宇宙戦艦ヤマト2202 二次創作編   作:アドリアドリア

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第11番惑星に到達したヤマトは現地で空間騎兵隊や民間人の救助にあたっていた。行儀のままならぬ空間騎兵隊はヤマト艦内で度々トラブルを起こす…そこにガトランティスの新たな兵器が現れるのであった。


第三章「地平線なき海」
第七話「プロキオンの狼群」


ある程度の地上戦力を殲滅することに成功したので、ヤマトはいよいよ惑星に接舷して人員の収容を開始した。敵艦隊はどうやら一時撤退したらしく、罠かどうかは知らずとも安心せずにはいられなかった。

土方宙将をひとまずヤマトに収容した古代は真田と共に斎藤のもとに顔を見せに行った。

 

「自分がヤマト艦長代理兼艦長代理の古代進です」

「私が副長兼技術長の真田志朗です」

「俺が司令部周辺の防衛を担っている空間騎兵隊第7連隊第三中隊の斎藤始だ。ヤマトの艦長ってのがあんたか。思ってたより若えな」

 

噂には聞いていたが、今回のヤマトの反乱の首謀者がこうも若いとは目で見るまで疑っていたこともあり斎藤は思った通りの感想を口に出した。

 

「さて、我々はこれからテレザート星に向かうのですが、それにあたって貴方がた第7連隊第三中隊をヤマトに収容します」

「連隊長の古野間二佐からは既に許可を頂いています。これには貴方達の協力が必要なので、どうかお願いしたい」

「ヤマトか…悪くねぇ。いっぺん乗らせて貰うぜ」

「ありがとうございます」

「だがな、少し待ってくれ。死んだ連中の埋葬をさせてくれ、あいつらをほっぽって置くわけにゃいかねえ」

「もちろん、構わない」

 

ヤマトをどこか羨望の眼差しで見つめてすらいた斎藤は部下を簡易的に埋葬すると、部下に指示して次々と隊の装備をヤマトに積み込む。ハッチの開いた格納庫には騎兵隊の上陸用船艇が今乗り込み終わったところであった。上陸用ではあるが、機動性も火力も優れており設計上は戦車として運用しても問題はないそうだ。

 

「じゃあ、こいつらも積み込んでおいたほうがいいな」

「これは?」

 

古代はそこで見慣れない兵器を見た。

 

「こいつか。こいつは試製波動掘削弾。さっき詰んだ発動艇に懸架して惑星表面で派手に落とすやつだ。尤も、惑星なんかにやったら中からマグマがドッバドバだろうからな。想定される目標は小惑星や浮遊大陸とかそういったものだ」

 

対戦車用グレネード、小銃、機関銃…様々な兵装をあらかたヤマトに積み込んだ斎藤が一息をついていると技術科の青い制服を着た若い女性がこちらを明らかに見つめていた。斎藤も見た目から伝わる自身らのガラの悪さには自覚があったのでため息をつきながら軍用のボトルで水を飲んでいると、その女性はこちらに駆け寄り大声を出した。

 

「えっ、斎藤のところの兄さん!」

「ん?えっとだな…」

 

だが、斎藤も心当たりがないわけではなかった。確かに、何年か前に間違いなく見た覚えはあるし、なんならこのところ写真でも見た気がしてならない。そしてまもなく、彼は1つの答えを導き出した。

 

「おお!美影か!高校生の時から更に大人っぽくなってもんで分からなかったぞ!」

「え、もしかして忘れてたんですか?」

「え…?ああ、いや、まさか!ハハハハハ!いやァ、大きくなったなぁ」

 

斎藤は頭をかいて誤魔化してはみるがあまりにも分かりやすい。

 

「全く、ひどい人!昔っからそれなんだから」

 

桐生はぷいと例の長いポニーテールを振り回すようにそっぽを向いて、何処かへと行ってしまった。それを影から見ていた沢村はいい顔をしなかった。傍から見れば斎藤も桐生もその手の感情を抱いてないのは自明だのに、こうも主観というのは厄介なものである。

 

「チっ」

 

それを加藤はにやにや笑いながら囃し立てるように囁く。

 

「沢村、お前、妬いてんのかぁ?」

「妬いてない、ぜ・ん・ぜ・ん、妬いてない!!」

 

加藤の後ろには、他の航空隊メンバーもモグラ叩きのモグラの様に顔をひょこりと出して彼を煽りに来ていた。

 

