転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3709話

 シェリーを基地の中でもファントムスイープ隊に割り当てられた場所まで送っていくと、ユーグとヒューが安心した様子で俺達を……というか、シェリーを出迎えた。

 

「アクセル代表、うちの隊員を助けてくれてありがとうございます」

 

 頭を下げてくるユーグだが、俺はそれに対して首を横に振る。

 

「気にするな。一応今は俺もファントムスイープ隊だしな。お前達は色々とやりにくいとは思うが、それでも気楽に接してくれれば助かる。俺がムウという偽名を使ってるのを気が付かれない為にもな」

「お、話が分かるね。じゃあ、アクセルさん……いや、アクセルって呼んでもいいのかい?」

「ヒュー!」

 

 気軽に話し掛けてきたヒューを叱るユーグだったが、俺にしてみればそんなのはそこまで気にする事ではない。

 寧ろ気軽に接してくれた方が色々とやりやすいのも事実。

 

「だってユーグ隊長、本人がそれでいいって言ってるんですよ? なら、アクセルって呼んでもいいんじゃないですか?」

「そうだな。俺もそういう堅苦しいのは好きじゃない。それに俺の件が表沙汰にならないようにする為にも、そうした方がいい。俺がアクセル・アルマーとして何らかの理由で行動する必要が出てきた時、公の場ではきちんとそれなりに対応するのなら、普通に行動しても問題はない」

「……って事らしいですよ?」

 

 俺の言葉に、ヒューがユーグに向けて言う。

 そんなヒューの様子に、ユーグは少し考え……やがて大きく息を吐く。

 

「分かった。じゃあ、アクセルさんが……いや、アクセルがそれでいいのなら、それで構わない。一応聞くけど、それで本当にいいんだな?」

 

 ユーグも堅苦しい言葉遣いではなく、気楽な感じでそう言ってくる。

 

「ああ、それで構わない。これからどのくらいの期間になるのかは分からないが、水天の涙とやらに関係する一件が片付くまでは一緒に行動するんだ。その間ずっと堅苦しい言葉遣いとかを続けてるとなると、面倒で仕方がないだろう?」

 

 その言葉に他の3人も頷く。

 そうして落ち着いたところで、ヒューが口を開く。

 

「それにしても、アクセルが言っている水天の涙ってなんなんだろうな。アクセルはそれを目当てに俺達に合流したんだろう? なら、それが何なのか大体予想出来ているのか?」

「ジオン軍残党がここまで大々的に動いてるとなると、それだけ大きい何かだと思う。俺の予想としては、ジオン軍残党が開発した……もしくは1年戦争時代にジオン軍が開発していたMSかMAで、それをジオン軍残党が完成させたか、完成させようとしているんだと思うが」

「そうですよね。ベルファスト基地でも物資とかそういうのを盗んでいったって話ですし」

 

 シェリーが俺の言葉に同意する。

 どうやらシェリーの予想では俺と同じく水天の涙というのはジオン軍残党が完成させたMSやMAであると考えているらしい。

 まさか言い寄られていたところを助けられたからといって、それで俺の意見に賛同してるとか、そういう事はないと思うが。

 

「シェリーもそっちかよ。けど……水天の涙って、どういうMSやMAだ? 水ってつくくらいだし、水中用か水陸両用か?」

「地球に残ったジオン軍残党が開発を続けていたとなると、宇宙用の兵器ではないと思うが」

 

 ヒューとユーグがそれぞれ言う。

 実際、その言葉は間違っているとは思えない。

 そもそもジオン軍残党は決して余裕がある訳ではない。

 そんなジオン軍残党が開発した奥の手である以上、宇宙用のMSやMAを作っても意味はないだろう。

 そんなMSやMAがあったところで、宇宙に運ぶのは……いや、もしかしたらHLVとかを確保しているジオン軍残党がいるのか?

