ラスベガス騒動から1ヵ月後。
ラスベガスを救ったコングのニュースは瞬く間に駆け巡った。
テレビ各社ではコングを扱った特集番組が組まれた。
マクドウェル上級大将はテレビに多く出演していた。
ジェームズたちも給料が上がり、ホクホク顔だった。
それだけではない。
ロシアは休戦を申し入れてきた。
ロシアの同盟国である中国とイランは様子見だ。
今一度アメリカの突き付けた降伏条件を見直すための猶予が欲しいとのことだ。
これでもし戦争は終われば、世界は本格的に怪獣対策で進んでいく。
恐らく今後はアメリカ主導で国際的な怪獣対策特務機関の設立するだろう。
恐らくコングを手中に収めたアメリカに恐怖したのだろうと、ジェームズは考えていた。
ロシアは長年コングを手に入れたはいいが、手に持て余し続けていた。
恐らくタイミングを見計らいコングを解き放つことを考えていたが、アメリカにはコング以上の大物が襲撃したことから縄張りとして認定されているのではないかと戦々恐々していたようだ。
何よりも、ソビエト時代は、隠す事で精一杯だったようだ。
自然公園の中で、アナはコングとじゃれあっていた。
300mある巨大ゴリラはアナを腹に乗せていた。
その日、アナだけではなくピーターもそこにいた。
彼女がコングの巫女であることはもう周知の事実だったのだ。
「‥‥」
ジェームズは微笑ましそうな笑顔でふたりをみつめていた。
アナは気が付くとジェームズに微笑みかけた。
笑顔が増えている、いい傾向だ。
コングは気持ちよさそうに欠伸をすると、腹をポリポリとかいた。
アナとピーターはふざけたような悲鳴をあげコングの腹から一緒におりた。
そして、今度はアナとピーターがお互いに追いかけあって笑っていた。
それはまさしく、10代の子供のじゃれあい。
「ジェームズ!」
アナはジェームズをみるととびついてきた。
「うわっ!!!」
ジェームズは思わず悲鳴をあげた。
「何だいきなり…」
「アハハハハ!!!」
アナは笑っていた。
10代の子供だ。
一緒に遊んでほしいのだろう。
「楽しいか、お嬢さん」
ジェームズはためいきをついた。
アナは楽しそうだ。
もうそれだけでいいんじゃないか、という気分が彼の中にはあった。
そんな時だった。
「ジェームズ!」
アナの主治医でもあるメアリーがやってきた。
彼女は年老いた背の高いメガネをした黒人の科学者を連れていた。
「メアリー、どうしたんだ。」
「話があるの。」
「わかった、行こう。」
ジェームズはメアリーの顔をみた。
かなり真剣な話のようだ。
張り詰めた雰囲気がある。
「ジェームズ、どこ行くの。」
「先生と話がある。」
「遊ぼうよー!」
「また今度な。」
アナは不満そうに頬を膨らませた。
そんな彼女を捨て、ジェームズと科学者チームは施設に戻っていった。
「懐いているのね。」
「ああ、すっかりな。」
「結構結構…。」
メアリーも随分と様子が変わった。
二人は科学者たちと医務室にやってきた。
「…ジェームズ、こちらはアメリカワシントン大学の生物学教授のバーナード・ブラウン博士。」
黒人科学者は手を差し出してきた。
彼がブラウンというようだ。
「ブラウンです。」
「ジェームズ・コナーです。」
ブラウン博士は眼鏡を指で支えると話し始めた。
「率直に言いましょう。ミスターコナー。私は彼女の遺伝子情報を調べさせていただきました…。そうすると意外な結果が出たのです。」
ジェームズは黙ってブラウンの話を聞いた。
「彼女は、この世界の人間ではありません。」
青年は目を見開いた。
「え!?どういうことだ???彼女が人間じゃないって…。」
ジェームズの話を無視してブラウンはつづけた。
「彼女の血を採取したところ、この地上の全ての人間の物とは思えない全く違った反応をおよぼしました。彼女の遺伝子の配列は人間の物とは全く違う。それどころかこの地球上の全ての生物とは全く違う配列をしていたのです。」
