すっかり占領したテレザート星の一角に本陣を構えたヘルサーバー重騎兵隊旅帥である《猛進》のザンツ・ザバイバルはゴーランドと共に酒を呑み交わしていた。
「こうやって宴を開くのも長らくであるな」
「このところ、互いに大帝の勅令がしばしば下されていたのだ。仕方あるまい」
「折角だ、また例の場所に行くのは如何か?」
ゴーランドの薄ら笑みによる誘いにザバイバルは頷き
「悪くない」
と応えてみせる。二人を乗せた〈ゴストーク〉は反物質機関を唸らせながらとある惑星へと向かっていた。目的地と思わしき惑星の衛星軌道に乗ったところでゴーランドは部下に内火艇の発進を命じる。
降り立った先は慣れぬ者には癪に障りそうなほどの強い湿気が立ち込める惑星であった。内火艇から姿を現した二人は狙撃用と思わしき、武骨な銃を担いで惑星に降り立った。すると、そこを目掛けて巨大な影が迫る。
「ふんっ!」
まずはゴーランドが先陣を切りその巨影を倒してみせる。その巨影の持ち主―砂竜―は地球で言うところの恐竜に近い生物とでも言えよう。尖った顔、凶暴な歯、長い首…その手の巨大爬虫類と似ているのは確かであった。2人の目的は娯楽、要するに「砂竜狩り」であった。二人は幾度となく引き金を引いては砂竜をゲームのように倒していくのであった。
「ヒェ~~!」
その時、部下の一人が情けない悲鳴を漏らす。その方向を見ると砂竜に追いかけられる部下の姿があった。ゴーランドは即座に的確な射撃でその恐竜を撃ってみせる。
「いやはや、お二人とも相変わらず上手で…」
辛うじて命拾いした部下は赤ベコのようにゴーランドに頭を下げる。しかし、ゴーランドは良いと言わんばかりに手振りをすると僅かに不満そうに溜息をつく。
「久し振りだからか、流石に少し腕がなまっているな」
「まあ、やむを得ん。しかし、狩りとはやはり素晴らしい物だ」
二人は砂竜の肉を一部切り出すと部下と共に次々と内火艇に運び込む。猟った相手の肉までしっかりと喰らう。ここまで行って初めて狩りを成したと言えるのである。
「同意だ。我らガトランティスが長旅で忘れかけていた人間性というものをつくづく思い出させてくれるな」
「このイルミダスより受け継がれし我らの大銀河の血、絶やすわけにはいくまい」
「尤も、我々はイルミダスより決起した集団の中心者である子孫の大帝に仕えている訳だがな」
「まあ、細かいことはあまり気にするもんでもない。さて、もっと凄まじい獲物を狩りにいくとしよう」
肉塊を運び終わり、一息溜息をつきながらも余裕そうな笑みを浮かべるゴーランドに対しザバイバルはやや厳しい目を向けた。
「…ヤマッテか。件の賊の軍を壊滅させたと聞くが」
「なに、賊だからこそ負けただけよ」
「とはいえ、大帝が火焔直撃砲を直々に下されるほどの者だ。そのヤマッテという艦は何か特別なのかもしれん。心して相手したほうが良いと思うぞ」
「忠告には感謝しよう。だが、大帝の命で得たこの弓兵艦隊なのだ。諸侯の奮闘あらばそう安々と負けることなどあるまい」
「それもそうだな。ゴーランドよ、お前の勝利を、友として心より願うぞ」
ザバイバルの戦車部隊による祝砲と共にゴーランドの弓兵艦隊は空高く飛翔していくのであった…
ヤマト目掛けて飛翔する大型のミサイル。それでも、どうにか島の操艦で避けることには成功する。
「第一波は回避したか」
「第二波、来ます!」
「古代」
「主砲発射、用意!」
「了解!主砲発射用意!誤差修正!」
土方、古代、南部と手際良く命令が受け継がれる。
「撃ち方、始め」
「てぇーー!」
古代の合図と共に主砲から放たれる蒼白い光線は瞬く間に矢を貫き破壊せしめる。これには敵兵ももはや感嘆の溜息を漏らさずにはいられなかった。
「全て撃ち落とすか…」
「デスタール様!ヤマト、進路を変えて逃亡しようとしています!」
ゴーランド配下に置かれた諸侯の1人である《音撃》のヨーン・デスタールは報告を受け顔をしかめる。
「逃がすか!…いや待て。恐らく、この周辺の宙図から察するに彼等は空間跳躍を行う際に目印となる星を求めているに違いない。我々からの追撃を遠ざけるべく可能な限り遠くへのワープとなると…」
ここだ。間違いない。
「全艦に通達。これより我が軍は大規模空間跳躍を行う!目標は…」
