「最近、えっちゃんが冷たい気がする。」
【あんていく】のカウンター席で、ゲ○ドウポーズをとり呟く。
季節は6月の始め。ママンと【あんていく】におやつを食べに来ていた。
カウンターの隣に居た母親二人は、チラリとこちらを一瞥すると
「でね、駅前にケーキ屋さんが新しくできたの。
今度二人で食べに行かない?」
「良いですね、行きましょう。美味しければウチのカフェに納めてもらおうかな?」
と、他愛のない話を続けていた。
「知ってる~あそこモンブランがめちゃくちゃ美味しかった。まだ年若い女性のパテシエさんで、それ程お店の認知度は無いから、今がチャンスかもね~。
でもね~、息子の呟きを流すのは流石にどうなのかな~母親ども?」
ママン一つ深いため息をついて
「襦袢」
「ん?」
「気のせいよ。それでいつ行きます?」
一刀両断された
「えぇー、でもさ、最近一緒に帰ってくれないんだよ?いつも蜘蛛子ちゃんと一緒に帰ってさ。」
蜘蛛子ちゃん、フルネームは【
えっちゃんが小学校で出来た最初の友達だ。
彼女との出会いは、僕はその時には居なかったので又聞きなのだが、どうやら二人は出会い頭に些細な事で喧嘩になり、校庭で個性を使っての壮絶バトルになったそうだ。
まあ、小さい子どもの喧嘩(えっちゃんも手加減していた)なので大事には至らなかったが、二人とも教師、保護者含めこっぴどく怒られたそうだ。(因みに蜘蛛子ちゃんの個性は、蜘蛛糸。粘着性のある糸を手のひらから出せるぞ!親愛なる隣人ですね、
その際に和解して、今では親友になったそうだ。
これからは事あるごとに
「くもちゃん!」「えなちゃん!」
と、いつも一緒にいる。
因みに、僕とも友達になったのだが、なぜか僕に対して歯を剥き出しにして威嚇してくる。
………いやね、なぜかって言ったけど、流石におっちゃんも解っとんねん。ただね、問題のえっちゃんがまだよく解ってなくてね?ソコんとこ
ぼんやりと
「今日も蜘蛛子ちゃんと遊びに行ってるし~」
その時の蜘蛛子ちゃんは、勝ち誇ったように僕を見ていた。正直焦って不貞腐れている。おのれ
そんな僕の様子を見て、
「襦袢くん」
「はい」
「気のせいよ。
一刀両断された。そりゃね、えっちゃんに友達が出来るのは僕だって嬉しいよ?でもさ、こうさ、遊びに行くのもこう、僕も誘ってくれても良くない?なのに除け者にしなくてもさー、今日だって僕も行っても良い?って聞いたら「ダメ!」って拒絶されるし、こないだも肉襦袢要るか聞いたらダイエットしてるの!って拒絶されたしなんだよ小1でダイエットて、んなの気にしたこと無かったじゃん。てかダイエットより、えっちゃんもっと肉つけないとダメじゃん。気を抜くとすぐに痩せぎすに成るくせに。まあ、確かにえっちゃんの自主性に任せて行動するのは予定通りだけどさ、だけどさーあんな拒絶する様に言うのは、違くねー?これまで尽くしてきたのにさ~。あれかな?お兄ちゃんウザイとかキモイとか言われる世の中の兄貴分ってこんの気分なのかな~ホントにこっちの気持ちもさぁ、考えてほしいよね~。てかさ「襦袢」ん?」
「あんた重いわよ?」
………おうふ、もしかして
「声に出てた?」
「バッチリ」
はっはっはっ。ちょっと負の感情を垂れ流していたようだ。お恥ずかしい。
「男ならドシンと構えていなさい。」
と、ママンが言うが正直難しかった。そもそも前世で死ぬ直前の飲み会って言うのも………いや、よそう。
もう今では関係ないことだ。
そもそも小学生だし、僕とえっちゃんはそん関係ではない。未来を選ぶのはえっちゃんだ。
………しかし、僕は重いのか。病んでんじゃん。
きっつ。あの
その様を見た愛守さんはお腹を抱え笑っていた。
「アハハハハ、襦袢くん、おっかし~アハハハハ
あ~、襦袢くん、心配要らないわよ。」
一頻り笑った
と、言いきった。
「大丈夫よ、
愛守さんに言われて初めて自覚した。
僕、嫉妬してたんだ。
その指摘に、赤面せざるを得なかった。
ホントにカッコ悪。男の嫉妬ほどみっともないモノはないとは、本当だと実感した。