 とはいえ、ジオン軍残党にとってHLVというのは非常に大きな意味を持つ。

 1年戦争中は大量に使われたし、実際ルナ・ジオンでもハワイで人を宇宙に送るのに使っているし、現在でもペズンからハワイに物資を送る時はHLVを未だに使っている。

 このHLVはジオン軍が開発した兵器……兵器? いや、輸送機? シャトル? 正確な分類については分からないが、とにかく使いやすい。

 実際、連邦軍でも使われているらしいし。

 そんなHLVは1年戦争中に多数製造されたのだから、ジオン軍残党がそれを所持していてもおかしくはない。

 とはいえ、宇宙に上げるにしてもそれを受け取る者が必要だ。

 ジオン軍残党が主に動いているのは地球で、宇宙にいるジオン軍残党は……いない訳ではないんだろうが、現在はそこまで詳細な情報は入ってきていない。

 これはルナ・ジオンがジオン軍残党の被害を受けていないからというのも大きいのだろう。

 ジオン軍残党にしてみれば、ルナ・ジオンは複雑な相手の筈だ。

 ジオン公国から別れて建国された国でありながら、連邦軍と協力して自分達に敗北を与えた者達。

 それだけを聞けば、ジオン軍残党がルナ・ジオンに攻撃しないのは疑問だ。

 だが、実際に負けただけにジオン軍残党はルナ・ジオンの強さを知っている。

 純粋に国力だけなら、UC世界において大きな経済力を持っているとはいえ、月を拠点としており、それ以外の領土は地球にあるハワイだけ……いや、ペズンもあるか。ともあれ、それだけなので対処しようと思えば出来るだろう。

 だが、ルナ・ジオンの後ろには俺達シャドウミラーがいる。

 とてもではないが、ジオン軍残党にどうにか出来る相手ではない。

 宇宙にいるジオン軍残党は、それを十分に承知しているので、ちょっかいを出してこないのだろう。

 ……逆に言えば、そのような状況であってもルナ・ジオンに攻撃を仕掛けるという事は、何らかの勝算があっての事になるのかもしれないが。

 とはいえ、月の周辺には機動要塞やコロニーレーザー、ジェネシスといった大規模破壊兵器が多数ある。

 下手にちょっかいを出そうとしても、それこそ即座に反撃を受けて致命的なダメージとなるだろうが。

 

「つまり、地球で使える兵器か。狙われる可能性があるとすれば、やっぱりジャブローか?」

 

 連邦軍の本拠地のジャブローだけに、そこを叩くというのはジオン軍残党にとって大きな意味を持つ。

 ただ、1年戦争時代にもジャブローには何度も攻撃をしたが、それでも結局陥落しなかったのを思えば、秘密兵器があってもジオン軍残党でしかない者達にどうにか出来るかどうかは微妙なところだが。

 それを思えば、普通に考えればジャブローを攻略する事は出来ない。

 普通じゃない手段を使えば話は別だが。

 具体的には、ギニアスの開発したアプサラスがある。

 Ⅲは勿論、Ⅱですら圧倒的な威力のメガ粒子砲を使えるのを考えると、水天の涙というのはアプサラスのような強力な攻撃方法を持った……持った……

 

「いや、ちょっと待て」

「アクセル? 急にどうしたんだよ?」

 

 ヒューのその言葉に、俺は少し考えを纏めてから口を開く。

 

「お前達はルナ・ジオン軍の持つMAにアプサラスというのがあるのを知ってるか?」

「噂で聞いた事くらいなら」

 

 ユーグがそう言うものの、他の2人は首を横に振る。

 オデッサ作戦とかでも使われたんだし、ユーグ以外に知っていてもおかしくないとは思うんだけどな。

 ともあれ、アプサラスについては知らないらしいので、簡単に説明する。

 

「ルナ・ジオン軍でハワイを治めているギニアスという人物が開発したMAだ。簡単に言えば、空を飛ぶ砲台みたいな感じだな」

 

 それだけを聞けば、容易に撃ち落とせるのではないかと思うが、ルナ・チタニウム合金製の装甲だけに、実弾に対しては強い防御力を持つ。……それはⅢの方で、Ⅱはその通りなのだが。

 もっとも、ルナ・チタニウム合金だろうがなんだろうが、実弾ではなくビームを使われるとどうしようもなかったりするのだが。

 ビグ・ザムが使っていたIフィールドを使えればいいんだが。

 ただ、その技術はルナ・ジオンにおいてはまだ研究途中だ。

 正確にはIフィールド発生器はあるが、まだアプサラスに搭載出来る程に小型化出来ていない。

 ビグ・ザムが60m近い大きさなのに対し、アプサラスは30m程だ。

 つまりビグ・ザムの半分程となる。

 実際にはアプサラスもⅡとⅢでは大分形状が違うのだが。

 ともあれ、現状においてはまだIフィールド発生器は小型化出来ていない。

 そんな風に防御面に若干弱いアプサラスだが、その攻撃力は極めて強力だ。

 それこそジャブローの頑丈な地上部分を貫き、内部に大きな被害を与えられる程には。

 そもそもの話、ギニアスがアプサラスを開発する時はジャブロー攻略用MAというコンセプトで計画を立てたのだから、ある意味ジャブローを攻略するというのはアプサラスにとっては本領発揮の場面だろう。