ヤマトが空間を引き裂いて現れた先には自力で赤く輝くには妙に小さい星が1つ浮いていた。
「クソ、テレザート星があるヒアデス星団まではまだ距離があるな…」
幾ら自身の腕が良くなったとしても、艦の性能に限界がある。そんな自分ではどうしようもないことに感じる無力感から島のボヤキは出るのであった。一方の古代は目の前の見たこともない新世界にすっかり魅了されていた。溶岩の海に覆われたその惑星は今この瞬間にも炎を吹き上げて自身が生きた星であることを主張し続けていた。
「これは…?」
そんな古代に真田は計器と窓を交互に見つめながらいつも通り推論を分かりやすく纏める。
「どうやら過去に何らかの星系に属していた惑星に思えるが…こんなところを漂っているのは不自然だ。何らかの文明の遺跡の可能性もある。後で余裕があれば調査するべきかもしれないな」
「凄い…まるで炎の泉ですねえ」
太田も感激の声を漏らさずにいられなかった。しかし、艦内の温度が上がっているのも実感せずにはいられなかった。ヤマトにはある程度の艦内温度調節機能があるので蒸し焼きになって果てることはないだろうが、艦外が凄まじい高熱に晒されているには違いない。
「艦長、艦底部の波動防壁は厚くしますか?」
「いや、艦底部の装甲は通常より厚い。このままで問題はあるまい」
そう土方が判断した時、森がレーダー反応の感知を確認してしまう。
「!本艦の直上にワープアウト反応!」
「…謀られたか」
その頃、レドラウスは割り当てられた私室から飛び出して付近の乗組員に掴みかかるように頼む。
「済まない!至急、この艦の責任者と話がしたい!」
「何言っているんです、今は戦闘中だ」
仮にも民間人の命を守る義務があるのだ。彼の対応は仕方ないだろう。だが、それでも食い下がらないのがレドラウスであった。
「ここは惑星シュトラバーゼなんだ!古代文明のヒントがあるかもしれんのだぞ!」
「そんなの知るか!そんなことより早く自室に戻れ!さもないと死んじまうぞ」
そう一蹴されたレドラウスは肩を落としながら艦内を下っていくのであった。それをすれ違いざまにキーマンは目撃する。
「見慣れない方が乗っているようで」
「…」
「聞こえていないのか」
黙殺を決め込んでいたレドラウスは振り返ると刺々しい言葉をキーマンに放つ。
「忌まわしいガミラス人め、私の前で口を利くな。私の家族は貴様らに皆殺されたんだぞ」
「気持ちは分かる。だが、我々ガミラスも先の戦争で失ったものは決して少なくないということを分かって頂きたい」
キーマンの鼻につく態度がますますレドラウスを苛立たせる。
「故郷の星が滅びるような思いをしていない貴様らに何が分かる」
「首都バレラスでの戦い。ある者によれば『そこに街はなかった』と言わせる程には廃墟になった」
限界であった。彼の表情や言葉より先に動いたのは拳であった。
「だったらなんだって言うんだ!」
そして、それを偶然にも通りかかった佐渡が力ずくで取り押さえる。
「レドラウスさん、落ち着かんかい!」
「離せ!」
頭に血の上ったレドラウスであったが、流石に軍医と民間人の違いである。成すすべもなく彼は医務室へと連行された。ただ、しばらくもすれば人というのは意外にもすぐ頭を冷やせるものだ。レドラウスも例外なく後ろめたそうにベッドの上に座る形で項垂れていた。
「すみません…」
「なあに、いいんじゃ」
そう言いながら佐渡は宝箱を開ける様に棚から秘蔵の酒を取り出す。慣れた手つきで封を開封し、杯をレドラウスにも分けた。
「こういう時は、酒でも呑んでたまってる黒いのを一気に吐き出すに限らぁ」
レドラウスは有難うございます、と言うとそれを丁寧に受け取った。艦は相変わらず戦闘で激しく揺れているが、そんなことはお構い無しであった。
「私には2人の子供と妻がいたんだ。子供に関して1人は37歳、もう1人はあの若い艦長さんくらいです。今生きていれば、の話ですが…」
「あの若い艦長さん…古代のことか」
「ああ、そうですね…全く、あんな若いのが戦場に!目も当てられん!」
意外と酒に弱いのか、レドラウスは杯を持たない手で激しく拳を自身の膝に振り下ろすと、酒を一気に飲み干す。
「あ〜、こらこら!そんなに一気に呑みなさるな!そんなことより、ご家族の話をもう少し聞きたいんじゃが…」
