嘘の匂い。金の匂い。   作:レルクス

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第12話 東ブレ顔合わせ当日

 B小町がJIFに出てから四か月。

 

 三人は何度か小さいライブを開いたり、配信業もMEMの影響で順調。

 

 何をしているのかと聞かれても、『ぴえヨンブートダンスを踊りました』という必要はない。

 

 誰に言っても恥ずかしくない『アイドル活動』を順調に続けている。

 

「これでこのクラスに居ても浮かない! 私も一端の芸能人て言って良いよね!」

 

 昼休み。

 昼食の席に座るルビー、みなみ、フリルの三人。

 

 そんな中、ルビーは汗を流しながらも確認している。

 

「まだそんな事、気にしとったん?」

「そりゃそうだよ! 皆が芸能活動の話するたび……なんか疎外感あって話に乗りづらくて!」

「私からすると同業者の方が気まずいまであるけどね」

「あーちょっとわかるわぁ」

「そうなの!?」

 

 二人の意見に驚愕するルビー。

 

 芸能人という以上、『継続して何かをしている』という実績が必要だ。

 

 なんせ、『最近何やった?』というのはド定番の質問なのだから。

 

 ……もちろん、この学校の『芸能科』は、『芸能事務所』への所属が入学条件のため、表では活動しているように見えていなくとも、別に問題はない。

 

 何かの番組で、撮影がクランクアップした後に放映。その現場で撮影が最後の一人だった。みたいな『よくわからない事情が絡み合った状態』でもない限り、『何かしら表に実績が出る』のである。

 

 ネット社会なので、だれがどの作品に出たのか。どんなステージに立ったのかは全部出てくる。

 

 そういうところに載せる『実績』を手に入れてホッとしているルビーだが……みなみとフリルはそういう段階はもう昔に越している。

 

「せやかてあの仕事したとかこの仕事がどうとか、こっちは愚痴のつもりでも同業から見たら自慢に聞こえたりするんよ~」

「うんうん。昨日、俳優の堂山君からDMで食事に誘われたとか軽率に話したい」

「それは自慢やろ」

「バレた?」

「フリルちゃんの話は次元が違う……」

 

 三人の中では、ルビーがアイドル、フリルはマルチタレント、みなみはグラビアモデルであり、差異はある。

 

 ただ、本当に同業者と会うとなれば、それ相応のマウントの取り合いになるだろう。

 それが人間だ。仕方がない。

 

「で……行くの?」

「わかんない。あの人遊んでるって話そこかしこで聞くし」

「あー。聞いたことあるわ。朝ドラ出てたNANAMI(ナナミ)も堂山くんからDM来たって」

「やってんなぁ」

 

 こうしてチャラチャラした男の話は女の中で広まるのである。

 

「ただ……」

「ただ?」

 

 フリルが何かを思い出したかのように言い始める。

 

「一般科の月影真刃(つきかげしんは)君。彼の周囲が関わる仕事は、他の現場と比べて異質」

「異質?」

 

 月影真刃。

 

 現状、陽東高校の一般科において、星野アクアと並んで話題になる二大男子である。

 

 休み時間になればパソコンを開いてメールを確認したり打ち込んだりしている姿をよく目にする……と、ルビーはアクアから聞いている。

 

 もっとも、最近は苺プロの事務所に入り浸ることも珍しくはなく、その時に話す限りでは『飄々としたお調子者』だ。

 

 高校一年生の男子とは思えないほど、体は低く細く、白い。

 顔だちに関しては、モデルをやっているといわれて十人中十人が納得する『美しさ』がある。

 

 飄々としているため時折『崩れる』が、黙って座っていれば、日本人が持つオーラとは別の、幻想的な絵画から飛び出したかのような『神秘的な雰囲気』を持つ。

 

 不知火フリルも圧倒的に『美人』だが、彼女は日本人としてトップレベルというもの。

 

 棲み分けがはっきりしている二人だが、フリル視点でも色々感じるものはあるようで……。

 

「この前、彼の子会社が……」

「子会社?」

「『月影ホールディングス』って会社を作ったみたい。簡単に言うと、他の会社の株を多く持って、事業に口出しできる会社で、配当金とか経営指導料が収入源」

「そんな大きなことをやってたの?」

 

 ルビーは苺プロ事務所に入り浸る真刃を思い返しながら驚いている。

 飄々としていて、B小町のバカ話にも付き合う真刃が、そんな『デカい事』をしている印象がないのだろう。

 

