転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3710話

『今回の攻撃目標は、ベルファストを襲撃した者達を追跡した結果判明した。この基地の部隊と共に攻撃する事になる』

 

 映像モニタに表示された初老の男……ゴドウィン准将がそう言う。

 どうやら俺の事は取りあえず普通に部隊の一員として扱うつもりらしい。

 ゴップやコーウェンからそんな風に言われたのだろうが、だからといってそれをそのまま本当に受け入れるというのは珍しい。

 いやまぁ、それで不満を抱いて文句を言う程ではないのだが。

 寧ろそうやってくれた方がこっちもやりやすいのは事実だ。

 

『以後の指揮はマオ少佐に任せる。貴官らの奮闘に期待する』

 

 そうして通信が切れる。

 

「うわ、アクセルに対して何もないのかよ。綺麗に無視していったぞ」

「ヒュー中尉!」

 

 マオが鋭く叫ぶ。

 そんなマオに、ヒューは焦った様子で口を開く。

 

「いや、アクセルが堅苦しい態度は好きじゃないからって言ったんですよ。なあ、シェリー?」

「え? あ、はい」

「シェリー中尉が言うのなら、事実なのか?」

「あ、ちょっと、俺って信用ないのな……」

「あると思うのか」

 

 うん、この部隊でのヒューの立ち位置が何となく理解出来た気がする。

 まぁ、それに関しては俺がどうこうと言うまでもないと思うけど。

 

「その辺にしておいてくれ。ヒューの言ってる事は間違いない。ファントムスイープ隊の関係者以外がいる場所でボロを出さないのなら、そこまで堅苦しく考える必要もない」

 

 そうマオに言う。

 マオはそんな俺の言葉に困った様子を見せる。

 マオは生真面目でお堅い性格といった様子の女だから、いきなり俺にそんな事を言われても困るのか。

 だからといって、ずっと堅苦しい態度で接されるのもちょっと面倒だし。

 マオには悪いが、その辺については慣れてもらうしかないだろう。

 

「それにしても、今回の襲撃目標がベルファストを襲撃した連中の関係となると、俺の予想は外れた形か?」

「ああ、ハワイにある大型MAを奪取するって奴か」

「……アプサラスを?」

 

 ヒューの言葉にマオがそう言う。

 どうやらマオはアプサラスについて知っていたらしい。

 当然か。少佐という立場にいて、しかも俺を預かるのだ。

 ルナ・ジオンについて……特に地球上で活動する以上はハワイについて調べておくのはおかしな事ではない。

 あるいは調べなくても1年戦争中にアプサラスが使われていたのを知っているのかもしれないが。

 

「はい。アクセルさんがもしかしたらという事で考えてくれたのですが、可能性としては十分に高いと思いました」

 

 そう言い、シェリーは俺の予想を口にする。

 

「ジャブローを狙う為にアプサラスを奪う……か。話は分かったし、その可能性がないとは言わん。しかし、ハワイはルナ・ジオンの領土である以上、こちらから警備を出すといった訳にもいかないだろう。……そうですね?」

 

 最後だけは俺に聞いてくるマオ。

 その言葉に俺は頷きを返す。

 

「そうだな。ハワイには結構な戦力がいる。そうである以上、もしジオン軍残党が攻めてきても、対処するのは難しくはないだろう」

 

 ノリスにガトー、ヴィッシュ、闇夜のフェンリル隊……それ以外にも、メギロートやバッタといった無人機もいるのだ。

 もしジオン軍残党が攻めてきても、撃退するのは難しくない。

 ギニアスにしてみれば、それこそハワイにいる部隊の練度を高めるのにちょうどいいと思ったりもするだろう。

 もっとも、ジオン軍残党がどこを攻めるかによっても事情は大きく違ってくるが。

 ハワイと一口に言っても、多数の島々で構成されているのだ。

 そんな中には無人島もそれなりにあり、ジオン軍残党が隠れる場所として無人島を選んでもおかしくはない。

 だが……そんな無人島の中には、アイナが主導して牧畜計画を行っている場所もある。

 基本的には放し飼いらしいが、それだけにジオン軍残党が野生動物と判断してその島を拠点とし、放牧されている動物を殺して食うような真似をしたら……うん。それこそアプサラスⅢのメガ粒子砲が放たれる可能性も否定出来なかった。

 いやまぁ、実際にそんな事をやったらまだ生きている動物達も死んでしまうので、さすがにやらないだろうが。

 せいぜいが、拡散メガ粒子砲とかか。

 あれなら威力もそこまでではない――あくまでも大型メガ粒子砲と比較してだが――ので、無人島の被害もそこまで多くはないだろうし。

 