「あー、申し訳ない。続けましょう」
レドラウスは平静を取り戻し、話を続ける。
「上の方の奴はな、カ2号作戦で死にました。なんせ〈ユリシーズ〉を狙っていただろう砲撃がちとズレて、乗っていたフネに直撃だそうで。全く、幸運艦が付近の連中の運を吸う死神だってのは、本当なのかもしれませんな」
「そいつは残念だったなぁ…」
「仕方ない。あの戦争で人口は七割減ったんです。あいつはその七割側に入る程度の運しか無かっただけの、普通の人間ですよ。助けられるなら助けたかった。今更なにもしてやれるものではありませんがね」
基本的に楽観主義である佐渡でも、これには言葉が出なかった。
「だから、あの若い艦長さん…古代と言いましたっけ?彼には生き延びてほしい。そう思ってしまいます。行き先を失った親の愛情と言ってしまえばそれまでですが…」
「まあ、あんまワシは詳しくないが親ってのはそういうもんじゃろ。それなら、あんた考古学者なんじゃろ。もしかしたら少し彼に助けになる情報でも持っとるんじゃないか?」
その言葉にレドラウスはハッとする。次に彼は佐渡に艦橋へ案内するよう口が動いているのであった。
そんな間にも戦闘は続いている。ミサイルの飽和攻撃によりヤマトはかなりの苦戦を強いられていた。
「波動砲もないってのに、どうすりゃいいんだ…」
その時、古代は周辺の時が止まるのを感じた。〈ゆうなぎ〉の艦長席で起きた現象と同じだろう…やはりそうであった。周囲を見渡すと、例の黄金色の沖田が古代を見つめていた。
「古代、死中に活を見出だせ」
「沖田艦長…しかし、上も下も退路が断たれてしまってはどうしようも…」
「だから死中に活を見出だせと言っているのだ、馬鹿者!」
…元に戻ったようである。
「レーダー、コスモウェーブをキャッチしました。方角は…あの溶岩惑星です」
恐らく古代が今受信したメッセージはその方向からだろう。その時、島が誰もが感じた嫌な予感を口にした。
「なぁ…まさか、これってガトランティスの罠だったんじゃないのか?あのコスモウェーブってのは俺たちをあの溶岩に突っ込ませるための…」
「クソ!善人面しておきながら騙しやがって!」
相原も堪忍袋の緒が切れたように通信用のヘッドフォンを叩きつける。艦橋の空気は地獄のようであった。それと佐渡に連れられたレドラウスが駆け込んできたのは同時くらいであっただろうか。
「皆さん、聞いてください!」
「レドラウス教授!?」
「古地図によると、この惑星シュトラバーゼはワープゲートになっています!これを使えばテレザート星に一気に近づける!」
「教授。ただ、ワープゲートとなるとバラン星と同じように何かしらの起動操作を行う必要があるかもしれません。その辺に関して何か、手がかりは?」
真田らしい冷静かつ真っ当な意見である。また、バランでは古代に彼の兄のことや森の正体を吐露しただけに心にしかと刻まれている出来事であった。それだけに、「ワープゲート」と聞いて真っ先にバランとの関連付けが出来たのだろう。
「地図には『泉の雄叫びが宇宙を割る』と書かれていました。恐らく火山が大規模に噴火するタイミングが定期的に訪れるとしたら、それがワープゲートの開く瞬間です!」
「ゲートの位置は?」
「…そこまでは分かりません」
だが、突如として古代が立ち上がったことで事態は動く。
「土方艦長、自分に100式で行かせて下さい」
「100式、どうするんだ?」
「あの偵察機は装甲にコスモナイト合金を使用しているからスワローよりも過酷な環境にも耐えられます。無論、ここのような高熱にもです。後部にレドラウス教授を乗せてゲートの位置を割り出そうと思います」
「了解した。ただ時間はない。なるべく急げよ」
古代は敬礼すると急いで艦橋を下りていった。
「教授、アレに付いて行ってください。幼そうで頼りないかもしれませんが、一応イスカンダルへの航海を立派に生き延びた一人の戦士です」
「宙将、分かっているつもりです。彼は立派な、戦士ですよ」
格納庫から発進した100式のコックピット内部の温度計は凄まじい温度上昇を刻々と示していた。
「温度計の数字の上がり方が凄い…」
「当然だ。この星はアケーリアスかそれに類する文明が自身らの存在を記録するために作ったモニュメントなのだから」