 投資でお金を作っているという点では有馬も同様だが、もはや比べ物にならない。

 

「で、その子会社の一つがスマホ会社で、高性能カメラ搭載の最新バージョンが出たから、CMに出てほしいってオファーがあった」

「へぇ……」

「ただ、私ともう一人、女の子が現場に来るはずだったんだけど、高熱を出して休んじゃって、代わりに彼が来た」

「「えっ」」

「真っ白のワンピースを着てた」

「「ぶふっ!」」

 

 似合うのは間違いないが……。

 

「どうだった?」

「CMがもうそろそろ出ると思うけど、めちゃくちゃ似合ってた」

「い、今、画像ないの?」

「これがスヤスヤ寝てるところ」

「「ごふっ!」」

 

 スマホ画面を見せるフリル。

 そこには、ベンチに寝転がって、気持ちよさそうに寝ている真刃が!

 

 真っ白なミニスカワンピースを着用し、とても無防備な寝顔と仕草……というか、寝ている四肢の配置も男性らしさがまるでない。

 

 本当にガチの美少女がスヤスヤねているようだ。

 

 真っ白な長い髪と、真っ白なスベスベの肌を晒しており、どこか芸術品染みている。

 

 ルビーとみなみは変な急所に入ったような声を漏らした。

 

「な、なんか、本当に女の子っぽいね」

「高い集中力と自己暗示で『急速に仕上げる』みたいで、撮影は数回で終わったけど、その代わりに『抜く』のに時間がかかるから、抜き切らずに寝たら『こうなる』っぽい」

「なんか詳しいね」

「真刃君が入る現場だと珍しくないみたい」

「ていうか、そんなホイホイ来れるの?」

「子会社の一つがバイクを作ってて、それに乗ってきてた。黒のライダースーツがめちゃ似合ってた」

「画像は?」

「これ」

「「おおっ!」」

 

 大型のバイクにまたがって、黒いライダースーツを着ている真刃。

 ヘルメットを脱いで、頭を振って髪を整えて『ふぅ……』となっているところを激写している。

 

 いつ写真を撮られても完璧に映るよう構えているとしか見えないほど、完成された仕草だ。

 

「こ、これ、フリルさんが撮ったの?」

「画像は貰った。『こういう写真を撮る天才』が、大体どの現場にもいるみたい」

「変態ばっかりか……」

「芸能界だとそれくらいは珍しくないんよ~」

 

 嫌な現実だが、真刃はルックスとスタイル……というよりは背筋がすごく綺麗なので、大体何を着ても似合う。

 

 写真に収めておきたいという欲望が芽生えるのは、想像に難くない。

 

 その欲望が現実になるかどうかは、別として。

 

「異質さは伝わった?」

「「それはもう十分に」」

 

 綺麗な子のファッションショーで、女子の会話は盛り上がるのだ。

 

 それもまた現実である。

 

 ★

 

【東京ブレイド】

 

 週刊連載の王道バトル漫画であり、漫画の単行本は5000万部を突破。

 アニメ化や映画化も大好評な、『超人気』の作品である。

 

 主人公『ブレイド』が、持ち主に特別な力を与える『盟刀』を手に、様々なチームと抗争を繰り広げていくのがストーリー。

 

 主要武器が刀。

 主人公は熱血キャラ。

 すべて集めると絶大な力が手に入る明確なストーリーライン。

 それらを巡る『争奪戦』構造。

 細部まで描きこまれた漫画。

 

 要素を箇条書きすれば『王道』という言葉に納得感を与える作品である。

 

「『東ブレ』かぁ……金だけ出して完全に忘れてたよ」

「金銭感覚どうなってんだお前は」

 

 舞台『東京ブレイド』のスタッフ顔合わせ当日。

 

 有馬、アクア、そして真刃の三人は、稽古場に向かっていた。

 

「というかここまであえて聞いてなかったけど……なんで真刃が? ルックスは凄いけど、別に役とかないわよね」

「んー……まあ、不思議な予感がするから。とだけ言っておくよ。普段はそういう事情では現場に行かないけど、今回は顔見知りや一緒に仕事した人も多いからさ」

「一緒に仕事?」

「こういう外見だから、そう言うのも時々ある」

「へぇ、役者はや……いや、本業が忙しいわね」

「この前も半導体事業に2000万つっこんだからな」

「に、2千万って……」

「……」

 

