転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3706話

 撤退していくグラブロを、俺は追う事が出来ない。

 何しろジーラインがいるのは海中なのだ。

 そんな場所で水中用MSのグラブロに追いつける筈もない。

 それに、他にも俺には気になる事があった。

 

「水天の涙?」

 

 グラブロとの接触回線が開いた時に聞こえてきた単語。

 それ自体は特に意味がない。

 いや、実際には何らかの作戦とかそういうのの名前なのだろうというのは予想出来る。

 もしくは『水天の涙の為にも』という風に言っていたのを思うと、作戦ではなく何らかのお宝……ジオン軍残党が口にしたという事は、それこそ秘密裏に開発されたMSやMAといった可能性も否定は出来ない。

 何しろジオン軍残党がこれだけの戦力を集めて連邦軍の基地であるベルファストを襲撃してきたのだ。

 それもこれが最初ではなく、この前にも襲ったばかりときている。

 ジオン軍残党という表現のように、既に敵は残党でしかない。

 それもドズル派、ガルマ派といった者達が抜けており、ギレン派、キシリア派、それ以外にどこの派閥にも入っていない連中の集まりだろう。

 デギン派は……どうなんだろうな。元々数が少ないから派閥としてそこまで大きな力を持っているとは思えない。

 ただ、デギンはガルマをかなり可愛がっていたのを思えば、デギン派というのはいた場合はジオン共和国にいるだろう。

 ダイクン派については基本的にルナ・ジオンに合流してるので気にしないとして。

 とにかくそんな風に決して戦力に余裕がある訳ではないジオン軍残党が、水天の涙とやらの為に動いている。

 そしてこれも大きな理由の1つだが、水天の涙とやらはどこかで……本当にどこで聞いたのか忘れたが、間違いなくどこかで耳にした覚えがある。

 どこでの話なのかは俺にも分からないが、とにかく聞いた事があるのは間違いない。

 そちらがもの凄く気になっているというのもあるし、とにかく現在の状況を考えれば水天の涙についての情報は集めておいた方がいい。

 そうなると、問題はどうやって……いや、考えるまでもないか。

 北米の英雄と呼ばれるユーグがここにいて、そこに水天の涙とやらを知っている敵が襲ってきた。

 そう考えれば、恐らく……本当に恐らくの話だが、この水天の涙というのはこの世界の原作の続編、もしくは番外編といった話に関係する何かなのだろう。

 だとすれば、俺がやるべき行動は決まっている。

 海中から陸上に戻って周囲の様子を確認したところ、まだ戦闘が行われている場所は何ヶ所かあるらしい。

 なら援軍に向かおうかとも考えるが、すぐに諦める。

 模擬戦の状態のままなので、頭部バルカンはペイント弾のままだ。

 ショートビームライフルはグラブロとの戦いで壊れている。

 そうなると残る武器はビームサーベルとシールドだけ。

 それでも戦えない事はないが、ノリスも援軍として向かっているし、それに恐らくだがジオン軍残党の最大戦力だろうグラブロは撃退した。

 つまり、わざわざ俺が援軍に向かわなくても勝利は間違いないだろう。

 ……水天の涙というのが秘密兵器の類で、それをこの戦闘に投入してくるのなら話は変わるだろうが。

 それこそアプサラスとかのように、圧倒的な威力を持つメガ粒子砲を持つMAとかが出てくれば、ベルファスト基地くらいは容易に壊滅……もしくは消滅させられるだろう。

 まぁ、話の流れからして、多分そんな敵が出てくる事はないと思うけど。

 ん? いや、必ずしもそうだとは限らないのか?

 俺がジーラインを受け取ったように、ユーグもジーラインを受け取った。

 だからこそ、双方共にジーラインに慣れる為に模擬戦を行ったのだから。

 つまり、これはいわゆるユーグにとっての乗り換えイベントって奴の可能性が高かった。

 そのタイミングで基地に襲撃となると、そこに新型機に乗り換えたユーグでも絶対に勝てない敵……水天の涙と呼ばれるジオン軍残党の秘密兵器が出てきても、話の展開的におかしくはないと思う。

 もっとも、これはあくまでも推測に推測を重ねたものでしかない。

 その辺については、これからの基地の戦いで明らかになるだろう。

 

『アクセル代表、ジーラインはどうでしたか?』

 

