宇宙戦艦ヤマトReAGE2202 愛の戦士たち   作:アドリアドリア

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第十三話「伏せられた援軍」

左舷展望室で気を落とした様子の古代に並び立ち古代の顔をわずかにのぞき込む。

 

「古代君、そう気を落とさないで」

 

彼の下がった眉、半開きの瞼、焦点の定まらない眼から普段の様子でないのは明らかであった。

 

「こんはなずじゃなかった、、、」

 

あのシャンブロウでの「一週間」の経験ゆえだろう、古代はイスカンダルの航海で生まれが違くとも話せば手を取り合えると思っていた。地球の市民は浮世離れだのなんだの言ってくるが、そんなものは関係ない。そう信じていた。なのに、、、目の前で、自分自身の手で俺は、自分の信じていることを丸々否定してしまったのだ。人に裏切られることは当然つらいが、何よりも辛いのは自分自身に裏切られることだ。

 

「なあ、雪。俺は、俺は間違っていたのか?」

 

古代の悩みを知るはずもなく〈ヤマト〉はテレザート星へと刻一刻と迫っていた。だが、それは同時に敵の防衛網がより強固になり困難な戦いを強いられるということでもあった。そして、広大な宇宙の様々な環境を侵略によって知っているガトランティスは自然現象をも見事な要塞として利用していたのだ。そう、それは突然として現れた。

 

「目の前には大規模な流星帯が川のように立ちふさがっています」

「ふむ、戦術長。どうするべきだと思う」

 

どうしたことか古代からはすぐに答えが返ってこなかった。

 

「、、、戦術長!」

「は、はい!すみません、、、このまま流星帯を突っ切ってテレザートに向かうのが最善だと考えます」

 

我に返ったように古代ははっとして土方の呼びかけに答える。

 

「しっかりしろ。それはそれとして、わたしも同意見だ。航海長」

「了解。ヤマト、流星帯に突入します」

 

島はスロットルを最大に入れて勢いよく〈ヤマト〉を加速させようとする。最初は確かに彼の操舵に合わせてフライホイールがさらに回転するうねりの音を感じられたのだが、気づけばそれは通常の航行速度よりも弱弱しくなりつつあった。

 

「島、速力が低下しているぞ」

 

古代がいち早く島を指摘する。島は分かっている、と言いながら舵を握るがどうも速力は上がらない。すぐに、これは機関科でなければ解決できない問題だとわかった。

 

「徳川機関長、どうなっていますか!」

「波動エネルギーが弱まっておる、、、これじゃどうしよもないのう、、、」

 

艦長に命令されるより早く真田はアナライザーに分析を命じる。

 

「流星帯ノ隕石ノ分析ガ完了。反物質ガ岩石ニ作用シテ波動えねるぎーヲ吸収スル様ニ変質シテイマス」

 

そこに追い打ちをかけるように〈ヤマト〉に敵が襲い掛かる。

 

「未確認飛行部隊発見、距離7200」

「投影!」

 

それは先に戦ったガトランティスのミサイル巡洋艦艦隊であった。先ほどの艦隊を撃滅したことから考えるに、おそらく崎野が前衛艦隊でこちらがテレザートの守備を要る本隊と言ったところだろう。敵はこの流星帯を曲輪として利用していたのだ。〈ヤマト〉はまんまと飛び込んできた恰好のカモである。

 

「フフフ、、、ヤマッテ・ヤ、ガイゴリ・ニ・オボツ・ナ。ハクライ・メツド、エフズイー・イエット・アン!ボラック・ドパーン、ガトラン・ワ・ズォーダー・ヤン・トランツゥヴ・ウォシュ!(フフフ、、、ヤマッテめ、外堀に溺れたな。破滅の矢を放て!この手で、ガトランティスと大帝の栄光の為に!)」

 

ゴーランドの弓兵艦隊が次々とミサイルを放つ。流石にイスカンダルへの航海で鍛えられたせい否だけあって、エネルギー不足の中でも島は何とか回避に努めるが、さすがに全部はよけきれない。一発が〈ヤマト〉の左舷を夾叉、近接信管で爆発し〈ヤマト〉を揺さぶった。

落ち着き払った様子のキーマンもさすがに割り振られた部屋から飛び出して艦内通路を移動して艦橋の方へと向かった。艦橋にたどり着くとすでに濃緑の軍服に身を包んだガタイのいい連中の背中が見えた。そんなことを意にも介さず、キーマンは古代の元へと寄る。

 

「おい、ヤマトはどうなっている」

「けっ、ガミ公かよ」

 

キーマンが前に出ると真っ先に斉藤が不愉快そうな顔を示した。

 