「マスター!いつもの!」
カウンターの奥の厨房に居る朱膳さんに声かけすると、笑いながらコップに入った牛乳を持ってきてくれた。
「襦袢くん、それ飲み終わったら仕込みを手伝ってくれるかい?」
「よろこんで!」
背を伸ばすための牛乳を一気して、厨房に向かうのだった。
★★★
「「「「「襦袢くん、お誕生日おめでとう」」」」」
「ありがとう」
今日は6月9日は、僕こと肉丸襦袢の7歳の誕生日だ。
時は平日の夜、場所は肉丸家でウチの家族と芳村家で誕生会を開いていた。
今までも、僕とえっちゃんの誕生日は基本肉丸家で誕生会を行うようにしていた。理由は単純にウチのリビングの方が間取りが広いからだ。
因みに、えっちゃんの誕生日は9月9日だ。
え?両親の誕生日はどうしてるのかって?
その時は【あつていく】で両親二人だけで祝う様にしている。誕生日は………秘密で。
お子ちゃまは肉丸家でお泊まりだ。
ついでに今日の誕生会も芳村家は全員お泊まり予定だ。両家の仲は順調だ。
さて、誕生会。
目の前のテーブルには様々な肉料理が並んでるが、ケーキはない。えっちゃんが食べられないからだ。
その代わりの肉料理、当然
中身は当然、
己の肉を己が食べると言うのは、背徳感ががガガ………まあ、後で口直しを用意してもらうが。
ゆうて、自分の肉。他の人が食べるよりはまだましなのかも知れない。ほら血液なんか、ふとした瞬間口切って味わう事なんてザラじゃん?そゆこと。
そして、その中心には大きめなフィレステーキ。その上に7本のローソクが立っている。
………少し考えると絵面が酷いな。てか、内容も酷いな。
考えてみてくれ、目の前の肉は僕の体の肉だ。それがこんがり焼かれて、ローソクを突き立てられて、ハッピーバースデーを歌われて、「おめでとう!」と祝われて、さあ、食え!と差し出される。
うん、虐待案件ですね
とりあえず、ハッピーバースデーからの~おめでとうからの~ロウソク吹き消しから~ステーキをサイコロ状に取り分けて僕の目の前に置かれております。
隣のえっちゃんにも、同じようにステーキを取り分けて置かれている。そして自分のフォークを突き刺し
「じゅうくん、お誕生日おめでとう!はい、あーん」
ぉぅ、えっちゃん「あーん」をしてくれるのかい。ハハハ、果報者だなボクハ。(微妙に嬉しくないが)
差し出された目の前のステーキを一口入れる。
むぐむぐ、ごっくん。
うん、普通に美味しい。
朱膳さんのチートをまだまだ嘗めていたようだ。
恐らく人肉をココまで人が食える料理にしたのは、朱膳さんが初めてじゃないか?(まあ、普通の料理人ならば、やろうとも思わないが)
まあ、人肉料理人て言うと犯罪臭がすごいが。
ココまで朱膳さんが人が食べられる人肉料理を作れるようになったのは、理由がある。
そう、過去に生成が出来ないと言った血液から作るお塩を生成できたのだ。
あれから色々調べたが、血液の中には塩分が少ないと言ったな?あれは間違いだった。
戦国時代の籠城戦の時に馬の血液で塩分補給をしていた例を見つけ、なら何で僕が血液から塩を生成できないのか考えた。その結果が、
本当に盲点だった、まさか血小板が邪魔していたなんて。
血小板は出血などの時、血液を凝固して出血の傷口を塞ぐ作用がある。その凝固作用が生成時に邪魔をしていたのだ。
それを理解するのに一年半掛かってしまった。
只の一般人に血液の詳しい成分がとか解らんわ。
最悪、尿から塩の生成を考えていたから、絶望感が酷かった。
………今、尿からて言って、考えた人。それ以上はいけない。考えてはいけない。
塩を手にした朱膳さんのえっちゃん用料理は、水を得た魚のように本当に凄まじかった。
ビーフシチューを初め、ローストビーフ、朱膳さんの代表料理にて【あんていく】の名物料理【肉のアスピック】等も、えっちゃん用料理にしてしまった。(因みにアスピックについては一悶着有ったがそれはまた別の機会にしよう)
様々な美味しい料理に、えっちゃんも満面の笑顔でいっぱい。毎日ニコニコ笑うえっちゃん。
僕の
べ、べつに寂しくなんて無いからね!?
