中国ウイグル自治区
新疆天山地下深く
アナは目を覚ました。
彼女は頭痛がした。
「ここは…」
彼女が起き上がると、脚に鎖が巻き付いていた。
身動きが取れない。
周囲は薄暗い。
どうやらどこかで監禁されているようだ。
「ようやく自由になれたのに…」
自由になれたと思った。
家族も手に入れたと思った。
コングではない、人間の家族が。
アナの気は墜ちた。
「お目覚めかしら…随分と長い事ねていたわね。二日ほど。」
笑い声がした。
あの女だ。
ジェームズを傷つけたあの女。
「‥‥。」
アナは黙って睨みつけた。
「そんな怖い顔をしなくても、大好きなカレにはあわせてあげるのに。おりこうさんにすればね。」
「ここはどこなの」
「中国よ」
「中国!?」
「そう、驚いたかな。そうだ私の自己紹介がまだだったわね。私は紅靈。あなたはアナね…。」
女の顔が見えた。
その時、わかった。
「赤い目」
「ウフフ、そうよ私たちはね…同族なのよ」
「なんですって!!」
アナは驚いた。
「そう、ロシア人どもはアンタに何も教えなかったのね。そんなのだからソビエトも終わっちゃうのよ、あいつらはバカで無知でマヌケしかいない。モンゴルごときの植民地だった田舎者の集まりよ。むしろ連中にとっては今でも植民地だったほうがよかったのかもね。」
ロシア人をボロクソにいうな。
流石にアナも恨みはあるが、ここまでは言わないと彼女自身も思っていた。
「何なのあなた」
「そうね、あなたのお姉さんとだけ言っておこうかしら。」
「‥‥」
アナは無反応だ。
「そうね…、まああなたはコングの巫女。でも私は別のお方の元で使えている巫女でもあるのよ。」
アナの表情が変わった。
「ふふふ、言葉は淡泊でも表情は色々あるのね。子供の頃の私もそうだったわ。」
女は昔の自分を思い出すかのように微笑んだ。
「私たち一族は、元々一つだった。巨大なる魔神の一族。その一族に使える巫女であった。そして、私たちは魔神族とともに怪獣たちのいる次元から、追い出された人型種族の末裔なのかもしれない。正しい事はわからないままだわ。」
アナの目が見開いた。
数秒の沈黙の後、地面を俯いた。
「私たちって…人間じゃなかったのね」
「そうよ、知ってしまうとショックよね」
女スパイ紅靈は、アナに少し感じるものがあった。
幼い頃に受けた迫害。
大人になって中国政府のために尽くしても得られぬままの称賛。
どこに行っても私たちはフリークスなのだ。
紅靈の表情が柔らかいものになった。
「不思議な物よね。私たちは兄弟姉妹のような種族だった。でも、何かが原因で別れることとなった。それに何があったのか今でもわからないままなの。」
アナはふと感じた。
この女は笑顔と狂気とサディズムでごまかしているが、その中身には得体のしれない虚無感と孤独感があるのだ。
「‥‥それで、私に何か?」
「私と手を組まない?」
「‥‥?」
紅靈は手をグッと掴んだ。
「私たちでこの世界を支配するのよ。あなたのコング、そして私のご主人様。その二つが手を組めば…きっとゴジラも倒せる。怪獣もない、アメリカも中国もない。新世界が築き上げることができるわ。そして、その時私たちは世界を二分するのよ。」
アナは気が変わった。
彼女に少し同情した自分を恥じた。
この女は、悪に染まり過ぎた。
「よして。」
アナは拒絶した。
女は面食らった表情をしていた。
「私とコングは主従の関係じゃない、それに…世界を征服なんて私の柄じゃない。あなたおかしいわ。」
女の表情が変わった。
先ほどの温和な表情は消えた。
一瞬で戻った。
彼女は無言で失望を表明した。
アナはそれでもよかった。
「へー…そう、そんな態度とるんだ。だったらいいもんをみせてあげようか。」
女は指をパチンと鳴らした。
すると、一気に明るくなった。
そこには、ジェームズがいた。
彼もまた鎖で両腕を縛られていた。
だが、彼は彼女よりひどい状況だった。
「‥‥!!!!」
アナは口を手で覆った。
アナの保護者であったジェームズは、服は着ておらず全裸の状態だった。
彼の全身は傷でまみれていた。
彼の足元には鞭があった。
そこからは血の臭いがたちこめていた。
彼は気を失っているようだった。
「ジェームズ!!!!!」
女スパイは足元で崩れているジェームズの頭をつかみ、彼女にみせつけた。
「少なくとも顔は傷つけなかったわよ、かわいい顔してるからさ。アハハハ!!!」
アナはその時、腸が煮えくり返るような不快な思いが立ち込めた。
「そんな怖い顔はしないでよ、命は取ってないわよ。」
「彼に何をしたの。」
「やめなさいお嬢ちゃん。あなたが知るべきではないことはいくらでもあるのよ。」
アナは彼女がジェームズに何をしたのか知りたくもなかった。
そして、アナはやはりこの女は相反する存在だとわかった。
「‥‥‥‥!!!」
ふと、彼女はまどがみえた。
その先を覗いた。
そこには無数の人間がいた。
「ああ・・・・・」
恐らくは中国国内の少数民族や反乱分子だろう。
無数の人間が重労働をしていた。
それを監視する複数の軍人がいた。
ここは奴隷労働施設なのか。
女スパイは冷たく言った。
「人間はおぞましい物よね、怪獣よりも私たちよりも下劣な存在だと思わない?」
アナはこの言葉が信じられなかった。
何よりもこの女がこの言葉をいうのがナンセンスにもほどがあると感じた。
アナは初めて軽蔑をした。
「御覧なさい、あの御方があなたを見張っているわ。」
アナはみた。
奥底に玉座のような場所に赤茶色の巨大な猿人の怪獣がいた。
大きさはコングと比べるとやや低くみえた。
その猿人は白い濁った眼をしていた。
「・・・・・!!!!!!」
アナの背筋はゾッとした。
恐怖を感じた。
得体のしれない邪悪なナニカ。
そこにはいた。
「あの御方の名前は真の王!スカーキング様よ!!!」
スカーキングと言われた猿の王は立ち上がった。
同じ種族でも、コングはゴリラに似ていた。
