転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3737話

「これが……ルナ・ジオン……」

 

 シェリーの驚きの声が聞こえてくる。

 現在俺達がいるのは、月の首都クレイドル。

 本来なら、クリストやシェリーは政庁に連れていくべきなのだが、インビジブル・ナイツの件は公に出来ない事だ。

 そうである以上、人目の多い政庁に連れていく訳にはいかなかった訳で……

 

「アクセル!」

 

 その声に振り向くと、そこにはモニクとクスコ、クリス3人の姿があった。

 

「悪いな、待たせたか?」

「いえ、私達もついさっき来たところよ。……取りあえずどこかのお店に入りましょうか。このままだとちょっと目立つでしょうし」

 

 モニクが周囲の様子を見ながらそう言う。

 実際、モニク、クスコ、クリスと3人全員が美人だけに、周囲の人目を引いてるのは間違いない。

 そんなモニクが声を掛けてきた俺達の方にもシェリーという美人がいる。

 そのような集団だけに、それで目立つなという方が無理だった。

 このままここで目立ってる訳にもいかないので、俺達はモニク達と共に移動して近くの店に入る。

 喫茶店ではあるが、それなりに高級店らしく店の内装は落ち着いており、客の姿も多くはない。

 その喫茶店はモニクにとっても通い慣れた店だったらしく、モニクは店のマスターに声を掛けると奥の方にある席に俺達を案内する。

 周囲には客の姿はなく、大声を出さない限りは話を聞かれる心配はないだろう。

 店の客も何人かはこっちに興味深そうな視線を送っているものの、それでもすぐに視線を逸らす。

 店の暗黙のルールとか、そういう感じらしい。

 俺達にしてみれば助かる。

 そうして奥のテーブルに座ると、適当に注文をする。

 とはいえ、クリストとシェリーはあまりこういう店に慣れてはいないのか、もしくはこの状況に疑問を感じてるのか、注文をするのに戸惑っていたが。

 

「さて、貴方達の待遇についてだけど、基本的に私が担当をする事になるわ」

「貴方は……?」

 

 シェリーの言葉に、モニクは紅茶を一口飲んでから口を開く。

 

「モニク・キャデラックよ。ルナ・ジオンの政庁に勤めているわ。それと……」

 

 そこで言葉を止めたモニクは、俺を意味ありげな視線で見てから口を開く。

 

「アクセルの恋人ね」

「え!?」

 

 モニクの言葉に驚きの声を上げるシェリー。

 それは俺に恋人がいたからという理由からか、あるいはここでまさかそういう話題が出るとは思っていなかった為か。

 

「それでこっちがクスコとクリス。この2人もアクセルの恋人よ。……それで単刀直入に聞くけど、シェリーだったわよね? 貴方もアクセルの毒牙に掛かったの?」

「おい」

 

 毒牙という表現に思わず突っ込む。

 だが、モニクはそんな俺の視線を全く気にした様子もなくシェリーを見ていた。

 最初シェリーは自分が何を言われたのか分からなかった様子だったが、すぐにその言葉の意味を理解したのだろう。

 顔を赤く染め、慌てて首を横に振る。

 

「い……いえ。そんな事はないです。アクセルさんには色々と助けて貰いましたが。そういう関係ではありません!」

 

 小声で叫ぶという器用な真似をするシェリー。

 そんなシェリーの横では、クリストが厳しい視線を俺に向けていた。

 クリストにしてみれば、自分の妹がおかしな男の毒牙に……とでも思ったのだろうから、その反応はおかしくないのかもしれないが。

 だからといって、それが事実ではない以上、俺も大人しくその言葉を聞く訳にはいかない。

 

「シェリーには手を出してないから安心しろ。俺を何だと思ってるんだ?」

「史上稀に見る女好き」

 

 即座にモニクが言い返し、クスコとクリスもそれに頷く。

 当然ながら、俺はそれに対して反論出来ない。

 ……いや、反論しようと思えばそれなりに出来るが、反論した場合は追加で更に色々と言われるような事になりそうだし。

 

「そう言えばシーマはどうしたんだ?」

 

 俺に不利な状況になりそうだったので、そう話を誤魔化すが……それが俺にとってミスだったのが、モニクの次の言葉で証明されてしまう。

 

「シーマはクレイドルだと目立つでしょ。シーマに憧れてる人がアクセルと一緒にいるシーマを見たら、色々と面倒になりそうだから来てないわよ」

「え……シーマって、シーマ様……シーマ・ガラハウですか!? 宇宙の蜉蝣の異名を持つ!?」

 