「モニュメント、ですか?」
「ああ。意図は判明していないが記念碑的な何かなのは間違いない。きっと、一定時間ごとにワープゲートを開くようにしている辺り、自身らの高度な技術を誇示するための物かもしれないな…それより君。確か、古代君と言ったかね?」
「はい、そうですが…」
突然の、脈絡もない質問に古代は戸惑った。
「若者が戦わなければはならない、嫌な時代だね」
「やはり、レドラウスさんもそう思いますか」
「ああ。心がいたたまれないというか、何と言うか…」
レドラウスはふと、この若者を不快にさせてしまったかもしれないと思い謝ろうとしたが、それは杞憂に過ぎなかった。古代は意外にも微笑みながら返事をした。
「お気持ちは分かります。よく、色々な人々から言われますから」
一度、考えに詰まったのか彼は一呼吸を置く。
「それでも、誰かがやらねばならないんです。少しでも役に立てるなら、期待されているならそれに応えられる人間でありたい。そう思って戦っているだけです」
彼の言葉にレドラウスもハッとする。出撃前夜に帰還した長男の言葉だ。
「別にお前が1人行かなくったって、代わりはいるだろ?なんでそんな…」
「父さん。これは、この地球の誰かがやらないといけないことなんだよ。しかも、皆が『誰かがやってくれる』なんて考えたら大変だ。なら、自分が行くってだけの話だよ」
そして息子は帰ってきた…薄っぺらの書類と勲章となって。だが、例え彼が霊となって現れたとしても「だから行くなと言ったんだ!」なんて説教は通じないだろう。あいつはきっと、やりきって満足にすら近しい形で死んだのかもしれない。
「そうか…そうかもしれんな。ただ、定期的な両親への挨拶だけは忘れるな。手紙くらいは出してやらないと寂しがる」
そう言うと、今度は古代の顔が曇ってゆく。
「…両親は、もう…」
その言葉ですべてを察した。
「すまない…」
「いえ、気にしないで下さい。教授のおっしゃることも良く分かりますから…そう仰るということは教授にお子さんが?」
「…いや、独身だよ」
間もなく偵察機は惑星表面へと接近した。溶岩は地球の海のように波打っており、たまに飛沫が横を通り過ぎる。
「古代君、あの辺が気になる。もう少しだけ高度を下せるか?」
「わかりました、やってみます」
そう苦労することなく、レドラウスは手元の第11番惑星で得たデータのアーカイブと照らし合わせてゲートの場所を特定する。
「あれだ!あれに違いない!」
それはあまり頭を回さずに見ればただの火山だが、冷静に考えれば惑星の重力に逆らうほどにそびえるその山は確かに何か重要なものを指し示しているようにも見えた。
「ヤマト!こちら『ブラボー1』、ワープゲートと思わしき構造物を発見!座標を直ちに送信します!至急、こちらに急行してください!」
「機関室!フライホイールをしっかり回せい!焼ききれんばかりにだ!」
『了解!』
徳川に続き土方も直ちに島に命令を下す。
「島!反転だ!」
「反転180度、上昇角マイナス30度!」
それを凝視するガトランティス艦隊。その違和感に気付くのにそう時間はかからなかった。
「ヤマッテ、溶岩惑星に突っ込む模様!」
「自害する気か…せめてその御首は頂くぞ」
追撃を開始するデスタールの部隊。多少の艦は撃破されたが、彼の策で幸い「破滅の矢」を撃ち尽くした艦のみの喪失に留めてあった。
「デスタール様!敵の偵察機と思わしき浮遊物が溶岩惑星の一点を周回しています!」
「目的地はそこか…各艦より偵察機を出せ!奴を落とす!」
各艦の側面ハッチが回転しながら開くと、例のデスバターターの偵察機型が群を為して発進する。100式と異なりガトランティスの偵察機には機銃が付いており、丸腰の敵なら落とすのは容易である。その中でも一機、やたらと突出している機体があった。
「メーザー殿は凄いな…この溶岩が凝固して出来たデブリの中をあっという間にあんなところまで…」
無論、それを古代たちが気付かぬはずもなかった。さすがな古代もこの絶望的な状況に顔を青ざめさせずにはいられなかった。
「敵編隊、本機に向けて接近中!?…こっちは機銃もないってのに!」
「古代君!観測機器によるとマグマ溜まりが不安定になりつつある!そろそろ扉が開くぞ!」
古代の打電を直ちに相原がキャッチする。
