アメリカ、サンフランシスコ。
8歳のジェームズ・コナーは学校にいた。
彼はいつもと変わらない日常を過ごしていた。
高級住宅街で生きるジェームズ少年は、何不自由のない愛の溢れた母親とともに生活をしていた。
そんな日常は音を立てて崩れることは彼には気が付かないでいた。
「ジェームズ!どこをみているのですか!」
歴史教師のミス・ヒルがメガネを逆立たせたような表情で怒り始めた。
「す、すみません。」
「まったく、あなたは成績がいいのにいつもそうやってうわのツラなんだから…まあいいわ!」
ミス・ヒルはホワイトボードへ向かった。
彼女は恐竜時代の説明をした。
「今から6500年前、この時代を支配していた恐竜は突如絶滅しました。これについては現在も議論がされています。果たして隕石だったのかウィルスだったのか。」
すると、幼馴染のチャーリー・ウォンが手をあげた。
「先生!」
「なんですか、ウォン君。」
「僕たちもいつかいなくなるんですか?」
ヒル先生は笑顔を浮かべ、心配性なウォンを安心させた。
「少なくとも、今日ではないわね。」
彼女の言葉とともに、チャイムが鳴った。
今日の授業はこれで終わりだ。
「さあ、もう終わりね。今日もみんなお疲れ様。また明日!」
生徒たちが立ち上がる。
授業は終わった。
ジェームズはすぐさま、スクールを出た。
ジェームズは親友のウォンとともに帰りの道を歩いた。
「恐竜の授業聞き飽きたのか、ジェームズ」
「ああ、パパとこの前テレビで見たことの繰り返しだったよ大好きなティラノサウルスの事も話さない退屈なばあさんだよなあいつ」
ジェームズの悪口を聞いてウォンは笑った。
彼は恐竜の授業なのだから、ティラノサウルスについて触れるだろうと期待していた。
しかし、退屈なミス・ヒルはそれもできなかったのだ。
「なあジェームズ俺たちも絶滅するのかな」
「まさか人間だぞありえないよ」
「そうなのかな…」
チャーリー・ウォンは首を傾げた。
「お、ごめんジェームズ!そろそろ帰るよ」
「ああ、また明日な」
彼はいつもの帰り道をたどって帰った。
途中で丘についた。
サンフランシスコの中でも有数の高級住宅街にいたコナーは丘の上から街並みをみつめた。
今日のサンフランシスコは夏真っ盛りだった。
彼は街を見つめ微笑んだ。
いつも遠回りして、ここに來る。
丘でサンフランシスコの街を観るのが好きだったからだ。
噂では日本で巨大生物の騒動があったらしいが、コナーにはそんなものは関係がなかった。
彼は海をみつめた。
そこには、何かがみえた。
大きな水しぶきがみえた。
「…何だろう」
ジェームズは海を見つめた。
それは大きな蛇か何かのようにみえた。
まさか、あんな蛇があるわけがない。
何かの観間違いだ。
彼は苦笑し、踵を返しバスに乗り家のある市街地から少し離れた郊外に向かった。
ジェームズは家へと向かった。
ふと、ジェームズはみた。
父と母がいる。
いつもなら、こんな時間にいない。
どうしたのだろうか。
「パパママ…」
するとコナー夫妻は顔の色が青くなっていた。
父はあわてながら、スマートフォンを持ち叫んでいた。
「いや、わかっている!だから言ってるんだ!!想像以上のスピードなんだよ!!!早く市長につないでくれないか!!!」
彼には父が何を言っているかわからなかった。
父は兵器産業の会社で、シニアマネージャーをしている。
そんな彼も屈強な元軍人だった。
いつも冷静な彼が、あわてている。
「パパ…?」
ジェームズは父をみつめた。
すると、母が作り笑顔を浮かべ言った。
「ジェームズ、いい‥‥?よく聞いて。私たち今から…。」
ジェームズはテレビをみた。
そこには『太平洋艦隊、巨大生物を前に殲滅!』という文字があった。
信じられなかった。
そこにはアメリカが誇る海軍の艦隊が、海に沈んでいくのがうつっていた。
そこを黒い物体が通り過ぎている。
そしてニュースは途切れた。
『今、臨時ニュースがきました。たった今臨時ニュースがきました。サンフランシスコへ巨大生物が接近しているとの事です。サンフランシスコ在住の方は今すぐ指定の避難所へお逃げください』
アナウンサーは冷静に言った。
だが、その目は泳いでいた。
「…パパ。」
ジェームズは口を開いた。
