからずっと、何度も。
……それは、今でも変わってない。つい最近にも、その勧誘はあったし……。」
「……その提案っていうのが、ホシノの身柄を引き渡す、ってこと?」
「大体そんな感じだよ。そして、私はそれを頑なに断り続けていた。」
ホシノは、少し俯きがちに、そう答える。
……でも、その提案がアビドスにどんな影響を……? ……いや、今はそれよりも、だ。
僕はその疑問を一旦置いておいて、話の続きを聞くことにした。
「あいつら、PMCで使える人材を集めてるみたいで。私は能力を買われて、スカウトされた。
それは誰から見たって破格の条件だったよ。でも、当時は私がいなくなったらアビドスが崩壊する、そう思ってたからこそ、ずっと断ってたけど……。」
「……その人は、一体何者?」
「私もあいつの事は知らないけど……黒服、私はそう呼んでる。」
「黒服、か……。」
「何となくゾッとするやつで……キヴォトス広しといえど、ああいうタイプのやつは見た事なかったし……。
怪しいやつだけど、別に問題を起こしたりはしなかった……
不思議なやつだよ。あのカイザーの理事ですら、黒服の事は恐れているようだった。」
「じゃあ、この退部届は……。」
「……うへ。まあ、1ミリも悩んでなかったって言ったら嘘だし。ちょっとした気の迷いってやつだよ。」
そう言いながら、ホシノは退部届を手に取る。
そして………
「……じゃあ、これはもういらないね。捨てちゃおっか。」
そう言って、己の手に握られた退部届をビリビリと破り捨てるホシノ。
彼女の顔は、何処か吹っ切れたような様子だった。
その表情の暗さとは裏腹に……だ。
「うへ〜、スッキリした。」
清々しい顔で、そうホシノは呟く。
「余計な誤解を招いてごめんね。ただ、こんな話をみんなにしたところで、心配させるだけで良い事も何も無さそうだったから。
でもまあ、可愛い後輩たちにいつまでも隠し事をしたままっていうのも良くないし……明日、みんなにちゃんと話すよ。
聞かせたところで困らせちゃうだけだろうけど、隠し事なんて無いに越したことはないでしょ。」
「良かったよ、考え直してくれたみたいで……。」
ホシノはこれからの事を、教えてくれる。
でも、これでホシノがアビドスからいなくなる、なんて事は無くなったんだ。
僕は安堵し、胸を撫で下ろした。
「まあ実際のところ、今はあの提案を受ける以外、他の方法は思いついてないんだけどね……。」
「……絶対に、そうはさせない。きっと何か、方法があるはずだ。」
僕は彼女の言葉に対して、即座にそう返す。
絶対に、ホシノはアビドスを去らせはしない、僕がいる限りは、絶対に。
「……そうだね、奇跡でも起きれば良いんだけど……
……うーん、奇跡かぁ。
……さーてと、この話はここでおしまい。じゃあ、また明日ね、先生。
さよなら。」
「えっ?」
ホシノは話を切り上げて、僕が何か言う間も無く、突き放すように去って行ってしまった。
「一体、どうしたんだろう……?」
僕は訳も分からぬまま、その場で呆然と立ち尽くす。
……でも、確かなのは。
「ホシノ!」
「な、なに……?」
「絶対安心できるなんて保証は無い、けど!僕が……この邪悪の王たる俺様が!
この危機を何とかして、皆を守り抜く!例え、どんな手段を尽くしてでもだ!
