ジュージュージュー
肉の焼ける音が周囲に響き、同時に香る肉の香りがタカの胃袋を刺激する。
無意識に唾が口の中で溜まり、タカは唾を飲み込む。
シンプルに塩胡椒を振りかけ、後はタカ好みの少し焦げる位まで焼くだけ。
しかし、其の時間さえも待ちきれない位にタカはウズウズしていた。
「うー、はよ焼けてくれ」
一度は食べてみたかったまんが肉。それが自分の目の前にあり、そして実際に食べる事が出来る。この事にタカは嬉しさを隠し切れないでいた。
「もうタカ君。子供みたいよ」
タカに声をかけながら、微笑みを浮かべるのは金色の甲冑を装着している女性騎士レイラであった。
「俺がいた世界ではまんが肉はロマンなんですよ」
「そうなの? 私は自分の世界で見るから、ロマンはよくわからないけど」
「まあ、自分から見たらレイラさんの世界は大体300年以上前の文明くらいですからね」
「へえ、ということは更に色んなお酒あるのかしら?」
「自分は飲まないからどんだけあるか知りませんが、世界の裏側にあるような場所の酒も金次第では取り寄せれますよ」
「それは凄いわね」
タカはレイラと話しながら肉をひっくり返す。
焦げた肉の部分が食欲をそそる色となり、タカはまた唾を飲み込む。
「お酒欲しいわねえ。でも次の出撃を控えてる身としては我慢しないと」
「帰って来たらお酒渡しますから今は諦めてください」
レイラが物欲しそうに用意していた酒を見るが、自重している。
タカ自身は飲めるが、味がわからないのでお茶で十分だったりする。
「それまで肉とお酒残ってる?」
「取っときますわ。手伝ってくれた人をがっかりさせてどうすんです」
「ありがと。そう言ってくれると安心して出撃できるわ」
その後、出来上がったまんが肉に舌鼓をうつタカとレイラ。
時間が来てレイラは出撃していく。そして交替で戦場から帰ってきたメンバーにタカは肉を振舞っていく。
帰ってきたメンバーは先を争うかのように美味しそうに肉を食べていく。
「あー美味しい。戦線まで焼けた肉の香ばしい匂いが来てたんで、ある意味腹立ちましたよ」
帰ってきたメンバーの言葉にタカは少し笑いながら、肉をどんどん焼いていく。
同時に自分も食い、約束どおりレイラの肉とお酒を取っておく。
一応目印に酒瓶の下にメモ帳を引っ付けておく。
食べているメンバーは腹が満たされてくると、自分と同じように召喚されてきた異世界勇者達に話しかけていた。
そんな和気藹々とした雰囲気に、タカはナナスに無理言ってまんが肉を分けてもらった事が大正解だったと自画自賛する。
普段は話しかけにくくても、一緒に飯を食って腹が満たされれば、話しかけやすい雰囲気を作りやすい。
その結果で親交が深まれば、連携も取りやすくなる。
ついでにタカとしてはまんが肉を食えるし、好きなゲームキャラの共演のようなものを見れるチャンスがあれば一石三丁である。
「さて、一旦焼くのやめるか」
タカも腹が満たされ、見渡すと食い終わったメンバーが多数。
肉も四分の三が消費され、後は取り置きの肉とお酒と少しの野菜のみ。
後は今出撃しているメンバーが帰ってきてから焼けばいいとタカは決めて、休憩することにする。
とりあえず用意していたテーブルで休憩していると、
「タカさん、お疲れ様です」
タカへの慰労の言葉と共に、コップに並々と注がれたジュースが渡された。
「お、ありがとう。アーヴィちゃん」
タカはコップを受け取りながら、アーヴィに笑顔を向けた。
「ううん、こっちこそ感謝します。タカさんが企画してくれたおかげで楽しい一時を過ごせました」
アーヴィは感謝の言葉を言いながら頭を下げてくれる。
「ええよええよ。こっちも見目麗しい人らの笑顔で目の保養できたしな。勿論アーヴィちゃんも眼福やで?」
「もう、タカさんてば」
タカは正直な感想と笑いを含ませる台詞を言い、アーヴィはまた笑ってくれた。
それだけでタカは内面も外面も可愛い子は本当に癒し効果あるなあと実感する。
「まあ、実際この企画考えたのもワンさんやストーリンさんと話しこむようになってからやけどね」
「え? それはどうしてですか」
「んーまあ言うてまうと、ナナス君が目指す世界平和って言葉に共感してくれて、異世界勇者の人らは基本協力してくれてるやろ。まあ中には自分の為ってのもあるけどな。
つうても人間マンネリは飽きるし、戦うだけの日が続いたらええ加減嫌なる思うねん。
それに一度自分が協力するいうたんやから、容易に帰るなんて言いにくいしな。
