ゴジラが香港を上陸して、数時間が経過した。
アメリカ
ワシントン国防総省
地下のオペレーションルーム
そこは夏休みとクリスマスと新年が一緒になってきたような騒ぎになっていた。
無論祝う者などいなく、職員の間を緊張が張り詰めていた。
彼らにとってはいいニュースと悪いニュースが両方きていたからだ。
いいニュース、それは中国がアメリカに降伏した事だ。
悪いニュースは、ゴジラとコングが中国にいる事だ。
これが同時期に発生してしまったことでワシントンはパニック状態になっていた。
その中を呼び出されたマクドウェル上級大将はオペレーターたちの張りつめる中、アイスコーヒーを飲みながら状況を見つめていた。
彼は笑顔だった。
「上級大将殿。」
「うむ。」
「ゴジラは香港を破壊後、東シナ海に移動、コングはすさまじいスピードで東に向かっております。」
「うむ、了解した。」
マクドウェルの落ち着いた態度にオペレーターは呆然とした。
「中国政府が米軍の覇権を依頼しておりますが‥‥。」
「その件については大元帥閣下と大統領閣下と相談する。諸君らは任務に集中しろ!」
「ラジャー!」
オペレーターの一人がマクドウェルをみて驚いた。
「おいみたか、ありゃ。」
「ああ、冷静だ。大したもんだぜ。」
「でもよく冷静でいられるな。コングはあの人の部下が管理してたってのに。」
「わからん、何かあるんだろ。」
マクドウェルは満足だった。
元よりコングは邪魔者だった。
世界の守護者は人間であるべきだ。
だが、ロシアがその手に持つよりアメリカにいるべきだった。
それが暴走してしまった以上、コングは殺処分にできる。
死体だけあれば、そこから兵器に使える。
中国の女スパイと、その裏にいる怪獣にコングの情報を渡した。
その巫女とそして忌々しい甘ったれのガキのことも。
全員が処分できた。
とはいえ中国人どもは失敗したこととゴジラがきたことは予想外だった。
これのおかげで中国ロシアはアメリカに都合のいい状況で吞むはずだ。
国際対怪獣特務機関Gフォースの設立を。
マクドウェルは薄笑いを隠しながら、モニターをみつめた。
そこでは凄まじいナックルウォークで爆走するコングが見受けられた。
中国軍の戦車や戦闘ヘリはコングを攻撃しているが、焼け石に水状態になっている。
誰もコングを止めることはできていない。
コングは中国の戦闘機の攻撃に立ち上がるとドラミングを行っていた。
そして、五本の指から電撃を放つと次々に戦闘機を破壊し、360度周辺の町々を巨大な電撃で次々に破壊していった。
それで、映像は途絶えた。
「まずい、電磁パルスが起きている!」
「参ったな…、ドローンが落ちているんだ。」
マクドウェルはコーヒーカップを持ち、コーヒーを飲んだ。
苦い味が舌と喉をひりつかせた。
コングはすさまじいスピードで中国を移動していた。
時々凄まじい跳躍力でジャンプをしながらゆっくり街を練り歩いた。
ロシアと中国軍の共同攻撃ではとうてい止めることができなかった。
コングは大きくジャンプしながら都市間を移動していった。
その素早さに中国軍もロシア軍も対応できなかった。
彼は、複数回ジャンプすると空中に躍り出ては落下し、数あるまちまちを次々にクレーターに変えていった。
彼はようやく海がみえる街にきた。
上海だった。
ゴガアアアアああああああああッ!!!!!!!!
コングは海に向かって咆哮をあげた。
それは王座への挑戦の合図だった。
反応がない。
コングは苛立った。
人々が逃げ回っている。
コングはそれをスナック菓子のようにつまむと口の中に運んでいった。
グシャっ…がシャツ…。
なんだこれは…こんなまずいの食ったことがない。
人間の味は全くうまくなくコングはぺっと吐き地面に吐き捨てた。
100人以上の中国の人民の血と肉が一瞬で無駄になった。
彼は気分がそがれたように、うなだれた。
彼がまっている相手はこないようだ。
もはや巫女を失い、闘争本能の赴くまま、暴力の衝動を抑える気もないままコングは突き進んだ。
そこにもはや人類の守護者であるコングはなかった。
だが、これこそがコング族の本性だった。
かつて巫女族は、コングの狂暴性を抑え知恵のある種族を守るために生み出された。
しかし、巫女族がいないコング族はもはやただの獣でしかなかった。
悲しい事に、髑髏島の王コングはかつての一族が歩んだ獣の歴史を再現するしかなかった。
今のコングは目が赤く光り続けていた。
そこにはコング族を発展させた知恵はなく、コング族を滅ぼした慢心と凶暴さのみがあった。
そんな時だった。
ビクンッ!!!!!!