だが、このスカーキングはどちらかと言えばオランウータンとチンパンジーを混ぜたような姿をしていた。
手足は長く細かった。
コングよりも身長体重は下かもしれない。
だが、得体のしれない嫌なものがあるとアナにはわかった。
そして獅子のような咆哮をあげた。
彼は脚をあげると、戯れに奴隷の複数名を踏みつぶした。
あまりに残酷な行為にアナは目を背けた。
「・・・・・・・こんなのが王であってはいけない!!!!!!」
女スパイは立ち上がった。
彼女は震えていた。
それは怒りだった。
「なんですって…」
「こんな化物が王であってはいけない!!あなたもあなたなら、あなたの飼い主も残忍よ!!!」
女スパイはアナの頬をはたこうとした。
その時、スカーキングの目が動いた。
「‥‥!!!」
女は震えていた。
スカーキングに怯えている。
奴隷たちや軍人を踏みつぶしていくと、窓に近づいた。
中国軍の哀れな軍人はスカーキングの足に潰されて行くと、次々に死んでいった。
アナには理解ができなかった。
なぜ軍人も殺すのか。
殺すことが許されているのか。
もしかして、この中国大陸を支配しているのは実はスカーキングなのではないか。
彼女はそう思いすらした。
この場にいる全てがこのスカーキングに畏怖していた。
スカーキングは窓の近くにたつと、白い目をギョロリと向けた。
『小娘、余が王に相応しくないと申すか。余はこの地上を支配し皇帝として君臨しようと考えておる。さすれば、破壊の神にも対応できようぞ。』
しゃべりかけていた。
アナは驚いた。
「ええ、あなたは王の器などはない。ましてや世界の皇帝など不可能。」
スカーキングはその言葉を聞いて少し考えた。
そして、口をゆがめた。
ウキャキャキャキャキャキャ!!!!!!
狒々の王は笑い転げた。
紅靈と名乗る女は、同様に笑い転げた。
奴隷たちも作り笑いをしていた。
『では、王に相応しいのはなんだ。まさか…貴様の主ではあるまいな』
スカーキングは小さな娘に怒っていた。
笑顔と余裕と虚勢で隠していた。
「この世界の王などいない。そんなものは王ではない!!!そして、ましてやコングは私の主ではない!!見くびるな!!!偽の王!!!」
スカーキングは笑顔が曇っていった。
徐々に怒りをみせていた。
『では、小娘…死ぬがよい!』
その時だった。
ドごオオオおおおおおおおおおおオオン!!!!!!
轟音が響いた。
地鳴りがした。
地上が割れていた。
地下の帝国は、崩れていった。
上からはふってきた。
スカーキングとは違う別の王。
黒い毛をはやした猿人の王コングだ。
グああああああッ・・・・・!!!!
スカーキングは目を丸くした。
あの頃に受けた傷が痛む。
この若造の親父に受けた傷が。
スカーキングの古傷が痛んだ。
まだ次元の先にいたころの話。
スカーキングはこの若造の父であるグレートコングと争っていた。
元は巨猿族を支配していたのはスカーキングであった。
だが、彼の治世に納得いかなかった右腕の将軍グレートコングは謀反を起こした。
グレートは同胞を解放し、自由にしろと王であったスカーキングの前で要求した。
我慢ならないスカーキングはグレートコングと戦うことを決意した。
その結果、彼は負けた。
スカーキングと巫女は、おめおめと次元の先に逃げていった。
恥辱だった。
確かにスカーキングは負けることもあった。
グレートコングに負ける前は、破壊神に負けたこともあった。
だが、王の座から追放されるなど思っていなかった。
追い出された先に来たこの次元では、スカーキングは中国大陸に居ついた。
彼はそこで巫女たちを通じて、時代に乗じてその先先の皇帝を操っていた。
皇帝は常に代替わりした。
国の名前やシステムすらも変わった。
彼が不要と判断した場合は部下や民衆に電波を送り、国内を混沌とした状況に追い込み謀反をおこさせた。
あるいはモンゴル人を呼び寄せることもあった。
スカーキングは常にこの混沌とした大陸の黒幕として、君臨していた。
大日本帝国があったころは彼らとコンタクトを取り、彼らをかりそめの支配者にしたこともあった。
彼らがアメリカに負けると気づいたときは、中国国内にいる反日分子に力を与えた。
スカーキングは彼らを操り、悠久の時を生きていた。
実質、スカーキングこそこの中国大陸の本当の支配者であり、皇帝であり続けた。
彼は人の心を読み・操るのが上手かった。
彼が発する電波で、人心の心は変わっていった。
権力に媚びるのも、逆らうのもスカーキングの自由。
革命を起こすのも、封じるのもスカーキングの自由だ。
苦痛と恐怖の精神エネルギーを喰らい、彼は何も食わずとも永遠に生きた。
それでも、彼は負けた事実は変わらなかった。
故郷を追い出され堕ちのびた落伍者である。
それは変わらなかったし、彼も認めていた。
この何万年の間、この恥辱に耐えて生きていた。
それが今日、終る。
こやつを倒し、今こそ誇るのだ勝利を。
だが、まずは小手調べが重要。
グルゥ‥‥。
スカーキングは唸り声をあげた。
すると、それに反応するかのように奴隷の何人かが何かのゲートを開いた。
機械音がした。
ビィイイ‥‥‥!!!!
それと同時のサイレンが点滅した。
そこから出てきたのは二体の獣だった。
アナもそれを黙ってみていた。
一体は獅子のようだった。
顔の周囲に鬣が生えていた。
しかし顔の形は狼に似ていた。
口からはサーベルタイガーのような犬歯が延びていた。
「あれはトウコツよ。狂暴な肉食性の怪獣。スカーキング様が捕らえてくださったのよ。」
もう一体もまた、四つ足の獣だった。
頭には猛牛のような角が生えていた。
背はヤマアラシのようなとげのような毛が生えていた。
胴は、屈強なゾウかカバのような固い皮膚をしていた。
「あれはキュウキ、草食動物だけど、誰かを殺すの何より大好きなの。暇がある時はあれを放ってあの奴隷どもを殺すの。」
キュウキとトウコツはコングを囲んだ。
どちらもコングよりもやや大きかった。
グギャああああああああああああああッ!!!!!
