ゴジラが南極を破壊した。
これにより起きた災厄は「セカンドインパクト」として人々の心に傷を植えこんだ。
南極からシベリアの地下にまで開いた地球の穴は大きな自然災害をおこした。
巨大な津波が海洋国家の多くを水没させた。
さらに、同時にマグニチュード9に及ぶ巨大な震災が発生した。
多くの人間、動植物、さらには怪獣すらも犠牲になった。
さらにマリアナ海溝に広がった次元の亀裂はさらに拡大し、多くの大型怪獣が地球を押し寄せるようになった。
大多数はアメリカやロシアの軍事力で倒せたが、1部の物はそうではなかった。
しかし、それと反比例する形でゴジラは活動を鎮静化させていった。
太平洋の海でしばらく大人しくしていた。
日本やオーストラリア、ニュージーランドといったオセアニアや極東の国々はセカンドインパクトの影響で甚大な被害を受け、アメリカの直轄領として統合された。
そして、アメリカに譲歩を迫る形でロシアはウクライナ・旧バルト三国といった旧ソビエト領土のほとんどを手に入れた。
ゴジラにより香港や上海を壊滅させられて、被害をアメリカや日本に次いで受けた中国は最も外れくじをひき、台湾はアメリカに併合されてしまった。
これと同時期にアメリカ・中国・ロシアの3大国の合意の元、国際特務機関「Gフォース」の設立が発表された。
そして、同時期に世界中の軍隊が統合された組織としての「地球防衛軍」が発表された。
Gフォースはこの地球防衛軍の二次団体だった。
そして、やがて6年ほどの時間が流れた
アフリカ西部、ガボン
この大陸に突如としてやってきた植物型生命体や菌類型の生命体の種族は、またたくまこの地を汚染した。
そして、それを狙う怪獣、さらにそれを狙う捕食者も増えていった。
安全な場所を求める移民たちは北アフリカへ流れていった。
そこで、元より定住していたムスリム系と黒人系との間でのいさかいがおきて新たな紛争の火種となっていた。
Gフォース直営のデトロイト大学の学生であるピーターはその日、地元での研究のためにきていた。
彼はマスクをつけていた。
かつてコングの巫女アナの友人であったピーター。
20歳の青年に成長していたピーターは、かつてのオタク青年ではなくなった。
筋骨隆々でメガネをしない逞しい剛健な青年へと成長していた。
「この地は汚染がひどくなっているな」
彼はジャングルに生える黄色のキノコをみつめた。
マタンゴは人類が食えば遺伝子情報が欠け代わり、怪物になってしまう。
地元民がうっかり食ってしまい、その結果キノコと人間がかけ合わさったような怪物になったという情報を聞いている。
またこの地では、恐らく多元世界から来たと思われる植物が蠢いている。
それらは、無数に増えていき徐々に都市部を浸食していった。
燃やしても切っても、灰やかけらから新しい物が数時間で生えてくるものも中にはあり、さらに原生植物と混ざり合うという異常な特色を持っていた。
そのペースで徐々に無数に広がっていった。
これは人類を手にかけることはない大人しい生命体であるが、凄まじい生命力で人類の住む範囲内を減らしていっていた。
ガボンからケニア、南はナミビア・ボツワナ、さらには南アフリカの1部までこの広大な植物のジャングルは広がっていった。
たった6年でこのスピードということで専門家の多くは警戒していた。
ジャングルが広がったことで、ゴリラや猿、ジャガーといった生命体は増加していた。
しかし、サバンナ地域で生息していたライオンやハイエナは次第においやられていった。
このままでは多くの種族も絶滅していく。
そして、脅威はこれだけじゃない。
ピーターは周囲を振り返った。
「いないよな……」
ピーターは祈った。
なぜならこの日ではこの数週間ほど、人がいなくなっているからだ。
最初は数人のチームが、次第に傭兵たちが……気が付けばこの地に残ってるのはごく少数のみ。
ピーターはその日、観察係だったのだ。
そんな緊張してる彼に凶兆がとどいた。
ピーターに足元に植物のツルがのびていた。
それは、まるでタコの触手のように足にからんだ。
「‥‥‥‥!!!!」
ピーターは顔面が青くなった。
彼は脚を動かそうとしたが、ツルの力に引っ張られ転倒してしまった。
すると、次々に、別のツルが首と腕に絡みついた。
「ぐ、あっ!!!」
首に絡むツルをなんとかしようとしたが、動きが素早い。
すると、真ん中から大きなコケにみちた巨大な肉食植物が黄色い大きな花びらのなかにはえた牙をとがらせていた。
ピーターの意識が徐々に薄れていく……。
そんな時だった。
ゴガアアアアあああああああああああああああッ!!!!!!!!!!!!
