宇宙戦艦ヤマトReAGE2202 愛の戦士たち 作:アドリアドリア
荒野の真ん中にただ一人立つ斉藤、どうやら白兵戦に夢中ですっかり永倉ら他の1号車の隊員は離れたところにいるようであった。彼は自身の周りに散乱した敵戦車の残骸を漁っていると妙な事実に気が付く。敵将軍の乗っていた指揮戦車以外に人が乗っていた形跡がなかったのだ。
「こいつら、無人だったのかよ、、、こんなおもちゃで俺の部下を殺しまわりやがって!クソが!」
斉藤は悔しさのあまり地団太を踏むが、幾らやっても失われた命は還ってこないのであった。ようやく、気持ちが落ち着き、〈ヤマト〉への作戦成功の旨を知らせる通信を試みる。やや、ノイズがかかっているようにも思えるが通信は比較的良好に行えたことからも敵戦力をほぼ殲滅できたという認識で問題なさそうだ。
『こちら、空間騎兵隊の斉藤。敵機甲師団の殲滅に成功した。至急、調査隊の派遣を要請する』
「了解した。古代、真田、レドラウス教授、キーマン。この四人を調査隊として派遣する。斉藤ら騎兵隊残存戦力は彼らを護衛し、テレサとの接触を成功させろ。異議はないな?」
「ありません」
選出された調査隊は第三格納庫へと急行、あっという間に乗り込むのが完了すると第三艦橋の付け根にある発艦口が開く。
「シーガル、発艦します」
艦外に投げ出されると、自在に動くエンジンであっという間にテレザート方面へと飛び去る。地上から対空迎撃がこなく、古代たちもようやく地上戦力の一掃をその身をもって体感することができたのであった。それと同時に、真田は携帯電話より一回り大きい、メーターが三つほどついた得体のしれない機械をひたすら調節するかのように弄り回していた。
「真田さん、それは?」
「コスモウェーブカウンターだよ。こいつを使うことで線量を測れる。艦艇に搭載できるサイズのものは軽く配線をいじるだけで対応できたんだが、手押し車サイズとなると流石に簡単ではなかった」
真田が言うにはコスモウェーブ受信の際に受けた回路の損傷が一度見たら忘れられないくらいに特徴的で、
惑星表面に到着して古代と真田は斉藤らが送信してきた都市を直接見て、改めてその高度な様子に驚愕していた。崩れた残骸の様子から見るに、建物それ自体に極めて高度な技術が使われているという点から真田にとっては一欠片でもサンプルとして持ち帰りたいような代物であった。しかし、ガミラスの高度で奇妙な建築を見慣れているキーマンはともかくとして、この手の文明を研究対象として好機を示しているはずのレドラウスも奇妙なほどに冷静だった。
「凄いですね、レドラウス教授」
「まあ、すごい文明といえばすごい文明ではあるのだが、、、この遺跡自体はそこまで興味をそそるものではないな」
古代の問いかけに対するレドラウスの回答は意外と冷めていた。
「そういうものですか?」
「はっきり言うと、この遺跡自体は現代の地球の延長線程度のものだ。テレザートが驚異的な文明と言われている所以は、この都市をも放棄するという選択をなしえたその精神性にあるのだろう。ただ、無価値というわけではない。地球の在り方を模索するのにいずれ落ち着いて調査はやりたいものだ」
「二つ目の岩山のカウンターの反応が大きい。この地下には鍾乳洞構造があることから、その奥がテレサの所在である可能性が高いと言えよう」
「古代、〈ヤマト〉に通信する必要があるんじゃないのか?」
真田の進言に古代も頷く。古代からの通信を受けたことを相原が直ちに土方に知らせる。
「全乗組員に告ぐ、全乗組員に告ぐ。間もなく、テ星調査隊はテレサと邂逅する見込みにある。次の命令があるまで総員待機するように」
この通信を受け取った〈シナノ〉の方でも、艦橋に安心の空気が漂っていた。
「古代さんたち、やったみたいだ」
「そのようですね、仁科砲術長」
仁科と星名はすっかり安心しきっており、他もただ一人を除けば完全に見守りモードに入っていた。ただ一人、百合亜を除いては、、、正確には百合亜もある瞬間までは彼らと同じ様子であった。
「ん?」
「どうした、百合亜?」
「レーダーに感があったんですけど、一瞬で消えました、、、航空機サイズなんですけど、ワープしたかのような反応で」
要するに次元震の観測だ。だが、それが航空機サイズでというのはどうも考えにくい。
