2728話
マーベル・フローズン。
そう名乗った女は、俺をじっと見てから口を開く。
「それで、アクセルだったわよね。ここがどこなのかは本当に分からない?」
「ああ。転……いや、その前に一応これを聞いておくか。シャドウミラーという国を知ってるか?」
もしかしたらという思いで、そう尋ねる。
システムXNの転移座標をランダムにした以上、その転移先は当然のようにシャドウミラーが今まで接触してきた世界になるとは思えない。
だが、もしかしたら……本当にもしかしたらという可能性を考えての事だった。
「シャドウミラー? 初めて聞くわ」
あっさりとそう告げてくるマーベル。
その言葉には嘘があるようには思えない。
だとすれば、やはりこの世界は俺が初めて来る世界なのだろう。
「ここは、アメリカ……じゃないの?」
恐る恐るといった様子で尋ねてくるマーベルだったが、俺はそれに頷く。
「多分違うな。……いやまぁ、アメリカは広いからアスファルトで舗装されていない道路とかもかなりあるだろうけど」
そう言い、木々の向こう側に見える道を指さす。
そんな俺の言葉に道を見たマーベルは、戸惑ったような様子を見せる。
「さて、ここがどこなのかは分からないが……取りあえず、俺とこうして一緒にいるのも何かの縁だ。取りあえず安全だけは保証するよ」
「……アクセルだったわよね。貴方強いの?」
「そうだな。かなり強いと思ってくれていい」
魔法についてとか、混沌精霊についてとか話してもよかったのだが、ここがどんな世界なのかが分からない。
植物は全く見た事がないが、俺だって別に世界中の植物全てを知ってる訳じゃないし。
ただ、この世界……驚く程に魔力が豊富なんだよな。
俺の場合は、PPのおかげで魔力がとんでもない事になっているから、どの世界でも魔法を使うのは特に問題なかったりするんだが、この世界にもしシャドウミラーの面々がやって来たら、かなり魔法を使うのが楽な気がする。
「そう。なら、当てにさせて貰うわね」
俺の言葉にそう返すマーベル。
ただし、完全に俺の言葉を信じているといったような様子ではない。
マーベルにしてみれば、俺は初対面の男だ。
外見も……それこそ、見るからに強そうに見える程、筋骨隆々といった訳じゃないしな。
それでも即座にマーベルが俺の言葉を否定しなかったのは、結局のところ俺しか頼る相手がいなかったからだろう。
「そうしてくれ。……さて、その件はそれでいいとして、問題なのはこれからどうするかだ。道がある以上、どこかに人の住んでる場所……ああいう道だと、村って規模か? そういうのがあると思うんだが、まずはそこに行って情報収集しないか?」
「ええ。私はそれで構わないわ。……ここがどこなのか、気になるもの」
転移に慣れている俺なら、現在の状況でも驚く事は驚くが、それでも平常心を保っていられる。
そんな俺に比べると、マーベルは……しっかりと聞いた訳ではないが、恐らくこの手の出来事に巻き込まれるのはこれが初めてだろう事は予想出来たが、随分と落ち着いているように見える。
「少し意外だな」
道の見える方に進むよりも前に、俺はマーベルを見てそう告げる。
そんな俺の言葉にマーベルは不思議そうな表情を浮かべた。
「何が?」
「いや、マーベルが思ったよりも落ち着いている事がな。見たところ、こういうのに巻き込まれるのは初めてなんだろ? なら、普通はもっと動揺してもいいと思うんだが」
「禅、の効果かしらね」
「……日本が好きなのか?」
禅。
ようするに、座って精神統一とか瞑想とか、そういう行為をする事だ。
だが、日本でもそんな行為をする者はそう多くはない。
いや、もしかしたら禅は日本以外でも行われていて、マーベルはそこで禅を知ったという可能性も否定は出来なかったが。
「そうね。好きか嫌いかで言えば好きよ。……けど、普通はもっと動揺してるって言うけど、それならアクセルは? こういうの経験をした事があるの?」
俺の言葉尻を捉え、そう聞いてくるマーベル。
ちょっと迂闊だったか?
