転生したら遊戯王GX世界の住民だった――あれ? 原作キャラは?   作:遊城四十代

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書けちゃったので初投稿です。


01.転生したらGX――あれ?

 ――「遊戯王GX」というTVアニメがあった。

 

 詳しい説明はしない。話に関係のない概要説明に紙幅を使いたくないし、こんな場末の二次創作読むような読者諸兄ならば知っているだろうという判断である。

 

 ここで重要なのはただ一つ、俺、「樟木落花(くすのきらっか)」がそのアニメの世界に転生してしまったのだということである。

 

 アニメはラッシュまで含めて全作視聴し、原作は当然揃え、OCGもコロナ禍までは対面で、そこからはマスターデュエルで続けていた程度の遊戯王好きだった俺は、社畜人生真っ只中、間もなく魔法使いへと昇格、という三十歳の誕生日手前で、小学生らしき少女を助けるために道路に飛び出し、クルマに撥ねられ死亡した。力が抜け、体温が消え失せ、そのまま闇の中へと意識が消えていく――その瞬間、俺は産声をあげている赤ん坊へと姿を変えていたのだった。暫しは戸惑うこともあったが、どうにか俺は二度目の人生というものに適応し、この世界の両親である父母から頂いた落花という名前を抱いて生きていくことになったのであった。

 

 さて、そんな世界で何故俺がこの世界を「遊戯王GX」の世界であると断定できたか。それは、テレビに映るニュースから判断できたからだった。

 

 本作GXは、無印、つまり初代主人公武藤遊戯とそのライバル海馬瀬人の時代から十数年後の物語である。赤ん坊だった俺が見たテレビニュースに、俺の知る姿よりも年齢を少しだけ重ねた、若社長の海馬を見た時、俺はこの世界の正体を知ったのであった。――これGXだ、と。

 

 俺は遊戯王のアニメの中なら、GXが一番だという人間である。確かにストーリーはところどころ荒く、作画だって特に序盤は苦しい。だが、主人公遊城十代をはじめとしたキャラクターたちが三年間という視聴者と同じ時間を過ごして成長していき、それに伴って様々なモンスターや敵と出会い、そして卒業していくという物語は、デュエルアカデミアという小学生では想像のできないような、しかし身近でもある学園というステージを舞台としたことで、俺のような子供にとっても、何処か共感を得られる、キャラと同じ悩みを持てる、そんなシナリオだったと思うのだ。だから俺はGXという憧れた世界へ自分が生まれ直したという事実に歓喜した。年齢から見て、俺はあの十代と同い年なのだ。十代と同じ学校で学べる。万丈目と、翔と、明日香と、そして転入してくる数多のキャラクターたちと、対等の立場で戦える、一緒の空間で生きることが出来る。

 

 それはまさに、夢だった。

 

 転生したという事実に感謝すらした。

 

 俺は待った。GXという物語の時系列の最初。アニメ版からの続きだったためオカルトカブレ気味になった海馬の「カードに宇宙のエネルギーをぶち当てて新しいカード産もうぜ計画」が発令されるまで、俺は待った。十代がカードを宇宙に打ち上げて、ユベルを生んだ例のアレだ。俺も参加するつもりだ。だって、楽しそうじゃないか。どうせ前世でも遊戯王以外に楽しみなんてなかったんだ、こんな世界に転生したというのなら、思いっきり遊戯王するほうが建設的だし、楽しいし、後悔だってしないだろうという思いが俺にはあった。

 

 そして、そのときは来た。海馬が全世界に向けて緊急生放送をする、その時が。俺は齧り付くように、テレビの前にいた。

 

 果たして、海馬は言った。

 

 

「――海馬コーポレーションとI2社の共同開発により、新たな様式のカードを生み出した。本日この時より、流通を開始する!! さあ闘え、デュエリスト共よ! 今この時より、デュエルは新時代へと突入する!!!」

 

 

