転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3748話

 エリクの口から出た、降伏するという言葉。

 それは俺にとって最善の結果だった。

 ……エリクの心を折ってしまった事が、これからどう影響するのかはちょっと分からない。

 だが、それでもインビジブル・ナイツが全滅するまで戦うよりは悪くない結果だろう。

 アフターケアは、クリストやシェリーに任せるとしよう。

 あの2人が生きていて、そしてクリストの足が治るというのはエリクにとっても悪くない話だろうし。

 

「よし、全機聞いたな? インビジブル・ナイツはこのまま全員連れていく。エリク、お前達はカトンボ……俺達の母艦に向かえ」

『了解した。……だが、私が聞くのはどうかと思うが、本当に大丈夫なのか?』

 

 そう聞いてくるエリク。

 心が折れたと思っていたが、すぐにこうした事を聞いてくるとなると、そうでもないのか?

 とはいえ、降伏すると決めた以上、これは寧ろ悪くない展開か?

 エリクの性格を思えば、一度降伏をすると決めた以上、カトンボの中で暴れ出すとか、そういう事はないと思うし。

 

「問題ない。フィフス・ルナの連邦軍が来ても、一度降伏した以上は俺達が守る」

 

 エリクと、恐らくエリクのゲルググを通して聞いているインビジブル・ナイツの面々を安心させる為にそう言ったのだが……あるいはそれがフラグとなってしまったのだろう。

 次の瞬間、カトンボからの通信が入る。

 

『アクセル代表、フィフス・ルナの連邦軍が進軍を始めました! 数分も掛からず、この戦場に到着します!』

 

 慌てたように言ってくるその言葉だったが、それを聞いた俺は半ば予想通りの展開に息を吐く。

 フィフス・ルナの上層部にしてみれば、ここで自分達の失態を取り戻さないというのは出世の道が閉ざされる事を意味してるのだから。

 とはいえ、出来れば動かないでこのまま素直に俺達を行かせて欲しいというのが正直なところだったが。

 

「分かった。シュタイナー、サイクロプス隊でインビジブル・ナイツをカトンボまで案内してくれ」

『それは構いませんが……アクセル代表はどうされるので?』

「決まっている。俺が前に出る。勿論、アクセル・アルマーとしてな」

 

 ムウ特務少佐という身分は、ファントムスイープ隊と別行動をしている今となってはもう別に必要ないだろう。

 そしてアクセル・アルマーと名乗れば、フィフス・ルナのMS部隊も迂闊に攻撃は出来ない筈だ。

 自分達の行動によって、連邦軍とルナ・ジオンの亀裂が決定的になる可能性があるのだから。

 ……とはいえ、もし攻撃してきても強硬派が俺に絡んで来た時のようにゴップからMSを貰うというのは難しいだろう。

 何しろ、この戦いはあくまでもフィフス・ルナにインビジブル・ナイツが攻撃を仕掛けた事によるものなのだから。

 連邦軍が攻撃を仕掛けて来ても、俺達が半ば強引にこの戦いに介入したという事でチャラといったところか。

 ん? そうなると、ここで大人しく向こうが退いたら、ゴップとの交渉でこっちが譲歩する必要があるのか?

 まぁ、それは別にいい。

 多少交渉で譲歩した事でインビジブル・ナイツが手に入るのなら、最終的に見て明らかにプラスだろうし。

 

『ですが、それでは……せめて私だけでも一緒に……』

 

 シュタイナーにしてみれば、俺が心配なのだろう。

 それは分かるが、だからといってインビジブル・ナイツをそのままにはしておけない。

 エリクの性格を考えれば、降伏すると一度口に出した以上、カトンボの中で暴れたりといった事はしないと思う。

 だが、エリクはそうでも他のインビジブル・ナイツの面々がそうだとも限らない。

 ……まぁ、カトンボの外でMSを使って暴れた場合はメギロートやバッタが、内部でMSから降りて生身で暴れた場合は量産型Wやコバッタがいるので、そこまで心配はないのだが。

 だが、それらはルナ・ジオンの人員なら慣れているものの、それ以外の者達となるとそうはいかない。

 

「気にするな。連邦軍がどれだけの戦力を揃えたところで、撃破していいのならゼロ・ジ・アールを倒すのは難しい筈だし。言っておくが、決してシュタイナーを足手纏いだと言ってる訳じゃないぞ?」

 