「そうだな。俺がこういう経験をしたのは1回や2回じゃない。……もしかしたら、マーベルは俺の行動に巻き込まれた……と思う事も出来ない訳じゃないんだが……」
言葉を濁した理由は、やはり転移する時に聞いた悲鳴だろう。
ゲートで未知の世界に転移したのだが、それで未知の世界に転移をした場所でマーベルに会ったのなら、俺も納得出来た。
だが……俺の聞き間違え――その可能性は限りなく低いと思うが――でなければ、俺は転移している途中で悲鳴を聞いたのだ。
あの悲鳴がマーベルの悲鳴だったのか、それとももっと別の誰かの悲鳴だったのかは、俺にも分からない。
それでも一番分かりやすい理由としてしは、マーベルが何らかの手段でアメリカからこの世界に転移してくる最中で、俺とぶつかったというものだろう。
とはいえ、システムXNの転移はあくまでも異世界間転移であって、マーベルがアメリカからこの場所に転移してきたのがシステムXNと同じ転移だとは思えないが。
多分……本当に多分だが、この世界の原作はマーベルが主役……いや、それともヒロインか? ともあれ、そんな感じなんだと思う。
問題なのは、この世界の原作が一体どのような原作なのかという事なんだが。
その辺はもっとしっかりと様子を見てからの判断が必要だな。
「訳じゃないんだが?」
「……まぁ、色々とあるんだよ。取りあえず今はずっとここにいる訳にもいかないし、道に出ないか? このままだと、今日の寝床とかも問題になるだろうし」
ぶっちゃけ、俺の場合は最悪ゲートを設置してホワイトスターに戻ればそれでどうにかなるんだが……その前に、最低限の事は調べる必要がある。
それ以外にもこんな場所にゲートを設置すれば、ゲートに何が起きるか分からないし。
「そうね。……何か誤魔化された気がするけど」
俺の言葉に少し不満そうな様子を見せるマーベルだったが、実際に自分が現在いる場所がどこなのか分からないというのは不安だったのだろう。
俺の言葉に同意し、2人揃って林の中から出る。
道は木々の間に見えていたので、特に苦労するような事もない。
それこそ、道なき道を進んで……とか、そういう苦労は全くする必要もなく道に出られた。
「取りあえずこれで道には出たんだが、問題なのはこれからどっちに向かうか。……いや、考えるまでもないか」
周囲の様子を見回すと、道の片方が向かっている先に城があるのが見える。
当然その周囲には大勢が住んでいるのは間違いないだろう。
「一応聞くけど、向かうのはあの城の見える方でいいよな?」
「ええ。……ただ、都会だと危険な人もいそうだけど」
「だろうな。けど、そういう奴が相手なら、俺がどうとでも出来るから心配するな」
「……そうなの? そこまで強そうには見えないけど」
「そう言われると言い返せないが、取りあえず大丈夫だとは言っておく」
実際、俺の外見は筋骨隆々で見ただけで強そうといったようなタイプじゃないし。
そうである以上、強さを疑われるのはおかしな話ではない。
「けど……ん? ちょっと待った」
城の方に向かって歩いていると、後ろから聞こえてきた音に一旦言葉を止める。
「どうしたの?」
「いや、何かが……近付いてくるみたいだ」
マーベルが俺の言葉に疑問を持ち、俺の見てる方……背後に視線を向けるが、その先からやって来たのを見て唖然とした表情を浮かべる。
当然だろう。俺もそれを見て驚いたのだから。
「馬車……?」
「ああ、馬車だ」
そう、道を走っているのは、馬車としか表現出来ないものだった。
勿論、馬車というのが全くなくなった訳ではない。
テーマパークだったり、地位の高い者が象徴的な意味として馬車に乗るといったことは、そう珍しい話でもないからだ。
だが、それはあくまでも限定された場所での話であって、こうして移動するのに普通に馬車を使うというのは、普通に考えて有り得ない。
いやまぁ、色々な世界があるというのは知ってるので、この世界では馬車を使った移動が一般的という可能性も否定出来ないが……マーベルの唖然としている様子を見る限りでは、そういうのではないらしい。
ただし、これが普通の世界ならの話だ。
うん、薄々予想してたけど……やっぱりこの世界はマーベルのいた世界の中でも異世界と呼ぶべき場所なんだろうな。
何しろ……
「ユニコーンが馬車を牽いてる」
そう、マーベルが唖然として呟いたように、馬車を牽く馬には角があった。
角がある馬は、普通ユニコーンと呼ばれてもおかしくはないだろう。