コングの毛が逆立った。
体内に走る電流が全身をかけめぐった。
第六感が働いた。
筋肉が流々と動いた。
來る…、ヤツだ。
海から、それは浮かび上がった。
水しぶきが上がり、津波が起きた。
コングは想像以上に水が押し寄せてくるのに驚いた。
だが、もはやこの魔神を倒すのは60mの津波でも無理だった。
海から上がった水しぶきの中から巨大な黒い影が浮かび上がった。
彼は心の中で昂っていた傲慢さと余裕が消え、恐怖と憎悪が浮かび上がってくるのを感じた。
そして、心臓がドクドクと高鳴るのを感じた。
覚えている、この感覚を。
この不快な臭いを。
この黒い岩肌を。
海の中から浮かび上がった黒い影から水が消えた。
そこにヤツはいた。
コングとその親から故郷を奪い、一族を皆殺しにした憎い怨敵がいた。
黒い岩山のような肌、呆れるほどの巨体。
破壊の神にして怪獣の王。
ゴジラだ。
ゴジラはコングよりも大きかった。
300mのコングを見下ろすようにゴジラは白い目を動かせた。
500mのゴジラは自らを呼び出した挑戦者を見下げるようにみつめた。
グルゥ‥‥‥!!!!!
こいつのために父は、我が一族は…とそのようなことを想いながら、歯ぎしりをしてコングは、ゴジラの前方に出てきた。
そして、胸を叩きながら自身を高めた。
体の中にある電気エネルギーは怒りの感情で増幅していっている。
筋肉もより硬く強く大きくなっていくのがわかった。
ゴガアアアアああああああああああああああああッ!!!!!!!!
コングは獅子のように方向をあげた。
そして、全身の電気エネルギーを右拳にこめた。
5本の指からは今までコングが想像したこともないほどの電気エネルギーが放たれた。
ドごオオオおおおおおおおおっ!!!!!!!!!!!!!
ゴジラの全身を9000兆ボルトの電流が駆け巡っていく。
上海の高層ビルを破壊しながら電流はゴジラを突き刺した。
そのはずだった…。
ビクともしていない。
黒い岩肌は電流を吸収していった。
電流は背びれの中へと吸収された。
ゴジラは痛みすら感じていない。
グルウううウッ!!!!!!
コングは再び電流を溜め込んだ。
そして巨大なEMP波とともに巨大な電撃を再び放った。
しかし、ゴジラはまたビクともしていない。
コングの中で焦りが見え始めた。
彼は、野生本能の赴くままコングは地面をなんども叩いた。
ドンドンドンドンドンドンッ!!!!!!!
やがて、それは巨大な地鳴りとなり地震となっていった。
地面は揺れ、ビルが崩れていった。
M9の大震災はゴジラのいた地面を揺るがした。
だが、これに対処するゴジラの方法は意外だった。
ゴジラは大きな足を振るうと地面を踏みつけた。
ズシいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいぃンンン!!!!!!!!!!!!!!!
コングの起こした地震は、ゴジラの地鳴りで消されてた。
それどころか、地面は割れていき一瞬で地割れが発生した。
コングはその場から離れ何とか距離をとろうとした。
コングは悔しそうに雄たけびを上げるとは巨大な肩を怒らせ、筋肉を動かしはちきれんばかりに力を溜め込みかけだした。
そして、ゴジラの腰めがけて突進を繰り出した。
ゴジラの腰をつかみ必死で押し出した。
全身の力を込めた。
だが、ゴジラの体は岩山のように太く硬かった。
まるで、相手にもならない。
白く冷たい目だけがコングをみつめていた。
グうううウッ…!!!グおおおおおおっ!!!!!!!