スカーキングは雄たけびを上げた。
それは攻撃の合図だった。
キュウキとトウコツは赤い目を輝かせながらコングにとびかかった。
だが、コングは素早かった。
ブルゥ!!!!!!
素早く腕を動かすとトウコツの頭を殴った。
トウコツの首は折れると、そのまま動かなくなった。
すると、背後からキュウキが闘牛のように角をのばしながらコングの背中めがけて角を突き刺そうとした。
クルッ!!!!!
コングは素早く背後を剥いた。
そして、寸前まで近づいていた角の生えたキュウキの頭をつかむと抑えつけた。
グギャああああああああああッ!!!!!!!
キュウキは雄たけびを上げるとその怪力を使い、コングを押しのけようとした。
だが、怪力で負けなかったのはコングの方だ。
赤い目を輝かせ、筋肉を膨らませた。
スカーキングの背中の古傷が痛んだ。
覚えがある、あやつの父親もああやって筋肉を膨らませた。
そして、普段の倍以上の力を出すことができた。
コングはキュウキの角をつかみ、そのまま持ち上げた。
そしてその怪力でキュウキの体を地面にたたきつけた。
ドごオオオおおおおおおおおオオン!!!!!!!!!!!
地鳴りがする。
奴隷たちは一瞬勝利を感じた。
キュウキはのたうちまわりながら、激痛に耐えていた。
するとコングはキュウキの首をその二の腕でつかんだ。
そして、締め上げた。
ががあ、があああああッ!!!!!
キュウキの断末魔が上がった。
哀れな殺人怪獣はそのまま締め上げられた。
やがて、その時がきた。
ごきっ!!!
鈍い音とともに、キュウキの首の骨が折れる音がした。
コングはキュウキを倒し、その背中をサッカーボールのように蹴り飛ばした。
そして、スカーキングを睨んだ。
コングはこの赤茶色の暴君を覚えていた。
コングが幼きころ。
かつて、元の次元にコングたちがいた時の事。
密林が茂る場所で彼らの王として君臨していた。
それこそこの暴君スカーキング。
彼は、一族を支配していた。
暴力と恐怖で逆らうものをねじ伏せ、親衛隊とともに彼は君臨していた。
そこに、悠然と立ち向かったのがコングの父だった。
彼はスカーキングを倒した。
そして、一族の王となった。
しかし、平穏な時代は長く続かず。
父、それだけではない全ての一族は等しく皆殺しにされた。
別の暴君のせいで。
コングは黙って見つめていた。
今やこの暴君と自分のみとなった、巨猿族。
自分にもこいつにももう居場所などない。
体格はコングが勝っていた。
だが、スカーキングには老獪があった。
両者は差があるようで実は互角であった。
アナは先ほどの戦いをみていた。
「どう?コングは強いでしょ。」
アナは勝ち誇った。
紅靈は黙った。
中国の女スパイは、アナの無知さを内心嘲笑った。
スカーキングは玉座からたった。
すると、彼は背中に巻いていた大蛇の骨で作った鞭をとりだした。
これはキングナーガの亡骸から作ったものだった。
先制攻撃はスカーキングだった。
ビシュンッ!!!!!!
激しい音がした。
コングの胸がぱっくりと傷がついた。
その先から赤い血がしたたり落ちた。
コングは痛みすら感じなかった。
やがて、痛みに気が付くと悶絶するような悲鳴を上げた。
グギャあああああ・・・・。
それと同時にアナも胸を抑えた。
激痛が響く。
「うううウッ‥‥!!!!」
アナが悶絶しているのは、窓の外にいるスカーキングにもわかった。
彼はそのまま鞭を振るいコングにさらなる一撃を加えた。
コングの胸に別の傷がついた。
ビシュンッ!!!!!
鞭が振るう音が響いた。
コングの体はしなる鞭で傷が一つ一つとついていった。
彼は今まで経験したことのない攻撃に困惑し、ただただ振り回されていた。
しかし、コングもこのままでいるわけがなかった。
グルゥ‥‥‥‥!!!!!!
コングは鞭を無理矢理つかんだ。
思わず掌に骨の一部が刺さり赤い血がにじんだが、今はそんなことはどうでもいい。
コングは両腕で鞭をつかむと力強く引き倒した。
スカーキングは逆に引っ張ろうとしたが、力はコングの方が強いようだ。
スカーキングはけつまづきそうになったが、ここで機転を聞かした。
‥‥にやっ!!!
スカーキングは薄笑いを浮かべると、あえてコングの力に任せた。
そして、コングの近くにやってきた。
コングは左腕の拳を突き上げスカーキングにぶち当てようとした。
その時だった。
ヒュン!!!
スカーキングは拳をよけた。
コングは何度も拳をあてようとしたが、スカーキングの動きは素早かった。
素早いスカーキングは、コングの一撃一撃をさらりとよけた。
彼はコングの考えが読めた。
どこから攻撃を振るうか、瞬時に読み捌いていた。
にやっ!!!
また笑った。
スカーキングは隠し持っていた巨大な怪獣の骨で作ったナイフを隠し持っていた。
それをコングの腹部に突き刺した。
グあああッ‥‥!!!!
コングは激痛で腹を抑えた。
この程度の傷は治癒能力でなんとかできる。
しかし、このナイフの先には毒があるのだろう。
治癒効果を遅らせている。
彼は後悔した。
なぜこんな攻撃もみぬくことができなかったのか。
そして、スカーキングの強烈な足が彼の顎に突き刺さった。
ドぉおおオオン!!!!
コングは目を見開いた。
それと同時に、地面に大きく浮かび上がった。
ドガあああああああああああああああああああン!!!!!!
