転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3747話

 ゼロ・ジ・アールの両手によって捕らえられたゲルググは、当然ながら動けない。

 あるいは掴まったのが胴体だけで手が自由に動かせるのなら、ビームナギナタを振るう事も出来ただろう。

 だが、両手ごとゼロ・ジ・アールの左右の手に掴まっている以上、ビームナギナタで攻撃する事も出来ない。

 連邦系MSのように頭部バルカンでもあれば、多少は攻撃できたかもしれないが、ジオン系は基本的に頭部バルカンは採用されてないんだよな。

 FS型とかの少数は例外だが。

 また、ゼロ・ジ・アール程ではないにしろ、内蔵メガ粒子砲とかそういうのがあれば、自爆覚悟で反撃も出来るかもしれないが、ゲルググにその手の武器はない。

 いや、M型とかならアレックスに似たような武器が腕にあったりするんだが、このゲルググは普通の……ノーマルのゲルググだ。

 とはいえ、ジオン軍残党にしてみればゲルググというのはそう簡単に入手出来るものではない。

 ゲルググが高性能MSなのは事実だが、何しろ実際に量産されたのは1年戦争後半……どころか、終盤だ。

 当然ながらそこまで生産数は多くなく、しかもそれまでの戦いによってベテランパイロットの多くが死んでおり、新兵や学徒兵といった者達が乗っていた。

 結果として、ゲルググの多くは撃破され、残存している機体は多くはない。

 そういう意味では、ノーマルのゲルググとはいえインビジブル・ナイツが入手出来たのは幸運だったのだろう。

 

「お前はエリク・ブランケか?」

 

 捕らえたゲルググに対し、接触回線でそう尋ねる。

 オープンチャンネルで話してもいいのだが、その場合はフィフス・ルナ側でもその通信を傍受出来るかもしれないし、あるいはこちらに近付いているファントムスイープ隊に傍受される可能性もあった。

 ユーグとかならともかく、マオと通信で話していた時に出て来たスチュアートとかいうホワイトベース級の艦長に聞かれたら面倒な事になりかねない。

 そんな訳で、接触回線……俗に言うお肌の触れ合い回線によって通信をした訳だ。

 

『貴様、何故私の名前を!?』

 

 エリクは少しでもこちらに情報を与えたくない為か、映像モニタに顔を表示するような事はなく、音声だけを送ってくる。

 

「クリストとシェリー……いや、お前にはタチアナと言った方がいいか? その2人からある程度の情報は聞いている」

『な……に……?』

 

 俺の言葉が理解出来ないといった様子で呟くエリク。

 その気持ちは分からないでもない。

 エリクにしてみれば、クリストは地上からHLVで脱出する時に殿として残り、戦死したか……幸運でも捕虜となったと思っていたのだろうから。

 そう思っていたところで、俺の口からクリストの名前が出た。

 それだけなら、動揺させる為の嘘とも言えたかもしれない。

 だが、俺はしっかりとエリクの名前を口にしたのだ。

 他にもシェリー……タチアナの名前が出たのも、エリクにとっては大きかったのだろう。

 

「俺はムウ……いや、今は別に隠す必要はないか。アクセル・アルマーだ。この名前に聞き覚えがあるんじゃないか?」

『アクセル・アルマー……だと? それは、シャドウミラーの……』

「正解だ。ちなみにUC世界風に言うのなら、月の大魔王なんて異名を持っていたりもするな」

 

 そう言うも、自分で自分の異名を口にするのって微妙に恥ずかしいと思うのは俺だけか?

 その異名が使えるのなら、多少の恥ずかしさは我慢するしかないが。

 

「そしてこのゼロ・ジ・アールは見るからにジオン系だし、他のMSもザクやギャンといった機体だ。それを見れば、俺達が連邦軍ではなくルナ・ジオン軍なのは分かるだろう?」

『裏切り者が何故私達の邪魔をする!』

 

 我に返ったのか、叫ぶエリク。

 にしても、裏切り者か。

 最後までジオン軍……ジオン公国に所属していた者達にしてみれば、ルナ・ジオンはジオン公国を裏切った者達という事になるのだろう。

 ましてや、俺はそのルナ・ジオンの後ろ盾となっているシャドウミラーを率いる身だ。

 エリクにしてみれば、憎んで当然の存在だろう。

 ……いや、それだけじゃないな。

 インビジブル・ナイツはサイクロプス隊と同じく、キシリアの率いる突撃機動軍に所属していた。

 つまり、俺達がルナ・ジオンを建国した時の拠点はグラナダ……月だった。

 しかし、その月は俺に……ニーズヘッグを使う俺だけに負けて、月から追い出された。

 そういう意味では、エリクが俺を強く憎むのも仕方がない。

 もしかしたら……本当にもしかしたらの話だが、月で俺と戦った中にエリクやインビジブル・ナイツがいた可能性もある。

 

