『シンダー・カーラの排除を……』
「……それしか道はないんだろうか? エア」
出会いは最悪だったけど、アーキバスに捕まった俺を助けてくれた人を裏切れと。
そしてウォルターの意思を捨ててほしいと俺に願うエア。
だけど、そんなエアにこれまでどれだけ助けてもらっただろう?
あのウォッチポイント以来、ずっと一緒にいてくれた友人。
しかし、エアはあくまでもコーラルというエネルギーでもあり精神生命体。
だけど、そのコーラルに群がってきたのは欲にまみれた人間でもあるのだ。
そして自分達の都合でコーラルを抹消しようとしてるだけとも見れてしまう。
『レイヴン。私の立場からすれば、それしか考えられないのです。
人とコーラルの共生を願う私。
ですが、彼女はコーラルを滅ぼそうとしている。
であれば私にとっては敵でしかないのです』
主人であったウォルターがいなくなり、自由の身となった自分に突き付けられた選択。
ただの強化人間で621のままだったら、こんな選択肢はウォルターに任せられていたのだろう。
ただ、依頼されたミッションをこなせば済んでいただけなのに。
『レイヴン。
貴方が迷う理由は理解できます。
ですが、もう……時間は無いんです』
「企業相手だったら……何も考えずに引き受けれたのになあ」
『レイヴン。
私は、私は貴方に私を選んでほしいんです。
貴方と共に歩みたいんです!』
エアの真っ直ぐなな思いが伝わってくる。
だけど、
「殺せない。
でもエアを、コーラルを滅ぼす気もない。
だからエア」
このルビコンを守ることは出来る。
「俺と元凶を滅ぼしに行こう」
このルビコンに巣食う企業を倒そう。
このルビコンに二度と欲望を持ち込ませないために。
そして、
「戦友。
また、肩を並べることが出来るな」
一度目・二度目・三度目は共闘。
そして殺し合いもした相手。
だが、その心根を知れば、背中を任せることが出来るACがいる。
「まったく。
馬鹿正直にあたしに脅迫とお願いをしにきやがって。
そんなんに絆されるなんて、あたしもやきがまわったかねえ。
だけど、分かってるだろうね。
ビジター。あんたが敵に回したのは企業どころか国家だってことを」
「ボス。ルビコン解放戦線より連絡だ。
正式に協力するとのことだそうだ。
それとビジターと轡を並べたい独立傭兵も参戦する手はずになっている」
これで俺たちは、ただの独立傭兵ではなくなった。
『まさか一勢力を率いる形にするとは思いませんでした』
エアが少し呆れたような声で囁く。
いつの間にか俺の知名度はルビコン全体に響いていた。
それを上手く活用した結果であるし、それだけ企業が嫌われていたということでもある。
だけど、それでも企業からすれば大した勢力にはならないだろう。
でも、忘れてはいけない。
『同胞達も準備が出来次第、参戦していきます』
ここはルビコン。
この星で産まれたルビコニアンというコーラルがいるのだ。
エアという存在が産まれ、そして友人でもある俺がいる。
つまり、ルビコンそのものが味方になる。
なら勝算はある。
故郷を・同胞を・生まれ育った星を・思い出を守りたいという気持ちは変わらない。
「まったく……コーラルそのものに意思があって、実際にそれを見せつけられたらねえ?」
エアは俺の依頼で様々なサポートをしてくれていた。
電脳・解析・ハッキング・操作などなど、実体は無いが実際には様々なコンタクトは出来るということなのだ。
つまりは、
「コーラルをエネルギーと見るか、生命体として見るか?
ルビコン全体に情報をばら撒いて、混沌の渦にするんじゃない!」
「そうでもしないと、カーラは納得してくれなかっただろう?」
エアに思いっきりルビコン中の電脳を荒らしまくってもらったのだ。
結果としてルビコン中を混乱させ、建前上存在する人権というのをぶちこんだ。
それにより企業を完全に悪と認識させていき、新たな反勢力を作り上げた。
「……それでも必死に企業側は火消ししているようだがな」
『アーキバスではスネイルが癇癪を起こしているそうです』
よく考えると、中間管理職なのだろうか? スネイル。
「ったくビジター。
ここまでの大ごとにしたんだ。
きっちり責任は取ってもらうからね。
ウォルター。あんたはとんでもないのを育てたもんだよ」
さあ行こうか。
企業という悪をルビコンから追い出して、ルビコンを解放する。
コーラル。
人と共生できるかはまだ分からないだろう。
だけど、俺とエアという前例がある。
だから、その未来を信じて俺なりの選択肢を選んで戦い抜くまでだ。