「へぇ」

「お前もヤマト航空隊だ、加藤隊長みたいに敵と女はしっかり落とせよ?」

「おい、今変なことを言ったのは誰だぁ?」

「篠原です」

 

と誰かが口にした途端、場がわずかに凍りついた。

 

「よせよ、もうあいつは…」

「そうだな、洒落にならないよな…間違えた、すまない」

「いや、いいんだ。篠さんだって、生きてたらきっと俺たちと一緒にバカ笑いしていたはずさ」

 

加藤のフォローでいくらか場は緩まったがそれでも先程までに比べて緊迫しているのは確かだった。その状況を完全に破壊したのは例の二人の密航者であると見て間違いないだろう。

 

「教官、お帰りなさ…あ…」

 

気まずい空気を察した古屋は棒のようにぴしりと固まり、飛田は彼の袖を引っ張って

 

「古屋、帰ろ?」

 

と促す。

 

「それがよさそだ」

 

と古屋が足を反転させようとした瞬間、彼の肩に大きな手が覆い被さり力を働かせるのを感じた。振り返ると非常ににこやかな加藤が二人のことを見つめていた。

 

「おい古屋、気づいていないとでも思ったか?」

「あ…」

 

飛田は彼か捕まっている隙に逃げようとするが、

 

「おっと、しっつれい~」

 

と沢村らがわざとらしく立ちはだかる。満を持ししたような表情を加藤は浮かべ、彼等にしっかりと罰を下した。

 

「さて、お前らには罰としてスワロー全機の磨き上げを命じる。汚れの一つも残すな!」

「かぁ〜〜」

「なんてこった…」

 

完全に、いつものお調子な航空隊が戻った。

 

その頃、凡その騎兵隊の物資を積み込み終えた古代と真田は艦外で今後の方針について軽く話していた。

 

「さて、これでヤマトは一気にテレザートへと向かう」

 

と真田が話した時、近くの避難用の列に並んでいた民間人の一人が飛びついてきた。

 

「テレザート!?今、君はテレザートと言ったのか?」

「真田さん…」

 

子供のように目を輝かせる(傍から見れば「異常という言葉が相応しい」)初老の眼鏡をかけた男に対し、古代は少なからず困惑していたが真田は薄らながらもシンパシーに似たベクトルの感情は湧きつつあった。

 

「事情を聞いてみよう。あなたは一体?」

「ああ、無礼を働いた。私はロバート・レドラウス、宇宙考古学者だ」

「宇宙考古学…」

 

アケーリアスの発見、それは多くの生物学者を自殺されるに十分すぎる発見であった。そして、それに代わるように急速な発展を遂げたのがかつては「公金オカルトごっこ」とさえ揶揄されたこともある宇宙考古学であった。

月面における謎の碑文に始まった研究、当時は月面探査の過程で何者かが落としたイタズラ物だろう、と誰もが思っていた。だが、少なくとも国連が、その認識を改めたのは2157年の例の異星船の発見だろう。それを機に国連大学を隠れ蓑に研究が開始された。無論、このことは地球市民には機密であったため先述のような揶揄が発生するのも無理はない…

 

「しかし、どういった経緯でテレザートの名を?」

「この星の遺跡の発掘作業を行なっていて、ちょうど其処に『テレザート』の名が刻まれていたのだよ。私も学会での認められなさっぷりを自覚はしている、半信半疑ではあったんだが君達は何かしらの証拠を得たということか?」

「ええ、恐らく角度はそれなりに保証されたものかと。ガミラスの大使館経由で開示された古地図を元にしたものなので」

「なるほど…」

 

腕組みをして必死に考え込むレドラウスの探究的精神に古代は心を動かされたのかもしれない。

 

「教授。よければヤマトでテレザート星への航海に同行いたしますか?」

 

という唐突な彼の提案には真田もレドラウスも驚かずにはいられなかった。

 

「いいのか、そんなことが!」

「はい、但し艦内の立入禁止区域には入らないでください。あくまでもヤマトは兵器ですから」

「いやいや、有り難い…まさか、ヤマトとは。ムサシを旗艦とした長距離調査船団に応募して、乗れなかったもんだから落ち込んでいたが…奇妙なものだ」

 

レドラウスをとりあえず、適当な船室に乗せた古代と真田の二人は腹ごしらえのために食堂に向かいながら雑談を続けていた。

 