コングは汗をかきゴジラを何とか動かそうとした。
だが、黒い破壊神の巨体は動かない。
岩山のように不動に微動だにせずたたずんでいた。
はあ、はあ‥‥はああ…はあああ…。
息切れをした。
コングは今まで戦ってきた怪獣とは、格が全く違うことにその時気づいた。
髑髏島の王はゴジラの体を持ち上げるほどの怪力はなかった。
その時、ゴジラの足が動き始めた。
コングの全身が、第六感が働きゴジラから離れた。
そして、大きく地を踏みジャンプした。
上空高く飛んでいったコングはゴジラの背後に近づいた。
これならば勝機がある。
コングは後ろに飛びつき、背に回りゴジラの首を絞めあげようとした。
その時だった。
ビクン…。
1000mあるゴジラの尾が反応した。
そして、背後に近づいたコングをバチン!!!とはねた。
ごきっ‥‥!!!!!
コングの上半身に当たったゴジラの尾はコングの上半身の骨を飴細工のように砕いた。
300mあるコングは海上にはね飛ぶと、監視していた中国軍の原子力空母の上に落下していった。
ドゴォオオオオオオおおん!!!!!
コングは600mある中国の原子力空母『黄龍』の上でもがき苦しんだ。
彼は起き上がった。
そして、血反吐を吐いた。
ふと空母の船員たちが慌てふためいている。
コングは鬱陶しそうにその船員たちを掌で潰した。
そして、地上にいるゴジラをみた。
ずしぃいいいいいいいいいいいいん!!!!!!
ゴジラは地鳴りをしながら陸上を進んでいた。
ゆっくりと、まるでコングなど相手にする気はないようだ。
コングは自身が造作もない雑魚と判断されたことに焦り憤った。
怒りのエネルギーはコングの腕力と筋力、スタミナをさらに膨れ上がらせた。
電流が再び全身を駆け巡ると、ゴジラに加えられた傷が治癒していくのがわかった。
彼は自身がいるのが海で、これが人間の船と知るとまずは海に出た。
そして、『黄龍』を持ち上げた。
グううううううウッ!!!!!
コングが想像してる以上に重い。
彼は自身の体重より重く大きい全長600m重さ90万トンの原子力空母をなんとかつかんだ。
そして、海から陸まで泳ぎながら引き摺った。
「撃て撃て!!!!!」
中国軍の軍人が砲撃を開始した。
コングは少し痛かったが我慢した。
不思議だが我慢すればするほど体力が増していく気分になった。
そして、なんとかコングが立てそうな場所につくと両手でつかんだ。
「うわああああああああああああああ!!!!」
悲鳴が上がる。
コングは聞こえたがさらに無視した。
肩の上、天高く持ち上げると、全身の力を込めて思いっきり投げ飛ばした。
空母の人員や戦闘機たちが落下していくのがみえたが、気にしなかった。
あのノロマ者め。
コングは内心罵った。
しかし、ゴジラの動きはコングが想像以上に機敏だった。
ゴジラはまず背後を向き、近づいてくる空母に備えた。
そして、自身の身長より大きい原子力空母に食らいつき、顎の力だけで噛みつき軽く造作もなく持ち上げてみせた。
その膂力、アゴの力だけで持ち上げる全身の肩さ。
やがてゴジラは空母を地面に軽く持ち上げるとそのまま大きな口をあけ丸呑みにしていった。
ゴジラの口の中にあった無数の犬歯はドリルのように回転し、中国が誇る最新性の原子力空母をまるで造作もなく削り取っていった。
やがて彼は、原子炉を飲み込んだ。
そして、満足そうに腹を動かした。
ゾッ…!!!
コングの全身に悪寒が働いた。
恐怖が立ち込めた。
もしも自分がああなったらどうする。
ゴジラの白い目が丸くなった。
そして、コングの方をジッと体を動かした。
ハッ…はあ!!!
コングはその異様な白さにのけぞった。
奴には感情がないのか…。
そして思わず地に伏せた。
恐怖のあまり。
なぜ俺はこの地上にいる。
俺の種族があの次元を追い出されたからだ。
なぜ追い出されたのか。
あの陸地にいる暴君が俺の種族を追い出し、滅ぼしたからだ。
彼は記憶の中にいる父を思い出した。
強く気高く巫女族からも尊敬され、同族からも愛された王。
母のことも思い出した。
母は、この次元に流れ着いた俺を一人で育てたが‥‥病にかかり死んだ。
そして、一人残されたコングは巫女族とともに髑髏島に流れ着いた。
グルウううううううう!!!!!!
