宇宙戦艦ヤマト2202 二次創作編   作:アドリアドリア

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在地球ガミラス大使館の職員クラウス・キーマンからバレル大使より届けられたメッセージカプセルを受け取った古代は帰宅後にそれの内容を確認していた。ガトランティスの本格的な侵略が始まる可能性が高いことを示唆するその内容に古代は危機感を示すが、幕僚らの態度は漫然としていた…


第三話「決意」

家に帰った古代は早速、バレル大使のメッセージカプセルを開いた。

 

『私は在地球ガミラス大使のローレン・バレルだ。国連宇宙海軍の古代3佐、直接お会いして話ができない非礼をここに詫びよう。

さて、本題だが我々ガミラスのあらゆる地域に配属された観測機器が未知の電磁波の一種を受け取った。我々に協力を申し出たある地球人の話によると、亡くなった近しい人からメッセージを受け取ったそうだな。我が国を含めた星間文明の伝承を調べたところ、地球時間における約1000年前に類似した事例が発見された』

 

1000年前、地球では宇宙への進出とは縁もゆかりも無い大昔の話である。せいぜいその頃の星の記録といえば、未知の現象としての超新星爆発か竹取物語くらいであろう。その頃からの記録があることに古代は驚かずにはいられなかった。

 

『当時の記録にはある名が概ね共通して書かれていた。その名はテレサ、あの世とこの世の狭間で平安を願い続ける女神だ』

 

『尤も、我々にとってもこの時代は大昔、記録に誇張があることは否定できない。だが、間違いなくその文明はテレザート星なるところに存在する。近年のガミラスにおける歴史学者によると、文明の極地に達して物理法則が足枷となった為に精神が集合してできた高次元生命体という説が有力だ。高次元の存在であるテレサは、この次元において不可能はなく如何なる願いでも叶うという』

 

高次元生命体とは…全くどのようなものか想像もつかない。だが、この十年で地球は次々と未知の存在に遭遇し続けており最早驚くことではなかった。

 

『長年の研究と今回の異変を照らし合わせると、テレザートは恐らくメルメカリダ星団、君たちの言葉でいうところのヒアデス星団にあるそうだ。我々の共有するデータの通り、ガトランティスは反物質機関を採用しているのは知っての通りだと思うが、高次元との結節点であるテレザートでは反物質が豊富であるという可能性が高いと推測されている。つまり、だ』

 

バレルは襟元を整え、もう一度気を引き締める。

 

『ガトランティスにテレザートを掌握されればかつてない宇宙全体への侵略が始まるだろう。そうすれば以前より交戦状態にあるガミラスだけでなく、同盟国である地球にもその矛先が向くのは確実だろう。そこで、古代3佐、テレザートに赴いてテレサとの接触を図ってほしいのだ。どうか、よろしく頼む』

 

古代はメッセージを閉じると深くため息をついた。要するに、場合によっては反乱を起こすことになりかねないわけである。古代は迷いを断ち切る何かを欲していた。

 

後日、開かれた防衛会議に古代はオブザーバーとして参加していた。そこには、国連軍務総長である藤堂平九郎や国連宇宙軍統合幕僚長の芹沢虎鉄など、国連の重鎮が集まった。会議において真田は、先日の推論を展開した。真田の説明の後、芹沢が挙手し発言を求めた。

 

「例え、その彗星が地球に来たところで先に就役したアンドロメダを始め、この度の防衛計画において波動砲を備えた戦艦は数十隻配備される予定だ。クエーサーであろうと、吹き飛ばすことはそう難いことではあるまい」

 

その発言に対し、藤堂は苦い顔をしながらもついに意見を述べなかった。

 

「いえ、そういう問題ではありません。恐らく古代艦長が言いたいのはこれが地球に限らず宇宙全体の問題になる、ということなのではないでしょうか」

 

真田の発言に対し、芹沢は目をこれでもかと言わんばかりに開いて会議室のテーブルを叩く。

 

「そんな不確かな情報で、地球をまた赤茶けた大地にしたいのか!」

 

その時、古代が口を開く。基本的に穏やかな性格である彼ではあるが、一度思い立つと行動に出てしまう節が時たま見受けられる。今回も、オブザーバーという立場でありながら発言せんとするのは規約違反であることを忘れてしまっているようにも思えた。

 

「幕僚長にお聞きしたいことがあります。あのアンドロメダをはじめとした艦隊はなんのためなのでしょうか?」

「古代艦長、君はオブザーバーだ!発言の権限はない!」

「宇宙の平和を守るのが地球の役目ではないのですか!?」

「古代!」

 

藤堂の簡潔な叱責により冷静さを取り戻した古代は非礼を詫びると席についた。だが、彼が不満に満ちた顔をしているのは明らかであった。

 