「ムサシか…藤堂長官の娘さんが艦長をやっていましたね」

「そうだな。CRSを観測用として搭載した実験艦で観測機器の整備には私も携わっている。女性クルーがやたらと多いこと、そして護衛艦艇がドレッドノート級で固められているのが気になるところではあるが、恐らく政治的アピールなのだろうな。そうでも無ければ不自然すぎる」

 

真田からは目に見えて不満そうな表情が見受けられる。古代もその意を薄々と汲み取りながら廊下を進み続けるのであった。

 

「前者は女性軍人を多く採用しているという人権意識、後者は波動砲艦隊の誇示、ということですか…余りにも傲慢ですね」

「全くだ。古代、だから私はお前の反乱の提案に乗ったんだよ」

「そうでしたか、やはり、真田さんから見てもこのところの地球の慢心は目に余…」

 

食堂の中に入ると、そこは野蛮そのものであった。空間騎兵隊の連中が席については肉やサラダを素手で貪り食う。もう少し落ち着いた食べ方をしたらどうだ。

 

「ひ、平田さん。これはどういうことなんですか…」

 

すると間もなく食堂の隅の方でほか数人と食事をしていた加藤が古代のもとに直訴する。

 

「古代、艦長代理なんだろ、なんとかしてくれ!こいつらの野蛮っぷりには耐えられない!」

「加藤、わかった。斎藤中隊長を探そう」

「ああ、急いでくれ。あの連中にはマナーの教育が必要だ」

 

平田の手伝いで山本も料理を運ぶ。

 

「皆さん、まだまだ料理はたくさんありますので好きなだけゆっくり食べてください」

 

だが、騎兵隊の連中は料理よりも山本の方を見てにやにやとしていた。山本が何事かと困惑していると

 

「おお〜、この子は航空隊の嬢ちゃんなのかい?」

「グヘヘ、かわええなぁ〜」

「うちらの姉御さんとは大違いだぜ」 

 

次々に野郎どもが近寄ってくるので山本はどうすればいいか分からず走って逃亡した。彼らは間もなく、テーブルの上を派手に汚しながらとうてい食事とも言えぬ食事を済ませた。

 

「あ〜、食った食った!」

 

だが、明らかに残る細かいご飯の数々、先程までの野蛮ぶりに加藤は我慢ならなかった。

 

「お前ら、いい加減行儀に気をつけたらどうだ!」

 

だが、彼らは悪怯れることないどころか、悪態すらついた。

 

「なんや行儀って」

 

加藤はいよいよ声を本格的に荒げ始める。

 

「食事もまともにできないのか!」

「こんなことで驚いてちゃ困るぜ」

「くさっぱらに這いつくばったり、穴ぐらに潜り込んだり、時にゃ泥に塗れながら食うんだ。わからねえだろうな?」

「やめろ、エリートさんにゃ分からねぇよ」

「装甲板に囲まれたホテルにいると行儀まで良くなっちゃうらしいぜ!」

 

ついに加藤は怒った。

 

「なんだと!」

「これでもくらえ!」

 

騎兵の一人がパイを思い切り投げつける。ぎりぎり加藤は避け、その勢いでついに加藤は殴らんと構えるが、間に鶴見がどうにか入る。

 

「み、皆さん!やめてください!これから一緒に戦う者じゃありませんか!」

 

流石にまだ若い彼に言われては双方ともに食い下がる他なかった。だが、争いは回避されたが、かえって食堂には気まずい空気だけが残ることとなった。 

その頃、医務室では永倉が佐渡と協力して部下の応急処置を続けていた。

 

「あ、あがぁぁぁ、痛ってぇーー!」

「なあに、男が一度や二度負けたくらいでへこたれてんのよ!アタシはガミラス戦役の頃から負けまくってるってのにまだ元気なんだ!あんた達も元気出しなさい!ああ、ほら、佐渡先生。包帯を」

「ホイホイ、あいよ!」

 

佐渡はさながら野球のボールのように包帯のロールを永倉に投げる。見事に永倉はそれをキャッチし、部下の足なり胴体なりに巻き付けるのであった。そこに入室してきた古代に対し、気安く手伝うよう言う佐渡とぴしりと敬礼する永倉の差は滑稽とすら言えた。

 

「古代艦長ですか。救援のほど、ありがとうございました」

「いえいえ、それはどうってことありませんよ。それより、斎藤中隊長を見ませんてした?」

「斎藤ですか…恐らく、確証有りませんが展望室とかですかね…」

 