 アクアは無表情で聞いていたが、時々聞く真刃の話と比べると、なんだか『小さい』と思う。

 

 もちろん、2000万が安いとは思わない。

 だが、真刃ならもっともっと『上』がありそう。

 

 と思ったが、いうほど悩む話ではない。

 

 真刃は、自分のルールやスケールを赤裸々に話す相手を選んでいるというだけのこと。

 

 何故かアクアに対してはよく話すが、有馬は違う。

 そう言うことなのだろう。

 

「今回のこの舞台も、俺が一番金を出してるし……まあ、ちょっと気になることがあってね」

「気になること?」

「まあ、それはおいおいわかるとして……俺、結構、『劇団ララライ』って、硬派だと思ってたけどね」

「私も思ったわ。よくもまぁ、2.5受けたわよね」

「と言っても、半分は外部から集めたキャストだ。緊張しなくていいと思うぞ」

「緊張なんてしてないんだけど」

「まあ緊張よりも疑問の方が強いよねぇ」

 

 話していると、反対側から知り合いが来た。

 

「あっ……」

 

 『今日あま』で散々やっていたメルト君である。

 

「メルトくん」

「……オス」

 

 メルトはどう答えたものか、いろいろ考えていたが……。

 

「……この公演。鏑木Pが外部の役者のキャスティングに噛んでるんだと。つまり俺たちは鏑木組ってわけだ。よろしくな」

「……」

「……よろしくね」

「なんだよその間は……」

 

 アクアと有馬の視線は冷たい。

 もちろん、あらかじめキャストはわかってたし、メルトの名前だってそこにあった。

 

 有馬もアクアも、上の判断にケチをつける性格ではない。

 キャスティングはいいとして……。

 

「まぁ分かるけどな。ロクに演技出来ない奴居て、『今日あま』の悪夢が再び。とか思ってんだろ」

 

 有馬は『バレてる……』と顔に書かれている。

 

「あれが初めての演技だったんだから大目に見てくれとは言わないけどよ。『今日あま』から9か月……ちょっとは勉強? してだな……前よりかはマシになってると思うから、ダメだったら遠慮なくいってくれ」

 

 殊勝な心掛けだ。

 ただ……それはメルトの話であって、彼がこれからする役とは別物。

 

 別に『普段』と『役』を合わせる必要はない。普段とは正反対の性格のキャラクターを演じ切る役者だってこの界隈にはゴロゴロいる。

 

 しかし、役に入り込むスキルがまだ足りないメルトは、普段から合わせていかないと、キザミを理解できない。

 

 まあ、その『理解』も、何処に焦点を当てるべきかで、変わるわけだが。

 

「『キザミ』はそんなタイプじゃないよ? それ相応に自信家さ。前の君と同じようにね」

「し、真刃さん……」

「え、知り合いなの?」

「メルト君。楽曲に強いからね。ソニックステージは大手だから依頼料も高くて、俺が企画にかかわることもある」

「……なんで、ここに……」

「ちょっと気になることがあって見に来ただけ。有馬先輩。アクア君。メルト君と……まだ今回の役者の中で知り合いが三人いるからさ。入りやすいし、大手スポンサーとして見に来たんだよ」

「そ、そうか……」

 

 アクアは『一人はあかねとして、もう二人は誰だ?』と思ったが、すぐにわかることだ。

 

「ま、行こうか。ここで喋ってても仕方ないし」

「そうだな」

 

 ララライが使うのは『Bスタジオ』だ。

 

 入ってすぐに、メルトは挨拶している。

 

「『キザミ』役を務めさせていただきます。『ソニックステージ』所属、鳴嶋メルトです。よろしくお願いします」

 

 頭も下げて、かなり丁寧。

 『今日あま』以来の共演となる有馬も、思うところはあるようだ。

 ……いや、周りにイエスマンしかおらず、自己主張を激しくした結果、ピークを過ぎて仕事がなくなった有馬にとって、『こういう反省』は思う部分がある。

 

 その後、『つるぎ』役を務める有馬と、『刀鬼』役を務めるアクアが挨拶している。

 

 その時、サングラスをつけたおっさんが部屋に入ってきた。

 

「皆早いねー。まだ10分前なのに。揃ったみたいだから紹介始めちゃおっか」

 