 シーマの名前が出ると、シェリーが興奮した様子を見せる。

 というか、様付けなのは……いやまぁ、実際にシーマは部下からシーマ様と呼ばれていて、それがかなり知られているので、シーマ様と呼ばれることが多いのは事実なのだが。

 

「……詳しいな」

「いえ、そのくらい知っていて当然ですよ」

 

 シェリーがここまで興奮するとは思わなかった。

 というか、この様子を見ると多分……いや、間違いなくシェリーもシーマのファンなんだろうな。

 シーマがルナ・ジオンに所属した理由を知っている者は多い。

 また、シーマの持つ美貌も影響して、ファンはかなりの数になるのだが、どうやらシェリーもその1人だったらしい。

 

「それで、アクセルさん。シーマ様と付き合ってるんですか?」

「ああ」

 

 別にこれは隠すことではないだろうと、素直に頷く。

 もし俺がシェリーを口説くつもりがあるのなら、もしかしたらシーマとは付き合っていないと言ったかもしれないが、別に俺はシェリーを口説くつもりがないので、その辺は問題ない。

 

「それどころじゃないわよ。アクセルは本拠地に戻れば、10人以上の恋人と同棲してるんだから。ハーレムよ、ハーレム。貴方も今はそのつもりはないようだけど、アクセルには気を付けてね。でないと……私達みたいになるから」

 

 モニクの言葉は忠告なのか、それとも自嘲なのか。

 シェリーも戸惑った様子を見せており、クリストは何故か俺に驚きの……そして3割程は尊敬の眼差しを向けている。

 さっきまでは妹を守るといった警戒の視線を向けていたと思うんだが、それが何故か尊敬混じりの驚きになってしまったらしい。

 いやまぁ、男としてモニク達のような美人を何人も恋人にしてると言われれば、そんな思いを抱いてもおかしくはないのかもしれないが。

 あるいは10人以上と同棲しているといったのが理由か?

 

「俺の恋愛についての話はその辺にして、そろそろ真面目な話に戻るぞ」

「えー、もう少しアクセルの恋愛について……恋愛? あれは恋愛と評してもいいのかしら? 私達が経験したのは、もっと肉欲的な……まぁ、アクセルを愛してるのは事実だけど」

「クスコ、その辺にしておきなさい。そっちの娘が真っ赤になってるじゃない」

 

 クスコの言葉に、クリスがシェリーを見てそう言う。

 実際シェリーを見てみると、その顔は真っ赤だった。

 一体何を想像したのやら。

 

「クリスの言う通り、真面目な話に戻してくれ。……まずはクリストとシェリーの2人だが、取りあえずどこで匿う事になる?」

 

 急に話が真面目なものになったので、クリストとシェリーは少し戸惑った様子を見せる。

 とはいえ、実際にはこれが本題でやってきたのだから、この話をするのは当然なのだが。

 

「幾つか選択肢はあるけど……一番安全なのは、農場ね」

 

 モニクも俺の言葉で、前菜とでも言うべき会話……俺の恋愛関係とかについては終わったと判断したのか、真面目に答えてくる。

 いや……本当に真面目にか?

 モニクの口から出たのは、俺にとってもかなり予想外な場所だったからだ。

 

「農場……?」

 

 モニクの言葉に疑問を持ったのは、当然ながらクリストやシェリーもだ。

 この2人にしてみれば、これから自分達が行く場所だ。

 興味を抱くのは当然だろうし、そこで農場という言葉が出て来たのに疑問を抱くのも当然だろう。

 

「一応聞くけど、農場ってのは……無農薬の野菜を作ってる農場の事だと認識してもいいか?」

 

 本来なら囚人の働いている場所かと聞くのが一番なのだろうが、クリストやシェリーにしてみれば、自分達が囚人と同じ場所に送られるのかと過剰に反応してもおかしくはないので、こうして尋ねたのだが……

 

「そうよ。あそこなら囚人達を逃がさない為に量産型Wやコバッタが大量に配備されてるから、安全なのは間違いないわ」

「なっ!? アクセル、どういうつもりだ!」

 

 モニクがあっさりと囚人という単語を口にした為に、それを聞いたクリストは俺に鋭い視線を向けてそう詰問してくる。

 

「あー……安心しろ。別にお前達を犯罪者として扱う訳じゃないから」

 

 そう言うも、連邦の視点からすると……いや、ジオン共和国の視点からでも、インビジブル・ナイツは犯罪者なんだよな。

 とはいえ、それはあくまでも連邦やジオン共和国から見ての話であって、本人達にしてみればそういうつもりはないだろう。

 いや、そういう目で見られているのは理解しているが、そういう実感はないか。

 ……とはいえ、ジオン軍残党として活動している時に色々と思うところがあったのも事実だと思う。

 