ジェームズは呆然とした。
「じゃあ、その、彼女も多元世界の住人か何かだっていうのか?」
ブラウンとメアリーは目をあわせると黙って首を縦に振った。
「‥‥一体何なんだ…じゃあ。」
「わかりません。」
アナはコングの巫女として古代文明の手で選ばれた一族の末裔。
もしも、それは古代文明によって生み出された。
あるいは多元世界の人型生物であったとならば…。
彼女もまた怪獣ということになるのか。
ジェームズは困惑した。
そんな彼にメアリーは話しかけた。
「ジェームズ、アナは人間のようで人間ではないの…。」
「遺伝子はそうかもしれない。」
「現実を知るべきよ、彼女は人間ではない。」
「何が言いたいんだ。」
メアリーは彼の顔を見つめた。
「彼女は、隔離したほうがいいわ。」
ジェームズは立ち上がった。
そして、怒りの表情をみせた。
「ふざけるな!!!」
メアリーは驚いた。
普段こんな感じじゃないのに。
アナのことが、本当に好きになっていったんだ。
彼の方も…。
「はっきり言いましょう。」
ブラウン博士はつづけた。
「彼女はコングと意識が共通しています。もしも仮に、彼女が興奮すれば…あるいは暴走してしまえば、コングはどうなるでしょうか。」
「アンタはコングもバケモノって言いたいのか!!!ふざけるなよ!!!」
彼は立ち上がると医務室の科学者たちを指さした。
「あの娘は!アナは!お前らなんかよりはるかに人間らしい!お前らはあの娘を実験台にする気か!!!」
「ジェームズ…。」
「お前らは、アナを何だと思っている!!!」
そんな時だった。
医務室のドアをノックするものがいた。
彼らの話はストップすると、ドアをブラウン博士は開けて兵士を招き入れた。
「コナー中尉、怪獣です!!!ダイヤモンドヘッド火山が噴火!!!そこから巨大な怪獣がきました!!!」
ジェームズは立ち上がった。
「なあ、先生方…アンタらの忌み嫌う怪獣が、アンタら自身を守ることになる事を教えてやるよ。アナは俺が守る。あの娘とコングが世界を守っている。だったら俺はアンタたちからあの娘とコングを守る。」
彼は吐き捨てた。
そして、背を向けた。
「ジェームズ…。」
メアリーはジェームズを愛していた。
そんな彼に切り捨てられた。
それは、ショックでしかなかった。
ジェームズは自然公園へと戻っていった。
そこには同じ報告を受けたアナがいた。
「アナ、コング…怪獣だ!」
「ええ、知ってる。」
「俺は現場に行けない。だが…基地のモニターでみているし、君たちに指示を出すことができる。」
彼はアナにイヤホンを渡した。
「これを使って指示を出す。」
「わかったわ。指示なんて必要とは思えないけど…。命令だもの。」
「いい子だ。」
ジェームズは、アナを抱きしめた。
「…?どうしたの、ジェームズ」
「何でもない、ただ生きて帰ってきてくれ。」
「ヘンなの…。」
アナは不思議そうな顔をした。
ジェームズは決意した。
例え、彼女が人間でなくても…彼女を愛する、家族として。
あのクラウディアという女科学者が命を懸けて守ったこの少女。
それだけの価値がある。
ジェームズはそう信じた。
「コング…」
ジェームズはコングをみつめた。
コングもそれに気が付くと、彼を見つめ返した。
「彼女を頼む。」
コングは人間のいうことをあまりわかることはなかった。
だが、この青年のいうことはわかった。
コングは黙って首を縦に振り、承諾した。
コングはアナを抱き寄せると、その驚異的な跳躍力を使い地面を踏み飛んでいった。
ハワイ、オアフ島。
そこにある火山ダイヤモンドヘッドは長年噴火することのない休火山といわれていた。
しかし、とうとう噴火をおこした。
そのマグマの中から一体の怪獣がやってきた。
グガああああああああああああッ!!!!!!!!