永倉の予想通り、斎藤は腕組みしながら展望室から大地を険しい表情で眺めていた。だが、常日頃から戦闘本能を研ぎ澄ましているのか、古代が入ってくると同時に彼の方を向いた。

 

「確か古代とかいうやつか」

「そうだ、斎藤であっているな?」

「ああ、俺に何の用だ」

 

斎藤の偉そうな態度は鼻につくが、やはり泥臭いことばかりやっている彼らのことだ。やむを得ない部分もあるのだろう。

 

「君の部下についてだ。何も全てが彼らのせいとは言わないが如何せん、艦内の秩序が乱れている。彼等に規律の徹底を願いたい」

「へん、規律か。お前らに頭をヘコヘコ下げるのはどうも気に入らねえ」

「規律とはそういうものではない。互いの理解し合うために気をつけるべき思いやりだ」

「へいへい、まあ噂の艦に乗れるってだけ感謝してるぜ。ガハハハハハ、ハハハハハ!」

 

斎藤は上機嫌か嘲笑か、笑いながら展望室を大股で去っていった。斎藤が去った展望室で古代は思わず頭を抱える。

 

「これは…自分では艦長は務まらないな。どうすれば…」

 

そう思い更けてどれほど時間が経ったか、彼が正気を取り戻したのは艦内の第一種戦闘配置の旨を知らせるサイレンであった。彼は走って第一艦橋へと飛び込むこととなった。

 

「何事だ!」

「艦長、レーダーに感!駆逐艦と思わしき影が直上に!」

「クソ、停泊しているところを油断していた…直ちに発進する!島、行けるか?」

「了解!」

 

島は操縦舵を一気に最大戦速とし、大地の砂埃を燃やしながら急速に発進する。

 

「我々が囮になれば避難民の方から敵の目はそらせるはずだ」

 

次第にヤマトは迫ってくるククルカン級によって狭い谷間に追い込まれる。その瞬間、駆逐艦はヤマトに覆いかぶさるように高度を上げ、下部の主砲をもってして攻撃を仕掛けてきた。

 

「ここで敵駆逐艦を落とす。三式弾、ってえ!」

 

主砲が天を仰ぐと、ガミラスの協力で建造された紛い物の人工太陽の日が砲口を照らす。間もなく主砲から三式弾が勢いよく放たれ、敵艦の底に豪快に刺さる。ククルカン級は火を吹きはするが、その時であった。敵艦は底の黄緑色を主体としたパーツを切り離し、延焼を防いだのだ。ヤマトはそれとの接触を回避すべく加速する。幸い避けられはしたが、相変わらず煩わしい砲撃は続いた。

 

「SAM発射、てぇ!」

 

煙突ミサイルのハッチが開き、勢いよく艦対艦ミサイルが飛び出す。いよいよ、その矢は敵に直撃し、ようやくヤマトは逃るることに成功した。

 

「…ふぅ」

「島、高度を上げる。このままテレザートに急ごう」

 

間もなく救援の艦隊とすれ違い、沖に出てしばらくが経った。

 

「オールトの雲、太陽系の最果てだな。地球で観測できる彗星ってのはここが故郷になってる」

「へぇ、改めて見ると綺麗なもんだなぁ」

「イスカンダルの時は急いでいて、見る余裕もありませんでしたからねえ」

「そうだな…この宙域を抜けたら障害物のない本物の大海原なのは知っての通り。そこで大ワープを行い、プロキオンの方に向かう。島、いいな?」

「了解。徳川さん、機関の方の準備お願いします」

「大丈夫、今やっているところじゃ」

 

そんな会話を艦橋で繰り広げた後、間もなくヤマトはワープの準備を始めた。だが、騎兵隊の者というのはまともにワープを知らないのだ。

 

「なぁ隊長、ワープってのはなんだ?」

「特別に美味えスープのことか!?」

 

それを聞く永倉は呆れたようにため息をつく。

 

「全く、あんたらは馬鹿なのかい?ワープってのは空間を飛び越えて、光よりも速く進むことに決まってるだろ?」

「へぇ、なんかよくわかんねえけど凄えや!」

「なぁ、後でヤマトの艦内を探検しようぜ!」

「よっしゃあ!そのワープとかいうのを終わったら真っ先に行くぞ!」

「あんたらねぇ…」

 