獅子のような咆哮が聞こえた。
植物は動きを止めた。
ふと、観るとそこには大きな掌があった。
それは、まるでゴリラの手のようだ。
(‥‥もしかして、コイツは……)
ピーターは次第に意識を失っていった。
虚無が広がった。
ピーターは虚無の中にいた。
(ああ、俺は死んだのか。母さん父さん……)
そんなことを想っていると、次第に明るくなっていった。
視界が明るくなった。
ピーターは上体を起こした。
「……あれ、生きている!?」
彼は周囲を見回した。
すると、そこが、ツリーハウスの中だということに気が付いた。
「……お久しぶりねピーター」
この声、聞き覚えがある。
ピーターはなんとか、立ち上がると声の主をみつめた。
「まさか」
ピーターは何とか目を凝らした。
そこには女性がいた。
それは、白い肌をしていた。
身長は160㎝ほどだったが、筋肉質だった。
恰好は薄いホットパンツとタンクトップのみだった。
「この白い肌」
「そうよ」
ピーターは顔を見つめた。
間違いない、アナだ。
顔つきはシャープに、そして目は鋭くなっていたが。
アナだ。
「君が助けてくれたのか」
「まさか、違うわ」
アナは窓の外を指さした。
すると、そこにはいた。
300mの黒い類人猿。
「コング……!!!?」
コングは、先ほどピーターを襲った食人植物をつかむと美味しそうに喰っていた。
彼は、ジャングルの中を練り歩いている。
まるで、ここは彼の世界のようだ。
ピーターは圧倒されていた。
もうアフリカは人類の土地ではない。
怪獣が支配する怪獣たちの大陸になっている。
そう遠くない未来、世界中がこうなっていくだろう。
「ああ、その……」
ピーターは気まずそうに、頭をポリポリとかいた。
彼がどれだけ鈍感でもわかっていた。
彼女とコングは表向き、マイアミを破壊した。
そして、中国でゴジラと戦い重傷を負い、手術が完治した瞬間に逃げ出した。
今現在、アナとコングは完全に世界のお尋ね者だ。
これは少しまずいことになったな。
ピーターは少し考えこんだ。
目の前に立っている学生時代の憧れの少女は、今や奇麗な大人の女性になっている。
それ自体はいいんだが、彼女は怪獣を操る身分。
ピーターの大学はGフォースが運営している。
「ああ、アナ……すごくあえてうれしいんだけどさ、僕はそのGフォースの一員なんだ。だから、どうなるかわからないよ。その、僕もやれるだけはやるけどさ」
「私たちを追いかけに来たの?」
「そこまでじゃない、俺は所詮研究員だ。ここの実態調査が任務だ」
アナはピーターをみつめた。
「それも嘘じゃないわね。知ってる、荷物みたから」
「ああ、そうなのか……ってみたのかよ!」
アナはピーターをみつめた。
その顔は笑顔だった。
彼女はあの頃からあまり変わっていないピーターの明るい顔を見て心底安心した。
彼に敵意はない。
「覚えてる? あなたコングのお腹でポンポンと飛んでいたの」
「え?」
ピーターはコングをみた。
そこには、あの時と変わらないコングがいた。
彼はピーターの視線に気が付くとふんわりとした優しい目をみせていた。
「……ああ、覚えてるよ。あいつのお腹はトランポリンみたいだった。史上最大のトランポリンだ」
ピーターは、信じられなかった。
コングがマイアミや上海を襲撃した事。
ゴジラと交戦した事。
そして、あの自然公園にいた兵士を皆殺しにしたこと。
彼の父は非番だった。
命は助かったが、もしもあの時いればどうなっただろうか。
「……あの時、楽しかったよな。コングとキミ、ジェームズさん」
アナは地面をうつむいた。
ピーターは舌打ちをした。
言ってしまった。
彼の保護者だったジェームズは兵士たちに射殺された。
それがコングとアナを怒らせた。
そして、6年以上も彼女たちは姿を消した。
「あ、ごめんよアナ」
「いいの、私も楽しかったから」
やはりだ、ピーターは彼女とコングがとても人々を傷つけていたことが信じられなかった。
「なあ、アナ……何があったか説明してくれよ」
「説明?」
「……僕は君やコングが、何か悪意があって行動したとは思えないんだ。きっと、そこには何か深い理由があったんじゃないかな」
アナはふと、机をみた。
ジェームズが託したファイル。
そこにはすべてが書いていた。
「……ごめんなさい、ピーター。私の口からいえる事は何もない。でも、ジェームズが残したその遺品ならすべてがわかるかも。でも、今更それを持って人類社会に戻るなんてできっこないわ」
ピーターはアナの肩を叩いた。