そんなわけで、朱膳さんの人肉料理は僕達でも普通に美味しかった。
僕がステーキを食べたことを確認すると、えっちゃんもお皿の上の自分のステーキを食べ始める。
脂分の少ない柔らかいステーキにえっちゃんの顔も蕩ける。それを見る芳村夫妻も優しい微笑みを浮かべる。
特に朱膳さんは、えっちゃんの蕩ける顔を見ただけで満足そうだ。其については、本当に良かったと思う。ただ、どこに落とし穴があるかは解らないから油断しないで欲しい。
テーブルのお肉を一通り食べ終わり、えっちゃんも満足げにお腹を擦っていた。結構食べたのか、お腹の辺りがポッコリ膨らんでいる。だが、この膨らみも30分後には消化されペッタンコに成るのだが………相変わらずの燃費の悪さだ。そこら辺は岩塚家の血なのだろうなと、勝手に思うことにしていた。
食後のまったりとした時間の中で、ある程度食休みが終わったところで愛守さんが、えっちゃんに声を掛ける。
「愛成、襦袢くんに渡すものがあるんじゃないの?」
愛守の言葉に「そうだった!」とソファーから立ち上がり客間の方に走っていった。
これはプレゼントを用意してくれてたのかな?
両親Sには先にプレゼントを受け取っていたが、えっちゃんは大トリのようだ。
なにくれるんだろうなぁ、と有頂天になっているとえっちゃんが戻ってきた。結構大きめな包装にリボンが着いている紙袋を持ってきた。B5位の大きさだ。
えっちゃんは手に持っていた紙袋を僕に差し出し
「じゅうくん、お誕生日おめでとう!プレゼントです!」
と僕にくれた。
「ありがとう!何が入っているのかな?」
ガサゴソと紙袋を開けると、中にはノートが入っていた。ジャ○ニカではなく、普通の青い大学ノートだ。後は底に可愛いピンクのシャープペンシルが入っている。因みに可愛いクマさんの柄のシャープペンシルだ。
「わぁ、ノートだ!ありがとう、えっちゃん!」
「うん!じゅうくん、お勉強がんばってるから、ノートにしたの。蜘蛛子ちゃんと一緒に選んだんだよ!」
なるほど、
……………
「えっちゃん」
「なに?」
「ひょっとして、このノートを選んだのは蜘蛛子ちゃんかな?」
僕の追求にえっちゃんは首を傾げて
「そうだよ。よく解ったね。わたしは可愛いプリンセスノートの方が良かったけど」
と、答えた。
なるほど、蜘蛛子のチョイスか。
うん、ナイスプレー。邪神呼びはやめておこう。
今度お礼を言わないとな。
夜空に歯を剥き出しにして威嚇している蜘蛛子を思い浮かべ、両手を組んでお祈りをするかのように感謝を捧げた。
そんなこんなで和気藹々と誕生日の夜が更けていくのであった。
★★★
その日の夜、早速貰った大学ノートを使って勉強をしていた時にソイツは声を掛けてきた。
(こんばんわ、じゅうくん。)
「おう、こんばんわ。相変わらずテレパシーだけで、姿は見せないのな。」
(それはごめんよ。私としては早く直接話したいけどね。まだ、ソコまで出来ないのさ。)
なるほど、そう言うものか。
(あぁ、それと7歳の誕生日おめでとう)
「あんがと」
(ここでエモいプレゼントを渡して好感度UPを狙えないのがもどかしいよ。)
気持ちだけ受け取っておくよ。
しかし、おまえエモいなんて言葉に使うのな
(それはそうさ、オタクでも女にはギャル語は必須だぜぃ。前世も結構ボッチだったけど必死に勉強したのさ。)
ぉぅふ、お前の前世の話しは心が痛いわ。
さらに言うとエモいはギャル語ではない。
(なん………だと…?)