 訳がわからなかった。何だこれは。何が起きているんだ。俺はテレビの前で、呆然としていることしか出来なかった。

 

 気付いたときには夜だった。仕事帰りの親父が、新パックを手に入れたと嬉しそうにしていた。開封されたパックの中身を見て、親父は興奮気味な調子で俺にそれを見せてきた。

 

 

「見ろ、落花! これが噂の新カードってやつじゃないのか!? 攻撃力2600、強そうだなぁ!」

 

 

 親父が俺に見せてきたのは、《大地の騎士ガイアナイト》。

 

 そう。

 

 シンクロモンスターである。

 

 

「……は?」

 

 

 思わず、俺は絶句した。まさか……GXじゃない……!?

 

 

 結論から言えば、この世界はGXに似て異なる世界だということになる。武藤遊戯や海馬瀬人、城之内克也といった伝説の決闘者の存在が消えているわけでは無い。ただ、海馬が宇宙のエネルギーで新たなカードを生み出そうとかいう頭の狂った計画を実行せず、代わりに俺が遊んでいたOCGよりも未来――リンク召喚までの全てを実装しに来た、という、謂わばIF、平行世界の物語ということになるだろう。

 

「というか、ネットとか普及してるし、俺が使っているのもスマホだし」

 

 GXでは、こういったガジェットは当時の水準に近いものが採用されていた。海馬の例の放送から技術レベルが突如、加速度的に高まり、今やリニアモーターカーすら実用秒読みというほどだ。わからない。俺にはさっぱりわからない。だが、わかることだってある。

 

「……それでも、ここは遊戯王の世界だ。イフだろうと、俺はここに生きているんだ。だったら――デュエルをしよう。それが、俺の存在理由じゃあないか!」

 

 俺は立ち上がった。するんだ。後悔しないように。したいからするんだ。それこそが、俺が生まれた理由だろう。

 

 

「さあ――デュエルやろうぜ!」

 

 

 叫んで、俺は家から飛び出した。出てから、自分がカードを一枚も持っていないことに気がついたのであった。

 

 

◆◆◆

 

 

 カッコつけた手前そのまま引き下がったのではカッコつかないのではないか。そんな誰にも共感されそうにもないコダワリに突き動かされるがままに俺が向かったのは、近場のカードショップである。そこそこの大型店舗なだけあって、とんでもない人集りだ。やはりこの世界最大の娯楽にして、後には世界を表裏どちらからも揺すぶるゲーム、遊戯王の人気は絶大だ。ホビーアニメ、と言ってしまえばそれまでだが、今の俺にとってはこここそがリアルだ。長蛇の列の隙間をすり抜け、人でごった返すデュエルスペースを躱し、比較的空間が残っているシングルコーナーで足を止める。ショウケースに飾られたカードたちには、どれもこれも万札一枚どころじゃ無いレベルの値札が、透明スリーブ越しに貼り付けられている。ちょっとした高級アクセサリーか、骨董品か。そんな調子で売られているのが、この世界のカードなのだ。もっと都会、もっと大規模な店に行けば、一枚で一軒家を買えるようなレベルのカードすら、銀行の金庫と同じようなレベルで厳重に護られた状態で売られている。まさに、カードが世界を支配するのだ。金を刷っているってのはこういうことか、と俺は目を細めながら思う。

 

 当然、五歳児の小遣いでこんな高級品を買うことなど不可能だ。俺は店の隅へと移動する。そこには、うず高く積み上げられた、ホコリを被ったカードの山と、ラックからはみ出そうなほどに並べられたストレージがあった。

 

 要するに、カード捨て場とジャンクカード売り場というヤツだった。

 