咆哮をあげた赤いマグマを身にまとった恐竜型怪獣マグマレックスは体高300m 全長1500mの怪物だった。
頭部は大きく肉食生物らしい牙が生えていた。
前足は小さく二本指しかなかった。
オアフ島を踏みながら、ワイキキビーチの市街地に近づいたマグマレックスは口からマグマを帯びた火炎を吐いた。
「撃てッ!!!!!」
アメリカ海軍の戦艦は砲弾を放った。
それは新型ミサイルフロンティアミサイルだった。
これはいわゆるバンガーバスターの小型版であるが、威力はバンガーバスターその物以上の破壊力を持っていた。
ゴガアアアアああああああッ!!!!!!
マグマレックスは悲鳴を上げると、体からマグマの血を吹き出した。
マグマの血は逃げていた住民に降りかかった。
「クソ、ダメだ!!!!」
マグマレックスはその時、戦艦をみつめた。
彼は口から熱エネルギーを溜め込むと巨大な火球を放った。
アメリカ軍の戦艦は火球を逃げることができなかった。
「うわあああああああああああああああああ!!!!」
職員たちの断末魔がする中、火球に焼かれ戦艦は破壊した。
ゴガアアアアああああああああああああッ!!!!!!!!!
マグマレックスは咆哮をあげた。
そんな中、ホノルルのビーチ近くにコングは着地した。
彼はマグマレックスをみつめた。
マグマレックスの体には、マグマが張り付いている。
アナを掌の上に置くと、コングはすぐさま海の上に浮かぶガレキの上に置いた。
『アナ、聞こえるか』
アナはイヤホンから聞こえる声を聴いた。
「ええ」
『そいつは体中がマグマで出来ている。コングお得意の接近戦はできない。注意して戦うんだ。』
「わかったわ。」
コングは戦々恐々した。
今までの連中とは格が違う。
マグマレックスの吐く火炎はマグマも帯びている。
その攻撃力はキングナーガの火炎より温度は高い。
グルゥ‥‥。
コングは唸り声をあげた。
そして、アナから離れた。
やがて、コングはマグマレックスの目と鼻の先にくるとドラミングをして挑発した。
ウホウホウホッ!!!!!
マグマレックスは赤い目を輝かせると咆哮をあげた。
そして、火炎を吹き出した。
コングはあわてて、それをよけた。
「コング、近づいてはダメ!!!!」
アナは叫んだ。
コングもそれは重々承知していた。
だが、この様子では怪力を出せない。
安易に近づけば、それこそが逆にこちらがダメージを追う。
かといって電気が通じる相手ではない。
コングは肩を怒らせながら、何とか距離をとった。
マグマレックスは、マグマの暴君竜は咆哮をあげコングを挑発した。
その様子をドローンでみていたジェームズは下顎に手をついた。
「で、どうするんだい、兄弟。」
同僚のジャクソンがジェームズに話しかけた。
ジェームズはサブモニターで、先ほどマグマレックスが吐いた火炎とマグマが海に当たると蒸発するのがみえた。
「こいつは水に弱いみたいだ・・・。」
ジェームズは気が付いた。
海の中に誘導する。
そうすれば、マグマレックスのその熱い皮膚は一瞬蒸発し身にまとったマグマも変化する。
そして、コングお得意の電撃を食らわせれば勝てるはず。
「アナ、いい作戦を思いついた。コングは海にこのマグマ恐竜を誘導させろ!そうすれば、こいつの体にあるマグマは問題じゃなくなる!!そして、海についたら電撃を浴びせろ!!!海に入るまで決して近づくなとコングに言うんだ!!!」
アナはコングにジェームズの指示をそのまま伝えた。
コングは理解した。
そして、近くにあったガレキを投げた。
それはマグマレックスの頭に当たった。
グギャあああああああああッ!!!!!
