宇宙戦艦ヤマト2202 二次創作編   作:アドリアドリア

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地球に帰投した古代進は森雪との婚前デートに行くも、古代はどこか心に引っかかったような顔をしていた。一方、沖田十三の命日で慰霊式が行われる中、元ヤマト乗組員はガトランティスが地球圏への攻撃を仕掛けたことを知る…


第二話「イスカンダルよ、地球は…」

軍港の関係者出入口ゲートで古代を待っていた森は古代に抱きつかんとばかりに走り寄る。

 

「予定通り、相変わらず時間厳守ね」

「はっははははは!」

「休暇取れたの?」

「うん、一週間」

「あと3日ね!」

「なにが?」

 

無邪気に喜ぶ森に対し、古代はとぼけてみせる。

 

「もう、意地悪ぅ!」

「ははははは!わかっているよ、結婚式だろう?」

(古代君、地球に返ってくるたびにまた浮かない顔をしている…今回は私との結婚式も控えているというのに…)

 

古代は首都内に建設の続く高速道路を走り抜ける。時々、眠気覚ましの仕掛けか定期的にぼん、と車が跳ねる。

 

「新しくできた高速道路よ、前よりずっと乗り心地が良くなってるでしょ?」

「うん」

「やあねえ、さっきからうんうんって…」

 

ふと何処か鬱分の溜まっていた森はふと何か言葉を叫んでみたくなった。

 

「古代進は地球を救ったぞーー!」

 

突然の出来事で驚いたために、古代は思わずハンドルを切りそこねるところであった。こういうときの為に自動運転モードを使うよう、心がけるべきだったかもしれないと古代は思った。だが、軍務の経験が長い都合上、ハンドルを握っていないと案外にも落ち着かないものだ。そうこうしていると、また森はめいいっぱい叫んだ。

 

「英雄なんかじゃないけど、凄いんだぞーー!」

「お、おい!」

 

幾らクローズドカーが多いとはいえ、自身らが乗っているのはオープンカーである、周りの人に聞かれるのはあまり望ましくはない。

 

「森雪は尊敬しているぞーーー!」

 

古代は呆れか、嬉しさか僅かに笑みを浮かべていた。そんな古代を見て森もまた嬉しげになりながら、ショッピングセンターの駐車場へとハンドルを切った。

 

「さ、急ぎましょ」

「?ああ…?」

 

古代は訳のわからぬままに森に手を引かれ、ショッピングセンターへと連れられていった。ショッピングセンターの中では多くの市民が行き交い明るい日常を過ごしていた。まるで、あのガミラス戦役が刹那の悪夢で、幻であったかのように人々はそれらを忘れ、平和の時を満喫していた。

 

「ねえ、古代君の書斎にはこんな机置きたいわね!照明は中間色で…ゆっくり落ち着いて考えることができるようにするわ!」

「うん」

「応接間にはこんなセットがいいわ、友達が来ても長居できるような、そうだ!古代君が古代君がお仕事から帰ったときのことを考えなくちゃ!リビングにはカウンターを作りましょうね、私がカクテルを作るわ!」

「うん」

 

古代の上の空な空返事に森は呆れながら、古代に問い詰め気味に尋ねる。

 

「また『ウンウン』始まったぁ!なにか注文はないの?」

「…いや、なんでもない。前だけを見て歩こう。そうすれば、きっと幸せになれる」

 

古代の瞳の奥にどこかあるようにみえる暗がりに森は気づいた。森は今までの態度を反省するように優しい目になり、古代のことを見つめた。

 

「古代君」

 

どうしたものかと古代が思っていると、両手で古代の手を握り締めた。

 

「私、もう、とっくに幸せだよ」

 

彼女の指には古代がプレゼントした白銀の指輪が輝いていた。

 

事実上の地球の首都である国連軍太平洋管区本部を見下ろす丘、そこにイスカンダル航海の英雄である沖田十三の像を中心とした国連公園「英雄の丘」は作られていた。そこに一人の中年を過ぎたくらいの男が酒瓶を片手に、首都にかかる斜陽を懐かしそうに眺めながら呟いていた。