「黙れ、さっさと荷物をつめろ!」
ジェームズは父がそのような言葉を使うのをはじめてみた。
だが、彼は黙って自分のリュックにありったけの荷物を詰め込んだ。
「ゲームは置いていけ!新しいのを買ってやる!」
彼は言う通りにした。
服や最低限の玩具、それとニンテンドースイッチだけにした。
そして、彼は外に出た。
周囲を見回すと、似たような家庭が多くいた。
そんな時だった。
咆哮がした。
低い野太い音だった。
ジェームズは背筋が凍った。
それと同時に巨大生物が観たいという不謹慎な気持ちもあがった。
「パパ…!」
「いいから乗れ!」
父と母に手をつかまれると、黒いベンツの中にジェームズは連れ込まれた。
しかし、そこは高級住宅街から逃げようとする、富裕層の群れによる交通渋滞がおきていた。
「畜生…!!!渋滞だと!!!?」
ジェームズは車の中から外を観た。
黒い巨大な何かが街を蹂躙しているのがみえた。
「怪物…」
顔が少し見えた。
天空高く、黒い怪物は太陽を覆い隠すようにそびえていた。
そこに大きな怪物がいた。
それは、黒い岩山のような肌をしていた。
それの目は、白く濁っていた。
その姿形は、恐竜に近いようにみえた。
ジェームズの父はルートを変えた。
そして、高級住宅街を抜けた。
市街地により近くなった。
「ダメだ、こっちは…海に近い!!チクショウ!!!でも近くの避難所にいくにはこれしかない!!!市街地をつっきって野球場にいくぞ!!」
父は何かを知っているようだ。
母はジェームズの背中をさすりながら落ち着かせた。
「大丈夫、すぐ戻れる。大丈夫」
その時だった。
地面が揺れた。
地鳴りが響いた。
「何!?」
「クソ、もういい!車を降りるぞ!!早く!!!」
父は叫んだ。
彼は知っていた。
ヤツが来ると…。
ジェームズの手を母が引っ張った。
そして、走り始めた。
彼らに続くように、人々も追いかけていった。
高層ビルの中、親子はかけていった。
「これは夢だよね」
ジェームズはうわごとを言った。
だが、父と母は無視した。
その時だった。
上空から何かが降ってきた。
トランスアメリカ・ピラミッドだ。
怪物の黒い腕がみえた。
アイツが潰したんだ。
破片は降り注いだ。
その時声がした。
「ジェームズ!!!」
ウォンだ。
ジェームズは振り返った。
彼は泣いていた。
ナーバスな少年は泣きながら、近づいてきた。
頭からは血が出てる。
「ダメだ!!!ウォン!!!」
「ジェームズ!助けてくれ!!!」
その時だった。
ビルの破片がウォンに降り注いだ。
哀れな少年ウォンはトランスアメリカ・ピラミッドのガレキに押しつぶされた。
ぐちゃという鈍い音がした。
ジェームズの親友は死んだ。
造作もなく、まるでゴミのように。
「いくわよ!」
悲しむ暇のなかった。
母は腕を強く引っ張った。
ガレキによる土煙がする中、彼は走った。
その時だった。
前方にいた父が何かに気が付いた。
「こっちはまずいぞ」
すると、彼らが向かおうとしていた避難所の球場から大きな何かがやってくるのがみえた。
それは群れをつくっていた。
まるで、昆虫と爬虫類が混ざったような怪物だった。
大きさは2mほどだったが、天を覆い隠すように埋め尽くしていた。
小型の怪物どもは、人々を襲っていた。
避難所であるはずの野球場は、怪獣に破壊しつくされていたのだ。
人々はこれに気づくと絶望した。
「今すぐ逃げ」
父はそういった。
その時だった。
昆虫と爬虫類が混ざった一体が、父の胸を突き刺した。
そして、天空に連れ去っていった。
「パパ…!!!!」
「あなた!!!」
父はジェームズと妻をみて小さく「逃げろ」といった。
殺された。
友人だけじゃなくて父さんまでもが。
母とジェームズは市街地を走りながら絶望で逃げ回った。
軍人や警察が避難を誘導している。
だが、彼らもわからないでいた。
避難所である球場はもう使えないのだ。
怪獣に破壊されている。
ジェームズと母はどこに行けばいいのかわからないまま突き進んだ。
気が付けば彼は山の方へと向かっていった。
他の住民たちも、その時だった。
人込みは更に多くなった。
足の踏み場もないそんな状況で、ジェームズは呆然とした。
ゴおおおおオオン‥‥!!!