「……キミはシビアだな」
そして、青年はゆっくり言葉を選んでしゃべり始めた。
「多分難しいかもしれない。でも、濡れ衣を晴らすことはできるはずだ。僕は君とコングに助けられた。なんでもいいから借りを返したいんだ」
ピーターの優しい言葉をアナは拒絶した。
「気持ちはありがたいけど……私たち今以上の生活を望んでいない。ここで誰も知られず、誰からも干渉されないまま生きていたい」
ピーターは険しい顔になった。
「だが、いつか、ここもバレるぞ」
アナは黙りこんだ。
ピーターは遠慮せずに続けた。
「いや、もしかしたらバレてるかもしれない。Gフォースの人工衛星は凄いからね。あと、確かにコングと君はお尋ね者だけど、Gフォースは君たちを狙う気はない。もっと大物がいるからね」
アナはピーターを見つめ返した。
ピーターは目線をそらさずに彼女をみた。
「ゴジラだよ。ヤツこそ本当のターゲットだ。人類社会の最大の敵だ。コングの片腕を奪ったアイツが……本物の敵だよ、僕たちの。コングは、コミュニケーションが可能だから。ターゲットではないよ今は。だから……僕がうまくすれば、君たちを仲間にすることも」
アナはその時たちあがった。
そして、ピーターの胸倉をつかんだ。
「やめて! 私たちは、もう二度と……ヤツと関わりたくないの!! それに、あなたたちは私たちを監禁して兵器に変えようとしていた!!! そんなの信じられると思っているの!?」
ピーターは黙っていた。
アナの言葉に耳をあてた。
「私たち、もう嫌なの!!! 人間と、関わり合いたくないの!!!! お願い、だからもう放っておいて!!! コングをこれ以上兵器にしないで!!! 私たちは人間の操り道具じゃない!!!!」
ピーターはアナの手に優しく触れた。
「わかったよ、それが君の願いなんだね。わかった。……もう僕たちは干渉しない。それでいいね?」
アナはピーターの胸倉を離した。
「ごめんなさい、ピーター!!!! ……あたし、あたしったら!!!! なんで!!!!」
彼女は地面に倒れた。
そして、泣きわめき呻き声をあげた。
彼は、アナの背中を抱きかかえ優しく声をかけた。
「なあ、アナ……俺、キミに言いたいことがいえなかった」
アナは目に涙をためながらピーターをみつめた。
彼は顎に優しく触れ、彼女にささやいた。
「キミのこと、好きだったんだ」
アナは目を見開いた。
そして、顔を赤くした。
彼女はピーターの顔を見つめ返し、微笑んだ。
そして、二人は抱擁を交わし合い口づけをした。
コングはふと、ツリーハウスをみつめた。
若い二人はあのままにしておこう。
時間が全てを解決させる。
コングはナックルウォークをしながら、ジャングルの探索にむかった。
ここは、以前より徐々にジャングルが増えている。
彼にとっては住み心地がよかった。
幼い頃に、過ごしていた故郷を思い出す。
木々も彼と同じ大きさになっている。
このままいけば、このアフリカの地はコングにとって住みやすい場所になる。
彼はふと、立ち止まった。
そして、右腕をみた。
『‥‥‥‥』
ゴジラに奪われた右腕。
この義手が時々痛む。
まだ、苦痛がする。
コングの高い生命力・再生力をもってしても、この傷は完治しなかった。
このままでいいだろうか。
もしも、ヤツがここにくれば。
きっと、この地も破壊と死で包まれる。
その時、また逃げるのか。
コングの中で葛藤が生まれた。
そんな時だった。
彼は何か匂いを感じた。
彼はこの臭いを知っていた、我らの同族または近縁種。
コングはこの臭いの主をたどっていった。
そこには一体の怪獣がいた。
『!!!!!』
下半身を黒い体毛で覆われたそれは、赤い肌をしていた。
その臭いはコングたちグレート・エイプそのものだった。
コングと似ていたのだ。
コングは悦びながら、少し離れた崖上から様子をうかがった。
それは海の近くで水浴びをしていた。
海の水が、煌びやかにその雌の類人猿怪獣の筋肉質な肌を艶やかに飾らせていた。
『ごくッ……』
コングは胸が高鳴った。
彼が忘れていた想いを、その雌は昂らせた。
彼は崖の上に隠れ、様子をうかがった。
その時だった。
ゴギャああああああッ!!!!!!
メスは悲鳴を上げた。
海の中から何かが延びている。
それは触手だった。
巨大な触手は雌の首と太物を締め上げていた。
巨大なタコのような触手だった。
無数に生えていた触手は雌を縛り上げている。
メス型は首を絞められ、海の中にひきずりこまれようとしていた。
グガあああああああああッ!!!!!