お前にはギャル語よりネタ語の方が似合うわ。
(それなw)
………最近結構ぶっちゃけはっちゃけし始めたな。
最初はミステリアスな雰囲気出してたけど、今では2chのノリじゃん。
(リプ合戦は得意だよ。)
威張るなや、エックスやんけ。さてはお前【にわか】だな?
(ハッハッハ、バレたか)
くっ!このやり取り………ちょっと楽しい。
中身は重めのヤンデレなのにな。
(え~ただ愛を叫んでるだけなのに~。それに、じゅうくんも同じくじゃないか。しかも、メンヘラも少し入っているよね。)
め、め、メンヘラは、入ってはいない………と思う。
(じゅうくんって、恋人とか奥さんとか、めっちゃ束縛してきそうだよね。)
んな訳あるかい。僕ほどフリーダムな人間はイナイゾ?
………そうか、お前、今日の誕生会の事ずっと見ていたのか。うん、これで確信した。お前の正体。
おまえ、誕生会の時にあのメンツのなかに居たのか。
(………)
おかしいと思った。常に僕の事を見ていると思えば、そうでもない。
僕に話しかけてくるのは基本深夜だけ。
昼間に話しかけてくるのは、特定のシチュエーションのみ。
顔も見せずに、テレパシーだけでの会話、これ、お前の個性じゃ無いだろう。
(何の事かな?私の個性は………)
お前の個性名前言えるか?
それよりも、お前自身の名前言えるか?
(………)
言えないよな?だって
(驚いた。何時から気づいていたんだい?)
そりゃあ二ヶ月も夜に馬鹿話をしてりゃ流石にな。
極めつけは、昼間に話しかけてくる時はな、
(なるほど、正直じゅうくんを侮っていた。
流石はじゅうくん。さすじゅう)
【さすおに】みたいに言うな!
んで、どうすんだよ。愛守さんには言わないのか?
(この状態ではさすがにね。表に出られるようになったら、その時に考える。)
そっか、ならば、現状維持しかないか。
(………それで良いのかい?なんか、こう、警戒とかしなくても良いのかい?)
流石にお前の目的が目的なだけに、僕自身に対しての警戒はするけど、愛成ちゃんに対しての悪意はないと確信したから、それで良い。
(おや、決めつけは良くないよ?)
「嘗めるな、愛成ちゃん………もとい、愛守さんに対しては、お前は悪意を持っていない。
愛守さんに聞いたぞ?あれ、お前の本当の個性だろ。そんな奴が愛守さんを悲しませる訳ないだろう。」
(なるほど、完敗だよ、じゅうくん。今日のところはおとなしく退散するよ。)
おう、コンゴトモヨロシク
(私は悪魔契約はしていないのだが?!まあ、良いそれでは)
おう、おやすみ~
最後に無駄に器用なことやっていったな。
いっか、ヤバい12時や、僕も寝ないと。
勉強机の上を片付けてベッドに入る。
さて、明日はどんな1日になるかな?
ではではおやすみ~