 男は雷田澄彰。この公演の総合責任者。プロデューサーだ。

 

 そして、劇団ララライを代表し、演出家の金田一敏郎。

 脚本家のGOA(ゴア)

 2.5経験豊富な鴨志田朔夜。←この人も鏑木組。

 

 ララライの役者さんからは、

 みたのりお、化野めい、吉富こゆき、林原キイロ、船戸竜馬。黒川あかね。

 

 そして……。

 

「次に主演を務める……」

「起きろバカモンが!」

「って……」

 

 金田一に蹴り起こされている。

 

「ああサーセン……この芝居の主演の……役名なんだっけ」

 

 起きて、少し言葉を発する。

 

 それだけで、かなり、雰囲気がある。

 

「まぁ良いか。姫川大輝。よろ」

 

 ララライの看板役者。

 立ち上がっただけで、オーラは半端ない。

 

「最後に、この企画の大手スポンサー、月影ホールディングスの月影真刃さんです」

「よろしく。あ、スポンサーだけど緊張しないでね。知り合いが多いから見に来ただけだからさ」

 

 笑顔でそう言う真刃。

 

 当然、それを言うだけで雰囲気を変えるだけの『存在感』がある。

 

 そんな真刃を見て……金田一、鴨志田、姫川の三人は、ため息をこらえたような顔になった。

 

「このメンバーで一丸となり、舞台『東京ブレイド』を成功に導きましょう!」

 

 ★

 

「今日は顔合わせだが主要メンバーは一通り揃ってるみたいだな。このまま本読みもやっちまうか。半から始める。雑談するなり準備するなりしててくれ」

「「「はい!」」」

 

 金田一が部屋を出ていった。

 

 真刃は誰に話しかけたものかなー。と思っていたが、彼のところには姫川がやってきた。

 

「月影。久しぶり」

「久しぶりだね姫川さん」

「大体二年ぶりか? あの仕事以来だな」

「ああ、アレ以来だね。あの時はごめんね。マイクロミニスカートなのに監督がローアングルにこだわって、パンチラしてテイク8まで撮るハメになっちゃってさ」

「あの頃も忙しかったし、確かにスケジュールの合間で行ってたのは事実だけど、過ぎた話だ。それで……出ないのか?」

 

 真刃に聞く姫川だが、どこか、内側でグツグツ煮えているような、そんな雰囲気がある。

 

「ん? 今回の舞台?」

「ああ」

「今回は出ないよ。ちょっと気になることがあって、知り合いが多くて入りやすいから来たってだけ」

「ふーん……」

 

 そのグツグツ煮えているものが沈静化した。

 

「……気になることって?」

「まあ、そこはいずれわかるさ」

「……そうか。なら、とりあえずそれでいい」

 

 そういって、姫川は離れていった。

 

「真刃君。久しぶり」

「鴨志田さんもお久しぶりです」

 

 姫川が離れた後、鴨志田が近づいてきた。

 タイミングをうかがっていた様子。

 

「今回。出ないんだね。部屋に入ってきたときは『まさか』と思ったし、正直ちょっと残念だよ」

「まあ、スポンサー特権で自分をねじ込んだと言われかねないですし。ていうかどの役をやるのかって雰囲気になるでしょ」

「今回は和風だからね。ただ……いや、いいか。あの仕事、どれくらい前だったかな」

「半年前ですね。初対面で食事に誘ってきたのは今でも覚えてますよ」

「それは言わないでくれ」

 

 真刃は見た目は美少女だが基本的に女装しないので、今もそうだが男の格好だ。

 

 もちろん、それすらも映えるほどのオーラがあるし、中々見られない神秘的な雰囲気なので、食事に誘う気持ちになるのも不思議ではない。

 

 まあ、明らかに女の子を誘うような言葉を投げかけた相手が、男で、しかも大手スポンサーとか、心臓が冷える。

 

 以前の仕事がなんだったのかはともかく、『背筋が凍った』のは間違いない。

 

 とはいえ。

 

 姫川もそうだが、真刃の立ち位置や主義はある程度理解しているようで、砕けた雰囲気だ。

 

「ただ……鴨志田さん。ちょっと今回の舞台に不満がありそうだね」

「ん? ああ……」

 

 鴨志田はメルトの方をチラッと見る。

 

「顔とコネで入ってくる人。いるでしょ? プロとしてはさ……」

 