んで実際にワンさんとストーリンさんに聞いたら、普段の生活やと一人になって行動してる人多いねん。ある程度は仲良くするけど壁があるって感じ。
せやったら何か楽しみ見つけたらええと思うねん。
親しい人と話すとか、美味しいもの食べるとか、面白い事探すとかな。
んでまあ皆で美味しいもの食べながら、親しくなる切っ掛け作ればええかと思ったからナナス君に無理言ってまんが肉譲ってもろたんや」
タカの場合はゲームで内面をある程度知っているためと、アリスソフトのゲームキャラ達というのもあって積極的に話しかけていたりする。
「タカさん、そこまで考えてくれて企画してくれてたんだ。ありがとうございます」
「別にええて、本音ではまんが肉食いたいってのと自分が楽しむためでもあるんやし」
「それ言っちゃったら感謝の気持ち半減しちゃいます」
「半分あったら十分♪」
アーヴィの言葉にタカは少し茶目っ気を出しながら答える。
この後もアーヴィと話しながら今度はまんが肉・はじめ肉・保守しいたけ・山のきのこでバーベキューを出来るようにしようとナナスに提案するのもいいかなとアーヴィと話し合う。
その後、タカはアーヴィに焼いた肉を持たせて、ナナスに提案と肉を届けることを頼んだ。
そしてレイラがノルマをこなして帰ってきた。
「おかえり、レイラさん」
「ただいまタカ君。とりあえず返り血と汗を流してくるわ」
「ほいほい。んじゃ其の間に肉焼いときますわ」
「ありがとう。それじゃ大急ぎでお風呂済ませてくるわね」
そう言ってレイラはテラスから走って出て行った。
「さてと、再開しますか」
タカは腕まくりのポーズで気合を入れなおしてレイラ用に取り置きしていた肉を焼こうとした。
「……あら?」
メモ帳を挟んで取り置きしていた肉と酒が何故か無くなっていたのだ。
しかし湿って破れたメモ帳だけはあったので、タカは硬直した。
「まさか」
即座にタカは今酒を飲んでいるメンバーを見渡す。
そして理解する。
犯人が誰であるかということを。
「ヒーローお前」
そうリザードマンモンスターのヒーロー。
周囲には空き瓶と化した酒ビンが何本も転がっていた。
その何本の酒瓶の一つに湿っていたメモ帳の切れ端が付いていた。
「飲みすぎて途中で判断できんようなったな、あいつ」
タカは左手を額に当てながら、呟いた。
しかも肉も既に残っておらず、後は食べかけの肉を残すのみ。
最早フォローのしようもなかった。
そして悪事を働いたものを裁く執行人が戻ってくる。
「お待たせタカ君。もう肉は焼けてるかしら?」
言葉通り大急ぎで済ませてきたのであろう。振り向いたタカが見たのは、髪がまだ湿っている状態のレイラであった。
しかしタカはその答えに何もいえなかった。
「タカ君、どうかしたの?」
タカの態度にレイラが少し怪訝な表情をしながら言ってくる。
だがタカとしてもフォローできないので、最早事実を告げるしかない。
「食べられました」
「え?」
「自分が休憩している間に、レイラさんの為に取り置きしてた肉と酒を持ってかれました。
一応メモ帳を挟んで置いてたんですけどね」
「……ねえタカ君。それ冗談かしら?」
「ちなみに犯人はあのトカゲです」
タカはレイラの表情を見て、即座に犯人を指差す。
万が一にもとばっちりを先に浴びないようにする為に。
「そう」
レイラは言葉少なくタカの横を通り過ぎる。
そのまま犯人の下へ向かったレイラは、
「私の肉とお酒を奪ったのはあんたね」
そう言いながら持っていた剣を抜いた。
背後から見ているタカでさえ、レイラが物凄く怒っているのがよくわかる。
「がははははは」
しかし、その張本人は酒が入ってるのもあって気付いていない。
「南無」
タカは最早レイラが怒ることは避けられないと理解して念仏を唱える。
その後、ヒーローはレイラに峰打ちで叩きのめされテラスに放置されるのであった。
怒りをぶつけた後不貞寝したレイラの為に、タカはナナスに速攻でまんが肉をわけてくれと頼むことになる。
このことにより食い物の恨みは全世界共通であることを認識するタカであった。
以下没ネタ
「責任とってお前の尻尾肉寄越せー!」
「誰が寄越すかー!」
「やかましい。トカゲやったらまたはえてくるやろうが!」
「無茶言うんじゃねえー!」
「無茶もクソもあるか人間根性あればなんとかなる」
「俺はリザードマンだ!」
タカとヒーローで漫才しようとしたがレイラが目立たないので没。同様の理由でたぬ