可能なら斎藤にどうにかしてほしいところだが、おそらく斎藤も「そっち側」の人間だ。永倉の苦労は絶えないだろう。

 

「ワープ完了」

 

目の前には白色の巨大な球が輝く。

 

「これがプロキオンか」

「なんか、地球で見るのに比べてオレンジっぽい気がするな…」

「それは遠い星は地球で見るより老けている、という知識から来る思い込みだ。プロキオンは地球から約11光年しか離れていない。この差は誤差みたいなものさ。実際、100年前に超新星爆発を起こしたベテルギウスでさえ、640光年ほどしか離れていないんだ」

「確かに、そういえばそうでしたね」

「ちなみに、100年前までシリウス、かつて恒星だった頃のベテルギウス、そしてこのプロキオンの3つで構成された『冬の大三角形』という用語もあったそうだな」

「へえ〜」

 

その時であった。森がヘッドフォンを抑え、怪訝そうな表情を浮かべた後、その顔を焦燥に駆られた顔に変えた。

 

「亜空間ソナーに感!」

「そんなバカな!何かの間違いじゃないのか?」

 

次元潜航艦、それはイスカンダル航海時にヤマトが遭遇したガミラスの恐るべき異次元を潜る船であった。ワープにおいてその刹那に通過する時空の狭間―次元断層―、そこに意図的に潜り隠れて攻撃を仕掛けてくる。

 

「あれはガミラスの極秘の研究の賜物だぞ?」

「いや、噂ではアレを開発する為に幾十度隻もの試作艦が沈んだとの話もある。もし仮にガトランティスがそれの回収に成功していれば、ありえない話ではない。彼等の『科学奴隷』なる制度を考えれば尚更だ」

「これは…二時の方向、魚雷です!」

「くっ…島、回避だ!」

「わかってる!面舵一杯!」

 

それを睨むは次元潜航艦隊旗艦〈グラビドー〉に乗り換えたナスカ大都督であった。

 

「ヤマトめ、我が顔に泥を塗りおって!必ず沈めよ!」

 

亜空間を航行しやすく滑らかになっている船体はまさに異次元を潜る船に相応しかった。しかし、ガトランティスとてここ最近に始めた他所からの技術。完全に解明しきれている訳では無い。この、全長約278.5m(=50ノン)の巨体を異次元に隠すには4つの次元潜航艦による連動が無ければ難しい様子であった。

 

「森君、敵が何隻いるかわかるか?」

「ただいま検索中…凡そ9隻、そのうち1隻は恐ろしいほどに大型です!」

「9体だって!?ガミラスでもワンオフのあの船を!?」

「もしかしたらサルベージした艦の部品を再利用しているのかもしれない。優れている部品を何隻か合わせて組み合わせれば、理論上は十分に可能だ」

「クソ、南部。爆雷投下準備!」

「了解、右舷亜空間爆雷投射用意」

 

艦の両舷に設置された爆雷投射機が触手のようにウネウネと動き、アームに最新の2式亜空間爆雷を装備する。

 

「爆雷投下!」

 

爆雷は間もなく艦からある程度離れると同時に炸裂し、亜空間を無理矢理切り開く。その波に飲まれ、敵の次元潜航艦は1隻、また1隻と沈んでいった。

 

「さぁ、早く出てこないと異次元の波に押しつぶされちまうぞ!」

 

若干、この状況を楽しんでいるようにも見えたが南部は尚も正確に爆雷投下地点を指示する。そして、いよいよ旗艦と連動している四隻のうちの一隻にあたったのだろう。

 

「ソナーに感!敵艦、浮上します!」

「よし、主砲で狙い撃つ。南部、頼むぞ!」

「よし、きたきた!」

 

だが、南部が指示しても主砲が動かない。

 

「おい、主砲発射準備だ。何やってる!」

「それが…空間騎兵の連中がうろついていてままなりません!」

 

南部が耳を澄ますと

 

「おい、俺にもやらせてくれよ!」

「だめだ、これは主砲だぞ。戦艦の命なんだ」

「うちらだって加農砲くらい撃ってらぁ」

 

と、戦術科の奮戦している声が聞こえる。

 

「何!?」

「艦長、敵艦が体制を立て直して3隻で潜航しようとします!」

 

その方向を見るとなるほど、敵旗艦と思わしき潜宙戦艦を中心に随伴艦を三角形に組み直して再び潜ろうとしている。

 