コングは地面に倒れた。
スカーキングは倒れたコングをみて嗤った。
『なんだ貴様、弱いではないか。まさか戦闘経験もそこまであるわけではないのかな…。』
それはその通りだった。
コングはこの数十年ほど、長い間戦闘をしていなかった。
ソ連に捕らえられた彼は、長い間監禁されていた。
そして、ようやく出てきたのは数か月前。
戦闘経験ではどう考えても差があった。
コングを通して激痛を感じていたアナが倒れた。
彼女は息を吐いていた。
コングと感じる痛みは彼女にも伝わっていた。
紅靈は彼女を見下したようにみつめた。
そして、同族がこれから死にゆくことを惜しんだ。
「言っとくけど、お嬢ちゃん。アタシはね、あなたを生かしてあげようとしていたのよ。私は本気で、あなたを助けようとしていたんだから…。私が口利きしてあげるわ。さっさとあのコングさんとやらを、ギブアップさせちまいな!」
アナは首を横に振った。
「あ、そ…じゃあここでくたばりな。もうアンタらに用はないわ。」
紅靈はジェームズを殺そうとした。
だが、そこにジェームズはいなかった。
「‥‥‥!?」
ふと、彼女はジェームズを縛っていた鎖が腐っていたことに気が付いた。
腐っていた鎖は簡単に抜けるようになっていた。
「‥‥まさか!!!」
ふと、彼女は背後に気配を感じた。
ジェームズだ。
彼は紅靈の顔に拳を入れた。
だが、彼女は冷静だった。
彼女はジェームズの拳を掌で受け止めた。
「フフ、坊や‥‥惜しかったねェ…。」
そして、彼女は全裸のままのジェームズの下半身にめをやった。
「とても、楽しい二日間だったわね。」
ジェームズは紅靈に捕まれた腕を動かそうとした。
だが、紅靈の腕力はジェームズより上だった。
ジェームズの腕は、動かなかった。
「でも、キミは弱いんだね…人間にしては。でも、私は人間じゃないの。格が違うの。」
「クソッ‥‥!!!」
紅靈はやがて、ジェームズの腹部に蹴りを入れた。
痛撃が走った。
ジェームズは大きく壁際に倒れた。
すると、紅靈はジェームズの首を片腕でつかむと、軽く持ち上げた。
「ぐ、ぐあ…あ…ぐ‥‥」
ジェームズは空中高く持ち上げられたまま締め上げられた。
彼の細身ながらもしなやかに鍛え上げられた筋肉が浮かんだ。
「ねえ、坊や…アンタをここで殺すのは惜しいんだけどォ、もう飽きちゃった。だからさっさと死んでね。」
ジェームズはピンチになった。
その頃、外ではコングとスカーキングの戦いが続いていた。
スカーキングは倒れたコングに向かい鞭を振るっていた。
地面に倒れ這いつくばりながら移動するコングの背中は鞭で出来た傷が赤く腫れあがり、切れた傷から赤い血がにじみでていた。
うがあああああッ!!!!!
コングの悲鳴だけが上がる。
スカーキングは容赦なくコングの背中に鞭を入れた。
何度も何度も…。
ゴガアアアアあああああああッ!!!!!
コングは自身の放電能力を使い、スカーキングを迎撃しようとした。
しかし、その電力をスカーキングは吸い上げていった。
やはり、同族だ。
電気を吸収してしまうんだ。
『やはり、お前は闘い方が下手だ!!!!』
スカーキングは罵った。
それはコングに力を呼び戻すだけだった。
怒りにあふれ、コングの全身に力が戻った。
筋肉は再び膨れがあった。
スカーキングはそれに気づかずトドメの一撃を放った。
バシッ‥‥!!!
コングは鞭をつかんだ。
そして、先ほどとおなじくスカーキングを引っ張った。
今度は地面に倒れたままだ。
スカーキングは思わず地面に倒れた。
ゲぎゃッ!!!!
悲鳴を上げた、スカーキングがなんとか地面に立ち上がるとそこには鞭を引っ張るコングがいた。
思わず情けない悲鳴をあげてしまったことに、心底腹が立ったスカーキングは策を忘れ思わず鞭を引っ張った。
だが、やはり腕力は若さのあるコングが強かった。
コングは鞭をつかんだままのスカーキングをそのまま砲丸投げのごとく、一回転すると放り投げた。
オギャアああっ!!!!
スカーキングは思わず悲鳴を上げた。
そして、空中高く放り投げられ地面に落下した。
激痛がスカーキングの背中でした。
そのダメージは紅靈にも浸透した。
彼女は一瞬、手を離してしまった。
ジェームズは彼女に隙ができたとわかった。
そして、拳の一撃を紅靈に食らわせた。
「うごっ…!!!!」
紅靈は地面に倒れた。
スカーキングは巫女がやられかけていると知った。
あの役立たずめ。
内心罵った。
すると、スカーキングは何かに気が付いた。
コングは奴隷たちが運んでいた石が積み重なっていることに気が付いた。
そして、その中でも大きな石を取り出した。
大きさは50mほどある。
スカーキングは目を青くした。
コングはニヤリと笑うとスカーキングにめがけて石を放り投げた。
ブオンッ!!!!!
音がした。
スカーキングは急いで避けた。
ギリギリ避ける事に成功をした。
まずい。
スカーキングは慌てて鞭を取り出すと周囲の建物に引っ掛け大きく飛び上がった。
そして、上空からコングの近くにきた。
!!!???
コングは驚いていた。
すぐさま彼は、スカーキングの頭を大きな拳で殴りつけた。
しかし、それは再びスカーキングはすり抜けた。
そしてスカーキングは地面に一回転をすると、その勢いで放った蹴りをコングの顎に再び当てた。
コングは顎を抑え、痛みに震えた。
そして、スカーキングは背後にまわり、飛び乗るとと持っていた鞭でコングの首を締め上げた。
ご、ゴガアアアアあああああッ!!!!!!!
コングはピンチに戻っていった。
鞭は首に絡まり、骨がコングの首の肉をギリギリと切り裂いていった。
スカーキングは邪悪な微笑みを浮かべた。
こいつは若造だった。
だから勝てる。
こいつの父と違い、戦闘力は低い。
力任せの戦いしかできない!