 倉庫に戻ると、メカニックからの通信が入る。

 もしジオン軍残党が狙うとすれば、MSが入る格納庫や倉庫といった場所が多いだろう。

 つまり、この倉庫もジオン軍残党に狙われてもおかしくはないのだが、メカニックは特に気にした様子がない。

 ここが倉庫だから狙われないと判断したのか、それとも攻撃はまだ続いているものの、大分治まってきたからか、はたまた元々度胸があるのか。

 ともあれ、俺が思ったよりは動揺したり怖がったりしている様子はない。

 俺にしてみれば、励ましたりしなくてもいいだけ楽なんだが。

 

「悪くない。海の中でも普通に使えたしな。……ただ、ショートビームライフルをゼロ距離射撃で何度か使ったら壊れた」

『それは……そうでしょう。ジーラインは汎用機で一応海……というか、水中でも使えるようになっていますが、ショートビームライフルは別に水中用の武器じゃないんですから。しかもゼロ距離という事は敵に接触した状態で撃ったんですよね? 壊れてもおかしくはないですよ』

「だろうな。俺も使ってからそう思った。……ただ、そのお陰で俺が戦っていた場所にいたジオン軍残党は撃退出来た。撃墜したのは全部で4機だけだが」

『……いや、それでも十分凄いですよ。普通ならMSを5機倒せばエースと呼ばれるんですから』

 

 正直なところ、俺はその習慣……というか、システムか? それについてはあまり賛成じゃないんだけどな。

 そもそも俺の撃墜数は……うん。1800機強だ。

 5機でエースなら、俺はどうなる?

 もっとも俺が撃破した敵はこの世界以外の敵も多数含まれているので、MSやMA以外も多いんだが。

 

「ともあれ、機体のメンテを頼む。海に入ったから、汎用機でもメンテはしておいた方がいいだろ。それとショートビームライフルの予備はあるか? 機体の方は予備がないって話だったが」

 

 機体の予備はユーグに持っていかれたという方が正しいのだが。

 

『大丈夫です。武器の方は予備がありますから』

 

 その言葉に安堵する。

 もし武器についての予備がないと言われると、厄介極まりないのだから。

 

「じゃあ、予備の方も頼む」

 

 そう言い、俺はジーラインをメカニックに任せるのだった。

 

 

 

 

 

「本気かね?」

 

 そう言い、驚きの表情を浮かべるゴップ。

 コーウェンも話はゴップに任せているものの、俺の提案を聞いて目を大きく見開いている。

 それが演技なのかどうかは分からないが、恐らく本当の意味で驚いているのだろう。

 実際、俺の後ろにいるノリスも、ゴップの前だからか言葉には出していないものの、見るからに反対といった気配を出している。

 もし何かの切っ掛けがあれば、それこそ即座に俺の言葉に反対と言うだろう。

 ……無理もないか。

 ベルファストやベルファスト基地を襲撃してきたジオン軍を撃退して、ゴップやコーウェンと話をする事になったのだが、そこで俺が口にしたのはファントムスイープ隊と行動を共にするというものだったのだから。

 普通に考えれば、正気かと言われた方が正しいだろう滅茶苦茶な提案だ。

 自分でも寧ろ要望というよりは戯言と表現した方が正しいのではないかとすら思ってしまう。

 ゴップが正気かではなく本気かと聞いたのは、どうにか取り繕っての言葉なのだろう。

 それは分かる。俺だってゴップの立場ならそう言うだろう。

 だが……水天の涙について知るには、恐らく原作における主人公的な地位にいるユーグが所属するファントムスイープ隊との行動を共にするのが最善なのも、また事実。

 

「ああ、本気だ。そっちにとっても悪くない話だと思うが?」

「……戦力的な面で考えれば、悪くない話なのは間違いないだろう。アクセル代表がどれだけの実力を持っているのかは、1年戦争でよく理解している。今回のジオン軍残党の襲撃であっても、その実力は発揮されている」

「結局俺が撃破したのは4機だけで、グラブロのような大物や他の水陸両用MSには逃げられたけどな」

「アクセル代表が使っていたのは、あくまでも汎用機のジーラインだ。一応水中でも活動出来るとはいえ、水陸両用MSを相手に海中で戦い……しかも数では圧倒的に不利な状況だ。4機であっても敵を撃破し、武器は破壊したものの、ジーラインそのものは被害らしい被害はなかった。これで不満を言ったら、連邦軍のMS部隊は何をしていたのかという話になるだろう」