「そんな訳で、シェリーの気持ちは嬉しいが、まずは今回の作戦を上手くいくことを考えるとしよう。今回狙う相手もゴドウィンの話によると、ベルファストを襲った連中の関係らしい。なら、水天の涙についても何か知ってるかもしれないし」

 

 逃がしたグラブロのパイロットが水天の涙について知っていた以上、他にも水天の涙について知ってる者はそれなりにいると思ってもいい。

 グラブロは水中用MAという特殊な機体だ。

 それに乗っている以上、恐らくエースとか腕利きとか、ジオン軍残党の中でも相応の技量の持ち主なのは間違いない。

 そんなパイロットだったからこそ、水天の涙について知っていた可能性もあるが、それはつまりエース級なら水天の涙について知っているかもしれないという事を意味している。

 であれば、ファントムスイープ隊がこの基地のMS隊と協力して襲撃する筈のジオン軍残党の中にも水天の涙について知ってる者はいるだろう。

 最善なのはあのグラブロのパイロットがいる事なのだろうが……これから襲撃するのは海辺ではないので、水中用MAのパイロットがいるという事はないだろう。

 

「水天の涙……そう、それが何を意味するのかを知る事が、今回の一番の目的だ。そして情報源は多ければ多い程にいい。その為、今回の戦闘においては可能な限り敵を殺すのではなく、捕虜にするのを目的とする」

「あのー……それって、MSのパイロットも含めてですか?」

 

 ヒューの言葉にマオは頷く。

 

「そうだ。だが、勿論それはあくまでも出来る限りの話だ。自分が死にそうになっているのに、無理をして敵を捕虜にするといった事は考える必要はない」

 

 その言葉に安堵した様子のヒュー。

 これが強硬派に所属する軍人なら、恐らく自分の手柄にする為に多少の無理はしてでも捕虜にしろと言うんだろうな。

 あるいは強硬派だからこそ、ジオン軍残党を殺すのを最優先にして、情報は入手出来れば運がいい程度に考えるか。

 まぁ、その考えが一概に悪いとは言えない。

 ジオン軍残党を残しておけば、それによって連邦軍が……あるいは軍に所属していない街とかが被害を受けたりする可能性が高いのだから。

 そういう意味では、ジオン軍の残党の殲滅を真っ先に考えるというのは分からないでもない。

 個人的にはどうかと思うが。

 ジオン軍残党……そう、残党という名前がついているだけに、その勢力は決して大きなものではない。

 ジオン軍残党も自分達がどのような存在なのかは理解している。

 だからこそ残党同士で連絡を取り合ったり、場合によっては合流……もしくは吸収したりする。

 そんな相手だけに、情報を優先するというマオの判断は俺にとっても好ましいと思える。

 

「それと……この基地の者と揉めたという話を聞いたが?」

「あ……」

 

 マオの視線にシェリーが困ったように小さく呟く。

 ユーグは性格的にこの基地の軍人と揉めたりということはないだろう。

 可能性としてはヒューだが、俺が知ってる限りユーグと行動を共にしていた。

 それを考えると、やはりこの基地の軍人と揉めたというのは、シェリーに言い寄っていた男の件だろう。

 

「すいません、隊長。実は……」

 

 そう言い、シェリーが事情を話す。

 理由を聞いたマオは、大きく息を吐く。

 

「そうか。それなら仕方がないだろう。悪いのは明らかにシェリー中尉に言い寄っていた者達だからな」

 

 予想外の事に、マオはシェリーや俺を咎める事はなかった。

 あるいは俺に対する配慮もあるのかもしれない……いや、マオの性格を考えるとそれはないか?

 

「マオ隊長がそういう風に言うって事は、もしかして何か問題になってるんですか?」

 

 ヒューの問いに、マオは首を横に振る。

 

「いや、そうではない。ただ、そういう噂が聞こえてきただけだ。特に何か問題になっていたりはしないので、安心して欲しい。……だが、この基地には世話になるのだ。今回の件はともかく、余計な波風は起こさない方がいい」

 

 そう言われ、シェリーは素直に頷く。

 もっともマオが言う波風は起こさない方がいいというのは、シェリーに言い寄っていた連中の誘いを断るなというものではない。

 断るにしても、もっと穏便に断れと言っているのだろう。

 ……とはいえ、これは俺の予想だが、もしマオがああいう連中に言い寄られた時、穏便に断るかと言われれば正直微妙なところだろうが。

 見るからに気が強そうな性格をしているだけに、それこそ言葉で断るだけではなくビンタとかしそうだ。

 