メスは放電を行った。
電撃が走った。
海の中にいる触手の主に向かい、攻撃を加えた。
ズババばあっ!!!!!!!!!
電撃は海の中を走った。
やがて、海の魚が犠牲になり浮かび上がっていくのがみえた。
だが、触手の主はとまらなかった。
メス型は首を絞めあげられていた。
同族の危機。
コングはもはや黙っていられなかった。
ウガアあああああああああッ!!
胸をドラミングさせたコングは大きくジャンプし崖の上から、飛び上がった。
そして、海の中へと飛び込んだ。
その様子は、メス型もみていた。
彼女は同族がこの地にいたことに驚いていた。
コングが海の中に潜ると、そこには巨大な1200mほどある大きな怪物がいた。
それは、陸上に向かって触手を伸ばしていた。
触手はタコのような姿をしていたが、それを海の中でみるとその主は、巨大なミミズのようなシー・ワームだとわかった。
触手はこのシー・ワームの口の周囲に生えていたものだった。
コングは、このシー・ワームにつかみかかった。
そして、触手に食らいつくとその牙で触手を食いちぎった。
すると、シー・ワームはコングを標的に絞り始めた。
シー・ワームはその触手をコングに絡みつかせた。
コングの首や腕に触手が絡みついた。
『こいつ、今度は俺を標的か‥』
コングは意を決したように大きな咆哮をあげた。
その咆哮は巨大な衝撃波となり響いた。
衝撃波はシー・ワームの全身を包み込み、巨大な振動で覆った。
シー・ワームはその力におされ、触手の力を離した。
やがてコングはシー・ワームの触手をつかむと、それを陸上に向かって引きずり込もうとした。
だが、シー・ワームの触手は再び動いた。
コングの背後に回ると首を絞めあげた。
『‥‥‥‥‥‥ッッ!!!!!!!』
コングの息が水泡とともに漏れた。
彼はその時右腕の義手をみた。
彼はそこから、電気を溜め込んだ。
『こいつは電撃は通じないかもしれない、だが……!』
義手から5本の指にエネルギーを溜め込むと、それをレーザー光線のように放った。
シー・ワームはこのレーザー光線の攻撃を受けると、触手が引き千切れて行った。
コングは陸上に浮かび上がった。
すると、先ほど襲われていたメスがいた。
彼女は心配そうにコングをみていた。
コングは電磁波を使い話しかけた。
『もう心配ない』
だが、そうもいかなかった。
大きな触手は立ち上がった。
否、触手がなくなったシー・ワームだ。
シー・ワームは起き上がり、巨大なアゴの生えた口を伸ばしてきた。
口の周りについていた触手は全てちぎれていた。
それでも立ち上がり、執念で立ち向かおうとしたようだ。
グギャあああああああああああああッ!!!!!!!
シー・ワームは、最期のとどめをさすべくコングに襲い掛かった。
だが、コングは冷静だった。
すぐに近くにあった、コングと同等サイズの植物怪獣の大樹を義手でつかむと大電流の放電とともに燃やした。
燃えた樹を槍のように投げ、シー・ワームの口の中に放り込んだ。
巨大な海底の王者は、内臓が燃えて焼けただれていく苦しみに悶えた。
そして、コングはチラリとみた。
それを取るとニヤリと笑った。
起き上がったシー・ワームはコングの手にある斧を観て震えあがった。
感情がないはずのシー・ワームであったが、その時初めて思い出した。
圧倒的は覇者の存在を。
黒い破壊の神を。
その背びれが使われている。
天敵の存在を感じるとシー・ワームは震えあがり、濃縮していった。
コングは知っていた。
これは、並大抵の怪獣であれば畏れ逃げ出す。
だが、観たところこいつは超大型。
どうなるか。
シー・ワームは全身に沸き立つ未知の本能をおさえながら巨大なアゴをとがらせ噛みついた。
その時だった。
ガンッ!!!!!!!!!!!!!!
コングは義手と左腕で斧をつかむと勢いよく切りつけた。
シー・ワームは圧倒的覇者の背びれによる斬撃で、真っ二つに裂けていった。
青い血を吹き出した。
この種族は本来不死身であった、だがゴジラの背びれはその不死の力を消すほどの威力があった。
捕食者は死んでいった。
コングは雌をみつめた。
雌はコングに近寄り、微笑みかけた。
その時、彼は強烈な威圧感を感じた。
それに応じて不安の感情が押し寄せた。
やがて、二体は黙って。本能のまま抱き合った。
奇しくもツリーハウスにいるアナも、そしてコングも恋人ができた。
滅びゆく世界で寄り添い合う二組の恋人たち。
その愛が長く続かないことはコングにも、アナにもわかっていた。
大西洋にヤツが近づいてきていた。
破壊の神が……。