勝利を確信したスカーキングはコングを憎い宿敵の息子を、締め上げた。
その頃、ジェームズは気絶したアナを起き上がらせ逃げようとしていた。
「アナ…!!!」
だが、彼は背後にいる相手の存在に気が付かないでいた。
紅靈は、先ほどジェームズを痛めつけていた女スパイは彼の背後にいた。
その手には鞭があった。
それは、ジェームズを拷問し、弄った物だった。
紅靈はジェームズの首を素早く鞭でからめとった。
「…あ、ぐああ‥‥」
ジェームズはもがき苦しんだ。
そして、紅靈はジェームズの肩に飛び乗ると紅靈は太腿を四の字状にして、ジェームズを二重に締め上げた。
二重にわたる首絞めがジェームズを襲った。
「あ、う…あ‥あ…」
ジェームズは声にならない声を出し苦しんだ。
「坊や―かわいい顔が苦しんで青くなっていくねー…死んじゃうのかな!?アハハハハ!!!!!」
ジェームズは倒れた。
そのまま、女スパイは笑顔を浮かべジェームズの首を二重で締め上げていった。
ジェームズの意識が薄れていった。
窓の外ではコングが同じように首を絞めあげられていた。
スカーキングはコングの背中に飛び乗り鞭で締め上げた。
コングは徐々に力を失っていった。
暴君は嘲笑っていた。
地面におりると、コングを背中で背負うように持ち上げながら鞭を伸ばし首を絞めあげた。
コングは苦しみもがいた。
だが鞭は厳しく締まっていく。
スカーキングは鞭をさらに絡ませると、今度は素早くコングの両腕を縛った。
そして、コングの背中に乗り一気に締め上げた。
その様子を奴隷たちはみていた。
ほんの少し縋り付こうとしていた希望が絶望に変わっていった。
その時だった。
ピキィ――――――――――――――ン!!!
スカーキングの頭の中で電流が走った。
そして、何か気配を感じた。
何かが来る。
得体のしれない強い何かが…。
彼には覚えがあった。
『破壊神…またあやつか!』
スカーキングの動きが止まった。
顔が恐怖に染まっていった。
コングの首を絞めていた鞭の動きも緩まった。
その時、コングは鞭をつかんだ。
そして、自身の背中に乗っていたスカーキングを壁にぶつけようとした。
‥‥‥!!!
我に返ったスカーキングは素早くコングの前方の地面に着地した。
そして、後ろを向いたまま後輩部にいるコングの腹部を長い右脚で蹴り飛ばした。
ゴオオオオオオオオン!!!!!
壁が崩れていった。
コングは壁とそのガレキの中に埋もれていった。
大きな土煙がたちこめた。
コングの姿はみえなくなっていた。
『…フン、ざまあないな』
スカーキングは勝利を確信した。
そして、奴隷どもにみせつけた。
中国やその周辺国から集められた奴隷たちは全員愕然としていた。
『…父と比べても無能だったな。あの世であやつの親父は弱い子を憐れんでるであろう。』
その時だった。
スカーキングが持っていた鞭が何か反応した。
土砂の中で何かが動いた。
バチィッ!!!!!!!!!!!!
巨大な放電と衝撃波が石を次々と破壊した。
スカーキングはガレキと土煙でよくみえなかった。
だが、そこでは、コングの赤い目だけが光っていることはわかった。
とうとうコングは怒ってしまったのだ。
『無駄なあがきを…貴様の首ごと引き千切ってやるわ!!!!!!!』
首にまいた鞭に力を込めた。
だが、力が入らなかった。
切れた鞭の先だけが戻ってきた。
グフォッ!!!????
スカーキングは驚いた。
自分の鞭がまさか引き千切られた。
コングは暴君の侮辱を聞いていた。
スカーキングが許せなかった。
彼の怒りはそれまでの傷を一瞬で修復させ、筋肉は膨らみ、大きくそそり立っていた。
攻撃力・防御力が進化していった。
ゴガアアアアああああああああああああッ!!!!!!!!!!!!!!!!
コングの咆哮がした。
スカーキングは、ビクともしなかった。
なぜならここからが本番だったのだ。
彼は鞭の先端に尖った刃をつけた。
それは先ほどコングを刺したナイフだった。
鞭を構成していた蛇の骨を密集させさやの無い剣の形に変えた。
これが彼の鞭の本当の姿。
スカーキングの剣であった。
…ガチャ!!
スカーキングは蛇腹剣を持ち、構えた。
コングは怒り狂い赤い目を輝かせながらナックルウォークで突き進んできた。
そして、巨大な肩を振るいスカーキングの前に躍り出た。
スカーキングはそれを大きくジャンプして避けた。
コングは大きくこけた。
渾身のショルダータックルがよけられた。
コングの背部にたったスカーキングは、そのまま剣を使いコングの背中を切り裂いた。
ゴガアアアアあああああああっ!!!!!
コングの背中にぷっくりとした傷跡があった。
それは、骨までみえるほどのダメージがあった。
そこからは血しぶきがあがっている。
今まで浴びてきた攻撃以上のダメージを受けたコングは痛みで顔をゆがめた。
にやっ・・・。
スカーキングは嘲笑った。
大きく飛び上がり、コングの前面に出た。
そして、スカーキングはその蛇腹剣をコングの腹に突き刺した。
ぶしゅうううううううううううううっ!!!!!!!!!!
血しぶきだけが飛び散った。
奴隷の多くは唖然とした。
スカーキングは奴隷たちが恐怖していくたびに強くなった。
これが全ての理由。
これこそが彼の生きる目的。
恐怖し震えあがる臣民がいるたびに彼はつよくなる。
スカーキングは蛇腹剣に突き刺さったコングの胸を足で蹴り飛ばし剣からぬき去った。
血だまりが一気にたちこめた。
それでも、生きているコングは地面を這いながらなんとか逃げようとした。
彼の腹は大きな穴が開いている。
『…まだ生きているのか、しぶといな。』
スカーキングは呆れかえった。
だが、いかにタフでも腹に空いた傷はみえている。
この傷ではもはやどうあがいても死しかない。
コングは地面を張った。
芋虫のように。
そこに別次元の密林の王族の子孫、髑髏島の王であった彼はなかった。
王の威厳を取り戻そう、なんとか立ち上がった彼だが足に力が入らなかった。
ズシン‥‥!!!