 

「沖田艦長、ご覧なさいあの超ハイカラな都市を、ガミラスと戦っていた頃、戦っていたことすらまるで夢のようじゃあないか…」

 

その男、元ヤマト軍医の佐渡酒造、は飼い猫の「ミーくん」とともに沖田の像の下に座っていた。傾く酒瓶の口から酒が一滴、ぽつりと像の台座に落ち、染みていく。

 

「苦しかったあの戦いも今ではもう歴史の1ページに過ぎん。ヤマトのことを覚えているのは、儂らだけになってしまったみたいだなぁ」

「佐渡先生!」

 

どことなく酔いしれている佐渡のところの目を覚ます声が遠くから聞こえる。

 

「島に真田じゃないかぁ!」

 

次々と英雄の丘に集まる元ヤマト乗組員、そして彼らも現れた。

 

「おぉい、古代に森ぃ!早くせぃ!」

「すみません!」

「古代!」

 

古代のやってくる姿に同じく気づいた島が大きく手を振る。それに気づいた古代は少し走り気味になって島の元へ向かった。

 

「島!しばらくだな、どうだ、空間護衛総隊は?」

「宇宙の運び屋だからな、少し退屈だよ」

 

島は頭を掻きながら元気そうな様子を見せた。すると南部や太田など、次々と古代に駆け寄った。

 

「古代さん!」

「古代さん、お久しぶりです!」

「南部、それに太田も!ふたりとも元気そうだな!」

 

古代は久しぶりにヤマトの第一艦橋の同僚と会えて、心の底から喜んでいた。

軽い談笑が行われたあと、間もなくヤマト艦長沖田十三の命日を祈念した慰霊式が行われた。

 

「総員整列!偉大なるヤマト艦長、沖田十三の霊に敬礼!」

 

先程までの和気藹々とした雰囲気が幻であるかのように、英雄の丘一体が一つの織物のように緊張した空気になる。

 

「地球にいるものは全員揃ったよぉ、みんなそれぞれの部署で元気にやっとる!じゃが、あんたのことを忘れるものは一人もおらん!」

 

その後、様々な物販の贈与や祝辞が述べられ、英雄の丘周辺で宴会が執り行われた。古代はふと、特に顔馴染みのあの人がいないことに気づく。

 

「あれ、新見さんは?」

「それなんだがな。実は…」

 

真田が重く瞼を閉じた。

 

「テロに巻き込まれた!?」

「ああ、命に別状はないそうだが気絶していてな…ガミラスとの軍事同盟には反対する者が多い。『あの戦闘国家と同盟を組んだら、また戦争に巻き込まれる』『リメンバー・遊星爆弾』。たしかに、ガミラスに地球の守りを任せている割には地球の復興は遅いがな…」

 

シャンブロウ探索時、共にあの不思議な「一週間」を過ごした一人である彼女がこの場いないのは、古代や相原、そして桐生にとっても寂しかった。その時、上空に凄まじい轟音とともに満色旗をけたたましく光らせた飛行物体が降りてきた。

 

「新造艦のアンドロメダだ…」

「テスト航海から帰ってきたんだわ」

「凄えな…」

 

多くが先の相原と同様に感嘆の声を漏らす中、古代はどこか優れぬ表情をしていた。

 

「佐渡先生、地球はこれでいいんでしょうか…」

「なんでじゃぁ?」

「…いえ、なんでもありません」

(古代、なんかあったな)

 

佐渡がフフン、と推測している中真田がはっと思い出したように古代に話しかけた。

 

「そういえば古代、確かプロメテ付近でガトランティスに襲われたと聞いたが…」

「真田さん、そうなんです」

「な、なんじゃと!?」

「本当か、古代!?」

 