「古代、すまない…」

 

結局、例の件は議題としてまともに扱われずお流れとなった。ガミラス戦役時代の国連軍極東管区司令部を訪れた真田は古代に対し、後ろめたそうに謝った。

 

「地球がようやく平和になった、新たな危機のことを考えたくもない芹沢統幕長の気持ちもわかります…でも、それでも…イスカンダルみたいに、スターシャさんみたいに助けを求められたらそれに応える…そうしたかっただけなんです…」

 

真田は相変わらず、どこかうなだれたような格好をしている。

 

「地球にはあれだけの艦隊を作れるくらいには力があるじゃないですか!力を持つ者の責任ってのはそういうものでしょう!真田さん!」

「古代、見たんだな…時間断層を、波動砲艦隊構想を…」

 

真田もまた古代以上に複雑な表情をして尋ねる。

 

「波動砲艦隊…」

「あれは…ガミラスに対する抑止力だ」

「…え?」

 

古代は耳を疑った。ガミラスは同盟国だ、そんな物が必要とは思えない。

 

「ガミラスは確かに同盟国だ、だが同時に数年前までは滅ぼし合いをしていた敵国だ。地球としてはどうも信用ならないらしくてな、向こうの惑星間弾道弾や大規模艦隊に対抗するための戦略兵器、それが波動砲艦隊だ」

「そんな…波動砲で敵の母星を滅ぼすって、本気なんですか」

 

古代の顔を表すなら怒りの一言で十分であった。新たな危機から目を背けんとする地球、自分のことしか考えぬ地球、力を過信する愚か者となった地球…そんな星の民であることが恥ずかしくすら古代には思えた。

 

「ああ、だが究極的な理論として『攻撃は最大の防御』に行き着いてしまったのだろう。万一、また戦争が起きれば敵母星前にワープ、一気に殲滅するつもりだ…」

 

国連上層部の一角を構成する真田が言うのだから、このあたりに間違いはないであろう。悔しがる古代を真田は慰めるように背中を叩き、仲間が待つヤマトの船渠へと向かった。

 

「波動砲が頼もしいのは確かだけど、その矛先がガミラスなのかよ…」

 

南部財閥の御曹司である南部は、波動砲による防衛構想に関してはかなり賛同していたが同盟国への抑止というのはどうも納得いかない様子であった。

 

「宇宙の果ての星のことなんかどうでもいいってことなんですかね…」

「地球に直接被害を受けなきゃわからないのさ!それからじゃ遅すぎるのに…」

 

太田や相原も悔しそうに不満を顕にしていた。その時、ゆらりと人影が現れた。皆がそれに驚く。

 

「長官!」

「多分ここだと思ったよ。私も時々ここへ気持ちを休めに来ることがあるんでね…実はヤマトのことだが…」

 

藤堂が申し訳無さそうに項垂れているので、古代は不安げに問いかける。

 

「ヤマトが、どうかしたんですか?」

「…廃艦と決まった。記念艦としてすら残さない。スクラップだよ、つまり…」

 

ついに開かれた藤堂の口から伝えられた言葉はヤマトの乗組員にとって衝撃以外の何物でもなかった。真っ先に古代が噛みつかんとばかりに疑問の形を取った反論を投げかける。

 

「廃艦!?スクラップ!?」

「なぜです!?」

「そんな馬鹿な!」

「まだヤマトは立派に活躍できます!」

 

太田や南部、相原も口々に反対する。

 

「長官、元ヤマトの技術長として申し上げます。ヤマトはまだ衰えてはいません、十分に戦うことができます」

 

真田も平静は保ちつつも、気持ちは彼らと同じであった。

 

「…わかっている」

 

藤堂は後ろめたそうな表情を相変わらずしている。彼にとっても本意ではまったくないのだろう。更に続けて彼の放った言葉もまた、ヤマト元乗組員らを驚かせ、怒らせた。

 

「防衛会議の決定だ。…命令を伝える。古代進、明日15時、木星ガニメデ基地への出向を命ずる。島大介、君は同日14時火星基地に出向だ」

「そんな、我々を、ヤマトから引き離そうというのですか!」

「命令に説明はない…」

「長官!」

 

古代は小さくなっていく藤堂の後ろ姿に必死に叫ぶも、次第にそれは闇の中に消えていった。

 

(ヤマトは生きている…我々の使命は地球と、ヤマトとともに生き続けているんだ…)

 

その時、古代の中に何か火がついたような感覚になった。彼はそれを自認する前にすっと手を挙げて皆の注目を集める。

 

「俺たちはあのイスカンダルの長い航海の中で見た。宇宙の平和なくして地球の幸せはない!そのために我々はヤマトで戦ってきたんじゃなかったのか?新たな戦争に巻き込まれたくない、そうおっしゃる芹沢幕僚長の気持ちは分かる…でも、ここで誰かがやらないとそのツケが地球に回ってきてしまう!」