「そんな言葉使いするんじゃないよ、仮にも同盟国の人なんだからさ」

「でもよ、桐生のおやっさんだってこいつらに殺されたんだろうが」

「こいつが殺したわけじゃないだろう?」

「でもよ、、、」

 

斉藤が言い怯んだ隙に古代が話を始めるべく間にくさびを入れる。だが、それはむしろ余計な一言であった。

 

「今は言い合っているほど余裕はない」

「んだと」

 

斉藤の沈下に成功したのはやはり永倉であった。

 

「いい加減にしなさいな」

 

斉藤はようやくばつの悪そうな顔をすると今度こそ口を噤んだ。それを確認すると永倉は斉藤の頭を掴んで古代とキーマン二人に頭を下げさせる。無論、彼女自身も頭を下げる。

 

「すまないね、二人とも」

「いえ、お気になさらず」

「自分も、特に問題はありません。斉藤の気持ちは分かりますから」

 

キーマンの後に古代も続いて永倉の謝罪に遠慮する。その言葉をキーマンは快く思わなかったらしく、軽く古代を睨むが古代は気づいていなかった。そのまま何事もなかったかのように古代はキーマンへの説明を始める。今〈ヤマト〉は流星帯の中にいること、波動エネルギーが吸い取られつつあること。

 

「なら、無理やり脱出してゲシュバールダムを使えばいいだろ。あんなミサイルが本隊みたいな相手なら〈ヤマト〉の波動砲でも艦隊は誘爆し殲滅できるだろ」

「波動砲は、、、今のヤマトには使えない」

「使えない?どういうことだ」

 

古代は敵の攻撃が怯んだ隙を見てコンソールをキーマンに見せつける。「次元波動爆縮放射器:回路非接続状態」、、、この表示を見たキーマンは思わず唖然とする。

 

「これは、、、」

「イスカンダルと共に背負う十字架だ」

 

古代はイスカンダル和親条約についてキーマンに説明した。キーマンはうわさには聞いていたが、、、と顔をしかめた。

 

「だが、地球は大量の波動砲艦隊を持っている。君たちの星では『メギドの火』なる言葉があるらしいが、あのメギドの火遊びはどう説明するつもりだ」

「地球はイスカンダルを信じていない」

「信じていない?どういう、、、」

 

そのとき、再びミサイルが飛んできた。キーマンも思わず衝撃で足を崩してしまう。

 

「話は後だ!部屋に戻れ、ここは危険だ!」

「ちっ、、、後で聞くからな」

 

そんな中、真田は技術科の分析室に向かうと新見(弟)が鼻歌を歌いながら呑気に機器をいじっていた。普段の真田ならそんな新見(弟)の様子を見ても軽く鼻で笑いながら小突く程度なのだが、こんな状況とあっては真田とて焦るあまり新米への態度も厳しいものとなっていた。

 

「新米、呑気に鼻歌を歌っている場合か。このままではヤマトはエネルギーを吸い取られて完全に動けなくなってしまうんだぞ」

「ずっとこの調子ですよ。まあ、変に焦られてこっちの調子まで乱れるよりはずっといいのでこれはこれで有難いですけど」

 

横で同じく分析をしている桐生はあきれたという様子ではありながらも、新見(弟)の呑気な様子のおかげもあってかかなり落ち着いているようにも思えた。しかし、そんな二人の様子に新見(弟)は臆することなく真田の言葉への疑問を湧き立たせる。

 

「吸い取られて動けなく?それって亜空間ってことですか?」

 

そんな焦っている中でも純粋な科学的な疑問に対しては真面目に答えるのが真田という人間であった。

 

「解釈の仕方によっては正しい。この通常空間に正物質が満ちているなら、亜空間は反物質で満ちていると考えることもできる。つまり、この流星帯を亜空間の川と考えても理論的には間違いではないな」

「川流れですか。まるで桃太郎みたいですね、、、このままドンブラコとテレザートまで行けないもんだか」

 

傍から見れば幼稚な感想である。だが、そんなしょうもない感想が真田に重大な衝撃を与えた。彼は目を見開くと思わず新見(弟)の胸ぐらを掴む。

 

「待て、新米。今何と言った!?」

「いや、反物質ならテレザート星にまで波に乗っていけるんじゃないかなあなんてアホらしいことを、、、」

 

今までこんな気迫の真田を見たことのなかった新見(弟)は思わずひるんでしまい、真田への言い訳を終えることにはすっかり蚊の鳴くような声となっていた。

 

「フフフ、、、」

「技術長!?」

 

横でその様子を見ていた桐生もその様子には驚かずにはいられない。

 

「ハハハ、どうしてこんな簡単なことに気づかなかったんだ!」

 