佐渡や島も次々と驚きの声を漏らす。彼らもまたガトランティスと交戦したことを知るものであり、地球圏での攻撃は想定外であったのだろう。

 

「地球はまた新たな脅威に晒されているのかもしれない…」

「ん〜ん…」

 

真田は一瞬考える素振りを見せてから古代の方を直視し、再び口を開いた。

 

「その件についてだが、私も気になる件があってな。明日、科学局観測室に来てくれ。見せたいものがある」

「ありがとうございます」

 

翌日、古代は真田の招待で科学局観測室を訪れた。多数の観測機器が並ぶ武骨な部屋に真田は古代を導いた。

 

「例のメッセージの件だが、私も姉から告げられたよ。俄には信じがたいことだがな。科学的に考えれば有り得ないように思える話だ」

「そうなんですか…」

「それより、これを見てくれ」

 

ディスプレイが点灯すると、そこには謎の白いもやもやした光球状不思議な天体が映し出される。

 

「これは突如3日前から見え始めた光球だ。太陽系から約170光年のところのを付近の天文所が観測したものだ」

「突然見えだした理由は?」

「加速して太陽系に迫り、前面に発光ガスを伴った重力波が発生しているからだ。パルサーとかクエーサーとか呼ばれる電波星の一種だ」

 

古代でもそれに踊ろこは隠せなかった。一応、宇宙防衛大学で宇宙物理学の基礎をかじった彼にとっても、クエーサーが遠ざかるものばかりだと知ってはいたからだ。

 

「クエーサー!?今まで知られているクェーサーは赤色偏差ばかりで皆地球から遠ざかっていると聞いていますが…」

「そうだ、遠ざかっていく物体のスペクトルは常に赤方向にずれる。だがこいつは見ての通り青方向に変化している。こいつは歴史上初めて見る地球に接近するクエーサーなんだ」

 

真田も感心したように話を続ける。

 

「更に、だ。拡大投影するぞ。」

「これは…彗星だ!しかも大彗星だ!」

「彗星状のクエーサーなんて初めてだよ。どんなものか想像もつかん。しかも前面に発生した恐ろしい重力波と高速中性子が遮るものを押しつぶしている」

 

だが、古代にとっては疑問が残っていた。ガトランティスの件と、そのクエーサーには共通点が見出だせない。

 

「これと、例のメッセージになんの関係が?」

「それなんだが…例のメッセージは特殊な電波ならしくてな。太陽系周辺の電波望遠鏡が各地で異常な電波を観測したんだ。しかも、極秘でガミラスからの協力を得たんだが、彼らの別方面の観測所では確認されていない。つまりだ、例のクエーサー付近のヒアデス星団あたりから地球に向けて一直線状にメッセージが来たと考えられる」

「もしかしたら、救いを…?」

「確証はないが、可能性は否定できん」

「だとすれば早急に手を打つべきだ」

「そうだな、防衛会議に提出して検討してもらおう」

 

 

その晩、帰りに古代は何者かにつけられているのを感じ物陰に隠れた。追手は間違いなく迫っている。古代はひたすら逃げ、追手はひたすら追ってくる。その時、古代は何者かが物陰から手を掴んだのを感じた。その男は「こっちに来い」とばかりのジェスチャーをしていた。焦っていた古代はとりあえずその男に付いていくことにした。

しばらくして、追っ手を撒くことに成功した古代はその謎の男に訝しげに尋ねた。

 

「貴様は何者だ」

 

その男は腕のリングを弄る。するとたちまち皮膚の色が変わった。

 

「ガミラス人…?」

「突然な無礼を失礼した、俺の名はクラウス・キーマン。ガミラス大使館の関係者だ。今回はヤマト艦長代理を務めたこともあるとのことで君の元を訪ねさせてもらった」

「何が目的だ、クラウス・キーマン」

「見せたいものがある、こっちに来い」

 

「これは…」

 