 シュタイナーが足手纏いだったら、足手纏いではない者は一体どれだけいるのか。

 それこそ異名持ちとかエースとか、そういう本当の意味での上澄みの者達だけだろう。

 さすがにシュタイナーをそんな風に足手纏いといったように扱える筈もない。

 これが生身での戦いとかなら、足手纏いといった扱いになるかもしれないが。

 

『……分かりました』

 

 たっぷりと30秒程黙り込んだ後で、シュタイナーは俺の言葉に頷く。

 

「じゃあ、こっちは任せた。俺はフィフス・ルナのMS隊に接触してくる」

『お気を付けて』

 

 シュタイナーとの通信が終わると、次にまだゼロ・ジ・アールが掴んだままだったゲルググに乗っているエリクに通信を送る。

 

「そんな訳で、お前達はカトンボ……俺達が乗ってきた母艦に移動して貰う。大丈夫だとは思うが、妙な考えは起こさないようにな」

『分かっている。降伏した以上、そのような見苦しい事をするつもりはない』

「お前はそうかもしれないが、今回の作戦に参加した全員がそうだとも限らないだろう? その辺は隊長のお前がしっかりと手綱を握ってくれ」

 

 そう言い、ゲルググを掴んでいたゼロ・ジ・アールの手が離される。

 するとそんなゲルググにシュタイナーの操縦するギャン・クリーガーが近付いてきた。

 ゲルググとギャンが並んでいる光景は……ちょっと不思議だよな。

 

「じゃあ、後は任せた」

 

 そう通信を送ると、ゼロ・ジ・アールのスラスターを全開にして移動する。

 俺達がいた場所……マスドライバーのあった場所と、フィフス・ルナのMS部隊がいる場所はそこまで離れていない。

 勿論、フィフス・ルナの大きさを考えると実際には結構離れているが、宇宙での距離感を考えればほぼ同じ場所と考えてもいいだろう。

 結果として、ゼロ・ジ・アールを最大加速させたものの、すぐにその加速を止め、速度を調整する事になる。

 そうして目的の場所……フィフス・ルナのMS部隊のいる場所までやって来たのだが……結構な戦力だな。

 見た感じではサラミス級が3隻にジム系のMSが20機程いる。

 フィフス・ルナの大きさを考えれば、十分に大戦力と言えるだろう。

 しかも、最初にインビジブル・ナイツがマスドライバーを占領しようとした時、そして次に実際に占領された時。

 この2度の戦いでも多少なりとも戦力的なダメージは受けている筈だ。

 その上でこれだけの戦力を用意したのだから、フィフス・ルナに駐留していた連邦軍がどれだけ本気なのかが分かりやすい。

 もっとも、このフィフス・ルナは資源採掘用の小惑星であったのは間違いないが、ソロモン、ア・バオア・クー、ペズン、アクシズ、ルナツーといったように、軍事基地として存在している訳ではない。

 勿論その側面もあるのだろうが、それ以外にも商業区画としての一面もある。

 これは連邦政府が月をルナ・ジオンに奪われてしまった為、戦後復興で少しでも金が必要なのでそれを稼ぐ為にという一面もある。

 また、それ以外にもコーウェンの言っていた連邦軍再編計画やガンダム開発計画でアナハイムと接触する必要があるからというのもあるだろう。

 そんな訳で、純粋な軍事基地ではなく……また、1年戦争が終わった直後でそこまで自由に出来る戦力――というか、戦力を動かす金――がなく、フィフス・ルナに駐留する戦力はかなり少ない。

 そんな戦力を根こそぎ集めてきたのが、恐らく現在ゼロ・ジ・アールの映像モニタに表示されている連中だろう。

 そんな戦力に向かい、オープンチャンネルで通信を送る。

 

「こちら、シャドウミラーのアクセル・アルマーだ。既にマスドライバーを占拠していたジオン軍残党は降伏した」

 

 そう告げると、1分も経たずに映像モニタに連邦軍の軍人が姿を現す。

 

『こちらはフィフス・ルナ所属のジャマイカン大尉であります』

 

 大尉? フィフス・ルナにいる連邦軍を代表するには、少し階級が低いような。

 あるいはフィフス・ルナという純然たる軍事基地ではないからこそ大尉という階級の人物がこうして代表として出てくるのか?