「……何か?」

 

 俺がじっと見ているのに気が付いたのか、マオがそう聞いてくる。

 その言葉には何かこちらを責めるような色がある。

 ここで下手に何かを言えば、ちょっと面白くない事になりそうな気がするので、何でもないと首を横に振っておく。

 

「いや、出撃はいつになるのかちょっと気になってな」

 

 話を誤魔化すのと同時に、純粋に疑問に思っていた事を尋ねる。

 既にジオン軍残党の拠点についての情報はあるのだ。

 であれば、わざわざここで時間を消費するようなことはしなくてもいいだろう。

 

「明日です。アクセル代表とユーグ大尉の機体の換装と調整に1晩くらい掛かるとのことでしたので」

「ユーグも?」

「ああ、俺はライトアーマーにして貰うつもりだ」

「ユーグも?」

 

 一瞬前と全く同じ言葉を口にする。

 まさか俺と同じタイプにするとは思っていなかった。

 これは別にユーグを侮っているとかそういう理由ではなく、ライトアーマーは機動力こそ高いが、それは余分な装甲を削って手に入れた機動力だ。

 敵からの攻撃を回避するなり、盾で防ぐなりしなければ被害は大きい。

 それと比べると、標準仕様のスタンダードアーマーはそれなりに厚い装甲を持っている。

 これがビーム兵器を持っている敵であれば、厚い装甲も役には立たない。

 だが、ジオン軍残党にビーム兵器は……いや、水陸両用MSとかならビーム兵器を持ってるな。

 ただ、今回は海の近くじゃないので、そういう心配はない。

 そうなると、心配なのはゲルググか。

 1年戦争の終盤に開発されたゲルググは、ビームライフルを標準装備している。

 そういう意味では厄介だが、ここは地球だ。

 基本的に製造されたゲルググは宇宙での戦いに使われている。

 もっとも、地上用に改修したゲルググもあるらしいが……数は少ない。

 その辺を考えれば、ジオン軍残党がゲルググを持っている可能性はあまり考えなくてもいいだろう。

 だからといって油断をする訳にもいかないが。

 1年戦争末期は、ジオン軍もかなりの混乱の中にあった。

 そんな混乱があっただけに、地上用のゲルググが何らかの理由で地球に送られたという可能性は皆無ではないのだから。

 

「機動性が重要だと思ってな」

「ユーグ隊長もアクセルさんも、信じられません。私はスタンダードアーマーの性能も完全に発揮出来ていないのに」

「そういう新型機ってのは、使いにくくて当然だろ。やっぱりこういう時は、使い慣れたMSの方がいいんだよ。俺のジム・コマンドみたいにな」

 

 シェリーの言葉に、ヒューが若干のからかいを込めてそう言う。

 ちなみに今の会話を見ても分かるように、ファントムスイープ隊は俺が貰う予定だった予備機の他に、更に1機追加でジーラインが追加されている。

 この1機がどこから出て来たのかはちょっと分からないが、予想は出来る。

 恐らくだが、ジーラインはある程度……それこそ少数だが、量産されたのだろう。

 そのうちの1機が、ジオン軍残党の討伐を任されているという事でファントムスイープ隊に回されたといたいったところか。

 ちなみにヒューがジム・コマンドを愛用しているのを見れば分かるように、ジーラインに乗るまではジム・コマンドがファントムスイープ隊で使われていたらしい。

 分からないではない。

 ジム・コマンドは1年戦争中に開発されたジム系の中では最高峰の性能を持つMSの1機だ。

 ジオン軍残党を相手にするには、十分な性能を有しているのだから。

 そしてヒューは自分で言っていたように、新型機の高性能よりも旧型機であっても信頼出来る機体を求めたらしい。

 軍人としては、ある意味当然の事なのかもしれないが。

 ちなみにシェリーも外見や性格はともかく、MSのパイロットとしては当然ながら有能だ。

 ファントムスイープ隊に来る前はテストパイロットをやっていたとかいう話だったので、シェリーがジーラインのパイロットに選ばれたのはその辺の理由もあるのだろう。

 ただ、そんなシェリーでもジーラインスタンダードアーマーの性能を完全に発揮出来ていないのを考えると、アムロの乗ったガンダム級の性能というのは普通のパイロットにはちょっと厄介なのかもしれないな。

 そんな風に思いながら、俺は会話を続けるのだった。

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