それが、先生の役目というものだからな!」
「………うへへ、元気づけてくれるの?先生。私、そんなに元気無さそうだったかな?」
「……さあね。でも、僕にはそう見えたんだよ。あんな話を聞いたら、余計にね。
だからこそ、ホシノ。君にどんな事があろうと、最後は必ず皆と一緒に笑い合っていて欲しいんだ。」
「……そっかぁ。じゃあ、私も先生を信じることにするよ。
……ありがとうね、先生。」
ホシノは僕に感謝を言って、背を向け僕に別れも告げずに去っていった。
……でも、別れを告げなければ明日、そのまた明日、いつかの未来にまた逢えるかもしれない。
そう信じて、僕のこの胸が不安だけになる事は決してなかった。
─────
『アビドス対策委員会のみんなへ
まずは、こうやって手紙でお別れの挨拶をする事になったこと、許して欲しい。
おじさんにはこういう、古いやり方が性にあっててさ。
皆には、ずっと話してなかった事があって。
実は私、昔からずっとスカウトを受けてたんだ。カイザーPMCの傭兵として働く、その代わりにアビドスが背負っている借金の大半を肩代わりする……そういう話でね。
……うへ、中々良い条件だと思わない?おじさんこう見えて、実は結構能力を買われててさ~。
借金の事は、私がどうにかする。すぐに全部を解決は出来ないけど、まずはこれでそれなりに負担が減ると思う。
ブラックマーケットでは急に生意気なことを言っちゃったけど、あの言葉を私が守れなくてごめんね。でも、これで対策委員会も少しは楽になるはず。
アビドス高校からも、キヴォトスからも離れる事になったけど、私の事は気にしないで。勝手な事をしてごめんね。
でもこれは全部、私が責任を取るべき事。私は、アビドス最後の生徒会だから。
だから、ここでお別れ。じゃあね。』
─────
「………っ。」
翌日、いつもの教室、いつもの朝。
……でも、そこにホシノの姿はなかった。
唯一残されたのは、そう書かれた置き手紙のみ。
そして……その手紙には続きがあった。
僕はその続きの記された、2枚目の紙を読み上げる。
─────
[side:ホシノ]
……シロコちゃんたち後輩に、先生の熱心な励ましの言葉。それすらも振り切って、私は今、ここにいる。
皆を騙した癖に、文句すら言わせてあげられないなんて。
本当に私は、ずるい奴だ。
「……これで良い?」
私の前に立つ、長身痩躯の大人……私は黒服と呼んでいる、そいつから渡された書類にサインをし、返却。奴はそれを受け取り、内容を確かめる。
「……はい、これで正式に、アビドス高校が背負っている借金の大半は、こちらで負担することにしましょう。クックック……」
気持ち悪い声色で、黒服はそう告げる。
これでもう、アビドスは借金に悩ませられる事も無い……なのに、心が痛い。まるで針で穴を開けられていくような、そんな感覚だ。
こんな痛みは……もう、慣れたはずなのにな……。
「おや、あなたは確か……アビドス高校の、小鳥遊ホシノさんでしたか。
前に、ギラ殿らと、アビドス砂漠で行動していた……。」
「……あんたは。」
カグラギ・ディボウスキ。なんで……なんでこいつがここにいるんだ。
思えば、こいつは先生を騙した張本人。どの面下げて、私の元へやって来た?
「おお……怖い怖い。流石『暁のホルス』と呼ばれていただけありますねぇ。
しかし、ここは熱砂のアビドス、それ程までに熱くなり過ぎると、倒れてしまいま──」
「黙れッ!」
私は咄嗟に、カグラギへと拳を振り下ろすが、ギリギリの所で踏みとどまる。
こいつは腐っても連邦生徒会の人間。私がぶっ飛ばしたら、大問題になってしまう。悔しいけど……こいつの言う通り、少し頭を冷やさなきゃダメだ。
「ククク、超えては行けない一線を越えてしまったようですねぇ。」
黒服がそう呟く。……そうだ、用があるのはこっちなんだった。
「では、私に着いてきてください。話はそれからです。クックック……。」
黒服は、そう言って私に背を向けて歩き出す。
……私はその背中を追いながら、アビドスの皆の事を思い浮かべた。
……ああ、本当に、本当にごめんね。みんな。
でも、私はもう戻れない。
「うへ……おじさん、ま〜た間違えちゃったかな……。」
そう呟いた私の頬を、一筋の水滴が流れる。……あれぇ、珍しいな。こんなとこで雨なんてさ……。
7月中?いや約1ヶ月かかりましたが?先月の俺は何を考えていたんだい?ええ?
その間、君は何をしていた?char○nゲーとフォ○ナしかやってねえじゃねえか!ええ!?
月並みの言葉ですら謝罪を伝えられないのがこのヘリオスキングという男の真骨頂。
まだギリギリ1ヶ月経ってないんでエタってはいません、多分()
もはや何もあとがきになっていないあとがきを経て、次回、王様戦隊×ブルアカ!
カイザーPMCによるアビドス自治区の制圧作戦が、ホシノを失った対策委員会を襲う。
カイザーと対峙する対策委員たちだが、そこに現れた理事に、『生徒会役員の居ないアビドスに存在価値はない』と告げられ、傷心状態の対策委員たち。
だが、そこに………
「全く……大人しく聞いていれば、何を泣き言ばかり言っているのかしら……。」
「ああ、そうだな……それに、アビドスはお前さんが救うんじゃあなかったのか?」
「「ギラ・ハスティー先生。」」
アビドス編 第9話(第12話)「アウトロー&スパイダー」