真田は悪役のような高笑いをしながら興奮のあまり新見(弟)を突き飛ばすと艦橋の方へと駆け足で戻っていった。間もなく立ち上がった新見(弟)は「口は禍の元だなあ、、、」とぼやいたとかどうとか。彼のたんこぶは桐生が冷やしたらしい。

そんなことになっているとは知らず、第一艦橋では資金弾による揺れと爆発による光に全員が悶えている中、真田が慌てるように走って戻ってきた。あの真田さんが慌てて戻ってきたということはさらなる絶望的な事態が待ち受けているか、何か解決策が見つかったかの二択なのはもはや〈ヤマト〉乗組員にとっては自明だった。

 

「艦長!」

「副長、何か打開策が見つかったかね」

「はい、本艦はこのまま流星帯に流されるのが得策だと考えます」

 

誰もがあまりにもの突拍子のない提案に驚く。それが古代からの提案ならまだ理解できたが、あの真田から飛び出たというのはまるで理解できなかった。古代もその提案に耳を疑った一人であった。

 

「真田さん!?」

「気象長、流星帯の流路を計測してみろ」

 

突如として〈ヤマト〉の命運を握らされた太田は慌てずにはいられなかった。

 

「お、俺ですか!?」

「そうだ、曲がりなりにも宇宙気象のプロだろう?これくらいできるはずだ」

 

唖然としている太田を島が茶化す。

 

「太田、喜べよ」

 

南部もそれに追従する形でひゅうっと言う。

 

「あの真田さんから認められてるんだ、名誉なことだよ」

「浮かれるのは後だ、あまり時間はない」

 

いざという時の艦長代理だ、こういう時も古代は冷静である。真田もそれに黙ってうなずく。その様子に気づいた太田は

 

「は、はい!」

 

とわざとらしくしつつも、先ほどまでとは様子を改めて測定を一気に始める。

そうとも知らず、〈ゴストーク〉の櫓でゴーランドはその様子をため息をつきながら眺めていた。

 

「ヤマッテめ、抵抗をやめるとは。武士(もののふ)としての矜持を持たぬか。まあ、だがこれで後は時間の問題か」

「大都督、進言でありますが、、、」

「何か」

「この下流にあるは惑星テレザート、彼奴等の目的は川の早きに便乗せしめて我らより先にテレザートへ到達することなのでは、、、」

「ううむ、念には念を入れろだ。全艦、テレザート星前へ空間跳躍!そこでヤマッテに矢を放ち、宇宙の藻屑としてくれる」

 

そのまま流れていく〈ヤマト〉、再起動時の予備エネルギーを除けばすっかり吸い取られ艦内の電源も落ちている。

 

「艦長!」

「まだだ」

 

島が合図を求める。だが、土方は目をつぶったまま一言つぶやくのみ。

 

「艦長!!」

 

もう一度島は合図を求める。だが、土方は黙ったままだ。もう一度、島が合図を促そうとしたとき古代が島の肩に手を置く。

 

「島、土方さんを信じろ」

「、、、そうだったな」

 

訓練生時代のことを思い出したのだろう。島もようやく落ち着きを取り戻し、冷や汗を垂らしながらもその合図を待ち続けるのみとなった。そして、その時は来た。

 

「今だ、島!機関長!」

「了解、両舷全速!」

「予備エネルギー、波動エンジンに注入。フライホイール再起動!」

 

予備エネルギーをすべて波動エンジンに回す。艦内の電源は落ちているのに波動エンジンの唸り声が聞こえてくるというのはなかなか異様な光景であった。波動エンジンがせき込む中、それでも〈ヤマト〉は少しずつ流星帯から顔を出す、、、そして、ついに流星帯を脱したのだ。

 

流星帯を脱した〈ヤマト〉を待ち受けていたのは不思議なオーラを放つ惑星。そこは航海科のモニターで赤く示された宙域のまさに中心地。すなわち、コスモウェーブの震源であった。

 

「見ろ古代、テレザートだ」

「俺たち、遂に来たのか、、、」

 

土方もかつての教え子の成長に喜んでいるのか、口元を緩ませていたが帽子をかぶりなおすといつものように指示を出す。

 

「お前たち、感慨に浸っている余裕はないぞ。地表の調査後、直ちに上陸作戦を立案せよ」

 

だが、〈ヤマト〉が流星帯から脱出する様子はゴーランドにしっかり観測されていた。

 

「ヤマッテ出現、11時、12000」

「フフフ、よし。矢の構え、用意」

 

ゴーランドは艦隊を〈ヤマト〉の方面に向ける。

 

「破滅の矢を放て!」

 

流星帯から脱出してようやく回復した〈ヤマト〉の次元レーダーに初めて映ったのがあの鬱陶しい大型ミサイルが映し出されたのだからたまったものではない。

 

「超大型ミサイル接近、例の巡洋艦です!」

 