 

 そう言うゴップの隣ではコーウェンが微妙な表情を浮かべている。

 コーウェンにしてみれば、連邦軍のMS隊が活躍出来なかった……いや、活躍はしたのだが、1機で大きな戦果を挙げた俺に微妙な思いを抱いているといったところか。

 そんなコーウェンと、納得していないといった視線を向けてくるノリスはスルーして、俺はゴップとの会話を続ける。

 

「だろう? ジオン軍残党は明らかに組織的に……何かを狙って動いている。そうである以上、その何かを阻止する為にも戦力があった方がいいのは間違いないと思うが」

「……先程も言ったが、戦力的には助かる。それは間違いない。だが、政治的に考えた場合、それは致命的と思うのだが」

 

 ゴップが困った表情を浮かべるのは珍しいな。

 というか、これは作った表情なのか、本当にそのように思っての表情なのか……一体どっちだ?

 まぁ、どっちでも構わないか。

 ゴップが政治的な意味で俺の提案を呑めないというのは間違いないし。

 普通に考えれば、他国の……それも技術力や戦力といった面では明らかに自国よりも上だと判明している国の代表を最前線で戦う部隊と一緒に行動させるというのは、とてもではないが正気の沙汰ではない。

 それは分かる。分かるが、だからといって俺もここで退く訳にいかないのも事実。

 あるいは水天の涙というのが具体的に何なのかが分かれば、ファントムスイープ隊と共に行動する必要もないだろう。

 だが、それが分からない以上、水天の涙と関わりのある……原作の主人公なのだろうユーグと共に行動する必要があるのも事実。

 とはいえ、ゴップとしても俺の提案はそう簡単に受け入れられないだろうというのも分かる訳で……

 

「そうだな。だからもし俺がファントムスイープ隊と一緒に行動していて、何らかの被害を受けたとしてもその件で決して連邦軍や連邦政府を責めたりしないというのは約束しよう。それと……」

 

 そこまで言い、パチンと指を鳴らす。

 次の瞬間、俺の身体が白炎と化し、そして白炎が消えると、そこにいたのはつい先程までの20代ではなく、10代半ばの姿の俺だった。

 

「この外見なら、もし誰かに見られても俺がアクセル・アルマーだとは分からないだろう?」

「な……」

 

 そう驚きの声を口にしたのは、コーウェン。

 ゴップの方は微かに驚いた様子を見せてはいるが、コーウェン程に驚きを露わにしていない。

 あれ? もしかしてゴップの前で外見を変えた事があったか?

 あまりにゴップが驚かないので、そう思うが……どうだったか。

 外見を変えるというのは、炎獣や影槍のように魔法であるというのを見せつける意味でも分かりやすい。

 その為、それなりに使っているので、ゴップの前で見せた事があってもおかしくはない。

 あるいは単純に、ゴップが驚きを殆ど表情に出していないだけという可能性も否定は出来ないが。

 

「どうだ?」

「どうだと言われても……魔法というのは、何でもありだな」

 

 呆れた様子でコーウェンが言う。

 一応先程までは言葉遣いに気を付けていたのだが、目の前で魔法を見た事によって言葉遣いも普段通りに戻っている。

 それだけコーウェンにしてみれば予想外の結果だったのだろう。

 

「傍から見るとそういう風に見えるのかもしれないが、魔法でも出来ない事とかはあるぞ」

 

 その典型的な例は、死者蘇生だろう。

 あるいは木乃香のような回復魔法のスペシャリストなら、死んだ直後という条件付きでなら何とかなる……かもしれないが。

 他にも本当の意味での不老不死とか。

 

「そういう訳で、これで俺がファントムスイープ隊に合流しても問題ないな?」

「いや、何故問題ないと判断したのか分からないのだが」

「今の俺はアクセル・アルマーじゃない。……ムウ・ラ・フラガだ」

 

 うん。名前の件でムウに追われた事があったが、それは置いておくとしよう。

 今回の件は別にムウの名前が広く知れ渡るといった事はないだろうし。多分大丈夫な筈だ。

 以前にもUC世界でムウの名前を使った事があったと思うが、それについても取りあえず置いておくとする。

 

「そっちにとっても、ジーラインの実戦データを豊富に手に入れる事が出来れば、次期量産型MSの開発とかに活かせるんじゃないか?」

 

 そう言う俺の言葉に、ゴップは難しい表情で考え込むのだった。

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