短編・中編まとめ   作:ayasaki

11 / 60
お父さんは娘に勝てない(ランスシリーズ)

「しくしくしくしく」

 傍若無人・悪逆非道・冷酷無比・世界最強・乱世の英雄であるランス。

 しかし、そんなランスはシィルの太腿の間に顔を突っ込んで、全力で悲しんでいた。

「ラ、ランス様元気を出してください」

「しくしくしくしく」

 常であればシィルを照れ隠しにポカポカしたり、大口開けて笑うランスだが、ある意味人生一番の悲しみであった。

 ランスが泣く。

 ランスを知っているのであれば、驚天動地の出来事となるのだが、事情を聞けば……お前が悪いと全員が言い返すのであろう。

「えとリセットちゃんはランス様の事大好きですよ。だから大丈夫です」

 シィルは必死に慰めるが、それでもランスは凹んだまま。

「ランス元気出して、ほら私の胸揉みますか?」

「……揉む」

 クエルプランもランスの気を引いて、自分の体を使って慰める。

「あんなに可愛かったリセットがーーーーーーーー。うがーーーーー!」

「私にはそこまでわかりませんが、人間の15年は大きいものなのですね」

「お父さん大嫌い……しくしくしくしくしく」

 そう、エールとリセットが恋人になり、周囲の関係者も賛成。

 パステルも先祖に説得されて認めるしかできなかった。

 そしてランスは冒険先でその話を聞いた瞬間、シャングリラへ爆走し、嫁にはやらんと大暴れ。

 そのままエールの前に立ちはだかり、問答無用で殴るのであった。

 これが息子でなければ、カオスを使って鬼畜アタックなのだが、さすがにランスでも息子相手に殺傷武器を使う気は無かった。

 しかし、そこは元魔王。

 普通に拳であっても、子供たち以外ならあっさりと死亡するような一撃の威力の為、周囲への被害は物凄い事になる。

 それに対し、エールもエールでやり返さねば認められることは無いとばかりに反撃。

 結果として、シャングリラの隅で親子喧嘩を繰り広げ、最終的にはエールをぼこぼこにした。

 だが、

「お父さんのばかー! 大嫌い!」

 弟であり恋人でもあるエールをいじめたランスに、リセットは顔を真っ赤にして怒った。

 結果、リセットが可愛くてしょうがないランスは人生一番の悲しみを味わったのである。

 しかしランスにとっては魔王であった期間を除けば、リセットを可愛がった期間など数年にも満たない。

 子供からすれば事情があれども、幼少期からはまともな親子の時間も持てず、尚且つ片親で過ごしてきた時間のほうが圧倒的。

 同時に精神も育ってるので、親離れしていくのも当然ではあった。

 だがランスにとっては、魔王の血に必死に耐えていた15年間であり、親としての時間なぞリセットにビンタされて正気に戻った時間くらいである。

 ならば子離れなぞ出来ていないのも当然と言えば当然であった。

「邪魔するで~」

 そんなランスを慰めている途中、経済界の重鎮中の重鎮であるコパンドンが入ってくる。

「邪魔するなら帰ってやー」

「そらまた失礼しましたー」

「え?」

 クエルプランがコパンドンの言葉に返事をし、コパンドンはそのまま帰ろうとする。シィルはいきなりの展開にあっけにとられる。

「ってなんでやねん!?」

「違うのですか? 地上の情報を仕入れていたら、そういう風に返すと聞きましたが」

「いや、あってるけど……」

 さすがにクエルプランがそんなコント情報を仕入れているとは思わなかったのであった。

「ま、まあとりあえず傷心中のランス励ましに来たんやけど、……ある意味予想通りやねんけどランスのこんな姿見れるとは思わんかったわ」

「……しくしくしく」

「商売中の雑談で家族ネタ出るけど、男親の悲哀はランスと似たようなもんやで。

 小さい頃はお父さん大好きと言ってくれてたのに、だんだん他に興味や男友達も出来てきて構ってくれへんようになってきた。

 そんで突然男出来たとか、場合によっては子供出来たとかな。

 それも子供が成長したという証明やねんけどね。

 リセットは外交官でもあるから、うちも仕事で話すときは立派やったからなあ。

 あの可愛い可愛いリセットが恋やねんから感慨深いわ」

「やかましい、そんな理屈なんぞ知った事かー!」