音を立ててコングは崩れ倒れた。
希望を抱いていた奴隷たちの絶望の声が聞こえた。
だが、崩れ倒れる際に堕ちた衝撃の影響で、同時に何かが落ちてきて、地面に刺さるのがわかった。
コングはふと、それをみた。
斧だ。
遠い昔、父が使った斧。
あれがここにある。
彼の頭の中に父が浮かんだ。
父、偉大なるグレートコング。
彼はあれでスカーキングを倒した。
ならば…彼はそれを藁にすがるように手に取った。
スカーキングは嘲笑った。
もう戦う気力もないだろうにと…。
だがこいつはコングの一族。
真実を教えてから殺すのも華というものだ。
スカーキングはコングに話しかけた。
『冥土の土産にいい事を教えてやろう小僧。お前の父は王として有能ではなかったのだ。大方、破壊神に逆らったのだろう。愚かな王だ。この世には逆らってはいけないものがいる!それが破壊神だ!それもわからぬとは、何が王だ!やはり俺、否我こそ王に相応しいのだ!』
スカーキングは啖呵を切ると大笑いした。
ゲギャギャギャギャギャ!!!!!!
コングは怒りが燃え上がった。
また父を侮辱した。
彼は全身に電流が走っていった。
怒りが燃えがあっていった。
彼は疲れを忘れ、立ち上がった。
スカーキングは満身創痍のコングを嘲笑った。
『さ、死ね』
その声とともに、冷酷な暴君は蛇腹剣を横に振るった。
コングはそれに対して斧を振るい、それをはねのけた。
ガキィいいいいいいい!!!!!!
音が響いた。
剣は弾かれた。
スカーキングは剣を持ったままよろめいた。
否、剣は砕かれた。
『‥‥!!!!!』
スカーキングは武器をみつめた。
すると、武器がバラバラになっていることに気が付いた。
彼は口を半開きにして、前方を見た。
そこには彼から王の玉座を奪ったあの時の先代コングに似た雄猿がいた。
『‥‥ああッ!!!!』
スカーキングの頭の中に恐怖がよみがえった。
そうだ、あの時もこうやって…追い詰められた。
コングは暴君を似らんだ。
先ほどの剣の傷が一瞬で治癒していくのがわかった。
背中の傷も腹部の傷も消えていった。
怒りが、たちこめている。
体がむくむくと大きくなっていった。
怒りがコングの体を大きくさせるのだとその時わかった。
唸り声とともに、コングは最後通牒をつきつけた。
『老いた暴君よ、お前はやり過ぎた。』
コングは全長100mサイズの斧を持つとそのまま放り投げた。
スカーキングは両手を顔の前にかざした。
そして…。
ザシュッ!!!!!
音がした。
スカーキングは目を見た。
左腕に斧が刺さっていた。
グギャあああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!あああああああああああああッぎゃああああああああああああッ!!!!!!!!!!!!!
猿の暴君スカーキングは悶絶し、地面にのたうち回った。
激痛が広がった。
と同時に地鳴りが響いた。
スカーキングの巫女である紅靈にもその激痛が広がった。
彼女は鞭とその両足でジェームズの首を絞めていた。
だが、彼女は激痛の余り悲鳴を上げた。
「ィいいいいいいいぎゃああああああああああああああああッ!!!!!!!!!あああああああああああああッギイいいいいいいいいええええええええええッ!!!!!」
ジェームズを縛っていた鞭の力が弱まった。
太腿の力も緩んできた。
気絶しそうになっていたジェームズは気が付いた。
「げほっ!!げほっ!!!」
ようやく呼吸ができることにジェームズは感謝した。
思わぬ好機に彼は紅靈の顔をその拳で殴り始めた。
「ぐべっ!!!!!」
紅靈の歯はふきとんだ。
ジェームズの怒りは収まらなかった。
彼は顔にそのまま何度も何度も拳を入れた。
「ぼぎっ!!!」
紅靈の顔はボロボロになった。
歯がぬけ、口は避け血が溢れていた。
鼻は崩れ、血が出ていた。
そして、ジェームズは紅靈の首をつかんだ。
「…さあ、おばさん逆襲させてもらうぞ」
ふと、目の前に窓があった。
そこではコングとスカーキングの戦いが繰り広げられていた。
スカーキングは左腕に刺さった斧の激痛で身をよじらせていた。
だからこの女は弱ったのか。
「お前はあいつの巫女らしいな。お前の王様のそばで戦うといい!」
ジェームズはつかんだ紅靈の体を窓ガラスに放り投げた。
「ぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいぃいいいいいいいいやあああああああああああああああああああああっ!!!!!!!!!」
紅靈の全身に窓ガラスが刺さった。
そして、高い上空から落とされた。
しかし、幸運にも彼女は近くの樹に挟まった。
そして、転倒しながら地面に落下した。
「あげ?いぎ・・・うぐべ・・・・」
彼女は左手両足の骨が砕け虫のように地面をはいつくばった。
ジェームズは彼女がまだ生きていた事に驚いた。
どうやら、かなり体が強いみたいだ。
すると奴隷が近づいてきた。
紅靈は何とか上体を起こすと右腕を伸ばし命乞いをした。
「待ちなさい、アンタら…私は私は‥‥!!!そうだ!奴隷じゃなくしてあげる!!!!友達になろう!!ね!?」
無数の奴隷たちが紅靈に怒りをぶつけるように彼女を押さえつけた。
スカーキングの巫女は無数の奴隷たちに埋め尽くされている。
彼女の悲鳴だけがこだましていた。
あの無数の奴隷たちになにをされているのか。
ジェームズは知るよしもない。
「‥‥アナ!」
ジェームズはアナを抱き起した。
彼女の意識は戻らない。
ふと、彼はアナを抱いたまま、窓から外を見つめた。
コングはあの赤茶色の猿を追い詰めているようだ。
決着の時がきたようだ。
スカーキングは斧をつかみはぎとろうとした。
だが、彼には分っていた。
斧を抜けばもっと傷がひどくなる。
彼は思考を張り巡らせた。
血が大量に抜ける。
ましてやこの斧の刃はあの破壊神の背びれで出来ている…。
ということはこの傷は一生治らない。
片腕は使えない。
かといって、このままでは…どうするか!!