「さっきも言っただろう? クリストやタチアナに頼まれたからだ。お前達がアデン基地で脱出した後、クリストと俺達が戦っている場所にタチアナが乱入してきて、その後で諸々あって現在クリストとタチアナはルナ・ジオンで保護している」

 

 そう言って、ふと気が付くと、不思議なことに他の場所でも戦闘が止まっていた。

 アクト・ザクに乗っているバーニィや、それ以外にもシュタイナーを含めたサイクロプス隊が乗っているギャン・クリーガー。

 それに対するインビジブル・ナイツの面々は、こちらから距離をとって動きを止めている。

 これは……もしかしたら、俺とエリクの通信を聞いているのか?

 俺とエリクの会話は、接触回線で行われている。

 だが、エリクがインビジブル・ナイツの通信回線によって、俺との会話を流しているのなら、このような状況にも理解出来る。

 とはいえ、この状況は俺にとって決して悪くはない。

 このまま上手く説得出来れば、インビジブル・ナイツは大人しくこちらに降伏してくる可能性がある。

 もし説得が失敗しても、ゲルググはゼロ・ジ・アールの手によって押さえつけられている状態なので、それこそインビジブル・ナイツを率いるエリクは既に捕まったも同然なのだが。

 

「クリストとタチアナを捕虜にした際、大人しくするという条件と共に要求されたのは、インビジブル・ナイツの面々を殺さず生け捕りにする事だ。……また、ルナ・ジオンはインビジブル・ナイツを迎え入れる用意がある。どうだ? 大人しく降伏してくれると、こっちとしても助かるんだが」

『ふざけるな! 水天の涙はまだ終わっていない!』

「いや、終わっただろ。そもそもオーガスタ基地を攻撃出来なかった時点で、それは確実だ。その上、フィフス・ルナにいる連邦軍がここを取り戻すべく戦力を整えているだろうし、それ以外にもお前達と因縁深いファントムスイープ隊が現在ここに向かっている。俺達だけを相手にしてここまで苦戦をしている状況を考えれば、そこまで強気な発言は出来ない筈だが?」

『ぐ……それは……』

 

 俺の言葉に悔しそうな様子を見せるエリク。

 映像モニタが繋がってないので、本当はどのように思っているのかは分からない。

 だが、声を聞く限りでは間違いなく悔しがっている。

 俺達を相手にしただけで、戦局は不利な状況なのだから、それも当然だろうが。

 あるいは、俺が……そしてゼロ・ジ・アールがこの戦いに参加していなければ、エリクの技量もあってそれなりにサイクロプス隊と戦えたかもしれない。

 ……もっとも、俺がいなければそもそもサイクロプス隊がフィフス・ルナに来る事もなかったのだが。

 いや、そうでもないか?

 フィフス・ルナのマスドライバーを占拠すれば、地球上のどこにでも自由に――地球がフィフス・ルナに向いている場所に限るが――攻撃出来る。

 それはつまり、ハワイも攻撃される可能性があるという事だ。

 そしてハワイはルナ・ジオンの地球上の唯一の領土で、ルナ・ジオンとジオン軍残党の関係は多少の例外はあるにしろ、エリクが裏切り者と呼んだのを見れば分かるように決して良好ではない。

 そうなると、もし俺がいなくてもルナ・ジオンとしてはフィフス・ルナをインビジブル・ナイツに占拠されたままには出来ないと判断して部隊を送り込むのは不思議な話ではない。

 とはいえ、その場合は俺が関係していないので連邦軍……それこそファントムスイープ隊と共に行動するとか、そんな感じになるだろうが。

 

「分かったら、大人しく降伏してくれ。クリストとタチアナが月で待ってる」

『ぐ……それは……だが、この水天の涙は皆の意思を受け継いで行っている作戦だ! この作戦の為に、多くの者が命を落とした! だというのに、それを放り投げて私だけ安穏としろと言うのか!?』

「……その気持ちは分からないでもない。けど、何度も繰り返すようだが、俺達がここに来た時点で水天の涙は失敗してるんだ。その上で、お前と親しいクリストやタチアナを見捨てて……あの2人の思いも無視して、失敗が確定している水天の涙に拘る必要があるのか?」

『だが……』

 