 一枚で一軒家や車、というような万馬券どころの騒ぎでは無いようなカードがある一方で、例え千枚集めようとも二束三文にもなりやしないカードだって存在する。使えないカードを捨てていく、というマナーの悪い人間は社会問題ともなっており、今やそういった不法投棄には罰金刑が課せられるほどだ。しかし、この世界の人々は、俺の世界とは比較にならないほどカードを剥くのだ。当然、使えないカードというのも多くなる。それを保存し続けろ、整理して売りに来い、というのも中々面倒なものだ。GX本編でも、不要カードをアカデミアの井戸に捨てている、という話があった。そういうものなのだ。この世界では。

 

 そこで店側が「商品を一定額以上購入すること」を条件として公開しているのが、このカード捨て場だ。要するに不用品回収のサービスということだ。ここに捨てられたカードは店側である程度溜まると整理してくれ、その脇にあるジャンクカード用ストレージに収められる。そこのカードは本当に安く買うことが出来るのである。勿論、カードの程度もたかが知れているということにはなるが、今の俺にとっては関係がない。例え限りなく0に近くとも、完全な0よりは上なのだ。

 

 早速、カードを漁り始める。客たちは生暖かいような、小馬鹿にするような、憐れむような、そんな視線を向けてきていた。まあ当然だろう。俺だって彼らの立場ならそう思うだろう。なにせ、ここにあるのはまさにクズカードなのだ。どんなカードにも使い道はある、とは言うが、カードの優劣というものは確実にある。例えば、今手に取ったカードは《アイアン・ハート》。レベル5で攻撃1700、守備1400の闇属性機械族通常モンスターだ。レベル4でも攻撃力1700を超えるカードなど、幾らでもあるだろう。まあこいつはキースも使ったことのある由緒正しきカードではあるんだが、もうそれから一〇年以上経っているのだ、インフレには勝てないのである。

 

 そんな他人の視線など無視し、俺はストレージを確認し続ける。幸いと言って良いのかは定かではないが、俺には現状唯一と言ってもいい絶対的なアドバンテージが有る。リンク召喚も多少含んだ、この世界では今まで存在しなかった新たな召喚法への理解だ。

 

 シンクロ、エクシーズ、ペンデュラム、リンク。アニメが新たなシリーズになるたびに追加されていった召喚法は、まだこの世に生まれたばかりだ。俺は俺が強いとは思っていない。だが、少しでも強くありたいとは思う。ならば、文字通りのチートだろうとも、この前世の知識を活用することを躊躇うつもりは無い。どうせ、少し経てば皆、俺の知る程度の知識は身につけてしまうのだろうから。良いじゃないか、これくらい。こういうジャンクコーナーの優良カードを格安で抑えるというせせこましい真似くらいしかするつもりも無いのだから。

 

「《サンド・ストーン》《ボルト・エスカルゴ》《未熟な密偵》《白銀のスナイパー》《迎撃準備》……」

 

 失礼。舐めていた。余りにもあんまりだ。入れるだけでデッキスペースだけ食って仕事を果たさないようなカードがゴロゴロと出てきた。だが、五歳児の小遣いで闇鍋パックを買う気も起きない。俺は歯を食いしばりながら、ストレージを一枚ずつ確認していく。相対的にマシな部類である装備魔法の類を幾らか回収したところで、俺は何かを感じた。否、それまでも何かを感じていて、そこに現れた別種の何かを感じ取ったのだということに気がついた。

 

 それは、存在感。それを包みこんでいたのは、瘴気。このジャンク売り場を包むような瘴気に気付き、ぞくりとした冷たい感触を背中に覚えながら、俺はその存在感を醸すカードを、ストレージの奥から引き抜いた。恐怖は無い。何故ならば、その存在は、とても暖かいものに思えたからだった。

 

 

 果たして、それは一枚のモンスターカードだった。

 

 

「……《ランカの蟲惑魔》」

 

 