 

「誰かを助ける、それは最終的に自分を助けることになる。俺はそう信じている。だから、俺は…俺は、宇宙の平和、地球の平和を守るためにテレザートに行きたい!皆、力を貸してくれ!」

 

その時、真田が古代に手を差し出す。何事かと思っていると、彼は僅かに口元を緩めた。

 

「古代、行こう。今の地球にヤマトの居場所はない。だからこそ、例え懲罰を喰らっても行くんだ!」

「真田さん!」

 

古代は真田と堅い握手を交わした。そこに徳川も手を重ねる。

 

「儂も行くぞ古代、誰が沖田さんの艦をスクラップにさせるものか」

「徳川機関長!」

「機関長、私も行きます!」

 

山崎が徳川に呼応する。

 

「行きましょう、古代さん!」

 

桐生も同意していた。恐らく、彼女としてはテレザートの文化や言語を調べたいという意味もあるのだろう。とにかく、ほぼ全員が賛成していることに違いはなかった。

 

「…皆!」

 

その時、ヤマトの艦内から何か物音がした。どうも聞かれていては不安なので確認に行くと、技術科の制服を身にまとったメガネ姿の青年、正確には容姿は少年にも近く見えた、がいた。

 

「ん、待て、誰じゃお前は!」

「ヤマトの乗組員じゃないな…」

「お前は誰だ」

 

その少年はひ弱そうな見た目通り、狼狽えながらしどろもどろに答えた。

 

「あ、いえ、その…私はここの、ヤマトのドック整備士兼清掃員で…」

 

その時、何事かと顔をのぞかせた真田は彼にしては珍しく驚きの表情を見せた。

 

「ん、君は!」

「あれ、真田さん!?」

「新米じゃないか!」

「知り合いなんですか?」

「私、実は…新見薫の弟でして…」

 

あまりにもの驚愕の事実に古代ら一同もまた驚かずにはいられなかった。

 

「なんだって!?」

 

新見米太、真田は彼のことを昔より略して「新米」と呼んでいるそうだ。確かに新米の顔は新見さんに似ている、と多くのヤマトクルーが納得した。

 

「今聞いての通り、俺達はこれから反逆者になる。だが、地球の平和のために宇宙の平和を守るという信念を曲げることはできない。間違っていると思うつもりもない」

「それは、理解できる話です…」

 

古代の力説に対し、新米は戸惑いながらも賛成した。

 

「しかし、こんな物騒な話を聞かれてはな…」

「どうする?」

 

古代たちが悩んでいると、新米が何か言いたげにしていた。それに気づいた徳川が皆の話を遮り、新米に発言のチャンスを与えた。

 

「その…厚かましいお願いかもしれませんが、できればヤマトに乗せて頂ければな、と…」

「ヤマトに?」

「はい…この1年間、ずっとここでヤマトを見て働いてきました…地球を救った英雄の船ですからね。一日中見ていても飽きません」

 

新米の話に古代は耳を傾ける。

 

「だから、ヤマトが廃艦と聞いたとき悲しくて悲しくて…皆さんが旅立つなら私の仕事もおしまいです…ですから、ヤ、ヤマトで…その…」

「話はわかった。でも、なにかできることはあるか?」

「いや、確か新米は機械のことに関してならかなり優秀だ。技術科に編入して私が上官として責任を持つ、それでいいな?」

 

真田さんがいうなら間違いないだろう、と皆が納得し晴れて新米もヤマト乗組員となった。

 

「はい!ありがとうございます!!!」

「よし、そうと決まれば出航準備だ!」

 

以前からこんなこともあろうかと入念に準備されていたらしく、近辺のトラックが次々と降りてきて物資の運び込みが行われる。

そんな中、どこか暗そうな、迷いある顔を見せる者がいた。

 

「島、君も行ってくれるな?」

 

そんな島に古代は発破をかけるが島の表情は変わらない。

 

「すまん、考えさせてくれ…命令に背くことは、俺には…」

「島…」

 

島はそのままゆっくりと何処かへ去ってしまった。また、無言でその場から立ち去ろうとする者がもう一人。

 

「雪、わかってくれ、雪!」

「あなたのお部屋に行って着替えを取ってくるわ。これから忙しくなるんでしょ…?すぐに戻ってくるわ」

 

そういうと森は走って船渠から出ていってしまった。人影が完全になくなったところで、森は糸が切れた操り人形のように地面に座り込んでしまった。

 

「古代君が戦いの中に行く…また、戦いの中に行ってしまう…」

 

涙が無機質な床に溢れるが染み込むことはなく、嗚咽する声が通路に反響するがそれを聞く者もまたいなかった。

 

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