ガトランティスでは火焔直撃砲のように膨大な熱量を転送する程度の精度しか無いので彼らの行動とは考えにくい。かと言って、ガミラスかと言えばそれはあり得ない。ガミラスは政治的に複雑な事情こそあれど、地球の唯一の同盟国であり地球に敵対するような行動を、ましてやガミラスとの交戦経験もあるガトランティスの脅威が迫りつつあるのにとるとは考えられない。残党もそんな技術を持っているわけがない。デスラーが生きているならあり得ない話でもないが、亜空間ゲートにおける戦いでデスラー艦の爆発を確かに目撃していたためにその選択肢は星名にはなかった。星名は
「一応、いつも通りの警戒はしておいてくれ。ただ、変に気を詰める必要はないかな」
と指示を下した。艦の士気に慣れていないようでは仕方ないが、この判断は結果的に想定外の事態をもたらした。
一方、調査隊はカウンターが反応した山の麓にある鍾乳洞を奥へと進んでいた。入口からかれこれ30分、恒星の明かりも届かないほど奥まで進んだらしく足元を見ることもままならなくなってきた。
「真っ暗だ、、、アナライザー」
「了解」
アナライザーが探照灯を点灯させた瞬間、耳の横を何かが豪速で通り過ぎる音がした。
「うわ!」
敵は洞窟内に歩兵を忍ばせていたのだ。この洞窟内は狭すぎるので戦車はさすがにいないと考えて問題はなさそうだが、これは極めて危険だ。特に非軍人を引き連れている現状では尚更だ。古代らは急いで岩陰に隠れる。
「教授、大丈夫ですか?」
「私も男である以上はガミラス戦役末期で徴兵されていた。歩兵の訓練くらいは受けている、足手まといにならないはずだよ」
「分かりました、無理そうだったら声をかけてください」
戦闘の音を聞いたガトランティスの歩兵が次々と駆け付けてくる。古代らが頭を出すのを待ち受けて歩兵中による弾幕を形成している。まともにやり合うのはどう考えても不可能であった。
「食らえ!」
古代が例の共鳴手榴弾を敵に向かって投げる。その精度は見事なもので、まさに敵が一番集まっている場所へピンポイントで投げ込まれていた。
「伏せろ!」
古代がそう叫んだ直後、手榴弾が爆発して暗い洞窟内を一瞬ばかり恒星至近のような明るさに変えてしまった。
「やったか、、、」
「生体反応ナシ。敵ハ全滅デス」
そのとき、古代たちとは別の足音が聞こえる。しかも、遥かに数が多い。もはやこれまでか、とあきらめかけた時に聞こえてきたのは聴きなれた、やけ酒声気味の低い声であった。
「お、そこにいたか!」
「斉藤!」
「すまねえ、戦車部隊との交戦の後にさらにゲリラ戦を仕掛けられててこずってた」
斉藤ら空間騎兵隊はこちらでの戦闘の音と光を確認して初めて調査隊の位置を確認できたらしい。無事に合流できたので古代は安心して調査隊を進めようとするが、彼の肩を掴んでキーマンが注意した。
「古代、気をつけろ。敵はすでに気付いているぞ」
斉藤らが気づいたということは当然ガトランティスもこちらの戦闘に気づいて更に集まってくる可能性もあるということだ。キーマンの忠告通り、敵の残存戦力が次々と集まってくるので古代らは苦戦を強いられたが、それでも明らかに怪しいゲートの前まで到達することができた。
「制御室か。見たところ、バラン星の制御システムと似ているな」
「つまり、、、」
「そうだ、総員水中で待機。私も起動させ次第すぐに飛び込む」
「カウント始マリマシタ。10、9、8、、、」
「真田さん!」
古代は以前のバラン星の件もあって不安がるが、今回はゲート手前に水溜めがあった為に杞憂であった。
「間に合ったな」
飛び込んだ直後に莫大な中性子線が放射され、無事にゲートのロックは開かれた。テレザート星がアケーリアスの遺跡であるとは考えにくいので、恐らくテレザートはイスカンダルのようなアケーリアスが最初期に構築した第二文明(アケーリアスを第一とカウントした際のおよその文明の世代の指標)に該当しており、アケーリアスの技術を直接引き継いでいる面が少なからずあるのだろう。恐らく、ガトランティスが発見して反物質が発見される前は外側の岩盤がある種の遮蔽材であり、シャンブロウの様に姿を隠していたに違いない。
「お前らはここで待機していろ、いつ敵が襲ってくるかわからんからな」
「了解!」
斉藤の命令に隊員は敬礼で答える。永倉はそれに微笑も加えた。ゲートが開き、その奥に進もうとした瞬間、彼らは一瞬その輝きに足を止める。まるで、神社に入る時の異界に足を入れるようなあの感覚だ。そしsて、その先に存在するのは我々とは比較にならないほど上位の存在。無論、物理的にも精神的にも、だ。
「私がテレサ、テレザートのテレサ、、、私の全霊を傾けた祈りに答えてくださり感謝しています」