俺だってあそこでは、王様なんだ。
あいつがなんだ。
コングは勇気を振り絞った。
そして、胸を叩きドラミングをした。
ドラミングをすればするほど自信が湧いてきた。
アドレナリンが溢れていった。
そして、叫んだ。
『ゴガアアアアああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!!!(なめんじゃねええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!)』
すると、どうだ。
ゴジラの動きは止まった。
白い目を輝かせた破壊の神は、ギロリとコングをみつめた。
コングは勢いよくナックルウォークでかけながら大きくジャンプした。
それは地面をこえ、大気圏外までたどり着いた。
そこで雷の放電を受けたコングは徐々に力が増していった。
そして、その時が来た。
コングは地面に向かっていった。
ゴジラの背中がみえる。
コングは大きく腕を振るい、ゴジラの背びれにむかってとびかかろうとした。
だが、ゴジラの動きが止まった。
そして、尾が動いた。
1000mの尾は鞭のようにしなり、コングの体を再び蠅のように叩き落した。
バチィン!!!!!!!!
コングの体は地面に倒れた。
そして、その時だった。
‥‥ゴキッ!!!!!
肋骨が砕けていった。
コングは痛みにのたうち回った。
声を出すこともできない激痛。
それがコングを襲った。
ゴジラは、それを白い目で冷酷にみていた。
そこにはコングへの感情などなかった。
ふと、コングは近づいてきていた。
コングは、痛めた胸を抑えながらなんとか何とか逃げようとした。
その時だった。
ビュルるるるるっ!!!!!!
素早い動きとともにまるで大蛇のようにゴジラの尾が延びてきた。
1000mあるゴジラの尾は逃げようとするコングの胴に絡みついた。
コングは振り払おうとしたが、ゴジラの尾は素早く太く強かった。
一瞬でコングの胴は絡みつけられた。
そして、その掌から何度も何度も電気を放ちこの捕縛を止めようとした。
ゴジラの攻撃の合図だ。
コングはゴジラを本気にさせてしまった。
ギュウウうううううううううううう!!!!!!!!!!!
ゴジラの尾はコングの胴を締め上げた。
うが、ゴガアアアアあああああああああああああああああああッ!!!!!!!!!!!
コングは苦悶の声をあげた。
キングナーガの時とは比べ物のにならない太さの尾は、コングの背を巻き一気に締め上げた。
ゴキゴキゴキ‥‥‥ミシィ‥‥!!
骨がきしむ音がする。
コングは両腕の掌から電気を放った。
そして、剛力を使い、なんとか逃げようとした。
しかし、ゴジラはその程度のエネルギーは吸収する価値もないと言わんばかりに無視している。
それどころか、60万トン以上あるコングの胴体を天空高く持ち上げコングの背が軋み締めあがっていく様をみせつけるように持ち上げていた。
胴を締め上げられたコングの顔はゴジラの顔に近づけられた。
彼は口を開けていた。
ゴジラの顔は近くで見るよりはるかに大きかった。
コングの顔の数倍以上あるゴジラの大きなアゴは無数の牙で埋め尽くされていた。
まるでオサガメのようだった。
舌のようなものは存在しない。
コングは自身を食う気でいるのか!?と気が付いた。
が、次の瞬間口を閉じた。
ゴジラは白く瞳の無い目でコングを凝視した。
コングはその時、これがチャンスだと気が付いた。
これでゴジラの顔に近づいた。
どんな生物であっても顔を殴れば怯むはずだ。
彼は右腕に全エネルギーを溜め込んだ。
そして、思いっきりゴジラの頬めがけて一撃を叩きこんだ。
ボゴォッ!!!!!!!!
拳の一撃は巨大な衝撃波を産んだ。
ゴジラの破壊に耐えていたビル群の窓ガラスが一気に割れていった。
だが、おかしいことがおきた。
コングは攻撃したはずだったが、自身が激痛に苦しんでいることに気が付いた。
右腕に激痛が広がった。
ゴギャああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!!!
巨大なる魔神は悲鳴を上げた。
右腕を抑えながらコングはもだえた。
ゴジラは傷一つついていなかった。
なぜなら、ゴジラを殴ったコングの右腕は逆に折れていたのだ。
ゴジラは自分が攻撃されたをの知っているのか知らずか。
そして、コングを尾に縛り付けたまま600mほどある上海中心ビルをみた。
そこにコングの体をぶつけた。
ドガあッ!!!!!!
