「どわあああ!」
タカは絶叫を上げながら、衝撃で吹き飛ばされた。
「き、今日はこの辺で勘弁しといたる」
ポリトーチカによる長々距離砲により、何発も攻撃されたタカ。
三発までは何とか耐えられたのだが、さすがのタカも四発目で耐え切れず吹き飛ばされてしまうこととなった。
そして最終結果として、
「今回の異次元穴攻略は失敗です。突入した皆さんは少し待っていてください。すぐに回収キッズで突入させます」
ママトト異世界勇者隊は屈辱を味わう事となった。
その後、タカはママトトの医療部屋にて治療を受ける事となった。
「ううー、あの砲台めー。あんな遠いとこから攻撃されたらどないせえっちゅうねん」
攻略失敗の最大要因となった砲台に文句を言うタカ。
痣の出来た場所を摩りながら、次は絶対壊すと心に誓うタカ。
「とりあえず、今日はもう出撃できへんし、ゆっくりしよ」
気を取り直して食事と風呂を済ませるタカ。
その後、ママトトから戦線を見渡せるテラスにタカはなんとなく足を進める。
「お~、皆がんばってるなあ」
右手を額の前に添えて、戦線を見渡すタカ。
モンスターを相手にそれぞれの獲物を手にして、殲滅していく異世界勇者達。
時折、ナナスが指揮する放送を耳にしながら、タカは風呂上りの一杯をあおる。
「しっかし、アリスソフトの人気キャラとか主要キャラとかがこんだけおると、壮観というか目の保養というか、ええ言葉がでてこーへんわ」
現実でわいどにょプレイ途中のタカとしては、全キャラを出演完了する前に自分も召喚されたので、せめて失敗しまくっていた異次元穴をクリアしたかったと思った。
「まあ、こっちで異次元穴攻略したらええか。さすがにゲームみたいに5ターンで療養完了とはいかんから、数人を中心にLVアップで攻略できるわけないからなあ」
タカ自身異世界勇者メンバーの中では早めに召喚されたのもあって、現在は主力として活躍しているが、主役やメインキャラクラスが来たら次点くらいが精々と思っている。
「ま、そん時はそん時やな」
ナナスに言えば、現実にはいつでも帰れるので、タカは今を楽しむ。
「ん? タカくん、療養してるのに、どうしてこんなところにいるんだね?」
タカは不意に後方から声をかけられたので、振り向くと、そこには豪がいた。
「おお、豪さん。何となく気が向いたから、ここにおるだけですわ」
「なるほど、戦線を客観的に見ることによって、自分がどう動くかシミュレートしているところか」
「や、そこまで勤勉ちゃいますから」
ちょっと違う方向に答えられたので、一応突っ込みをしておくタカ。後、豪は年上なので基本敬語で話す。
「ふむ、直進馬鹿で突っ込む弟に教えてやりたいくらいだ」
「豪さん、人の話聞いてますか?」
「だが、それでも何とか出来てしまうほど強いのはいいが、足元を掬われぬように頭を使わせたいのだがなあ」
「おーい、豪さん?」
「弟もこちらにくれば嬉々として戦うであろうが、戦術・戦略・戦法・指揮の重要性を理解させねば、いくらナナス君の指揮であろうとも難しい」
「……えーと、確かまだあれ持ってたな」
「だが、動物的直感や持ち前の運で何とかしてしまうあいつだ。更なる成長を促すにはうってつけかもしれんが、いっそのこと後方支援をやらせてみるのも有りかもしれんな。
しかし、そうなるとフラストレーションが溜まりまくるから、ガス抜きさせるには」
「久しぶりに、これやるなあ。自分の世界から戻って来い!」
一人で話しまくる豪にタカはひらりハリセンで叩いて、現実に戻そうとした。
ブン!