彼は地面に這いつくばりながら、混乱状態になった。
コングは迫ってくる。
赤い目を輝かせている。
完全に怒っている。
すると、体中に電気が溜まり、傷も治癒していった。
スカーキングは決断をした。
彼は斧を抜き、放り投げた。
グギャああああああああああああッ!!!!!!!
悲鳴を上げた。
血が噴水のように吹き出している。
その時、コングはスカーキングの頭をつかんだ。
そしてその掌でスカーキングの頭をがっつりと掴み、その豪快な握力で締め上げていった。
ゴキ‥‥ベキ‥‥ボリボリ‥‥。
スカーキングの頭蓋骨がきしんでいく。
脳も揺れていく。
鼻が握力に負け砕けていった。
コングの握力はスカーキングの頭蓋骨を砕くほどの勢いがあった。
『待て、話を聞け…!破壊神が来るぞ。俺たちは殺されるぞ。それでもいいのか!?俺ならばこいつらを操れる。人間を操れる。対策が打てるぞ。』
スカーキングは命乞いをした。
コングは無視するとスカーキングの頭に拳の一撃を加えた。
ブばあっ!!!!
スカーキングは無様な悲鳴をあげた。
彼は砕けた鼻を抑えながら地面に倒れた。
コングは倒れたスカーキングに腰の上にのりかかると、その拳でガンガンと殴り始めた。
ぐぎゃ!ぶべ!!ぶし!!!ぼぎゃっ!!!!!
スカーキングは赤い血を吹き出しながら倒れた。
コングは赤い目を今まで以上に光輝かせていた。
そして、拳を振るった。
ただただ振るった。
『俺とお前はこの種族の最後の種なのだぞ!それを殺すのか!待て、待て!!!!!』
スカーキングは泣き叫び、命乞いをした。
コングはそんな彼にイラだたつと首を両腕でつかみ持ち上げた。
そして、コングの二の腕の筋肉が膨れ上がっていった。
すると、さらに倍以上の腕力が湧いてきた。
ゴキィ‥‥ビキビキ!!!!
スカーキングの首の骨は砕け、そのまま胴体から引き千切られた。
赤い血を吹き出しながら、暴君は息絶えた。
やがて、コングはそんなスカーキングの生首をつかむと、奴隷たちにみせつけた。
コングに希望を抱いていた奴隷たちは震えあがった。
彼らもスカーキングは恨んでいたが、やり過ぎなのが見えていた。
それ以上にコングへの恐怖が勝っていた。
ゴガアアアアあああああああああああああッ!!!!!!!!!!
コングはドラミングをした。
勝利の合図だ。
それと同時にコングはスカーキングの亡骸をその剛腕でズタズタに引き裂き始めた。
赤く長い手足がバラバラに吹き飛び、腹から腸が躍り出ていた。
コングは赤い血が溢れる姿をみて愉悦を感じた。
暴君の死骸を嘲笑していた。
そして、残された肉片を何度も何度も踏みスカーキングの存在を否定するかのように潰していった。
その異常なさまにジェームズは奴隷たち同様に恐怖を感じた。
「‥‥なんだあいつ、俺はあいつを仲間にしていたのか!!!?」
コングは大きくジャンプしてその跳躍力で地下施設を抜け出した。
斧をうっかりと落としてしまったが、そのことに気づいていないようだ。
斧は落下していった。
まずい逃げ出してしまう。
ジェームズは必死でアナを起こそうとした。
「起きてくれ、頼むよ‥‥アナ!!!!!」
アナは目を覚ました。
「‥ジェームズ」
「大丈夫か、アナ」
「…ああ、ジェームズ‥‥もうダメよ。私、もうあのコングを止められない。暴走してるわ。」
ジェームズは口を覆った。
「そんな…!!」
「ごめん、私‥もう…」
アナは再び目を閉じた。
彼女はそのまま意識を失った。
コングは地上に抜けた。
彼はドラミングをした。
彼は全てを思い出した。
父の仇もやってきていることも。
ウホぉオオおオオオおおおおおおおォォォォ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
コングはドラミングし叫んだ。
『この地の主は俺だ、文句があるならかかってこい!!!』
その雄たけびは地鳴りとなった。
それは、世界中に広がっていった。
この地鳴りをきいていたものがいた。
午後10時、香港
かつて、英国領として中国最大の経済都市として栄えたその街は既に現在では完全に中国政府の物となっていた。
かくして要塞都市となったこの香港では原子力空母3隻が停泊し、かなり力を入れた防衛措置がとられていた。
今、ここでは中国政府による祝賀会と戦勝記念会が開かれていた。
20年前より続けていた台湾奪還作戦は、ゴジラ襲撃により疲弊したアメリカが抜けた後日本・フィリピン・インドのアジア連合との闘いになっていたが、中国はいましがたアジア連合の拠点を攻撃することに成功したというニュースで明け暮れていた。
これにより、中国は事実上台湾を領土に入れることに成功した。
香港最大のビル、環球貿易廣場の最上階では政府関係者が集まりストリップパーティーが開催されていた。
「将軍、機嫌はどうだね。」
中国政府の中枢にいる最高幹部である王は曹将軍に尋ねた。
曹将軍は、もはやスカーキングのことなど忘れていたように浮かれていた。
「はは、先生。いやはや…楽しいですな!」
「楽しんでいきたまえ!!」
男たちは笑いながら、バニーガール姿の女たちの尻を触ったり胸を触ったりして笑っていた。
彼女たちは皆、中国が占領した国々の女。
ラオスとカンボジアは経済的続国に、ベトナムは軍事的に支配した。
そんな中、ベトナムから連れてこられたリンは嫌そうな顔で軍の高官に触られていた。
彼女は不愉快さのあまり、トイレに逃げてきた。
「ああ、母さん…あいつらの手指ときたら、吐き気がするわ」
リンは泣いていた。
中国の領土となったベトナムでは、女たちはこのように娼婦として売られていた。
リンは家族のために、中国政府高官御用達の売春組織に捕らえられこのようにストリッパーとして働かされていた。
リンはある写真を取り出した。
その待ち受けには生まれたばかりの息子がいた。
まだ生まれたばかりの息子は、母国で母とともに帰りを待っている。
彼のためにも金を稼がないといけない。
「…クアン、ママはあなたのためにがんばるから…」
そういうと、彼女は写真を隠した。
子持ちというと嫌な顔をされるからだ。
「おい、アンタいつまで入ってるんだ!!!さっさとでてきなよ!!!」
声がする。
不愉快な老婆の声。
彼女はこの売春グループの元締めで、政府高官の妻だ。
「‥‥わかりました、奥様」
リンは外に出てきた。
老婆は睨みつけた。
その背後には女子トイレというのに、黒服の男が立っている。
恐らくアフリカの貧困国からきたであろう黒人のボディーガードだ。
リンはうなだれ、ふてくされた表情でパーティー会場に戻った。
そこには複数の女性が身をくねらせおどりながらきわどい恰好をさせられていた。
彼女は身をくねらせ踊ろうとした矢先だった。
ドぉオオおおおおオオン!!!!!