ガレキは崩れコングの体を突き刺していった。
コングは自身の倍近い大きさのビルが崩れていく中を何度も何度もガレキにぶちあたり全身がボロボロになっていくのを感じた。
尾はまた動いた。
すると、コングの体をひきずりまわし300mの巨体をまるで、ぶら下がり人形のように持て遊び引きずり回した。
この行為をモニターで見ていた米兵の一人が気が付いた。
こいつは弄んでいる。
玩具にしているんだ。
コングはゴジラにはかなわない。
それをゴジラは知っているんだ。
マイアミで暴れまわったコングは、全く格上の相手の玩具になっている。
ゴジラはもう飽きたといわんばかり、コングを持ち上げた。
そして、強く強く締め上げた。
ごがぁ…うがあ‥‥!!!!
コングは悲鳴を上げただただもだえ苦しんでいた。
右腕は折れている。
もはや自慢の剛力は通じない。
が、がぁ・・・・・あ、があ!!!!
コングの意識が薄れていった。
これと同時に、口から泡を吹き悶絶した。
全身は痙攣をおこしている。
これでもすでに地獄といえばそうかもしれない。
だが、次の瞬間だった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・ゴキッ!!!!!
コングは激痛を感じる瞬間すらなかった。
背骨が折れてしまったのだから。
ゴジラは背骨が折れたコングをようやく解放した。
コングは地面に落下した。
はあ、はあ・・・はあ・・・・。
コングは息を粗く吐きながら、動かなくなった背骨と下半身を引きずり地面を張っていった。
ゴジラは、それを白く冷たい目でみていた。
そしてゆっくりと追いかけた。
コングの目は赤さがなくなっていた。
狂暴性は消えていた。
今のかれにあるのは、ただただ目の前に存在する圧倒的な暴力・破壊・理不尽から逃れることだけだった。
恐怖が心の中で浮かび上がった。
下半身不随となったコングはもはや、何もできない。
うヴぉ‥‥!!
だらしなく叫び、地を這いゴジラから逃げるコング。
だが、それももう終わりの時がきた。
ゴジラは、コングをゆっくりと追った。
そして、地面に倒れるコングをみつめた。
必死で逃げるコング。
まるでその姿はゴキブリのようだった。
彼はなんとか地面を這いながら、逃げたが大きく巨大なゴジラから逃げるのはもはや無理な話であった。
ゴジラは尾を再びコングに伸ばした。
もはや何もできない脱力したコングは、うなだれ殺されるのを待つ死刑囚のように無力感にあふれていた。
ゴジラは、そんなコングの首周りに尾を絡めた。
そして、持ち上げた。
ごが・・ごが・・・・・。
コングは首の骨を折られるのかと身構えた。
だが、それは違った。
やがて、ゴジラの牙まみれの口は大きく開いた。
・・・・・・・・・・・・!?
コングは驚いた。
危機を感じ取ったコングは瞬時に体内に残った電力をフル活動させた。
そして、一気に放電した。
だが、ゴジラはその電力すらも吸収していった。
コングはそれもわかっていたが、もはやこれにすがるしかなかった。
やがてゴジラはコングの右腕に目を付けた。
骨が折れ、だらしなく垂れさがっている右腕は格好の獲物だった。
コングはこれに気が付き、ゴジラが何を使用しているのかわかると首を横に振った。
『やめろ、やめてくれ…』
コングの命乞いなどゴジラに通じるわけもなかった。
巨大な黒い恐竜型怪獣は、ゴリラ型怪獣の右腕に噛みついた。
そして、一気に食いちぎった。
ブチッ、ベリベリ…‥‥‥!!!!!
コングの右腕はまるで簡単にちぎれていった。
ゴジラの顎の力はコングが想像している以上に強かった。
やがて、右肩から血しぶきが滝のようにふった。
うぎゃああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!!!!!!!