 地属性昆虫族、攻撃力1500のレベル4。蟲惑魔カテゴリの共通効果である「落とし穴・ホール通常罠の効果を受けない」耐性と、召喚時にデッキから蟲惑魔モンスターをサーチする効果、自分フィールドの伏せカード一枚をフリーチェーンで手札に戻し、手札からカードを新たにセットすることも出来るという三つの効果を持つ。確かに、蟲惑魔をサーチする効果は、このテーマだとかシナジーカードを集めようとすると果てしない手間と時間、或いは金を要する世界では使いづらいが、落とし穴を喰らわないのは利点だし、デメリット効果を持つわけでもない。何故、このカードがこんな場所に眠っているというのだろうか。俺は《ランカの蟲惑魔》を見つめた。そして、気付いた。

 

 

 熱い。

 

 まるで生きているかのような、鼓動が伝わってくる。

 

 力強いエネルギーが、迸ろうとしている。

 

 本能が、手放せと訴えかけた。当然だろう。カードに触れてこんな感触を味わうなんて、明らかに自然じゃない。

 

 理性が、手放せと叫んだ。当然だろう。カードに触れてこんな感触を味わうなんて、経験したことも無ければ聞いたことすら無い。

 

 だが俺は、カードを手放さない。むしろ、ちょっと興奮していた。《ランカの蟲惑魔》がここに置かれていたカードの中では飛び抜けて優秀だという実利もあったが、何よりも、不可思議な感触という非日常を味わって、俺はわくわくしていたのである。

 

 ひょっとしたら俺はまだ、傍観者なのかもしれなかった。この世界で生きているという自覚を完全に出来ていない、世界から浮いた存在なのかもしれなかった。

 

 全身からエネルギーを吸い上げられるような感触がした。もし俺がこの世界で生きる真っ当な住人だったのなら、俺はカードを手放し、呪われているんだとか適当言って、大人しくカードパックを買い漁っていただろう。だが、俺は良くも悪くも浮いた人間だった。何処か夢見心地だった。

 

 だから、俺は自分からエネルギーを吸い上げなくなるまで、カードを手放さなかった。その未体験の結果を、知りたかったからだった。

 

「お客様! 如何し――」

 

「……すいません、ここのカードを買う時、レジには並びますか?」

 

「え……」

 

「構いませんよ。持っていってください」

 

 アルバイトらしき若い店員が首を傾げたところに、恰幅の良い中年男性がやってきた。胸には店長と刺繍された青いエプロンがある。彼はにこやまに笑んだまま、

 

「お金を取ったところで、バイトの稼ぎ分にもなりませんから」

 

「ですが、店長。この子の持ってるカードって」

 

「おい、こっち来い。……どうぞ、好きなだけ持ち帰っていただいて結構」

 

 アルバイトを連れて、店長はバックヤードへと消えていった。微かに、「あんな呪われたカード、持っていってくれるってんなら良いんだよ」というような声がした。

 

「呪われたカードだってよ、お前」

 

 俺は店長が言う通り、ランカを持って帰ることにした。彼女は別に弱くないし、この《ランカの蟲惑魔》が持つ非日常的な雰囲気、オーラに惹かれつつあったからだ。それに何よりも――

 

 

「……こっちでもお前と戦うなんてな」

 

 

 前世の俺のメインデッキこそが、彼女たちと罠カードで戦う、【蟲惑魔】だったのだ。運命というか、宿命というか。そういうものを俺は覚えていた。

 

 

「……また、頼んだぜ。ランカ」

 

 

 一言かけてから、俺はカードショップの自動ドアを跨いだ。

 

 

『――ふふ。これって運命だわ? ね? そうでしょう?』

 

 

 足を止める。ふと、前を見る。俺の前に、何かがいる雰囲気があったからだった。

 

 

『それにしても、このまま消えちゃうのか、って柄にもなく不安に思ってたのだわ……責任、取ってよね?』

 

 

 いた。

 

 眼の前に、俺の手の中にある《ランカの蟲惑魔》のイラストにそっくりな、白桃のような髪色をしたツインテールの美少女が、くすくすと笑いながら立っていた。

 

 俺は絶叫した。




こんなんで遊戯王GX原作名乗るなんて各方面に失礼だよね。
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