流星帯の以上重力の影響で停止していたレーダーが復活した瞬間に移ったのがあの鬱陶しい大型ミサイルではたまったものではない。その瞬間であった。相原がいぶかしげな声を上げると目を細める。

 

「回避警告!?」

 

相原はデータを直ちに航海長に渡す。

 

「こんな急に言われてもな!」

 

と島は文句を言いながらもどうにか艦をその航路図の赤く塗られた範囲から脱出させる。

 

「これは、、、!」

 

その直後、波動エネルギーの奔流が〈ヤマト〉直上を貫いた。

 

「大都督、大規模な余剰次元の爆縮を検知!ヤマッテではありません!」

「なんだと⁉」

 

そのまま、ゴーランド弓兵艦隊は宙にのまれ断末魔を上げる間もなく宇宙のチリとなった。

 

「識別信号“UNCN”、友軍です!」

 

艦橋要員が全員驚く中、そこに現れたのはヤマト型宇宙戦艦三番艦〈シナノ〉であった。

 

「星名!」

「お久しぶりです、古代さん」

 

モニターに映し出されていたのは〈ヤマト〉に瓜二つな第一艦橋と艦長服に身を包んだ星名であった。彼の後ろには岬改め、星名百合亜も通信席についている。

 

「長官の極秘命令だったのですが、思いのほか手間取ってしまって、、、」

「だから集結の時にいなかったのか」

「心配したんだぞ」

 

南部や太田も次々と喜びの顔を見せる。

 

「ハハハ、すみません。どうにも秘密作戦だったもので」

 

だが、その時に古代は妙に思う。

 

「でも、本来〈ヤマト〉だけを探索に出す予定だったのでは?」

「それが、防衛軍が調査したところテレザートの存在を主張する論文がもう一つ見つかりまして」

「なに?」

「産経大学理学部深宇宙学科、雨森教授の論文です」

 

と、名前を言われてもその方面に精通していない彼らには全くぴんと来ない。

 

「うーん、、、」

「レドラウス教授なら知ってるんじゃないか?」

 

尤も、この考えは間違っている。宇宙考古学と深宇宙学は宇宙のロマンを追い求める学問としては共通しているかもしれないが、それだけだ。地球で言うなら歴史のロマンと言ってカンブリア紀の化石をさがす学者と本能寺の変の真相を負う学者を同一視するようなものである。だが、宇宙考古学はまだ新鮮な学問だったこともあり、幸いにもレドラウス教授を艦橋に呼び出したのは無駄ではなかった。

 

「と言う訳なんです」

「ああ、名前は幾度か聞いたことがあるが直接お目にかかったことはないな、、、以前に私の講演会で教授の甥っ子が来ていたことはある。いずれお会いしたいものだ。まだ私は科学としての宇宙への見識は甘いところがあるからな」

「両学会は関連こそあるものの、深い結びつきはありません。関係が浅い二つの学会で奇妙な星の存在が主張されている以上、防衛軍としても対応せざるを得なかったのでしょう」

 

その様子を再び環境に戻ってきていたキーマンは妙に多く瞬きをしながら見ていた。そういえば星名もやけに瞬きしていたようにも思える。宙域が艦内湿度に影響を及ぼすとでもいうのだろうか?

 

時を同じくして何処へ行くこともなく宇宙を彷徨っていたデスラー艦隊、その時突然として受信した通信にヴェルテ・タランはいつも浮かべている困り顔により一層深くしわを刻ませる。その様子をもはや一種の緊急電とさえ認識しているかのようにデスラーは何事か、と振り返った。

 

「総統、ゴーランド艦隊が!」

「フ、さすがヤマトだ」

 

デスラーはまるで〈ヤマト〉が自軍の艦艇であるかのように褒め称える。あのスターシャが救済を施すに値すると認めた船、あのスターシャが初めて愛したであろう者の故郷の船。仮にも30年以上前から、生まれた時から彼女を見てきたデスラーの初恋を全くの無下にするに値する存在にデスラーは執着せずにはいられなかったのだ。

 

「どうします、再度の奇襲を仕掛けますか」

「いや、それでは面白くない。せっかく邪魔がいなくなったのだ」

 

営倉では一人封印されたミルがサーベラーへの通信を試みているが、どうしようもなかった。サーベラーの方もゲニッツやラーゼラーと共にミルへの通信を試みているが、コスモウェーブを遮断する営倉ではどうにもならない。

 

「彼らの目的地もテレザートなのだろう。だとすれば、彼らにテレサの眼前で相まみえる。それも劇的な演出ではないかね?」

「総統?、、、まさか!」

 

タランはデスラーの意図をすぐに察した。

 

「全艦増速、目標テレザート星!」

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