コングは腕を食いちぎられた。
食いちぎられ失った右腕から赤い血がしたたり落ちた。
と、同時に首を絞めあげていたゴジラの尾の力が弱くなっていくのを感じた。
コングは地面に倒れた。
コングは、もう何もできなかった。
背骨は砕け、右腕の骨は折れて食いちぎられた。
があ・・・・がああ・・・・・・。
コングはその時わかった。
そうだ、こうやって父上も死んだのだ。
復讐もできない。
自分は弄ばれ、腕を食われ死んでいくのだ。
コングの中には暴走という文字はもうなかった。
彼は思い出した。
『アナ…!!!』
巫女のアナ。
彼にとって数少ない家族といえるアナ。
『助けてくれ、アナ…」
コングは情けなく、巫女に命乞いをした。
そして、左腕を何とか使い虫のように這い逃げ出した。
ゴジラはその様子をみていた。
色のない白目で、まじまじとみていた。
似たような種族が以前にいた。
恐らくこやつはそれの子供か末裔。
こやつのほうが体格もパワーもスタミナもあるが、気迫はやはり過去に対峙したやつの方があったな。
情けなく地面を這いつくばり逃げるコング。
ゴジラはその姿をみて失望を感じた。
かつてのライヴァルの子供は、想像以上に弱かった。
彼にトドメをさすべく青白い光を溜め込み放とうとした。
コングはそれに気が付いた。
そして、這いながらそれをみつめた。
ゴジラは殺しにかかっている。
あの熱線の威力はすさまじい。
食らえば一撃で死ぬ。
だが、コングにはもう逃げる体力もなかった。
コングは残った片腕で天を仰いだ。
ゴジラの処刑の光はコングにかかろうとした。
その瞬間だった。
グルッ…!!!
唸り声をたてたゴジラは何かの気配に気が付き、顔をしかめた。
コングから標的が変わったのだ。
コングは情けなく、その瞬間をみてなんとか海の中に逃げた。
海の水はコングの傷をさらに痛くした。
その激痛の中コングはゆっくりと目を閉じた。
幸運にもその日の海は荒れていた。
コングの体は海にゆられながら、なんとか東シナ海に去っていった。
上海に残ったゴジラは上空をみつめた。
そこには、中国ロシアが共同で開発した都市防衛兵器がやってきていた。
大きな光がした。
それは地面に降りてきた。
ドシャアああああああああああッ!!!!!!
大きな轟音と地鳴りが響いた。
ギシ‥‥ギシ‥‥。
機械音とともに地面の中から脚がみえた。
機械でで出来ていた。
それは鉄でできた巨大な蜘蛛だった。
中国政府は秘密裏で開発していた都市防衛兵器のロボット怪獣をとうとう解き放った。
ガギシ‥‥ガギシ‥‥。
機械音とともに鉄製の蜘蛛は動いた。
そして、ゴジラに向かって飛び掛かった。
ゴジラは、それを迎え撃った。
巨大なアゴと前足の力で鉄製の蜘蛛を抑え込むと、バラバラに引き千切った。
ロボット蜘蛛の目は赤く輝くと、レーザー光線をゴジラの顎に放った。
だが、それもゴジラの動きを阻めることはできなかった。
北京
中国軍司令部地下シェルター
国家主席の王はアメリカの援助を申し出たが、アメリカは了承しなかった。
王はやきもきした。
土足でこの国に入り込んで好き勝手したくせに、まさか手を貸さないのか!?
おまけに、王はアメリカ主導の怪獣対策特務機関設立にゴーサインを送ってしまった。
「アメリカ人め、足元をみおって…」
彼はモニターでロボット蜘蛛がゴジラに相手になっていないのをみていた。
それは知っていた。
なぜなら、これからが本番。
「N2爆雷を放て。」
王は知っていた。
核兵器はゴジラを強くするだけ。
だったら、それ以上の威力のある燃料帰化爆弾を使用すればいいだけのこと。
あれを投下し、酸素をなくし息ができなくしてやる。
「いいのですか、あそこには国民が」
「知らん!」
「ですが…。」
「私に逆らうのかね?」
国家主席は静止した軍人を睨んだ。
軍人は息をのみ首を縦に振った。
そして、ボタンを押した。
ゴジラは痛めつけていた蜘蛛型ロボットの目が赤く輝くのがわかった。
すると、上空から何かが降ってきた。
それは人工衛星から、大気圏外にやってきた。
巨大な燃料帰化爆弾『祝融』は振ってきた。
ゴジラはそれに気づくこともなかった。
祝融の核兵器ほどの放射能などの二次被害は少ないものの、その威力はすさまじく火力だけで言えばビキニ型水爆どころか、ツァーリ爆弾にも匹敵するほどの威力だった。
