短編・中編まとめ   作:ayasaki

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スシヌちゃんはお年頃(ランスシリーズ)

「アレクさん大好きです」

 主人公に真っ直ぐに愛を語るキャラクターの台詞。

 人によっては微笑ましいと見るか、自分も言われてみたいとか、悶えるであろう。

 その中で読んでいる人はというと、

「あうあう」

 純愛王道物語の小説を読んで、恋愛経験がまともに無いせいか悶えるスシヌ。

 冒険後のスシヌはゼス帰還後は、部屋に引きこもらずに少しずつ仕事をするようになっていた。

 しかし、仕事が終われば自室に戻って本を読んで楽しむのも日課であった。

 その中でお年頃なスシヌとしては、恋愛が題材の1つとなっている物語は特にお気に入りのジャンルである。

 だが、恋愛経験がまともにないスシヌとしては、物語の登場人物の台詞で自分が言うことを考えたら恥ずかしくなってしまうのも一連の流れの鉄板になっている。

「……恋かあ」

 すぐに思いつくのは、姉弟だけど恋人同士になったリセットとエールの仲睦まじい様子。

 手紙などでリセットからの内容はというと、シャングリラの進展や仕事関連の報告。

 そして恋愛話。

「いいなあ、リセットお姉ちゃん」

 スシヌとてお年頃。

 恋愛したい、してみたい。

 しかし、ゼス国の王位継承権1位のスシヌは好き勝手に恋愛できるかというと難しい。

 自分の身分を考えれば、適当な相手は無理だし、その相手も注目される事間違いなし。

 軽い気持ちで付き合おうにも、そこから大ごとに発展しようものなら下手をすればゼス国どころか他の国まで面倒くさい事態になる可能性も含んでいる。

 一応、兼ねてよりリーザス王国からザンスの婚約者としての要望はある。

 だが、マジックがリアに政治の舞台で勝てる要素は無い。

 その為、ゼスとしては下手すればスシヌがリーザス後宮に入って、リーザスの隷属国家扱いになる未来が目に見えているので、婚約予定は無い。

 王族でなく市井同士の異母兄弟ならもう少し前向きだったのかもしれない。

 その点、エールの場合はAL教宗主の息子とはいえ次期宗主というわけでもないし、ある意味カラーの婿養子になるようなもの。

 そしてリセットもカラーの次期代表になるが、それも当分先であるから障害になるような事象など父親のランスの強硬な反対くらいである。

 それに関してもエールが頑張って認めさせるために強くなっているから時間の問題であろう。

 ただ、リセットだけであろうか?

 確かにランスはリセットを目に入れても痛くないくらい可愛がっているのは、誰の目からも理解できる。

 そうするとスシヌ・深根・レリコフ・ウズメに関しても男が出来たと知ったら、取り乱すのだろうか?

「……パパ私達には優しそうだけど、どう行動するのかわからない」

 まず確実に反対するだろうが、どのように反対するか? その後の行動が読めない。

 場合によっては誘拐紛いのことをしてもおかしくないのがランスである。

 ただ時々考えるのは、父であるランスと他愛もない会話をしたいと思う事。

 自分を可愛いとは言ってくれたし、娘として認識してくれた。

「うーーーーーん。やっぱり会いたいなあ」

 ある意味子供達の中で一番ランスと接したいと考えているのは、スシヌかもしれない。

「スシヌー、今いい?」

「ママ?」

 部屋の外からマジックが呼んでいた。

 そして部屋に入室してきたマジックの表情を見てみると、眉間に皺を寄せて困った顔をしている。

「どうかしたの? ママ」

 とりあえず疑問をそのまま口にして返事を待つ。

「……あー」

 少し躊躇しているのか、言いづらそうにするマジック。

「スシヌ」

「うん?」

「会議でね……あんたの婚約に関する議題が出たの」

「ふえ?」

「これまでは父親の事もあったし、あの頃のスシヌにとっては負担にしかならないと判断してたんだけどね。

 魔王問題も解決したし、帰ってきたスシヌの成長を見て安心できるようになりました。

 それに最近は少しずつ仕事も手伝ってくれたおかげで、スシヌ自身に期待する声が大きくなってきたわけ」

 マジックから望外に評価されているように感じるが、スシヌにとっては今までと比べたら確かに変わろうとして頑張った結果ではある。

 しかし、スシヌにとってはまだまだ自信がついたなどとは、胸を張って言えない。

「え、えと。で、でも私なんて皆と比べたら全然だし」

「それでも見てる人はちゃんと見てるのよ。元々素養は充分だし一番気にかかっていた改善点もいい方向に進んできた。となれば今度は国内の将来の安泰を望むのは自明の理ってやつ」

