嘘の匂い。金の匂い。   作:レルクス

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第19話 舞台開幕

「白蘭は人里離れたところにいたから、一般的な服装に馴染めない。それで、ちょっと露出のある格好をしている……これって『ちょっと』かな。文化が違い過ぎない?」

 

 東京ブレイドの舞台当日。

 

 衣装を着て、メイクをしている場所で、真刃は呟いた。

 

 そう……なんというか、とてもヒラヒラしているし、なんだか露出も多い。

 

 もちろん、ゲームに出てくるイラスト通りではある。

 

「真っ白なノースリーブとホットパンツはエグいな」

 

 キザミの衣装を着たメルトだが、頬が引きつっている。

 

「袖だけの奴……アームウォーマーっていうのかな。肘から手首まであるけど、こっちもヒラヒラが付いてて、何だか全体的に……」

「背徳感を追求してるな」

「姫川さん。ブレイドの格好と雰囲気で『背徳感を追求』とかいわないで」

 

 東京ブレイドは、ゴリゴリの和装アクションだ。

 

 女性陣も肌の露出が少なく、袖がしっかりあって肌が見えにくい。

 

 主役やそれに準ずるキャラの中で女性キャラは『つるぎ』と『鞘姫』になるが、どちらも肌面積はほとんどない。

 

 ……原作者の性癖詰込みセットと称されることもある白蘭だが、普段は肌を描けない反動なのだろうか。

 

 なんだか舞台というよりコスプレで映えそうな格好……というか、ネットのあれこれを見ていれば白蘭のコスプレ画像は出てくる。

 

 ただ、体の起伏が乏しく、綺麗で神秘的な容姿で、光沢を感じさせるほど艶のある白い長髪と、なかなか攻めた外見設定のため作品数は少ない様子。

 

 そんなある種の『境地』に達するデザインを仕上げたアビ子先生は、紛れもなく天才だ。そして変態だ。

 ゲームなので動き回るが、モデリングは地獄だったことだろう。

 

「うわっ、なんか危険な匂いが漂うわね」

 

 『つるぎ』の格好をした有馬も準備完了。

 ただ、白蘭姿の真刃には思うところがある。

 

「危険と言いますか……」

「まあ、イラスト通りだからねぇ……ヒラヒラしてるけど大丈夫?」

「大丈夫。というか演出込みみたいなところもあるから」

 

 白蘭の戦闘スタイルは、盟刀を用いない二刀流だ。

 ただ、『特殊な力を与える』のが盟刀であり、それを持たない白蘭は凄いエフェクトをつけにくい設定である。

 

 そのため、綺麗で白く長い髪を揺らすことで、華やかさを演出する。

 

 ただ、髪だけで演出しきるのは無理があるので、『衣装のヒラヒラ』を一緒に揺らすことで、小さい体だが大きな演出になるよう調整されている。

 

 アビ子先生が必死にイメージしながら調整したのか、白蘭が想定する動きに対して、『まったく邪魔にならない大きさ』になっているのだ。

 

 天才というのは、熱意のある変態に他ならないのだと、強く思う。

 

「それもそっか」

「お待たせ……!」

 

 鞘姫の格好をしたあかねも入ってくる。

 

 組織のトップの肩書に恥じない『入り方』をすでにしているようで、メイクも合わさってかなり荘厳な雰囲気だ。

 

「あ、ははうえ~♪」

「ぐふっ!」

 

 変なところにダメージが入った。

 

 舌足らずで幼く、思わず保護欲と母性を掻き立てられるような声色。

 

 それが、『白蘭』に仕上げた真刃の口から洩れて……その顔も本当に、『幼くてかわいい子』に調整している。

 

 誤解させるつもりで言うならば、『新しい扉を開きそう』だ。

 

「私より身長が高いのに、なんでこんな子供に……」

 

 有馬は150センチ。真刃は155センチ。

 有馬の方が身長が低いし、『つるぎ』もそれに近いが、雰囲気だけで言えば『白蘭』の方が小さいだろう。

 

 もちろん、公式設定においても白蘭の方が身長が高いのでこれで何も問題はないのだが……いや、本当に何も問題がないのだろうか。ちょっと自信がない。

 

「お前ら、舞台裏に行くぞ……って、想定してたけど凄いな」

「金田一さんまで……」

 

 金田一が呼びに来たが、白蘭姿の真刃を見て視線を向けている。

 

 今回の中では最も肌面積が大きく、そしてその肌は何処をどう見ても綺麗という。そう、『反則』レベルのそれだ。

 

 何も思わないわけがない。

 

 というか、アビ子先生の『こいつに惚れろ!』という鋼のような強い意志を感じるレベルなので、そういう反応をする方が正しい。

 