マグマレックスは挑発を受け怒りの歯ぎしりをした。
やがて、コングはゴリラのナックルウォークスタイルに歩行を変えると全速力で逃げた。
頭に血が上ったマグマレックスはコングを追いかけた。
歩行スピードはコングに分があった。
マグマレックスは口から火炎を溜め込んだ。
そして、火球を放った。
コングはそれに気が付いた。
やがて、彼は近くの海を見つけるとそこにジャンプをして飛び込んだ。
ザバアあああああああああン!!!!
水しぶきと大津波があがった。
マグマレックスが放った火球は水しぶきに相殺された。
火山暴君竜はコングが海の中に逃げたと知ると、獲物を追いかけ海に入った。
すると、マグマレックスの赤い皮膚は徐々にスモークが立ち込め鎮火されていった。
高熱の装甲は失われた。
「チャンスよ、コング!!!!」
アナは叫んだ。
それと同時に、海の中にいたコングはジャンプするとマグマレックスの体をつかんだ。
そして、赤い目を輝かせた。
ゴガアアアアあああああああああッ!!!!!!!!!!!!
コングは全身から放電を行った。
マグマレックスの体は水を通して電気が全身を伝わっていった。
ぐがあがが、ああああああああああああッ!!!!!
マグマレックスの全身が悶えた。
そして、そのまま海の中へ倒れた。
「やったか!!!」
ジェームズは、モニターの上で叫んだ。
だが、マグマレックスはまだ生きていた。
「・・・・・・・・・!?」
マグマレックスは起き上がると、その鋭い牙をコングめがけて噛みつこうとしてきた。
コングは慌ててそれを再びよけた。
この牙だらけの口で噛みつかれれば、いくらタフなコングと言えども大怪我は免れない。
コングは顔を青くし、必死で噛みつきをよけた。
ゴガアアアアアッ!!!!!
コングは拳でマグマレックスの固い皮膚を殴った。
だが、この火山恐竜の皮膚はコングの腕力を越える硬さをしていた。
コングは殴った拳を抑え、明らかに痛そうな顔をした。
「まずいな…!!!」
ジェームズはその時思いついた。
あいつ、あのマグマの恐竜は前足が小さい。
だったら、背後に回ればやつは対応できない。
「コング、パンチは辞めろ!!!背後に回れ!そして、締め上げろ!!!」
ジェームズは叫んだ。
アナはイヤホンできたジェームズの指導をそのまま伝えた。
コングは瞬時に理解すると、マグマレックスの背中に飛び乗った。
そして、大きな腕をマグマレックスの首に絡ませた。
剛力が、万力がマグマレックスの首を締め上げた。
グガああああああああッ!!!!!
マグマレックスはそれを振り払おうとしている。
正直ここまでパワーがあると思わなかった。
コングはその時怪力だけでは勝てないことを察した。
それはジェームズもアナも同じだった。
「電撃だ!!!ヤツをビリビリにしちまえ!!!」
ジェームズは叫んだ。
アナも同じことをさけんだ。
すると、コングは赤い目を輝かせると再び電撃を放った。
バチバチバチィッ!!!!!!!
電撃の激しい音がした。
グぎゃああああああああああああ、ああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!