そして、酸素を燃やし呼吸困難に陥らせる。
そうすれば、ゴジラと言えども死ぬはず。
『祝融』は降り注いだ。
そして、爆音とともに上海の街を一瞬で焼き尽くした。
王国家主席はほくそ笑んだ。
モニターの中では土煙のみがたちこめ、何も見えなくなっている。
だが、これも通信障害の一つでしかない。
その内結果がみえていくはずだ。
彼はそう思い込んでいた。
だが、結果は違った。
「ご覧ください!!!!」
兵士の一人が叫んだ。
すると、『祝融』の放ったエネルギーは大きな口を開けたゴジラに吸収されて行くのがわかった。
大きく息を吸い込んだゴジラは『祝融』の炎を包み込んだ。
ゴジラの酸素を奪うはずが、『祝融』はゴジラに大きなエネルギーを与えるだけになっていた。
「バカな…」
王国家主席は椅子の中でずれおちた。
上海の街、市民はゴジラでもコングでもなくほかならぬ中国政府のトップにより、崩壊した。
「なんてことだ…」
王は頭を抱えた。
そんな彼の失墜など知らぬとばかりに、ゴジラは上機嫌だった。
満足したゴジラは海の中へと消え去っていった。
数時間後
在日米軍沖縄基地。
一旦ゴジラ襲撃で本国に撤退した沖縄米軍は、3年前に戻ってきていた。
そこは中国軍相手の前線基地だった。
そこのバーでジェームズもいた。
これよりさらに数時間前のこと、ゴジラとコングが戦う前のことだった。
彼は気絶したアナを抱きながら、ウイグルの収容所から奴隷たちとともに地上に上がろうとした。
途中で彼は紅靈の死骸をみた。
その死骸は、全裸に剥かれ言葉では表現できない悪戯を受けていた。
彼女の首はつるされ、ぶら下げられていた。
そこで友人のジャクソンと出会った。
ジャクソンは、ジェームズを助けるために地上にいる中国軍と戦い基地を制圧して地下にきていた。
ジャクソンに救出されたジェームズは、ともに沖縄米軍基地に向かい飛び立っていった。
アナはそこで病院に連れて行かれた。
ジェームズはその近くにあるバーにいた。
日本人の女性が友人たちとともに、彼を見て話している。
その顔は笑顔だ。
「…‥。」
日本人女性は近づいてきた。
「あなた、ハンサムですね。」
ジェームズは無視をした。
バーのテレビをみた。
そこではゴジラとコングが交戦したというニュースが流れていた。
「ねえ、遊びません?私たちと」
女性は集団のようだ。
すると、うち一人がジェームズのふとももに手を伸ばした。
誘惑をしている。
「ねえ…聞いてるの。」
だが、彼は、それを払いのけた。
女性はその仕草に少し腹が立ったのか、怒った様子だった。
「なにあのガイジン」
「ほうっておきましょ」
日本人女性集団は苛立った様子でジェームズを睨んだ。
すると、一緒に飲んでいたジャクソンが近づいてきた。
「おい、どうしたんだよ。あの女、お前にきがあるぜ。」
「‥‥え?ああ。」
「なんだよ、どうしたのか。」
「いや、いいんだ…忘れてくれ。俺は女を抱く気分じゃない。しばらくは。」
ジャクソンは椅子に腰かけながらバーボンを手に取った。
「アナのことか。」
「ああ、そうだ…彼女はずっと目を覚まさない。」
「なんでだろうな。」
「コングのことも操れないんだ…。どうしたらいいのかな。」
ジェームズは立ち上がった。
彼はやがて、バーを出た。
夜風がしみた。
その時だった。
米軍基地の方角からサイレンが鳴り響いた。
ジェームズは、気を新たに基地の方へと向かっていった。
そこでは兵士たちが慌ただしく動いていた。
ジェームズも、兵士たちが集まっている方に近づき様子をみた。
そこは浜辺だった。
そこには、いた。
コングがいた。
「コング!!!!」
コングは片腕を失い、顔が青白くなっていた。
彼は呼吸はしていたが、死に欠けていた。
その時、ジェームズはわかった。
コングは、負けたんだ。
ジェームズは愕然とした。
「ああ、なんてことだ…コング…。」
コングは負けた。
完膚なきまでにゴジラに勝った。
この王座をかけた第一試合はゴジラのKO勝ちで幕を閉じたのだった…。
そして、ジェームズもアナもコングですら知らない策謀が徐々に動き始めていた。
それは、家族ごっこの終焉を意味していた。