色々な意味で有名な幻獣というか、モンスターというか……幻想の世界の存在だ。
そんなユニコーンが複数馬を牽いているのを見れば、驚くのは当然だろう。
ただし……
「あれ、角が何か俺の知ってるユニコーンとは違うような……」
俺も、ユニコーンの本物は見た事がない。
いや、ネギま世界とかにはユニコーンがいてもおかしくはないので、探せば見つかるかもしれないが。
それでも、ユニコーンというのは非常に有名な存在であり、漫画やアニメ、ゲーム、それ以外にも絵とかで見る事は多い。
だが、そういうので見るユニコーンの角は、白く真っ直ぐな角だ。
それに比べると、馬車を牽いているユニコーンの角は螺旋状……ドリル状の方が的確か? ともあれ、そんな感じの角だった。
まぁ、ネギま世界にはグリフォンとドラゴンが混ざったようなグリフィンドラゴンとか存在してるんだから、角が螺旋状になっているユニコーンがいてもおかしくはないんだろうが。
ともあれ、改めて道を見てみれば、そこには馬車が通ったのだろう痕跡がかなり多く残っている。
だとすれば、この場所は実はそれなりに大きな道なのかもしれないな。
「マーベル」
馬車が近付いてきたところで、マーベルを道の端に移動させる。
あの馬車に乗ってる奴が一体どういう奴かは分からないが、ここがユニコーンのいるようなファンタジー世界となると、奴隷とかそういうのがいる可能性もある。
だとすれば、俺はともかくマーベルは非常に美味しい獲物だろう。
そんな俺の予想を裏付けるかのように……俺達の近くまで来た馬車が停まる。
馬車は箱馬車の類ではなく、作業用の馬車だったらしい事から、少しだけ安堵する。
馬車荷台には、野菜らしきものが束になって乗っていた。
「おう、どうした兄ちゃん、姉ちゃん。エルフ城に行くのなら、乗せていってもいいぞ」
そう気軽に声を掛けてきたのは、40代くらいの男。
見た感じでは、こっちに害意を持っているようには思えない。
「そうだな。エルフ城に行くのに歩いて行くのは大変だったし、この人の言う通りにしないか?」
「え? ええ。……分かったわ」
いきなりの俺の言葉に若干戸惑った様子を見せたマーベルだったが、それでもすぐに俺の意図を悟ったのか、そう返す。
そして俺とマーベルは馬車に乗り、エルフ城とやらに向かう。
とはいえ、マーベルは男と一緒の御者席に乗っているが、俺が乗っているのは野菜が積まれた荷台だ。
……乗る場所がここしかなかったんだから、しょうがないのだが。
「それで、最近はどうだ?」
荷台の上から、男に尋ねる。
それを聞いた男は、不満そうな表情で口を開く。
「税金の類が高くなって、生活はかなり厳しくなってきてる。以前まではそこまで大変じゃなかったんだが。……フラオン王は毎日好き放題に遊んでるって話だ」
そう告げる男の顔には苛立ちがある。
なるほど、王か。……やっぱりここはファンタジー系の世界と見ても間違っていないな。
そうなると、魔法の類を心配する必要があるな。
生身の攻撃では俺にダメージを与える事は出来ないが、それに魔力や気といったものがあれば、俺にダメージを与える事も出来る。
であれば、多少慎重に行動する必要があるだろう。
「フラオン王の行動は問題だろうな。……今の状況を考えると、別の場所に向かった方がいいかもしれないが。どこかないか?」
「うーん、俺は野菜とかを作ってるからその辺にはあまり詳しくないが……ドレイク・ルフト様が治めている場所は税も軽く、暮らしやすいって話を聞くな」
「ドレイク・ルフトか。……なるほど」
いつまでこの世界にいる事になるのかは分からないが、長期間滞在するとなると、ドレイクが治めているという領地に行ってもいいのかもしれないな。
とはいえ、エルフ城が王のいる場所……つまりこの国の王都なら、その辺は少し悩みどころだが。
「アの国はドレイク様のお陰で他の国よりも発展してるんだ。それを考えれば、他の国より暮らしやすいと思うぞ」
どうやら、この国はアの国というらしい。
妙な国の名前だな。
それこそイの国、ウの国とか、そういう国がありそうだ。
そんな風に考えながら、俺は男から世間話をする振りをして情報収集を進めるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1290
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1637