 基本的に笑顔を崩さない鴨志田だが、メルトに向ける視線には影を感じる。

 

「ああ、なるほどね……俺も、『今日あま』は見たよ」

「!」

「その上で言わせてもらうけど、俺はキャスティングにアレコレ口を出すつもりはないんだ。お金を出すって決めたら出す。俺の仕事は基本的にそこまでだから」

「……前の時もそうだったか」

「俺も鴨志田さんの心情にあれこれ言うつもりはないからさ」

「……わかった」

 

 その時、金田一が戻ってきた。

 

「そろそろ時間だね」

 

 本読みがスタートする。

 

 役者が部屋の中心に集まって、真刃、雷田、金田一は壁際に移動。

 

 そして始まり……。

 

「……今回、下手な子いないねぇ」

 

 雷田がポツリとつぶやく。

 

「芸歴の長い有馬ちゃんや、ララライの面々が演技できるのは当たり前として、メルトくんも『今日あま』の演技見た時どうなるかと思ったけど、なかなか仕上げて来てるし。アクアくんも舞台は初めてって聞いたけど、周りが見えててソツがない」

「鏑木は他所の人を送る時は堅い人選するからな」

「まあ、たまにビックリするくらいめんどくさい人もいるけどね……」

「月影もそうだろ」

「俺も鏑木さんと付き合いが長い身って部類か。否定はできないや」

「あはは……」

 

 真刃と金田一のやり取りに乾いた声を漏らす雷田。

 

 金田一は付き合いがあるが雷田はそこまで長くはない、もしくは今回が初めて。ということなのだろう。

 

 何事にも予算は必要だが、正直に言って、真刃が出す金は多い。普段、経営者のジジイ連中を相手にしていると、『こいつはどう言った裏があるんだ?』と意味不明な勘繰りをするレベルだ。

 

 雷田も一応、金田一と鏑木から『まああんまり深く考えんなよ』と言われているし、雷田も真刃と契約するうえである程度分かってはいるが、それでも裏を感じずにはいられない。

 

 月影ホールディングスの名前で検索すると、まあヤバい実績がゴロゴロ転がっているので。

 

「まあ、有馬ちゃんとあかねちゃんの同世代新旧若き天才対決もアツいよねぇ」

 

 興味は、キャスティング的にもかなり主軸である有馬とあかねに。

 

「役にどっぷり入り込む『没入型』と、周りの演技を綺麗に受ける『適応型』で、演じ方も対照的。見た感じあかねちゃんの方が一歩先行ってる感じかな。有馬ちゃんも負けないで欲しいなぁ」

 

 雷田は『実は結構ファンなんだ~』と、かなり軽い。

 

「適応型で、相手が姫川さんだからなぁ」

「ああ。どうなるかはわからん」

 

 真刃と金田一の視線の先。

 姫川が、スイッチを入れる。

 

「有馬……だっけ、遠慮しないで良いよ」

 

 それを聞いた有馬は……そう、とても、とても楽しそうな表情になる。

 

 次の瞬間。

 まあ、そう、強引に表現するなら。

 

 

 

「俺を主役だ!!」「いいや、私を見ろ!!」

 

 

 

 その場に嵐を生み出し、その中で暴れる、『才能の暴力』

 

 本読みとは思えない、超絶した雰囲気。

 

 それまでの雰囲気を覆すかのような、圧倒的な存在感。

 

 本読みが最後まで終わった後も、周囲を酔わせるほどの力。

 

 それが、姫川と有馬の間には、確かにあった。

 

「……ララライも最近、停滞気味でよ……2.5なんて受けたのも、外部からキャスト引き受けたのも、何かしらの刺激が必要だと思ったからだ」

「あー。最近のララライの舞台、確かに、同じ強さの匂いしかしなかった」

「だろうな。だが……どいつもこいつも負けず嫌いだからよ。あんなの見せられて何も思わねえワケない。アレとどう戦うか。必死になって考えちまうもんなんだよ」

「……役者なら。か」

「ああ。【役者】ならな」

 

 凄いメンツが、そう、どんなムチャでも応えてくれそうな連中が集まったものだ。

 

 だからこそ。

 

 そう、だからこそ。

 

(『この台本』からは、まったく匂いがしない。何故だろうね)

 

 一番気になる部分を内心で呟きつつ、真刃はモヤモヤしていた。

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