 なかなか折れないな。

 俺はエリクの性格をあまり知らない。

 とはいえ、話していれば大体は理解出来る。

 その辺の感覚からすると、そろそろ折れてもいい頃合いなんだが。

 どうやら俺が思った以上にエリクの責任感は強いらしい。

 とはいえ、クリストとシェリーの願いを叶える為、そして何よりインビジブル・ナイツという戦力を確保する為には、どうにかして水天の涙をここでエリクに諦めさせる必要があった。

 さて、どうするか。

 

『アクセル代表、フィフス・ルナの連邦軍のMS部隊が接近中です!』

 

 カトンボからの通信。

 その言葉にタイミングが悪いと思うが、同時に納得もする。

 フィフス・ルナのMS部隊にしてみれば、俺達の攻撃によってインビジブル・ナイツが動きを止めたのだ。

 機体のダメージそのものはそこまで大きくはないものの、それでも動きを止めているのは事実。

 なら、ここで自分達が出れば労せずしてインビジブル・ナイツを倒せる……いや、それだけではなく、自分達の手柄になると、そんな風に思ってもおかしくはない。

 正直なところ、その気持ちは分からないでもない。

 何しろフィフス・ルナに所属する連邦軍にしてみれば、最初の襲撃は撃退したものの、その後でエリク達が合流した戦力にはマスドライバーを占拠されているのだ。

 フィフス・ルナ全体が占拠された訳ではないにしろ、これは間違いなくフィフス・ルナに所属する連邦軍……特に上層部にとっては失態だろう。

 それもちょっとやそっとの失態ではなく、出世に大きく響くどころか、降格されてもおかしくはない大失態だ。

 だからこそ、その失態を少しでも取り返す為に今がチャンスだと乗り込んできた……のか?

 

「ルナ・ジオン軍として忠告しろ。現在戦闘中につき、戦場を混乱させるような真似はしないようにと」

『了解しました! ですが、それを聞かない場合はどうしましょう?』

「その場合はゴップの名前を出せ。それでも無視するようなら、こっちで対処する」

 

 普通に考えれば、ゴップの名前を出されてそれを無視することは出来ない。

 だが、それはあくまでも普通に考えればの話だ。

 今回の相手は、既に大きな失態を犯している以上、ゴップの名前を出してもそれを無視する可能性は十分にあった。

 であれば……その場合、こっちも相応の対応をする必要があるだろう。

 大人しくこっちの指示に従ってくれれば、こっちとしても楽なんだが。

 とはいえ、その辺については成り行きに任せるしかない。

 

「聞いていたな? 時間がない。どうするか決めて貰おう」

 

 エリクにそう言う。

 インビジブル・ナイツの面々が、エリクの機体を通して俺との通信を聞いていたように、今回も俺の機体を通して接触回線で繋がっているエリクの機体にカトンボからの通信については聞こえていた筈だ。

 そしてエリクの機体を通して、インビジブル・ナイツにも。

 

「一応言っておくが、この状況からお前達が逆転する道筋はない」

 

 いや、実際にはあるかもしれないが、今はエリクの心を折るのを優先させて貰う。

 とはいえ、実際この状況から逆転するのは難しいと思う。

 例えばエリクがニュータイプに覚醒しても、既に機体をゼロ・ジ・アールの両手で押さえ込まれている状況ではどうしようもないだろうし。

 あるいはエリクではなく、まだ動けるインビジブル・ナイツの面々がニュータイプに覚醒しても、この状況を覆すのは難しいだろう。

 後は……突然隕石が飛んでくるとかか?

 可能性としては決して高くない……どころか限りなくそうなる可能性は低いものの、ゼロではない。

 ゼロではない以上、そうなる可能性はない訳ではないのだ。

 ……そうなったとしても、何とか出来る自信はあるが。

 

『ぐ……しかし……』

「何度も言うようだが、クリストとタチアナが待っているぞ? ……ああ、忘れていた。ちなみにシャドウミラーの治療技術を使えば、クリストの足も治療可能だ。インビジブル・ナイツが大人しく降伏するのなら、その辺も考えていい」

『何っ!?』

 

 俺の言葉が予想外だったのか、エリクが叫ぶ。

 無理もないか。

 クリストの足はUC世界の治療技術ではどうしようもないのだから。

 だが、シャドウミラーであれば、その辺はどうとでもなる。

 

「どうする? 早く決めてくれないと、フィフス・ルナの連邦軍がやって来るんだが」

 

 時間はない。

 そう言うと、数秒黙り込んだエリクがやがて口を開く。

 

『降伏……する』

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