「ブラボー1より入電、『開門近シ 急グベシ』とのことです!」
「島、もっと高度を下げろ」
「そんなことをしたら、第三艦橋が溶け落ちてしまいます!」
「波動防壁の発生点があるのだ、5分や10分で溶けるものでもあるまい」
「わかりました。ヤマト、高度を下げます」
島はこんな危機的状況にも関わらず冷静さを崩さぬ土方に訓練時代に変わらぬ畏敬の念を抱くのであった。
「南部。艦底部に波動防壁を8割集中させろ。艦上部は対空機銃のないところに防壁を集める。いいな?」
「わ、わかりました!」
それを追撃するガトランティス艦隊も無論、同様の行動を取る。
「ヤマッテ、更に高度を下げました!」
「仕方ない、我々も追うぞ」
旋回行動で推定される場所をヤマトに知らせる100式、いよいよ敵機との接触も時間の問題となりつつあった。
「あと一分弱だ!すぐにゲートは開く!」
「一機、先行して突っ込んできます!デブリの中を…あり得ない…」
だが、その時ついに敵機の射程圏内に入ったのだろう。例の先行する機体が機銃を勢いよく撃ってきた。古代はどうにか躱すが若干焦っているようにも見えた。
「ついに射程圏内か!」
「古代君よ、もう少しの辛抱なんだ!頼むぞ!」
「分かってます!」
だが、時を同じくしてガトランティス艦隊も限界を迎えていた。シュトラバーゼ表面でチェイスを続けているラスコー改級がついに誘爆を始めたのだ。
「う、うわァァァ!!!」
「何事か!」
「こ、高熱で…高熱で矢が誘爆を起こしています!」
「ぐぬぬ…こうなれば今、矢を放つのみ!破滅の矢を放て!」
焦燥に駆られるデスタール。恐ろしい速度で「破滅の矢」が迫る。
「敵艦、ミサイルを発射した模様!」
「あともう少しだ」
完全に敵偵察機に捕らわれドッグファイトさながらに100式で銃撃を躱す古代。いよいよ、レドラウスがニヤリと笑う。
「噴火、来るぞ!」
「回避!」
その噴火はヤマトに迫る矢を丸々と飲み込み消滅させた。
「ミサイル、溶岩に飲み込まれて消失」
「やったぁぁぁ!あ…?」
それと同時に凄まじい衝撃の波がヤマトを襲う。ブラックホールのように吸い込まれる様に一同は動揺した。
「凄い重力で吸い込まれる!!」
「これがゲートってやつか!」
「総員、衝撃に備え!!」
無論、空間騎兵隊の面々は外の状況がよく分かっていないだけに尚更である。
「母ちゃん!!」
「まだ死なたくねぇえぇ!」
普段ならそんな情けない声をあげた隊員をどつく斎藤だが、今回ばかりはそうもいかなかった。彼自身にとっても未知の恐怖。他人に構っている余裕などないのであった。
「古代君!ヤマトに帰らないと大変なことになるぞ!」
「くっ…これまでか…」
最早、古代の操縦を持ってしてもどうにもなりそうにはない強烈な引力に飲み込まれ、やがて見えなくなった…
しばらくすると、ヤマトの艦橋内部で土方を除けば真っ先に目覚めたのは南部であったろうか。情けなくズレた眼鏡をかけ直すと、寝起きのように辺りを見渡す。どうやら、周囲に満遍の星は見えるがさっきと全く場所は違う。恐らく通常空間なのは確かだろう。
「ここは…」
「ヤマト、無事ゲートを抜けました!」
だが、安堵の表情を浮かべる相原とは対照的に島と森、真田はやや不安そうな顔をしていた。その不安を真っ先に口にしたのはやはり、森であった。
「古代くん…古代くんは!?」
島はどちらかと言うと、諦念の様な表情をしていたと言ったほうが正しいかもしれない。真田はただ腕をくんで眉をひそめるばかりでどちらだったかは分からないが、古代のことが気がかりだったのは確かだろう。
だが、杞憂であった。相原が何か通信をキャッチしたのかヘッドフォンに手を当てる。
『…ちら、「ブラボー1」、こちら「ブラボー1」!ヤマト、聞こえますか!』
ゲートの衝撃が凄まじくどうやら通信がしばらく効かなかったようだ。島は軽く笑いながら彼の帰還を喜ぶ。森も涙を流さんばかりに彼の無事を安堵した。
「軽い『手土産』、と言ってはなんですが運びいれる物もあります。至急、ハッチを開けてください」
彼の100式の後ろにはワイヤーでガトランティスの偵察機が牽引されていた…そのコックピット内部には衝撃で体を打ったのか、うめき声を上げるパイロットが1人乗っていた…