地鳴りが響いた。
軍高官や政府の高官は焦っている。
すると、曹将軍は何者かの連絡を受けているようだ。
「え、ななんで!!?」
将軍は焦っている。
顔を青くした
環球貿易広場の窓際をみた。
香港島が赤く燃え上がっている。
香港の海が赤くも上がっている。
停泊し、街を守っているはず戦艦や空母が全て破壊されている。
その真ん中には立っていた。
「あ・・・あああああああああ・・・・・・・・・!」
将軍は身をのけぞった。
それは黒い岩肌をしていた。
そこから白い目だけが輝いていた。
「ゴジラ…!?」
将軍は腰を抜かした。
肝いりで作ったはずの600mほどある原子力空母『麒麟』はゴジラに噛みつかれていた。
そこから無数の中国人兵士が落下している。
ゴジラはそのまま原子力空母を丸呑みしていった。
「あああああああああああああああ、あああああああああああああああああああああああ…ああああああああひっ!!!!!!!!!」
曹は笑い転げた。
あれのために1000兆元が使われた。
それがまるで、コモドドラゴンに食われる牛のように丸のみ。
「うわあああああああああああああ!」
「ゴジラだああああああああああああ!!!」
「助けてくれえええええええ!!」
同じようにみていた人々は悲鳴を上げた。
パニックの波がおきていた。
環球貿易広場は400mある超高層ビルだ。
ゴジラはそれよりも大きく、彼らを見下すように見下げていた。
将軍は銃を構えると、自分の口元に銃を咥え引き金を引いた。
「きゃああああああああああああああ!!!」
近くで見ていたリンは叫んだ。
その声に気が付いたのか、ゴジラは彼女を観た。
その時、リンは思わず腰が抜けた。
「あ、ああああああああ・・ああああああああああ・・・・待って、私・・・・・・私は・・・・・・」
ふと写真が抜けた。
リンはそれに気が付いた。
彼女は写真を拾おうとした。
すると、多くの逃げ惑う軍高官たちが彼女に気づかず踏んでいった。
「ぎゃ!いや!!!」
彼女は悲鳴を上げた。
無数の人々が写真を探し求める彼女を踏みつけた。
彼女はハイヒールで耳を踏まれた。
「いや、あああああああああああああああああああああ!!!!」
人々にけられ、踏まれ、血まみれになった彼女はようやく写真を取り戻した。
命より大臣な息子の写真。
これがなければ生きていかなかった。
そんな彼女の愛情を嘲笑うかのように、ゴジラはそこにいた。
ゴジラは香港の色鮮やかな街並みをみて、腹が立った。
光はゴジラを過剰に苛立たせた。
それにともなう叫び声がさらに不愉快にさせた。
グルウうううううううううううううううう‥‥。
唸り声をあげ、ゴジラは口を開いた。
そこから青白い光が輝いた。
リンはそれをみてしまった。
そして、彼女は青白い光に包まれた。
彼女は悲鳴をあげることができなかった。
ドごオオオおおオオおおオオオン!!!!!
やがて、巨大な青白い光は香港中を覆った。
巨大な炎は瞬く間に香港の街を焼き払った。
そして、衝撃波が瞬く間に全てを破壊しつくした。
逃げ惑う人々は身を焼かれ、街並みは崩れ、死と破壊だけが香港を包んだ。
それは数分程度だった。
たった数分で、香港の街は消滅した。
巨大なクレーターと無数の灰が香港を包んだ。
人々は、生き残らなかった。
無論リンも、愛した息子の写真とともに、灰に消え死んでいった。
巨大な水辺と化した香港の中をゴジラはたたずんでいた。
否香港だけではない、広東省そのものがクレーターと成り果てていた。
海にはかつて栄華を極めた広東省のビルや建物がボツンと岩のように浮かんでいた。
地面はなくなり海と岩とガレキだけがそこにあった。
香港の街だけでなく、深センやマカオすらもそれどころか広東省はゴジラにより消滅した。
巨大な熱と衝撃波のあまり消滅した。
文字通り消え去った。
放射能の死の灰で包まれた黒い雨が降る中、破壊の神は咆哮をあげた。
グァァァァァァァァァァルォオオオオオオおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおンンンンンンンンンンン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
それは、縄張りを土足で踏みにじったコングへの合図だった。
ココが我が領土だ、縄張りだ。
土足で踏みにじるものは許さん。
怪獣王の座をかけて、コングとゴジラは戦うことをお互いに誓ったのだった。
次回はいよいよゴジラvsコングです。