そこに並んでいたのは10隻ほどの戦艦であった。先の大戦で壊滅した工業力を考えると普通の工廠ではこんなに造り得ない。何か秘密が、重大な秘密があるのは明らかであった。

 

「これは一体!?」

「時間断層、コスモリバースシステムで元に戻った地球の抱える闇だ」

「時間…?次元断層とは違うものなのか?」

 

時間断層、それは通常空間に比べて10倍の速さで時が流れる異常空間である。地球は時間断層の特性を利用し、極秘の工廠として軍拡を続けていた。

 

「あれは…ガミラス艦?なぜ…」

「資源惑星との取引だ。ガミラスが植民星を譲渡する代わりに、地球は時間断層の使用権を認める。政治経済ってのはどこの星でも共通の言葉のようだな」

「…」

 

古代はなんとも言えぬ複雑な思いであった。彼自身の立場としては、波動砲の使用を禁止する「サン・アリア条約」には反対である。身を守るためにあれは最小限程度ならば必要なのだ。イスカンダルの航海で理想と現実に触れた古代にとって、強く理解できる。

だから、国連の「使用が禁止されるのは通常時のみであり、存立危機事態の際には例外となる」とする条約の解釈も理解はしている。無論、ただの詭弁でありスターシアに顔向けできたものではない。こんな状況を見れば裏切ったと思われるもやむを得ないだろう。

 

「確かにこれだけのものがあれば地球も『平和を守るリーダー』になれる、か…しかし、少し傲慢なんじゃないか」

「コトがそんなに単純なら俺も嬉しいんだがな…」

 

キーマンは何処か悲しげな瞳で呟くが、古代が気づくことはなかった。

 

「…さて、本題だがこいつを君に渡してほしいとの密命を受けてな」

「これは…?!」

 

キーマンの渡したメッセージカプセルには宛名として「ローレン・バレル」…在地球ガミラス大使の名が書かれていた。

 

「バレル大使は答えは行動で示せ、そう言っていた。期待しているぞ、古代進」

「お、おい…待ってくれ!」

 

キーマンを名乗るガミラス人はそのまま何処かへと走り去って行ってしまった。古代はしばらく呆然とした後、バレル大使からのメッセージカプセルを握りしめ、ある場所に向かった。

旧司令部付近のドックでヤマトは死んだように眠っていた。コスモリバースシステムも研究のために撤去され、今ではそれ専用の実験艦を新規に建造しているという。そこにヤマトは死んだように眠っていた。彼はハッチのキーを解除すると、第一艦橋に入り込んだ。モニターは全て暗く、古代はどこか悲しくなった。

 

「沖田艦長…地球は今、以前にも増して富み栄えています。市民は平和を盲信し、軍は市民に秘密裏で拡大を続けている…僕にはそういう風に見えます。こういうことのために沖田艦長は命をかけられたのでしょうか?こんな地球に戻すために僕たちはイスカンダルまで行ったのでしょうか?義姉さんはこんな地球にしようと思ってヤマトをイスカンダルまで呼んだのでしょうか?!」

 

古代は悲痛な叫びを誰に聞かせるというわけでもなくただ一人嘆いた。その時であった。ヤマトのモニターが光りだした。次々と第一艦橋の計器が光り出す。突然の出来事に古代は驚きを隠せなかった‥

 

「どうじゃ、驚いたろう?」

「と、徳川さん!?それに佐渡先生も!」

 

自分しかいないと思っていた第一艦橋には、元機関長の徳川彦左衛門と佐渡がにやりと笑いながらこちらを見ていた。佐渡は呑み切った酒瓶で古代をびしりと指しながら話しだす。

 

「ハハハ、古代。儂らはその言葉を待っていたんじゃよ。これでも年の功ってやつでな、お前さんが何を考えているのかはなんとなくわかる。儂らが必要になったらいつでも呼ぶんじゃぞ?」

 

古代は自身の考えを見通されていることに気づき、はははと恐れ入りながら頭を掻いた。

 

「はい、その時はぜひ、よろしくお願いします」

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