ウォルターも好きだけど、ウォルターだとヒラコー節は長くても3行位かな。
しかし少ないと悦が入ったような台詞になるから難しいな。
「その醜悪な面をいつまでも私の前で曝け出すな。
身も心も魂さえも、穢れた貴様達が私の道を塞ぐ事など許さん」
そうして私は塵芥となる敵兵士を鋼糸で切り裂いていく。
その横では二丁拳銃で敵を撃ちぬき、ガトリングガンをぶちまける二人がいる。
「何それ、その武器全部くれ。それでローマ滅ぼしてくる」
「ふざけたこと言ってんじゃねえぞ、爺」
荷車の中央でほざいている爺二人の戯言を聞きながら、私は煙草に火を付けて、肺に煙を満たしていく。
「ん? お前も煙草持ってたのか。後で一本くれ」
「断る」
この世界で手に入る可能性が低い煙草を、くれてやる必要など私には無い。
「っち、あー煙草吸いてえ」
「そんなこと言ってる場合か、お前ら。前方に何かたちの悪い敵いるぞ」
視線を向ければ、そこには巨大な竜が大口を開けて、炎を吐こうとしていた。
即座に私は鋼糸を竜に向かって、切り裂こうとした瞬間に、竜は横からの衝撃で息絶えた。
その衝撃を作った原因はいつのまにやらこの世界に招かれたであろう日本の国旗がペイントされた戦闘機。
ここにいる漂流物達同様、突然召喚されたにも関わらず、この戦場に対応したのだろう。
そして周囲で被害を撒き散らす竜や豚どもを掃射して、敵の戦力をそいでいく。
「漂流物だ! 漂流物だった!!」
そう言って喜んでいるのは十月機関のリーダー格の男性。
だが喜んでいる間にも、私達の眼前には敵兵士が詰め寄ってきて、私達を殺そうとする。
しかも荷車を止めようと、縄まで用意していた。
「めんどくせえなあ、さっきからバカスカ撃ちまくったから、弾丸そろそろやべーよ」
それはそうであろう。包囲された敵陣の中を突破するのだから、弾丸の残量など気にしては脱出できるわけが無い。
「ってことで、そっちで一人だけ煙草プカプカやってるあんたが頑張ってくれよ」
「まったく、好き勝手にほざいてくれるな貴様ら。
だが、このような下らん戦争で殺されてやるほど、私の価値は低くない」
そう言いながら、私は両手を思い切りよく動かして、前方の豚兵士共を縄ごと惨殺した。
「悪知恵、浅知恵、豚知恵しか知恵が働かないというのならば、原初の頃からやり直して来い」
「おーこわ、敵の中でも大暴れしてる奴らは無茶苦茶だけど、お前もたいがいだな」
「抜かせ、西部で轟くほどの悪名を垂れ流した強盗団一味」
「お? ってことはそれ以降の時代から来たのか? あんた」
気軽に話しかけてくるブッチとキッドだが、雨霰に銃を撃つ手を止める事はない。
「おい、何か今度は将軍みたいなのが戦渦撒き散らしてるぞ」
右目で前を射抜くように見据えるハンニバルが呟く。
私もその前方を見据えて、目にしたものは、西洋の騎士。
だがその光景はまさしく地獄絵図。
「あはははは。燃えろ燃えてしまえ。
みんなみんな灰になれ! 空に水面に浮いて漂え!!」
言葉を発する騎士が、手に持つ剣を振れば、その周囲は炎に包まれていく。
村を焼き討ちしていくかのように、兵士達はまるで火あぶりされるかのように燃えていく。
そして、騎士は次の獲物を見つけたとばかりに、こちらの進む道に陣取り、剣を構えようとした瞬間、その場所を神速で移動した。
「何だよあれ。散弾並みに撃ち込んだ弾丸を平気で避けるって人間か、あれ?」
いつのまにやらガトリングガンで騎士を狙ったのだ。
しかし騎士であるということは、中世か中世に近い時代の人間であるはず。