轟音と地鳴りが響く。
黒い怪物がやってくる。
「逃げるわよ!!!」
母の焦る声がした。
人々の群れがありのように続く。
やがて、彼らはゴールデンゲートブリッジに近づいた。
すると、それを追いかけるように、黒い怪物が近づいてきた。
その時だった。
「うわああああああああああああああああああ!!!!」
男の声がした。
そして銃弾が響いた。
発狂したようだ。
世界の終わりを悟り発狂した男は叫び声をあげながら、逃げようとする人々に銃を乱射して浴びせた。
その男はジェームズのすぐ近くにいた。
「ダメよ!!!」
母はジェームズの前に立ちふさがった。
そして、銃弾から息子を守った。
母はうめき声をあげ、地面に倒れた。
人々はアリのように逃げ回った。
その群れにジェームズも巻き込まれた。
人の波が押し寄せてくる。
「ママ、ママああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
ジェームズは叫んだ。
母は小さくなっていった。
誰かがジェームズの手をつかんだ。
「ダメだ坊や逃げるんだ」
その声の主は人ゴミの海の中へ消えていった。
ジェームズは大海の中を流されるイワシのように流されて行った。
母のいた場所の上空に巨大な黒い影が覆った。
そして、それは轟音とともに、踏みつぶした。
ジェームズはみえなかった。
ジェームズは街から逃げるように山の方へと向かっていった。
彼は走りながら、山を駆け上がった。
そこでようやく気が付いた。
ジェームズは丘にいた。
いつも学校帰りに街を眺めるあの見晴らしのいい丘だった。
先ほど学校の帰りに通った丘の上から、街がみえた。
そして、ジェームズは外を見つめた。
先ほどとは違った光景がみえた。
サンフランシスコの美しい海は赤く燃え上がっていた。
炎は港町を包み、炎上していた。
「あ、あ・・・ああ・・・・」
ジェームズはうめき声をあげた。
サンフランシスコの高層ビルの立ち並ぶ街をまるで大人の男が踏むように足で蹴り飛ばしていた。
300m以上ある、セールスフォースタワーの近くにいたそれは、前足を鬱陶しそうに薙ぎ払うとなぎ倒した。
サンフランシスコで、大きさ一二を争うビルは簡単に崩れた。
その怪物は、アレよりも大きかった。
セールスフォースタワーですらも、その怪物の胸のあたりにみえた。
その時、その怪物が大きさ500m近くあることにジェームズは気が付いた。
そして恐竜に近い事に気が付いた。
「恐竜…」
黒い怪物はゴールデンゲートブリッジの近くにいた。
全長2000m以上ある金門橋を怪物は噛みついた。
そして、アゴの力だけで、引き千切り放り投げた。
邪魔だといわんばかりに・・・。
「ああ・・・あああ・・・・ああああ・・・」
ジェームズはうなだれた。
生まれ育った町サンフランシスコは今日滅んだ。
父を殺した虫とトカゲの混ざった非行型の怪物は黒い怪物の周囲を飛んでいた。
「あああ・・・・・・・・・ああああああああああああ・・・・・・・」
ジェームズは絶望でその場に立ち尽くした。
その時だった。
黒い怪物は、ジェームズをみるように白い瞳の無い目を小さく動かした。
「・・・・・・!!!」
その目でみられたジェームズはその場に倒れ、気絶した。
その後、ジェームズはすぐ後に軍隊により救出されヘリコプターに運ばれた。
彼は遠く離れたテキサスで目を覚ました。
その時、彼は、黒い怪物の名前がゴジラであると知った。
そして、彼の住んでいたサンフランシスコというよりアメリカ西海岸はゴジラの放った熱線の余波で文字通り消滅したことも知ったのだった。
その数週間後、今度はニューヨークで別のゴジラが現れた。
アメリカは事実上二体のゴジラの上陸を受け壊滅的な被害を受けた。
そして、ゴジラの西海岸襲撃以降、アメリカは全世界に展開していた米軍を一時的に国内に戻すこととなった。
ゴジラの猛威はアメリカにとって想像以上の物だった。
これは世界的なパワーバランスの悪化となり、ロシアと中国はユーラシア軍事同盟と呼ばれる国際軍事同盟を結成して、日本やEUといった諸国に攻撃を加えた。
また最悪なことに、メキシコでは極右的な政治思想を持ったマフィアと軍閥が主導となるクーデターが起き、ロシア中国に融和的な独裁政権が発足した。
これによりアメリカでも、アラスカにロシア軍が攻撃を加えたりテキサスにメキシコ軍が侵入するなど怪獣以外での被害が相次いだ。
ゴジラとは違い、対人戦では米軍は有利でありロシア軍やメキシコ軍を追い払いながら、しばらくの間休戦となった。
ジェームズは決意した。
必ず復讐すると。
父を母を親友を殺したゴジラを許すことはできないと。
そして時が過ぎた。
本作はモンバスの影響を受けていますが、あれとは世界観を別にしております。