「あいつらめ…仕方ない。航空隊、いや、ブラックタイガー隊発艦準備!哨戒に有用な三座型を主戦力とせよ!爆雷を懸架して投下する攻撃を主とするべし」

 

古代の通信が格納庫に響く。それをコックピット内で加藤は苦々しい顔をしながら聞いていた。

 

「了解!…あの野郎ども、戦闘の時にまで足引っ張んじゃたまったもんじゃない…降ろさないとまずいぞ…」

 

一方、山本は機体の清掃を終えて格納庫内部をフラフラしていた古屋と飛田にヘルメットを投げて渡した。

 

「鶴見、古屋、飛田。お前らも行くぞ」

「本当ですか!」

「ただ、お前らは後部座席だ。まだ実戦ってやつの雰囲気を感じたことがないだろうからな。爆雷投下くらいはできるだろ?水平爆撃と同じ要領だ。いいな?」

「了解!」

 

「ブラックタイガー隊、発艦!」

 

いよいよヤマトの底の蓋が開き、順に三座型のコスモタイガーをカタパルトで勢いよく放り投げていく。間もなくコスモスワローは凡そヤマトから離れ、異次元を割いても影響のない宙域へと到達した。

 

「よし、全機爆雷投下用意!」

 

加藤が指示すると同時に三座型のアームが動く。

 

「お願いだ、当たってくれよ…」

「爆雷投下ァ!」

 

一気に爆雷を落とす。間もなく普通の爆発ではない妙な光の後、見慣れた爆発が見えた。

 

「命中弾多数!潜航艦、爆沈します!」

「ふぅ…」

 

古屋は冷汗を拭う。銃座の方を振り返ると飛田がグッドサインをしていた。古屋も返さずにはいられなかった。

一方、いよいよ次元潜航の連動が限界となった〈グラビドー〉は浮上を開始した。

 

「おのれヤマトめ…!!!ここで藻屑としてせしめよ!」

 

尺を取ったナスカは浮上して徐々に目の前に姿を現すヤマトの方を指し示す。

 

「敵旗艦、浮上してきます」

「よぉし、南部、今度は主砲でいけるか?」

 

南部は不安そうな顔をした後、マイクを手に取り確認する。

 

「砲室の方、いけるか?」

「はい、どうにか処理しました。今ならいけます!」

「なるべく急いで策定する、それまでは奴らを入れないよう頑張ってくれよ!」

「お願いします!」

「船務長、観測データを砲術の方に!」

「ただいま送信しました」

「よし、誤差修正、右+3度上下角+0.7!」

「撃ち方始め!」

 

一方の〈グラビドー〉艦内でもヤマトを討つべく慌ただしく動く。

 

「エネルギー伝導感開け!」

「砲塔内、光子圧力上昇!」

「過ち直せ、右翼に4、天に3!」

「ヤマッテ、本艦の方の軸線乗った!」

「砲を放て!」

 

ほぼ同時に両艦が主砲を放つ。〈グラビドー〉の主砲は僅かにヤマトの左舷カタパルトを掠める。そして、ヤマトのショックカノンは…

 

「弾着、今…よし、目標に全弾命中!」

 

「た、大帝に詫びをヲ!」

 

〈グラビドー〉は爆沈し、その残骸は悲しくもプロキオンへと落ちていった。間もなく、その僚艦であった二隻も撤退していった…ヤマトは勝ったのだ。

 

その報を職の都合でいないゲニッツの代わりにラーゼラーは苦々しい顔で大帝に上奏する他なかった。

 

「大帝、まことに残念なご報告を申し上げねばなりません。ナスカの軍勢が、潜宙艦隊が…全滅しました!」

 

それに対し、サーベラーは危うくグラスを落としそうになるほどには驚いていた。

 

「なんですって!?」

 

だが、大帝は騒がぬ。大帝は引き続き座にもたれかかったまま、酒を一杯飲んでは余裕の顔を見せながら二人を諭す。

 

「なに、騒ぐことはない。我々はこのまま地球を目指すのみだ。彼らはテレザートに上陸しようにもゴーランドのラスコー改級で編成されたミサイル艦隊があるではないか。我々の力をして地球など赤子のようなものなのだ。アッハッハッハッハ」

 

大帝の高笑いが室内中にこだまする。それはさながら、宇宙全体を彷徨うガトランティスそのものにも思えるのであった。

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