だが実際に弾丸を避け、その上でこちらに突撃をしてきた。
ならばと思い、私は鋼糸を飛ばす。
なのに鋼糸は騎士の剣に防がれた。
「ほう、私の鋼糸が見えたようだな」
「感心してる場合か! 現状あいつ何とかすれば撤退できる。
鋼糸だか何だか知らんが、あいつ拘束して、そこらへん転がしとけ!」
私に対して怒号のような声で言ったのはスキピオ。
「簡単に言ってくれるな、その鋼糸が見えている奴だから拘束も難しい」
「お前さんの鋼糸というのは重いものを持ち上げるのも可能か?」
呟く形でハンニバルが私に問う。
「可能だ、1tだろうと楽に持ち上げれる」
「なら、あいつに向かって敵兵士数十人ほど纏めて放り投げろ」
普通に考えれば、このような状況で発想を出すことさえ難しい。
だがさすがに歴史に名を残すほどの人物、考え付いても実行できるか怪しい策とも言えぬ策を、平気で口にした。
「あういう奴は平気で斬るだろうが、その間にすり抜けれれば良し。
時間稼ぎとその後の進路の妨害も出来る。
ついでに第二弾も出来るんならやっちまえ」
「了解した、私的にもそのほうが楽そうだ」
了承の返事と共に、私は即座に群がる敵兵士を拘束し、そのまま騎士に向かって、ついでとばかりに敵兵士達の武器を向けさせながら放り出した。
それに対し騎士は一瞬躊躇するかのように動きを止める。
しかしハンニバルが言ったように、次の瞬間には剣を振るった。
斬られた敵兵士達が燃える。
肉体が、血が、服が、武具の木製部分が、喰われていくかのように燃えていく。
だがその燃えていく時間が私達の逃走する時間を稼ぐことになる。
同時にもう一度敵兵士をぶつけておいて、確実な時間稼ぎを私は行った。
後先考えずに戦うなど愚の骨頂。それはまさしく自分の全てをBETする時。
この程度の敵にオールインする気など一欠けらも足り得ない。
私がそれを行うのはただ一人。
あいつだけなのだから。
そして私達は遂に包囲を突破し、今度は追撃を免れるべく、後方に弾丸と鋼糸を置き土産にする。
その後は全速力で離脱すべく、ブッチが手綱を握って馬を急がせる。
ある程度の距離が空くと、十月機関のリーダーは最早制圧されたといっても過言ではないカルネアデス国境要塞を見つめる。
そして歯軋りと拳を握り締めながら、
「お前の好きにはさせん。
させんぞ黒王!!
必ず間違いは正す!
お前たちはここにいてはいけないのだ」
その言葉には私では理解できない、もしくは理解しがたい思いが込められているのであろう。
だがそのような思いなどどうでもいい。
そう、この私とてあいつと戦う。
それだけの為に主君を裏切ろうとしているのだから。
だから私にとってこの世界など、どうなろうと知った事ではない。
ただ理不尽に召喚され、力を貸してくれと言われた。
本来ならその場で、首と胴をお別れさせてやるところであった。
だが歴史に名を残した者達に戦える。
これは戦う者ならば、一度は夢見る事。
幻想を、憧憬を、共感を抱いた人物に遭遇したら、誰とて歓喜するだろう。
例え出会えなくとも、実際にめぐり合う先人に新たな思いを抱く事とてあろう。
ならば自分の世界に戻る時まで付き合ってやっても悪く無い。
飽きてはいないが、いささかゴミ処理もマンネリになっている。
だったら幻想の戦争に、先人と争う事も刺激的だ。
「Summer grass, the dreams of warriors, have gone」
私が帰る時に、この世界がどう変わっていくか。
それを見届ける気は無いが、この台詞だけは吐いてやることを決めた。