ぼっちゲーム実況者、神ゲーにぼっちで挑まんとす   作:こっここーまん

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緊急クエスト開始!

 シャングリラ・フロンティア。

 神ゲーの名をほしいままにするそのゲームに、すっかりハマってしまっているプレイヤーが、今日もまたログインしていた。

 

「さてと、今日は……」

 

 現実から隔離された、気楽な世界。

 好きなように暴れるのが許される空想世界は、現代社会を生きるためには、必要不可欠な栄養素だ。

 

「素材集めついでに、テキトーにぶっぱできるところ……」

 

 どこにしたものかと、地図を開いていると、突然開く宿屋の扉。

 

「大変ニャのです!!」

「なに……?」

 

 入ってきたのは、NPCの長靴銃士団のひとり。

 

「ラビッツの修行に、キャッツェリアも手を貸すことにニャったのにゃぁ!!」

 

 NPCの言葉と共に現れた、緊急クエストのウインドウ。

 

【緊急クエスト】

『兎の国へ貸す手はごまんとある』

 

 ”ごまん”……

 

 クエストの名前にツッコミを入れるのはやめよう。

 

 聞けば、アラミースがお熱の思い兎が、古匠になるための修行を開始したことで起きたクエストらしい。

 フラグを立てた覚えはなければ、考えられるのは、ラビッツ側のシナリオを進めたプレイヤーがいる。

 

 シャンフロは、妙に現実感があり、ユニークシナリオが連鎖していたり、プレイヤーの誰かが引き起こしたイベントが連鎖することも少なくない。

 つまり、これにも、乗っておいて損はない。

 

 コミュ障ではあるが、アラミースの思い兎は気になる所だ。

 ”麗しの黒き乙女”だったか。

 

 黒の、兎……

 

 ふむ……

 

*****

 

 サンラクは『去栄の残骸遺道』で、大量の小型ゴーレムの自爆特攻を必死に避けていた。

 

「数が多い!! どんだけいんだよ!?」

 

 攻撃力そのものは、小型故か、それほど高くはない。

 とはいえ、サンラクの耐久力では、驚異に違いないが。

 

「ばーくーはつーするぅ!!」

 

 まだ余裕そうではあるが、爆発動作に入ったゴーレムから距離を取るサンラクに、ビィラックとアラミースも、誘爆に備えたその瞬間だ。

 

「マジックシールド」

 

 爆風からサンラクたちを守るように、シールドを張られた。

 

「へ……?」

 

 このパーティーの魔法職と言えば、エムルだが、こんな魔法を見たことがない。

 

 だとすれば、別に誰かということになる。

 

 サンラクが目を向ければ、確かに一人、杖らしきものを構えたプレイヤーが立っていた。

 おそらく、そのプレイヤーが助けに入ってくれたのだろう。

 

 ユニーク関係のNPCを連れていることもあり、できればプレイヤーと遭遇したくはなかったが、助けてもらってお礼もなしに逃げては、それこそ問題だろう。

 マナーがなってないとか、逆恨みされて晒されてもイヤだし。

 

「あーえっと、助けてくれて、ありがとうござ――――変態だぁぁあぁぁああ!?」

 

 お礼の言葉すら忘れるくらい、そのプレイヤーの恰好が変態だった。

 

「半裸鳥頭に言われたくないなぁ!?」

 

 それはそう。

 

「同族だと思ったんだけどなぁ」

「いや、俺はリュカオーンの呪いのせいで、好きで半裸してるわけじゃ……」

 

 サンラクは、助けてもらった手前、強くは言いたくなかったが、

 それほどまでに、目の前に現れた魔法職らしいプレイヤーの恰好が変態だった。

 

 頭にはうさ耳、顔にはペスト面。

 胴体は胸部だけを隠すきわどい服装の癖に、腕は二の腕までしっかり隠している。

 そして、腰には、燕尾服の下部だけ。

 本来、胴体装備や足と合わせる前提の装備なのだろうが、

 合わせる相手を完全に無視した、

 ガータベルトにヒールという装備。

 

 全体のまとまりとしては、

 とんでもなく際どいバニーガールにまとめ上げられている。

 

「シャンフロのレーティングどうなんてんだ……?」

 

 変態の中でも、相当変態というか、BANされても文句の言えない装備だ。

 

「個人的にも、最高レベルにド変態装備だと思ってる。

 ド変態バニーペスト装備! この統一装備でもないのに、統一感のあるこれを変態だと言われるのは仕方ない!」

 

 確かに、元々想定されている装備でもないのに、説得力のある統一感であることは認めるが、

 数々のゲームで、変態と呼ばれる人たちや、明らかにおかしなバグを見ていなければ、

 冷静なコメントを返すことも難しかっただろう。

 

「エムル。見るな」

 

