「さてと。先生から課された任務はカヨコを外にださないこと。唯一の出口はすでに鍵を締めてあるから、とりあえず先生の連絡を待つだけね」
「じゃあこのまま先生を待っていれば、カヨコ課長は元に戻れるんですね……! はっ、もしかしてこうなることを予測してあらかじめ私に扉の施錠を頼んだということですね。流石アル様です!」
「え? あっ、そ……そうよ。ふふ、私の想定通りだったわね」
アルは胸を張って鼻を高くする。
「じゃあわざわざ追いかけ回す必要も無くなったのかな? じゃあ私は戦利品の整理をしちゃおーっと」
「ま、そういうことね。まぁ念のため鍵を開けて出てかないように時間で交代しながら先生の連絡を待ちましょうか」
「交代大丈夫です。私がずっと立っていますね。わざわざムツキ室長とアル様の手を煩わせるわけにはいきませんから」
「あら、そう? それならお願いしようかしら」
このまま時間が立てば先生が解決策を見つけてくれるはすだ。臨戦態勢を解いた三人は、ふぅと息を漏らし肩の力を抜いた。ムツキは机の上に広げてある依頼主からの押収物を興味深そうに手にとり選別し始めた。アルはその隣に座り、一応カヨコの動向に気を配りつつも連絡を待つ。
「ねぇアルちゃん」
不思議な形をしたオブジェのようなものを、物珍しそうに見ながらムツキはアルに話しかける。暇潰しとしてキヴォトスの速報ニュースを画面越しに見ていたアルは首をかしげた。
「うん? どうしたの、ムツキ室長?」
「うーん、大したことじゃないんだけどね。そういえば猫って高い所から下りても大丈夫らしいんだけど、
「へぇ、そうなの……って、ちょっと待ちなさい。この部屋って一つだけ窓があるわよね」
アルは嫌な予感がした。そしてその予感は奇しくも的中してしまう。
出口を封鎖され部屋の中でゆったりとした時間を過ごしていたカヨコだったが、外の景色が見える窓に気づいた途端、視線をそこに向けて身体を揺すり始める。
「そんな、まさか……」
そのまさかである。
今まで大人しくしていたカヨコは窓に向かって走り出してしまう。アルは名前を呼んで制止させようとするも、全く効果は無く薄い窓ガラスが割れる音と共に、カヨコの姿が闇夜に消えてしまう。
「待ちなさい! ここ三階よ!?」
「そんなのありーっ!?」
「カヨコ課長!!」
アルはガラス片に気を付けながら、窓から顔を出して安否を確認する。しかし肝心の彼女の姿が見当たらない。真下に落下しているわけではなさそうだ。ということは上手く着地はできたということだろうか。ひとまずは安心だ。とはいえ見失ってしまうのは非常にまずい。
「とりあえず私達も階段から降りてカヨコを追いかけるわよ! あの姿で自由に動き回られたらとんでもないことになっちゃうわ!」
現在あられもない下着姿であり、端から見れば露出狂と間違われてしまうだろう。彼女が元通りになったときの尊厳を守るためにも必ず捕まえなければならない。慌てながら三人は部屋を後にし階段を降りていく。
外に出ると、風の冷気が頬を掠めた。
そして、この最悪のタイミングで先生からの連絡が届いてしまう。