「申し訳ありません、あなたの庭を汚すつもりはなかったのですが、、、」
テレサは古代の言葉にわずかに涙する。恐らくその涙には古代が言ったことも多少は含まれていようが、同時に自身の祈りに答えてくれた誠実さや戦いの醜さを知る心の美しさなども含まれている多面的な結晶の涙だ。故に、美しい。
「テレサ、我々はあなたのメッセージに答えようとしてここまで来ました。あなたのメッセージの意味について教えてください」
「あなた方が気づいている通り、私があなた方に助けを求めたのはあの帝星ガトランティスのことについてです」
彼女は両手を占い師のように構えて、ちょうど水晶弾があるような位置に何か高級を生み出した。最初は淡色であったが次第に複数の色に分かれていく、、、それは、白色彗星の映像であった。
「現在、帝星ガトランティスはテレザート星へ3000光年の位置を航行中。その直径は12万キロです」
「12万!?」
「土星に匹敵する巨大な天体か、、、」
「周囲のガス帯は彼らの防護装置であり、その中心には彼らが居住する惑星が備わっています。そして、、、」
テレサは再びイメージ映像を手のひらの間に投影する。今度は先ほどと変わって、例の彗星が高速で進みながら前方に立ちはだかるいくつもの星を無慈悲にも飲み込みながら前進している様子が映し出される。
「星を、、、食らっている」
「もし、あれが地球に来たらたたじゃすまねえな、、、」
だが、その斉藤の懸念は杞憂で済まされない。
「その件ですが、あの星はあと46日で地球に到達するでしょう」
衝撃の真実、その場にいた全員が言葉を失う。
「テレサ。白色彗星がどれほど危険な存在なのかはよくわかりました。ありがとうございます。それで、ここからが本題なのですが、何かヒントを、戦うためのヒントをお願いします!」
古代が頭を下げて本題へと進む。
「全ては、定められたこと」
「定められたこと?」
古代の問いかけにテレサはゆっくり頷く。
「あなた方が推測されたように私はかつてこの星に存在した文明の生命の精神を昇華させた存在。それによって、私は高次元の存在へと昇華しこの宇宙のありとあらゆる事象を見通すことまでもできるようになりました」
それに真っ先に驚いたのは真田とレドラウス、ともに学術的好奇心からだろう。先にその疑問を口にしたのは真田だった。
「ともあれば、テレサ。あなたはこの宇宙がいつ終わるのかご存じなのですか?遥か未来ですか、それとも近いうちですか?」
「イエスであり、ノーでもあります」
あまりにも予想しえない答えに真田は無論、ほかの全員も言葉を失う。
「αであり、ωであるのです。今というこの時も、、、」
「どういうことです?」
αでありωである、、、ヨハネの黙示録に書かれている神の永遠性、絶対性を示す言葉だ。テレサは自身が神にでもなったつもりかとも思ったがどうやらそういう意味ではないらしい。
「この宇宙はそれ自体が時の環、時を繰り返しています。きっと、私たちも遠く時の環の接するところでまた会うことになるでしょう。今、過ぎ去った過去は最も離れた遠い未来、始まりであると同時に終わりでもあるのです」
今度はテレサの前に巨大な金色の環が映し出される。相変わらずながら地球のプロジェクション技術と比べるのはおこがましいほどに綺麗、いや、それどころか神秘的ですらあった。
「さて、あの帝星ガトランティスと戦う方法ですが、、、」
全員が息を呑む。
「あなた方がここに来たこと自体に意味があるのです」
あまりにも中身が空虚にしか思えぬその言葉にあっけらかんとならない者はいなかった。真っ先に疑問を切り込んだのは斉藤であった。
「どういうことだってばよ」
真田が無礼をたしなめようとするが、テレサは別に気にしないといった様子であった。
「縁とは、重力よりも確かな強さを持つ力。あなた方はそれを結ぶためにここに来た。大和とは『大』いなる『和』、あらゆる縁を結ぶための憑代なのです。この力がこの宇宙の運命を定義しているといっても過言ではない」
4つの力が物理学を定義しているように、縁がこの宇宙を定義している、、、高次元に至った存在にはそう見えるらしい。
「彼も、そのために来た」
彼?一体、誰のことなのか。ヤマト乗組員が互いを見回す中、キーマンは何かを確信するように下を向いていた。その時、後ろから一歩一歩踏みしめるような足音が聞こえてきた。
「久しぶりだね、、、ヤマトの諸君」
そこに姿を現したのは死んだはずの元・大ガミラス帝国総統のアベルト・デスラーであった。