マグマレックスは断末魔の声をあげた。
巨大な火山恐竜は悶絶しながら、地面に倒れた。
コングは勝ったのだ。
彼はドラミングをした。
勝利を祝うドラミングを行った。
避難していた人々は歓声を上げ、コングの勝利を祝った。
モニターにいたジェームズもそうだった。
彼はジャクソンと抱き合うと勝利を祝った。
「やったぜ!!!!」
「最高だ!!!!」
その様子をメアリーは少し悲しそうにみていた。
ジェームズは駆け寄った。
「だから言ったろ。隔離はいらない。」
「ええ、そうかもしれない。」
「もう隔離の話はするな、いいな。」
「…。」
メアリーは不安そうだった。
一方その頃、ハワイにいたコングは人々が彼に声援をあげるのをみつめていた。
しかし、彼の目線は海に向けられた。
それはアナも同じだった。
太平洋の先、海の底から禍々しい何かを感じる。
それは接近してきている。
コングは胸騒ぎがした。
何かとてつもない強大な存在を海の先に感じる。
それは、コングに見覚えがあるものだった。
コングは海を睨んだ。
するとアンが叫んだ。
「コング!!!」
コングはアンをみつめた。
「どうしたの、コング」
アンは心配そうに言った。
コングの目は赤く輝いた。
不穏に、不安に…。
「コング…?まだ目が赤いわ。まだ戦闘したがっているみたいよ。」
コングは相棒をみて、首を横に振った。
そして、彼女の心に語り掛けた。
『心配するな。何も問題はない。』
果たして、そういえるだろうか。
アナの胸には不安だけが残った。
その頃、中国ウイグル自治区
新疆天山地下深く
そこには巨大な円形のドームができていた。
その大きさは東京ドーム25個分。
そして、高さは300mほど。
ココはウイグル族や少数民族を監禁し、様々な実験や労働を行わせていた中国軍の基地であり化学研究施設だった。
モニターではコングとマグマレックスの戦いをうつしていた。
中国人の科学者と軍人はそれをみつめている。
中国軍将軍の曹将軍は言った。
「米国はロシアから巨猿族の一体を奪った。ロシア人どもめ、さっさとアレを使えばよかったのに…値打ちをこいているからこなるのだ。で、我々はどうするのだ。」
将軍はテーブルの奥に座っているチャイナドレスの女に言った。
女は180㎝という女性にしては高い身長と、細長い流線形ながらもしなやかな筋肉がついた四肢をしていた。
目つきは細長いアジア系特有の目線と一重瞼をしていたが、その奥底には赤い炎のような瞳があった。
肌は黄色人種にしては、白く雪のように輝いていた。
そして、髪色は白銀の色をしておりほうれい線には少ししわが言っているようにみえた。
彼女の名前は紅靈。
これはコードネームであり、本当の名前は誰にも分らなかった。
しかし、彼女の出自は判明していた。
彼女の一族はかつて「赤い竹」と言われた秘密組織の一員であり、彼女自身も1980年代からすでに活躍が確認されていた。
この事から詳しい年齢は少なくとも、50以上であることはわかっていた。
彼女の一族「赤い竹」は中国の黒社会において凄まじい影響力を持っており、地方政治については中国共産党その物よりも影響力が高かったといわれている。
かつては大日本帝国とも共闘していたが、戦況が不利とみると彼らを裏切り米国と中国の橋渡しとなり、中国共産党の組織力を盤石にしたという噂もあった。
「巨猿族には巫女がおります。それを確保すればいいのです。」
将軍は問い詰めた。
「確保してどうするのか。」
「コングをおびき寄せるのです。」
「おびき寄せて、どうするのか。」
「交渉ですよ、こちらの仲間になってもらうのです。」
「反抗したらどうするか」
「心配いりませんわ、将軍。なぜなら私たちにはもっと強いものがいるのですから。」
女は、指をさした。
そこには赤茶色の猿怪獣がいた。
玉座に座るようにふてぶてしく、赤茶色の猿怪獣は人間をみつめていた。
その白い目は動くと、将軍たちのいるモニター席を睨みつけた。
「‥‥‥‥!!!」
将軍はゾッとした。
有無を言わさぬオーラ。
人間すら凌駕する邪悪さ。
奴はその巨体に反比例するほどカンが鋭い。
何が起きるかわからない。
「…キミに任せるよ。」
媚びた笑顔を作った将軍はチャイナドレスの女に言った。
紅靈はニッと笑った。
将軍は護衛を連れ、その場から逃げるように去っていった。
「フン、ああやってビクビクしていなさい。」
紅靈は臆病者の曹将軍を嘲笑った。
「真の王はあの方にこそ相応しい。」
彼女は、窓の外をみつめ赤茶色の巨大な猿人をみつめた。
猿人は紅靈にあわせるかのように微笑んだ。
猿の暴君は、宿敵を待ち構えていたのだった。