「まあそうやな。だからランスが好きそうな話持ってきたんやけど聞くか?」

 そう言いながら、コパンドンはランスの横に腰かけて、ランスの手を自分の太ももに触らせておく。

「……女?」

「ちゃうで、もう一つランスが好きなんあるやろ、貝集め」

「珍しい貝でも見つかったのか?」

「うちが今度スポンサーとして開催する物産展やねんけど、海産物中心になるんや。

 珍しい貝とか綺麗なんは装飾品としては売れるからな。それにイクラとシャケも試食させてもろたけど美味しかったで。ウニとカニは無いし、主催者はハニーやけど」

「何故ハニーが主催者なんですか?」

 確かにランスは女は大好きだが、珍しい貝にも目が無く、お気に入りの貝が割れてしまった時も随分悲しんだものである。

 そしてハニーが物産展を開く事にシィルが疑問に思う。

「うちもなんでハニーが主催者やねんと思って、大丈夫かと思って確認した。

 そやけど内容自体は真面目やし、ええ風にいきそうや思たからな。

 ただ、……ハニーから言われたんは、

『今回のコンセプトは、き・に・す・ん・な。なんだよね。なんかお告げが降りて来たんだよ』

 やて。ほんまハニーはよくわからん」

「……生命体として管轄していた筈ですが、一部禁則事項扱いもありましたね」

「そう言う訳でランスどうや? スポンサー特権ちゅうことで販売予定の貝のリスト持ってきたし」

「……見る」

 ランスは興味が湧いたのでそのリストを見るべく、手を動かす。

「ほい。……んぅ」

 リストを受け取る際にコパンドンの太ももに乗せていた手を滑らせたので、コパンドンが少し感じたのか艶のある声を出す。

「……むふ」

「そこに書かれてるのは確実に入荷するんやけど、数が揃うかとか交渉中とかで未定になってるのもあるから、それがわかれば更新する予定や。その時はまた見せようと思うんやけど」

「ほうほう。お、サクラ貝か。他にもいくつか俺様が実物を見たことが無いのもあるな」

 リストを見ながら、ランスはコパンドンの太ももに置いている手を動かしていく。

「はぁ。他にも女性向けに化粧水・乳液・香水とか、女性向けの商品とかも置いてあってな。

 シィルちゃんも冒険してたらわかるや……うく」

「ぐふ、どうしたコパンドン。俺様の手がそんなに気持ちいいのか? うりうり」

 リストを見ながらも手を動かしていたランスは、コパンドンの紅潮した顔に気をよくしていく。

「ふぁ。あ、当たり前やろ。うちはずうっとランスに触ってほしかったんやで。それにうちかてもう年や。それでも女なんや。もうランスに抱いてもらわれへんと理解はしてても、もしかしたらって思うて頑張って体は磨いてたんや」

 そう、ランスは30過ぎた自分を抱いてはくれたが、もうコパンドンは50近い。

 しかもランスは魔王であった期間もあるため、肉体年齢的には20半ばである。

「ほうほうほう。確かに触ってても変わってないように思うな」

「……ならうちの全部確かめてくれる? 今更ランスを買えるなんて思てない、でも少しだけでもランスの時間をうちにちょうだい」

 ランスの耳元に口を持っていき、精いっぱいの艶を出してコパンドンが誘う。

 その時ランスの鼻腔に香る匂いとコパンドンの健気さに、ランスのハイパー兵器が反応する。

「がはははは。俺様モテモテ」

 すっかりその気になったランスはいつもの大口笑いになって、コパンドンをお姫様抱っこする。

 そしてそのまま寝室に突撃していくのであった。

「……なるほど、ランスは若い子しか抱かないと言っていましたが、ああやって女性はその気にさせるんですね」

「と、とりあえずランス様元気になってよかったです。……ただリセットちゃんの件全然解決していませんけど」

 ランス、その時を楽しむ天才でもあった。

 数か月後、女性専用の試験紙を確認し、ガッツポーズしながらにやける世界最高峰の豪商がいるのであった。

 

 

 

 豪商の勝因

 ①男の傷心に付け込む

 ②男の気を引く材料を早急にそろえた事 

 ③努力

 ④タイミング

 ⑤☆危★険☆日☆彡

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。