転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3741話

 月の周辺でのゼロ・ジ・アールの運用試験が大体終わってから数日が経つ。

 やはりというか、ゼロ・ジ・アールで一番厄介なのはその運動性の低さだ。

 機動性という意味では非常に高い加速力を持っているので問題はないのだが、細かい動きをするという意味での運動性はかなり厳しい。

 また、その運動性の低さに加えて、全高70m程もあるというのも、敵の攻撃を回避するのが難しいということを意味していた。

 具体的にそれがどのくらい厳しいかと言えば……メギロートの攻撃を回避しきれず、何発か命中してしまったくらいには回避能力に問題がある。

 もっとも、ゼロ・ジ・アールは基本的に回避する機体ではなく、Iフィールドで敵の攻撃を無力化する機体だと言われれば、それまでなのだが。

 そんな訳で、現在ゼロ・ジ・アールはディアナにおいて問題がないかどうかと確認して貰っている。

 また、俺が感じた幾つかの改善点……ゼロ・ジ・アールが使える手持ちの武装、巨大なビームサーベルを開発してみたらとか、ミサイルとかを迎撃したり、相手を牽制するという意味でバルカンの類を機体の各所に装備してみたらどうかとか、そういうのについては既に報告してある。

 とはいえ、これにGOサインが出るかどうかはディアナの上層部次第だが。

 以前頼んだメガ粒子砲を装備したSFSの件とかもあるし、そう簡単にGOサインが出るとは思わないが。

 ただ、そういうゼロ・ジ・アールを大々的に改修するのは難しくても、機体の設定については話が別だ。

 少しでも俺の反応に対処出来るように、敏感な設定にして貰っている。

 とはいえ、設定を変えるというのは、言葉程簡単ではない。

 どこか一ヶ所の設定を変えれば、それ以外の設定も弄る必要が出てくる。

 そうして最善の数値を導き出す必要があるのだ。

 幸いな事に、俺がゼロ・ジ・アールを動かした時のデータは、カトンボにいたクリスを始めとするディアナの技術者にしっかりと取られているので、それを参考に設定を変更出来る。

 ……とはいえ、それでも運動性が低いということの決定的な面については殆どどうにも出来ないんだが。

 その辺については、もうそういう機体だという事で諦めるしかない。

 この辺の判断は、俺にしてみればいつもの事だ。

 本当の意味で、俺の反応についてこられる機体は今のところニーズヘッグしか存在しないのだから。

 それこそどんなMSを……いや、このUC世界以外の機動兵器を使っても、俺の能力を最大限に発揮出来る機体はない。

 どのような機体であっても、手加減をして操縦するようなものだ。

 もし本気で動かせば、機体が俺の反応速度についてこられず、電子回路がショートしたり、関節部分が極端に損耗したりしかねない。

 その為、俺にしてみれば手加減して操縦するというのは、ゼロ・ジ・アールだろうと何だろうとそう違いはなかったりする。

 そんな訳で、ゼロ・ジ・アールの操縦に不満はない。

 

「アクセル、ちょっと聞いてるのかい?」

「ああ、悪いな。ゼロ・ジ・アールについて考えていた」

 

 シーマの言葉にそう返す。

 そんな俺の言葉に、シーマは紅茶を飲みつつ仕方がないねといった様子で視線を向けてくる。

 クリストやシェリーを連れてきた時は、どうしても目立つという事で俺達を出迎えた面子の中にシーマの姿はなかった。

 その代わりという訳ではないが、今日はこうしてシーマとデートをしている。

 特に何か急いでやるべきことがある訳でもないしな。

 ファントムスイープ隊は宇宙に出るらしいが、まだ諸々の調整中らしい。

 インビジブル・ナイツもフィフス・ルナ……正確にはそこにあるマスドライバーを占拠する為に行動すると思っていたのだが、今のところその様子はない。

 恐らく戦力を整えているのだろう。

 そんな訳で、現在のところ俺は暇だった。

 ゼロ・ジ・アールの調整もまだ終わってないし。

 

「ゼロ・ジ・アールかい。あのMAについてのスペックシートは見たけど、強力なMAなのは間違いない。ただ、アクセルには合わないんじゃないかい? アクセルが得意なのは、やっぱりMSの操縦だろう?」

「俺もそう思う。ただ、あまり合わないから使えないって訳じゃないしな。使いこなそうと思えば使いこなせる。……ただ、あそこまでの大きさなのはちょっとどうかと思うが」

 