「モニクが言ったように、農場には量産型Wやコバッタがいて、そういう意味ではかなり安全だ。それに、もしクリストやシェリー達を捜している奴がいても、まさかそんな場所に匿われているとは思わないだろうし。……基本的に無農薬の野菜が売りだけに、農作業は厳しい。けど、お前達は別に囚人という訳でもないから、別に無理に仕事をしろとは言わないけどな。勿論、農作業に興味があるのならやってもいい」

「一度は経験してみてもいいと思うわ。特に無農薬で作られた野菜は、その出来によっては本当に同じ野菜なのかと思うくらいに美味しいから」

 

 モニクの言葉にシェリーが少し興味深そうな様子を見せる。

 この様子だと、農業に興味を持つかもしれないな。

 

「クリストの方は……少し難しいかもしれないけど、やれる事だけをやればいいだろう。ああ、ちなみに足の治療についてだが、インビジブル・ナイツを確保したらやるから、そのつもりでいてくれ」

「……分かった」

 

 クリストは完全に俺の言葉を信じた訳ではないだろうが、それでも一縷の希望の視線を俺に向けてくる。

 俺は約束を破る気はないんだが、それはあくまでも俺の立場だから言える事だ。

 クリストにしてみれば、俺の言葉が本当なのかどうかは素直に信じられなくてもおかしくはなかった。

 とはいえ、それでも期待しているのはシャドウミラーが魔法を使うとかそういう話を知ってるからだろう。

 実際には足を治すのは魔法ではなく、科学技術によるものなのだが。

 よくある、発展した科学は魔法のように見えるとか言われているのを思えば、魔法であると言っても決して間違いではないのかもしれないが。

 

「とにかく、俺がインビジブル・ナイツの面々を捕らえてくるまで、お前達は農場でゆっくりとしていろ。……俺が言うのもなんだけど、1年戦争が終わってからゆっくりしている暇はなかったんだろう?」

 

 クリストはジオン軍残党として、水天の涙が始まるまでは休む暇もなかっただろう。

 シェリーもスパイとして連邦軍に潜入していた以上、本当に気の休まる暇はなかった筈だ。

 そういう意味では、月にいる今は1年戦争終了後、ようやくゆっくり出来る時間ではある。

 本人は疲れているとは思っていなくても、常に緊張状態にある状態というのは、決して身体によくない。

 そういう意味では、農場でゆっくりと何の心配もせずに暮らすというのは、一種のリハビリなのかもしれない。

 ……もっとも、インビジブル・ナイツの仲間の事を考えれば何の心配もせずにというのは難しいかもしれないが。

 

「兄さん……」

 

 俺の言葉にシェリーが迷うようにクリストを見る。

 そのクリストはどうするべきか迷った様子だったものの、それでもやがて迷いながらもくちを開く。

 

「俺達は、戦いの場に連れていって貰えないのか?」

「そのつもりだ」

「……その気持ちは分かる。だが、俺達……いや、タチアナはともかく、俺は連れていって欲しい」

「兄さん!?」

 

 クリストの言葉に、シェリーが叫ぶ。

 シェリーにしてみれば、クリストのこの言葉は予想外のものだったのだろう。

 とはいえ、すぐにシェリーは覚悟を決めた表情でこちらを見てくる。

 

「兄さんが行くのなら、私も行きます」

「……本気か?」

 

 クリストとシェリーに尋ねると、2人は揃って頷く。

 

「俺達が説得すれば、インビジブル・ナイツを捕らえた時に最低でもこっちの話を聞いてはくれるだろう」

「そこはお前が説得するとかじゃないのか?」

「……今の状況では、恐らく説得しても効果はないだろう。なら、捕らえられた状態で説得した方が、まだ素直に話を聞くと思う」

「それこそ、裏切り者とか思われるかもしれないぞ?」

 

 自分達の行動を邪魔しようとする俺達に捕らえられたところで、仲間のクリストやシェリーを目にするのだ。

 インビジブル・ナイツの面々にしてみれば、自分達を裏切ったと思われてもおかしくはない。

 そう言うも……クリストとシェリーの目にある決意は変わらない。

 仕方がない、か。

 

「悪いな、お前達を連れて行くのはちょっと難しい。ただ、その代わり絶対にインビジブル・ナイツを全員連れてくるから、それで納得してくれ」

 

 その言葉に、クリストとシェリーは完全には納得しないものの、俺の力を見たことである程度は信じることが出来たのか、不承不承ながらも頷くのだった。

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