 が、時間は時間。

 

 全員で、舞台裏に移動する。

 

 ……独特の緊張感。

 

 ミスだとか、アクシデントだとか、どうでもよくなってくる高揚感。

 

 それが、真刃の中にも湧き上がってくる。

 

(俺も、一端の役者ってことか)

 

 時間が来た。

 

「さぁ、開幕だ。全部出して来い」

 

 ★

 

 『東京ブレイド』の物語は、主人公が一振りの太刀を手にするところから始まる。

 

「なんだこれ、光って……」

 

 主人公が手にする盟刀は『風丸』だ。

 

 文字通り、風属性の太刀であり、周囲の空気を震わせ、流れさせる。

 

 風丸を手にし、驚愕しているブレイドのところに、人影が。

 

「ウチは剣主の一人『つるぎ』様だ! その『盟刀』を捨てて逃げるか、私と戦うか選びな!」

 

 盟刀に認められ、その力を振るうものを、『剣主』と呼ぶ。

 そして、盟刀は奪い合いだ。

 

 極東に集った21本の刀……『盟刀』は持ち主に様々な力を与える。

 

 少しふるえば、その力はわかる。

 

『盟刀・風丸 二の刃・疾風刃雷』

 

 ブレイドが振るう太刀。

 剣主として経験がある『つるぎ』に打ち勝つため、その場で『速さ』を追求した技を生み出し、一刀で圧倒する。

 

「やめてけれ! おらまだ死にたくねぇだ!!」

 

 涙を流し、命乞いをするつるぎ。

 

 盟刀の奪い合いは、多くが『決闘』だ。

 

 負けたものは死ぬこともある。

 

 剣主として経験があるということは、つるぎもそれを理解している。

 

 命乞いするのは当然。

 

「なら俺の方が強いと認めるか?」

「認めるだぁ! 屈服する! アンタの方が強いだぁ!」

 

 決闘の結末は悲惨で残酷なこともある。

 しかし、屈服、降参によって終わることもある。

 

 そして。全ての『盟刀』が最強の認めた者には、国家を手にするほどの力、『国盗り』の力がもたらされるという。

 

「この日本を盗めるほどの力ね。良いじゃん。王様になって見たかったんだよね俺」

 

 剣を掲げて、宣言する。

 

「俺が最強になって、この國の王になる!」

 

 以上『東京ブレイド』の骨格となる設定だ。

 

 決闘で敗れたものは命を奪われることもあるが、そのまま配下に加わるパターンも多い。

 

「アンタが王様になった際にゃ私を大臣にしてくれりゃあ良い! したらこの『つるぎ』が王道を切り開いてやるさ!」

 

 つるぎを仲間に、ブレイドは盟刀を更なる名刀を手にするため動く。

 

 熱血系の王道主人公と、戦闘系ヒロインという組み合わせ。

 その実力と成長速度は紛れもなく高い。

 

 その実力と器に惹かれる者は、確かにいる。

 

「クソ……アンタら強ェな……」

 

 また一つ、決闘が終わる。

 

「なぁ、俺も仲間にしてくれよ! お前が王になった時、俺のポジションは将軍な!」

 

 主要キャラの一人である『キザミ』を仲間に引き入れ、勢力を拡大していく。

 

 次々と敵を破り、仲間を増やしてゆくブレイド一行。

 

 連戦連勝を積み重ね、その力を示していく。

 

 だが、徒党を組んで行動する者たちは、彼等だけではない。

 

 新宿を拠点とするブレイド達、新宿クラスタと。

 

 渋谷区を拠点とし徒党を組んだ渋谷クラスタの対立が第2幕。

 

 個人と個人、少数と少数のぶつかり合いは、ここで終わり。

 

 渋谷抗争編が、本格的になる。

 

 そしてそれは……新宿クラスタ所属の剣主『キザミ』と、渋谷クラスタ所属の剣主『(もんめ)』の戦いから始まる。

 

 

 

 

 ――のが、原作だ。

 

「知ってるぞ! お前が持ってるのは『盟刀』だな! この『白蘭(はくらん)』がお前を倒して、母上への土産にしてやる!」

 

 長く伸ばした白い髪を揺らし。

 

 ひらひらした衣装を身に包み。

 

 スポットライトをたっぷり浴びて、

 

 ハリのある白い肌と、神秘的で綺麗な、幼い顔を晒し。

 

 二本の刀を掲げ、キザミの前に姿を現す。

 

 ゲーム『東京ブレイド The() Ignite(イグナイト) Storm(ストーム)』オリジナルキャラクター。

 

 渋谷クラスタ所属『白蘭』の、『サプライズ参戦』だ。

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