 俺も決してMAは使いこなせない……その適性がないという訳ではない。

 しかし、それでも俺にとってはかなり負担があるというか、思った通りに操縦出来ないのは間違いなかった。

 MSとかなら普通に通れる場所であっても、ゼロ・ジ・アールの大きさではそれは無理だ。

 ルナ・チタニウム合金を使った装甲なら、移動中にデブリにぶつかってもそこまで影響はないし、Iフィールドにとって弱点でもある実弾兵器に対する防御力も持てるのだが、ゼロ・ジ・アールの装甲はジオン軍にとっては一般的な超硬スチール合金だし。

 勿論、超硬スチール合金の性能が低いという訳ではない。

 ジオン軍で採用されたのだから、相応の性能は持っている。

 いるのだが、それでもやはりルナ・チタニウム合金と比べると、色々な面で劣ってしまうのは事実だった。

 

「だろう? なら、アクセルもフィフス・ルナの件ではギャン・クリーガーに乗ったらいいんじゃないかい?」

「それも考えたけど、相手に強い印象を与えるとなると、やっぱりゼロ・ジ・アールがいいんだよな」

 

 色々と難点のあるゼロ・ジ・アールだが、やはり全高70m程もある巨体、更にはメガ粒子砲を多数装備、そしてIフィールドを装備しているというのは、非常に目立つ。

 インビジブル・ナイツを驚かせるにはこれ以上ない機体だろう。

 連邦軍の方も、ファントムスイープ隊はともかく、フィフス・ルナやルナツーに駐留している連邦軍に好き勝手な行動をさせず、威圧出来るというのは大きい。

 

「ゼロ・ジ・アールがあれば、普通に一個艦隊くらいは撃破出来るだけの戦力を持ってるし」

 

 まぁ、推進剤の問題もあったりするので、長期間の戦闘というのはMSよりも向いてなかったりするのだが。

 何しろその大きさから、推進剤の補給をしようと母艦に戻った場合、どうしてもMSと違って目立つ。

 そして補給中なら、それこそ母艦諸共攻撃をするといった方法も使えるのだ。

 MSであれば、そのゼロ・ジ・アールと比べてかなり小さいので、推進剤の補給とかも問題ないのだが。

 

「まぁ、アクセルの事だから心配はいらないと思うけど。……それより、モニクから聞いたんだけど、また新しい女を連れ込んだって?」

 

 そう言い意味ありげな視線を向けてくるシーマ。

 

「一体何の話だ? モニクから聞いたのなら、シェリーの事を言ってるんだと思うが、そんな関係じゃないぞ?」

 

 それは嘘でも何でもなく、真実だ。

 そもそもシェリーは、俺ではなくユーグに好意を抱いているように思えた。

 俺と接する時間より、ユーグと接する時間の方が長かったし、ユーグもシェリーに色々と気を遣っていたように思う。

 それを見れば、シェリーが俺ではなくユーグを選ぶのはおかしな話ではない。

 そもそもの話、シェリーは一般的な感覚の持ち主で一夫一婦制が普通だと思っているタイプだ。

 実際に俺に大勢の恋人がいると知った時、信じられないといった目で見ていたし。

 その辺の状況を考えれば、シェリーが俺の恋人になるという事はまずないだろう。

 シーマもその辺については当然ながらあの場にいた面々から聞いて、知ってると思うんだが。

 

「そうかい? 聞いた話だと、結構アクセルと仲が良かったって話なんだけどね」

「仲が良い……いや、この場合は俺に感謝しているとか、そんな感じじゃないか? 好意は好意でも、男女間の好意じゃなくて恩人に対する好意だと思うんだが」

 

 シェリーにしてみれば、アデン基地で駆けつけた時、もし俺がいなければ兄のクリストが操縦していたイフリートとユーグの操縦していたジーラインが戦っていた筈だ。

 そして当初はイフリートに兄のクリストが乗ってるとは分からなかった以上、場合によってはシェリーは戦いの中でクリストを殺していた可能性もある。

 それを防いだのが俺だ。

 そうなると、当然ながらクリストを殺さずにすんだシェリーは俺に感謝する。

 シェリーが俺に抱いている好意は、まさにそれが理由だろう。

 ……男女間の好意だとすれば、悪い気持ちはしないが。

 