 ビィラックがエムルの目を隠したくなる気持ちもよくわかる。

 

「アバター故に肉体が美しいからこそ許される装備!」

「せちがない……」

「そして、なにより! このペスト面、光ります!」

「おぉ~~」

 

 赤く目を光らせるプレイヤーに、サンラクは何も考えず、拍手しておいた。

 

「えーっと……プレイヤーですよね?」

「あ、はい。トーヘンポックンです」

 

 この変態プレイヤーも、装備自慢が終わって満足したのか、

 普通に、頭を下げて挨拶をしてくれた。

 

 変態な格好をするプレイヤーの大半は、自慢したかった変態行動が終わると、案外落ち着くものだ。

 トーヘンポックンもそのタイプらしい。

 

「サンラクです。助けてくれてありがとうございます」

「お気になさらず」

 

 無駄に光らせてきた、赤い目玉にツッコんだら、話が進まなくなる。

 さては、NPCよりも、NPCみたいな挙動するタイプだな。

 

「トーヘンポックンさんは、どうしてここに?」

 

 鋼の意思で、無駄に点滅させてくる赤い目玉を無視して、会話を進める。

 

 クソゲーマーのメンタルなめんじゃねェ。

 

「…………実は、キャッツェリアを拠点に活動してまして、そこの緊急シナリオなんです」

 

 顔は見えないが、反応してくれないことに諦めをつけたのか、光らせるのをやめて、会話に答えてくれた。

 

 キャッツェリアといえば、アラミースが所属していた国のはずだ。

 ラビッツとも関係が深いようだし、先程、アラミースもビィラックが古匠になるための修行を手伝うのは、キャッツェリアの総意であると言っていた。

 

 トーヘンポックンの緊急クエストも、キャッツェリアの総意故ということか。

 

「つまり、プレイヤー一人の行動で、関係してる他のプレイヤーにクエストが発生するってことか?」

 

 ウェザエモンの時もそうだが、凄まじいゲームだ。

 

 だが、そうなれば、確認したいことがある。

 

「あの、ちなみにキャッツェリアで、このクエストを受けたのは、何人くらいです……?」

「緊急クエストだから、偶然時間が合わないと難しいし……正確な人数はわからないけど、少ないんじゃないかな? フラグも不明……あくまで推測だけど、キャッツェリアに辿り着いてるだけでは、多分受注不可」

 

 少し含みのある言い方ではあるが、

 ラビッツ同様、キャッツェリアに入国するのにも、ユニークシナリオが関係しているのなら、この言い方にも納得できる。

 

 サンラクと同じ立場であるなら、トーヘンポックン以外のプレイヤーは、ほぼいないとみていいだろう。

 

「とにかく、キャッツェリアってことは、アラミースの……アラミース?」

 

 戦闘以外は、比較的「おとめ~おとめ~」とうるさいアラミースが、やけに静かだと思っていたが、

 目をやれば、トーヘンポックンを見て、言葉を失っているらしい。

 

「…………普段から、その装備では?」

「町中でこれだったら、普通に通報されるわ」

「意外に常識人……」

 

 常識人なのに、アラミースを絶句させるとは、怖い子……

 

 というか、やっぱりBANされるんじゃないか。その装備。

 

「奇抜とは思っていたが、なんというか……普段の装備にしてはどうだろうか」

「……これって、運営からの警告では?」

「アウトだったら、装備として通ってないはずだから、あくまで通告レベルでしょ」

「それってアウトなのでは?」

「BANされるまではセーフ」

 

 さいですか。

 

「あと、今更普通の服に着替えると、町中でバレるじゃん」

「…………」

 

 HNは、表示されてるんだし、意味ないのでは?

 

 いや、インパクトが違うか……

 

「とりあえず、何が必要か教えてもらっても?」

 

 トーヘンポックンは、本当にラビッツの手伝いをしろとクエストの場所以外の情報がないらしい。

 別で進めているプレイヤー交流前提の緊急クエストとは、随分な仕様だ。

 

 ウェザエモン討伐に関しては、運営にリークされてるが、どこまで話していいものか。

 

「サンラク殿。トーヘンポックンは、我が友にして、キャッツェリアが誇る長靴銃士団名誉団員。

 奇行は多いが、腕は信用してもらって問題ない」

「え、あぁ……そうだな」

 

 どこまで話すか迷っているのを、レベルの問題と勘違いしたらしいアラミースに、パーティーに入れるように遠回しに勧められる。

 連鎖して発生したユニークシナリオなら、協力をしておいた方が良いと促されているのだろうか。

 

 それにしても、NPCに奇行が多いって言われるのすごいな。

 今も、自信満々に目を光らせているし……

 

 なんで、プレイヤーにヘイト稼がれてるんだ? 俺。

 

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