 

「つまり?」

「アプサラスなら、それこそジャブローも攻略出来る。そしてつい先日、ハワイはジオン軍残党に襲撃された。その時は撃退したが、もしそれがハワイの戦力を調査する為の行動だとしたら?」

「水天の涙というのは、つまりそのアプサラスってのを奪うのが目的なのか?」

 

 信じられないといった様子のヒュー。

 

「敵の基地に侵入してMAを奪うなんて真似、とてもじゃないが出来る筈ないだろ?」

 

 ヒューのその言葉に、ああそうかと納得する。

 俺にしてみれば、敵の拠点や本拠地に忍び込んで新型機を奪うというのは、そんなに難しい話ではない。

 頻繁に……とまではいかないが、それでも今まで何度も経験がある。

 しかし、それはあくまでも俺だからこその話だ。

 ヒューにしてみれば、そんなのは自殺行為だと思ってしまうのだろう。

 

「ジオン軍残党が、そんな判断をきちんと出来ると思うか? ただでさえ追い詰められてるんだぞ?」

 

 ガルマ派とダイクン派がいないジオン軍だ。

 その上で水天の涙に関係して大規模な襲撃を繰り返している。

 決して補給が潤沢な訳ではないジオン軍残党にしてみれば、そこまでしてやる必要がある行動という事になる。

 ベルファストでは結構な物資を奪って逃げたらしいから、若干補給状態は回復してるのかもしれないが。

 それだって物資を奪っての行動である以上、一時的なものでしかない。

 ファントムスイープ隊のように、連邦軍によって補給が滞る事がないといった恵まれた状況ではないのだから、

 しかも俺がファントムスイープ隊に加わった事により、ゴップが本格的に補給の手筈を整えるだろう。

 1年戦争で多くの者に評価されたゴップの手腕だ。

 戦時中でもない今この時、ファントムスイープ隊に対する補給を滞らせるといった事はまず考えられないだろう。

 

「あくまでもこれは可能性だ」

「けど、アクセルさんの予想は十分に可能性があると思います。ハワイにそこまで強力なMAがあって、そのMAでならジャブローを攻撃出来る。そして一度ハワイがジオン軍残党に襲われている。それらを考えれば……」

 

 シェリーはどうやら状況証拠的に俺の意見に賛成らしい。

 

「上層部に知らせた方がいいんじゃないか?」

 

 そうユーグに言うが、ユーグは難しい表情を浮かべてから頷く。

 

「そうだな。ただ、今すぐは難しい。現在基地の上層部と話をしている。それが終わって戻ってきたら、事情を説明したいと思う。……だが、もしハワイがジオン軍残党に襲われたとしても、ハワイはルナ・ジオンの領土だ。俺達が勝手に中に入る訳にはいかない。……アクセルが手を回してくれれば、話は別だが」

「そうだな。もしハワイに行くという事が決まったら、こっちも話をしよう。もっとも、本当にそうなるかどうかは分からないが」

 

 マオの性格を考えれば、何となく俺からの情報……それも確たる証拠もなく、あくまでも予想に予想を重ねた上での提案に頷くかどうかは微妙なところと思う。

 とはいえ、他に何も手掛かりらしい手掛かりがなければ、分からないが。

 それに俺が水天の涙目当てでファントムスイープ隊と行動を共にしているからとはいえ、ファントムスイープ隊が水天の涙専門の部隊という訳ではない。

 ファントムスイープ隊は、あくまでもジオン軍残党を倒す為の部隊なのだ。

 それがジオン軍残党であれば、水天の涙の関係あるなしに関わらず、戦うだろう。

 

「分かった。それで構わない。水天の涙に関しては、まだ殆ど何も情報がないしな。今は普通のジオン軍残党を倒すのを優先した方がいいと思う」

「すまないな」

 

 そう言い、謝るユーグ。

 ユーグも水天の涙については気になってはいるのだろうが、今はまず目先の敵を倒すのを優先する必要があると考えたのだろう。

 

「あの、でも、やっぱり私はアクセルさんの言っていたようにハワイにあるMAを奪うのが水天の涙だと思います。出来るだけ早くそっちを何とかした方がいいんじゃないですか?」

 

 シェリーが心配そうに言う。

 けど、俺の予想は明確な証拠があっての話ではなく、あくまでも多分そうだろうという予想に基づいたものだ。

 そうである以上、そこまで真剣に心配しなくてもいいと思うんだが。

 シェリーにしてみれば、どこかそれが本当であるというように思えたのかもしれないな。

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