ひらり
後もうちょっとで、ハリセンのいい音がしようとしたところで回避された。
「あら?」
「はっはっは、まだまだ甘いなタカ君。其の程度の突込みでは俺に当てることは不可能だ」
「最弱の文字はどこいった? 豪さん」
「LVアップはしているから、更なる最弱となった俺に不可能は無い!」
「待て! 普通反対でしょうが!?」
「はっはっは、安心したまえ。俺の辞書に普通という文字など存在しない!」
「更に待て! 普通という言葉をどこやった!」
「何を言う、普通という言葉で人を括りつけることなど出来ん!」
「三度待て! 言うてる事は正しいが、何かずれ取る」
「ズレたのならば、そのまま突き進むたまえ。それこそ男の道だ!」
豪、絶好調。
タカの突っ込みを斜め310度で返答してくれる。
「漢の道と聞けば、黙っておれんな」
「更に更に更に待て、どっから現れた! タイガージョー!」
いつの間にやら、タカの横に控えていた虎のマスクを被ったタイガージョーがいた。
「漢とは例え突き進む道が絶望であろうとも、譲れぬものがあるのならば迷わず征く」
「そのとおりだ、タイガージョー。そして常に己を律し、大切な人達の心を守らなくてはならない」
タカの突っ込みを無視して、豪とタイガージョーは漢という言葉を語り合う。
「しかし、その大切な者達を成長させるために、鬼となり悪魔となり己が壁となって立ちはだかる事も必要と思う」
「それも一つの方法だ。だが自分が影となり日陰となり、自分で立ち上がる切っ掛けを作らせるのも重要だ」
そういや、大番長では学園編から豪という頭脳がいたからこそ全国制覇できたなとタカは思い出す。
実際、豪がいなかったら狼牙軍団は内政面で崩れているだろう。
いくら主人公にカリスマ性があっても、それを支える事においては武人だけではどうしようもない。
ゲーム中でよく狼牙に殴られていたが、狼牙が豪に対して絶対の信頼を置いていたのは疑いようが無い。
「うむ、だが立ち上がり成長したからといって、容易に褒めることは出来んぞ豪」
「それについては同感だ。有頂天になった時ほど、油断という言葉が理解できなくなる」
「ならば、その有頂天を根元からへし折るべきではないだろうか?」
タカ置いてきぼり。
二人はどんどん漢道を論じ続ける。
「豪。話を聞く限りあなたはその弟を誇りに思い、更なる高みを目指させているのだな」
「っふ、君もそうであろう? タイガージョー。考える方法は違えど己を踏み台とさせようとしているのがよくわかる」
「漢の強さとは、戦う力だけでは一割も満たぬ。だが戦う力が無ければ大切な者達を守れない。
優しさと厳しさ、何より己に甘さを見せた瞬間、自分で自分を貶める事となる」
「しかし、常に張り詰めていれば、いつか自分の心が磨り減って潰れてしまうぞ」
「む、確かにそうだが」
「時には自分を褒め、心身共に立ち止まって癒す事も大切だ」
「ふむ、一理あるな。礼を言わせてくれ豪。あなたと話す事で己を更に高める事が出来る」
「っふ、気にするなタイガージョー。君と話すことによって俺自身自分を再度見直すことが出来る」
タカの目の前で二人は同時に手を差し出し、爽やかに握手を交わす。
(Only Youはアニキがプレイ中に横目で見てた程度やったけど、タイガージョーってこんなキャラやったんか)
タカは子供の時に、アニキがプレイしていて燃えていたことを思い出す。
タカ自身、漢キャラは好きなため、なんだかんだで記憶に残っている。
「あ、そういや人間でないけど漢な漫画あったなあ」
タカがボソっと呟く。
「ん? タカ君。それは君の世界のことかい?」
タカの呟きに豪が反応する。
「あ、うん。犬が熊を倒すのが目的の漫画や」
「ほう、興味があるな。覚えている範囲で語ってもらえないか?」
タイガージョーもタカの漫画の話を話してくれるように言ってきた。
タカとしてもお気に入りの漫画なので、少し嬉しく思う。
「ええで。んじゃ覚えてる範囲で語るわ。かくかくしかじかまるまるさんかく――省略」
タカは物語がどう始まり、漢達の友情・心意気・気高さを身振り手振りを加えながら、豪とタイガージョーに伝える。
そして、目的の熊を遂に倒したところまで話し終える。
「っく、これこそ漢だ。自らを研鑽し、信頼できる漢と共に宿敵であり、天敵を倒す」
「また、信頼するが故に、そして成長して欲しいが故に、身を焦がす思いで自分は手を出さないなど、まさしく漢だ!」
タカの漫画の話に、二人が感動しながら感想を言った。
「自分は土佐犬の最後に心を打たれた。自分が助かろうとすれば更なる犠牲を仲間に強いる。それでも助けたいとした主人公の心にも共感できる」
「それにグレートデンも素晴らしい。目が見えぬことに嘆く事も無く、ただ戦えぬことになるから悔しいと思い、それでも戦おうとする強き意思。
また熊を引きずり出すために、傷つく事もいとわず自らが立ち向かい熊を牙城から追い出す事に成功した」
「「まさしく、漢!」」
「そのとおりやタイガージョー、豪さん。漢ならばわかるはずや。
敵を一人で倒すのも一つの漢の戦いや。
けど背中を預けるに値する強敵(とも)と共に、凶悪な敵を倒す。
これも一つの漢の花道やということに!」
タカはグッと握りこぶしを作りながら、二人にその心意気を告げる。
「ああ、そうだ。そして真に残念だ。君の世界にある漫画を直にこの目で読めないことに無念を感じる」
「同感だ。漫画など軟弱と思っていたが、その心を伝える事に境界など無い事。
その事を今日まで理解していなかった事を恥じよう」
タカ・豪・タイガージョーは示し合わせたように、互いの握りこぶしを合わせる。
その後、この三人が同時に出撃する時、場が燃えるのは言うまでもない。