「どうやらやっぱり、アクセルとしてはシェリーに思うところがあるように見えるんだけどね」

「いや、そんな事はないから心配するな。……それより、地球であそこまで派手にジオン軍残党が動いた以上、宇宙でもその辺は激しく動いてたりしないか?」

「話の逸らし方が強引だね。……まぁ、いい。一応その辺についても話そうか。フィフス・ルナの一件から、それなりに派手に動いているようだよ。ただ、ギレン派とキシリア派の両方が動いているのがちょっと疑問だけどね」

「……それは本当か?」

 

 それについては、俺も初耳だった。

 

「ああ、本当だよ」

「ちなみに、ギレン派とキシリア派がぶつかって戦いになるとか、そういうのは……?」

 

 万に一つの幸運を求めてそう尋ねるが、シーマは首を横に振る。

 

「そういう情報は今のところ入ってきてないね。それどころか、一部では協力しているらしいという噂ならあるけど」

「……マジか?」

 

 シーマの言葉は俺にとってそれだけ意外なものだった。

 ギレン派の者達にしてみれば、キシリア派はギレンを殺した仇だ。

 それだけではなく、ア・バオア・クーでの戦いにおいてキシリアがギレンを殺した事によってジオン軍の統制が取れなくなり、結果として1年戦争の敗北をもたらした元凶ですらある。

 勿論キシリア派……というか、キシリアにしてみれば色々と言い分はあるのだろう。

 あの時でなければギレンを殺せなかったとか、父親のデギンを殺したのが許せなかったとか。

 ただ、実際にギレンの暗殺によってジオン軍の負けが決定的になったのも事実。

 そんな関係で、当然ながらギレン派とキシリア派が上手くいく訳がない。

 1年戦争終了後、ギレン派を率いていた人物……ギレン派の全てなのか、一部なのかは分からないが、とにかくデラーズという人物と通信でだが話す機会があった。

 その時も、デラーズはキシリア派……というか、キシリアに強い憎悪を持っていた。

 だというのに、そんな2つの派閥が手を組む?

 ちょっと信じられない内容なのは間違いなかった。

 

「マジか?」

 

 あまりに信じられず、数秒前と同じ事を尋ねる。

 しかし、そんな俺の2度の問いに、シーマは頷く。

 

「ああ。とはいえ、勿論全面的に協力しているとか、そういう訳じゃない。末端の方で時々協力しているといった感じらしいね」

「にしても……それはまた……」

 

 犬猿の仲という表現ですら生温い、そんな2つの組織だ。

 それが末端であろうと、協力しているというのは明らかに意外だった。

 

「勿論、両組織とも喜んで協力しているって訳じゃないと思うよ。お互いに出来れば相手を殺したいと思っている者は多いだろうね。けど……そういう風に思っていても、現実はそう簡単にはいかない。連邦軍やジオン軍……ジオン共和国軍からは追われ、ルナ・ジオンにもちょっかいを出せば徹底的に狙われる。そんな状況の中で、相手が憎むべき敵であっても協力出来るならする。……いや、協力しないと組織の存続が難しいんだろうね。これが地球なら、まだある程度余裕があるんだろうけど」

「だろうな」

 

 宇宙においては、空気のある場所というだけで非常に重要だ。

 それに比べると、地球ではどこであっても空気がある。

 その代わり、極端に暑い砂漠とか、極端に寒い北極とか……あるいは湿気がもの凄かったりと、非常に暮らすのが大変な場所もあるが。

 もっとも、そのような場所だけにインビジブル・ナイツの行動に呼応して、それこそ軍隊か何かのように派手に動き回れたのかもしれないが。

 

「けど、ギレン派はともかく、キシリア派はキシリアが直接率いてる筈だ。……本人は火星にいるって話だが、ギレン派と協力したらキシリアが許したりするのか?」

「どうだろうね。けど、キシリアにしてみれば協力しているのではなく、利用しているという認識なのかもしれないよ?」

「利用か。その方がキシリアらしいと言われれば、それまでか」

 

 キシリア機関という諜報組織を率いていただけに、自分の感情よりも実利を重視してもおかしくはない。

 とはいえ、ルナ・ジオンのようにシャドウミラーのシステムXNやフォールド通信を使える訳ではない以上、火星と地球圏では連絡をするのも簡単ではない。

 そうなると、ギレン派とキシリア派が協力しているというのは、キシリアの知らないところで現場の判断として行われているという可能性も高いか。

 

「ともあれ、ジオン軍残党が手を組むにしても、面倒なことにならないといいんだけどな」

 

 そんな風に言いつつ、俺はシーマとの一時を楽しむのだった。

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