アルはこの不思議な状況に戸惑いながらも、後ろに隠れるハルカに聞こえる程度の声量で問いかける。
「一体なにがあったの……?」
突然猫のような行動を取り出すなんて、何かがあったとしか思えない。きっと原因があるはずだ。そして同じ部屋にいたはずのムツキとハルカなら分かるだろう。
「えっと、少し前にあの机の上に置いてある薬……? のようなものを飲んでしまったようで、だんだんおかしくなっちゃいまして……」
薬? 悲しいが、そんな高価なものなど
アルは目線だけ動かし部屋の中央に置いてある長机を見る。机の上には色んな物が散乱していた。そしてその中に一つ、透明な瓶があるのを発見した。中身は水……なのか分からないが、透明な液体が中途半端な量で入っている。
「あれらは……今日の依頼主のオフィスに置いてあったやつ、かしらね」
「はい。私が爆発させてどさくさ紛れで奪ったやつです」
「そう言えば私が整理しておくように言っていたんだっけ」
アルは数時間前の事を思い出す。
依頼を達成した後、その報酬が最初に提示されたものと違っていることで依頼主と口論になり、最終的に交渉決裂した結果大暴れしてやったのだ。ちなみに向こうから先に攻撃してきたので、立派な正当防衛だと言えよう。そしてハルカが暴れてくれたおかげで、爆煙に紛れ込みながらも幾つかコレクション品を頂戴したのだった。これは盗んでいるわけではない。足りない金額分を実物で補っただけなのだ。
おそらく、その中に薬瓶が混じっていたのだろう。その横には同じく飲みかけの水瓶が人数分置かれている。
「そういうことね……」
すぐに理解した。単純に間違えてしまったのだろう。大きさこそ違っているが、瓶の形はほとんど変わらない。近くに置いておけば間違って手をとってしまってもおかしくはない。
そして薬を飲んだ結果、カヨコの中身が猫になってしまったということだ。
「ハルカ、とりあえず廊下に続く扉を閉めて。このまま出ていかれるのが一番困るわ。私が気を引くからその内に」
「わ、分かりましたっ」
アルはハルカに指示を出し、カヨコに向き直る。
ちらりと目があった。やや警戒しているのか、目付きは鋭い。
アルはそんな彼女に対し取った行動は、ゆっくりと座ることだった。
「あ、アルちゃん? 何で座っちゃうの? 早くしないと、そんなことしてたら逃げ出しちゃうかもしれないよ」
角で動かず待機していたムツキは、アルの不思議な行動を見て足を動かそうとする。
「いえ、まずは、こうしないといけないわ」
アルは手を伸ばしムツキを制止させる。
カヨコはそんなアルの動きに対し、一瞬目の色を変えた。アルはカヨコと同じ目線になるまで姿勢を低し、軽く目を逸らしてじっと待つ。
しばらくすると、カヨコは動き出し、四足歩行のままアルの方へ向かっていく。
どんどん近づいていき、アルの横に移動したと思えば、軽く体を擦り付けた。
喉をゴロゴロと鳴らし、どうやら落ち着いている素振りを見せている。
「す、すごぉい……なんでーっ?」
「ふふ、相手を猫そのものだと思えばいいわ。ほら、よく言うでしょう? 動物と目を合わせすぎるのは敵対の意思。見下ろすのも威圧になるってね」
偶然街中で見た時の番組でやっていた時を思い出してのことだったが、役に立ってよかった。
アルはそっとカヨコに対して下から手を伸ばす。顎の下に軽く触れると、カヨコは気持ち良さそうな声を出しながらペタリと体を床に着けてスキンシップを堪能していた。
「……ふぅ、ムツキはあまり音を立てないように机の上の薬を持ってきて
「アルちゃんかっこいい~」
「
どうやら社員達(一人は現状猫だが)に社長としての
だが、ここで安心してはいけない。これから