 妙に額が長いその男は、続けて言葉を発する。

 

『シャドウミラーのアクセル・アルマーと名乗りましたが、それはシャドウミラーを率いている人物……つまり、月の大魔王の異名を持つ本人で間違いないでしょうか?』

「そうだ。その判断で間違ってはいない。俺が乗っているMAを見れば、何となく理解出来ると思うが?」

 

 そう言うも、普通に考えれば国を率いる者が戦場に……しかも最前線に出て来るという事は、基本的にない。

 ないのだが、俺の場合は違う。

 色々と前科があり、それこそ月の大魔王の異名を得たキシリアの宇宙突撃軍との戦いでも、俺1人での戦いだった。

 だからこそ、ジャマイカンと名乗った人物も普通なら考えられないと思いつつ、尋ねてきたのだろう。

 もっとも、今の俺は20代の……誰もが知っているアクセル・アルマーの姿だ。

 俺を見れば、アクセル・アルマーであるとすぐに理解出来ると思うんだが。

 

『何故このような場所に……?』

「マスドライバーが地球に対する攻撃に使われれば、シャドウミラーの領土であるハワイも危険だからだ。マスドライバーを占拠された時点で、動くしかなかったんだよ」

『そうですか。それはありがとうございます。お陰でマスドライバーによって地球が攻撃されるという事はなくなりました』

 

 そう言い、笑みを浮かべるジャマイカン。

 これはもしかして、特に問題なく話がつくか?

 そう思ったのだが……

 

『では、アクセル代表。生き残ったジオン軍残党をこちらに引き渡して貰えますかな?』

「何?」

『おや、ミノフスキー粒子の影響で聞こえませんでしたか。では、再度言わせて貰います。フィフス・ルナのマスドライバーを占拠したジオン軍残党を引き渡して欲しいと、そう言っているのですが』

「……俺が捕らえた敵を、横から掻っ攫おうと?」

 

 やっぱりそう簡単に上手くはいかなかったか。

 とはいえ、向こうの気持ちも分からないではない。

 ジャマイカンが言ってるように、今回のマスドライバーの占拠はフィフス・ルナで起きたのだ。

 その上、フィフス・ルナの連邦軍はインビジブル・ナイツとの戦いで大きな被害を受けている。

 そう考えれば、自分達で確保しないと面目丸潰れだろう。

 それこそ一度マスドライバーを占拠されたというだけでも、大きな失点だ。

 それがマスドライバーの占拠を実行したインビジブル・ナイツを1人も撃破や捕らえる事が出来ず、俺達に奪われたとなると面目丸潰れだろう。

 これならいっそ問答無用で攻撃してくれれば、こっちも色々と対処出来たのにな。

 もしかしたら、アクセルだと名乗ったのが悪かったのか?

 けど、あの時は俺のネームバリューで押し通せると思っていたし、この状況では仕方がないか。

 

『勿論、そのような事は思っていません。ですが、こちらとしてもフィフス・ルナを襲った相手を全てルナ・ジオンに渡すという訳にもいかないのは分かって貰えると思いますが』

 

 ジャマイカンの言葉は事実も含んでいるだけに、厄介ではある。

 いっそジャマイカンが強硬派であれば、こっちとしても色々とやりやすかったんだが。

 あるいはジャマイカンは強硬派なのかもしれない。

 だが、俺の知っている強硬派のように、特に考えるような事もなく自分が気にくわないなら攻撃してくる……そんな相手ではない。

 こうして交渉してくる分だけ、厄介な存在なのは間違いなかった。

 これ、本当にどうすればいいんだろうな。

 実際に攻撃をしてきた場合は、それこそ戦闘に持ち込んで有耶無耶に出来るんだが。

 よりによって、なんでこういう時にこういう風に交渉しようとする相手が出て来るのやら。

 とはいえ、ここであまり交渉に時間を掛けるとファントムスイープ隊もここに到着する。

 戦闘になってるのならまだしも、交渉をしている時にファントムスイープ隊がやって来るのは面倒極まりない。

 こうなると、いっそゴップに対する借りという事にして、ゴップから手を回して貰うか?

 そんな風に思っていると、不意にジム……あれはジム・コマンドか? その1機がこちらにビームライフルの銃口を向けてくる。

 ……おい?

 何故交渉が行われている場で、そのような真似をするのか。

 俺には全く理解出来なかったが、これは悪い展開でないのも事実。

 映像モニタの向こうでは、ジャマイカンが乗っているサラミスのブリッジクルーがMSの動きに気が付いたのか、制止するような叫びが聞こえてくる。

 同時にブリッジが混乱している様子も把握出来た。

 ある意味、これは俺にとって悪い話ではない。

 そんな風に思っていると……

 

『くたばれ宇宙人! そんなデカブツで出て来た事を後悔しながら死ねぇっ!』

 

 オープンチャンネルにおいてそんな叫びと共にジム・コマンドのビームライフルが放たれるのだった。

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