 褒めてくれているがマジックの表情を見る限り、反対しているようにしか見えない。

「ゼス女王の立場としては前向きに考えるべき事だけど、親としてはまだ負担にしかならないと思うから反対なんだけどね。

 でも婚約者候補は本格的に募って、進めていくことは決定事項なのよ」

「……こ、婚約」

 恋とかそういうのではなく、一足飛びに将来の伴侶話。王族である以上スシヌも何となく理解はしているが、やはり突然であったので感情の理解が追い付かない。

「ママもスシヌの年頃には婚約者はいたから、この議題は早すぎるわけじゃないのよ?」

 マジックにアレックスという婚約者がいたことは知っているし、そこから急展開でランスと知り合ってスシヌは産まれた。

「あら~、でもスシヌとしてはエールちゃんが気になってるんじゃないかしら?」

「おばあちゃん!?」

 さっきまで杖から気配感じさせていなかったのに、こういう話題に目が無いパセリは早速突っ込んでくる。

「それは分かっています。

 ですがエール君はリセットちゃんと付き合っていますから、さすがに候補には考えておりません」

「うーん、私としては本人が良ければ複数でも問題ないんだけどね」

「問題あります! ランスは例外中の例外だしスシヌは次期王としての立場もあるんです」

 ……自分のちょっとした恋心があっさりと見抜かれているのが辛い。

 事故とはいえファーストキスの相手で、冒険中どんどんカッコよくなっていくエール。

 始めて知り合ったのがお年頃だったこともあり、異性というものを少しは意識するようになったスシヌとしては、異性として考える方が先に来てしまう。

 ザンスは産まれたころからだし、あくまでも家族の意識のほうが大きいのだ。

 ただスシヌにとっては、何だかんだで大好きな家族として接しているが、他者から見れば世界最高峰の高嶺の花扱いされること間違いなしの家族であることを忘れている。

「うーんと、ママ」

「ああ、ごめんね。勿論スシヌが本気で拒絶するような相手は候補にも入れないから」

「違うのママ。それってやっぱりゼス国からになるの?」

「そうね……今のところ候補になるのは、国内なら年下だけどウスピラ・サイアス将軍夫婦の息子さん。

 国外からも考えられるんだけど、さすがにそっちはまだ候補も出てないんだけどね」

 必要な事とは言え、相当面倒な仕事になるのが分かっているので、マジックは頭が痛そう。

「そうなると相当数の売り込みが来そうねー。

 スシヌは可愛いからそれだけでも異性は寄ってくるものなのに、その上で王族だからとっても大変」

「パセリ様言わないでください。理解はしていても千鶴子とウルザにとっても婚約者候補を募るなんて未経験だから、どのような手順で進めていくか悩ませてるんですよ」

「あははー、でも最終的にはなるようにしかならないわよ。私の場合は行き当たりばったりみたいなものだったし」

 眉間に皺を寄せ、そこに手を持って行く。そして溜め息を付くしかないマジックである。

「そういう訳で今後スシヌには婚約者候補になる男の子と顔合わせすることがあるということを理解しておいてほしいの。

 ただ性急に進めて、スシヌにとって負担になるような進め方はしないようにするから」

「うう、正直まだ家族以外の男の人怖い」

「……乱義君がJAPAN国主でなくただの有力者だったら、お婿さんとしては最有力候補だったんだけどねえ。エール君もリセットちゃんと付き合ってなかったら、候補としては文句無しよ」

 異母兄弟とはいえ、家族が夫というのは問題ないのであろうか。

「私の相手ってどういう基準になってるの!?」

 乱義やエールなら安心できるが、普通は兄弟でなく他の相手も考えてしまう。

「勿論スシヌを大事にしてくれることが一番よー。でも王族ってどうしても立場っていうのがあるから建前と本音の使い分けとか、国益とか明るい未来とかを国民に思い浮かばせることも大事なのよー。

 私の時は未来とかいうより目の前の難題を解決することが優先だったわねー」

 パセリもマジックもスシヌを大事に考えてくれてはいるが、やはり王族としての責任もあるので色々考えねばいけない事情が山ほどあるのだろう。

「……あと、ランスの事も考えないといけないんだけど」

「パパのこと?」

「これまでの事情が事情だったとはいえ父親だし、娘の婚約に関する事だと話だけは入れておかないといけないの」

「うーん、小さい時のリセットちゃんへの親馬鹿ぶり思い出すと……大暴れで済むかしら?」

「言わないでください。正直なところ相手がエール君だったからこそ、あの程度の騒動で収まったというのがゼス首脳陣の結論です」

 魔王じゃなくなってもランスは頭痛の種にしかならないようである。

 だが、ある意味スシヌはランスが話に出たこともあって、改めて会いたいということを言う。

「あ、あのね、ママ」

「うん?」

「私、パパに会いに行きたいの」

「……え!?」

 娘が父親に会いたい。

 当たり前の事なのに、驚くようなことになってしまう。

「だ、だめよ! スシヌだけで会いに行ったら、ランスが何するかわからないの!

 いくら何でも実の娘に手を出すとは思わないけど、あのランスよ!?

 全裸で娘の前で大笑いしたり、そういう行為を見せつけてもおかしくないの!

 だからスシヌ一人で会いたいなんて考えないで!」

「ママのパパへの評価ってどうなってるの!?」

 マジック、ちょっと錯乱しそうになっている。

「あ~、ランス君だからねえ。幽霊の私を見た時でさえ、どうすればヤれるかがまず言葉に出てくる子だから、年頃の娘への配慮なんて考えれるわけ無いから」

「……ママ、何でパパを好きになれたの?」

「き、聞かないで。ママだって出会った時の事を考えたら、今でも頭が痛いのよ。

 それでも何だかんだでランスなら、何とかしてくれるから頼りになるの」

「まあランス君の行動って、見てるだけでも巻き込まれるにしても確実に今までの常識投げ捨ててくれるから面白いわよ」

「パパ……」

 そんなこんなで、ゼス初代王・現女王・次期女王の一幕は、結局ランスの話になるのであった。

 その後、スシヌは改めてランスに会いに行くことも決まり、また手紙を書いてみる事となる。

 息子ならともかく、娘になら配慮してくれるはず! というマジックの妄想という願いも込めて。

 ランス、自分の可愛い娘の相手ならば上機嫌に相手してくれるはずである。

 多分、きっとメイビー。

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