転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3750話

 映像モニタに映し出されたマオの表情は、何とも言えない微妙な様子だ。

 マオ……というか、ファントムスイープ隊にしてみれば、本来ならフィフス・ルナのマスドライバーを占拠したインビジブル・ナイツは自分達で倒したかったのだろう。

 だが実際には俺達が先に動き、それによってインビジブル・ナイツは全てこちらで確保してしまった。

 この辺は初動の動きというのもあるし、軍艦の性能の違いもあるだろう。

 後は実際に戦いになった時、インビジブル・ナイツを素早く制圧したのも影響している。

 ゼロ・ジ・アールによって、エリクのゲルググを確保出来たのが最大の幸運だった。

 それによって説得も上手い具合に行われ、俺にとっては最善の結果となったのだから。

 ……だが、俺にとっては最善の結果であっても、ジャマイカンやマオといった立場にいる者達にしてみれば、それは最悪の結果でしかない。

 いや、違うな。

 本当に最悪の結果というのは、インビジブル・ナイツが占拠したマスドライバーで地球にあるオーガスタ基地を攻撃した場合だろう。

 そういう意味では、今回の件は決して良くはないが、それでも最悪という訳でもない。

 

「それで、マオ。俺達に用件というのは? ちなみに言うまでもないと思うが、マスドライバーを占拠した連中の取り扱いについては既にフィフス・ルナ側との話はついてるぞ」

『……それは……私達が来るのが遅かったという事ですか』

「そうなるな」

 

 実際にはファントムスイープ隊が近付いて来てるのを知ったから、急いで話を纏めたというのが正直なところなのだが。

 わざわざそんな事を言う必要はないだろう。

 もしそれを言ったら、ジャマイカンの気が変わるかもしれない。

 そうなったら強硬派の意見に流されて俺を攻撃してくるという可能性も十分にあった。

 その場合は、こちらも相応の対処をする必要がある。

 だが、そうなるとファントムスイープ隊も当然だがなし崩し的にジャマイカン達の味方をする流れとなるだろう。

 ジャマイカン達はともかく、ファントムスイープ隊は曲がりなりにも同じ釜の飯を食った仲という奴だ。

 出来れば殺したくない。

 

『アクセル代表、フィフス・ルナのマスドライバーを解放していただき、ありがとうございます』

 

 意外な事に、本当に意外な事に、マオが選んだのは感謝をするという選択肢だった。

 マオの性格からして、ジャマイカンを唆して攻撃をするといったような手段には出ないと思っていたが、それでもまさかこうして感謝をしてくるというのは予想外だった。

 

「マオに喜んで貰えたようで何よりだよ。ただ、マスドライバーを占拠されたままだと、こっちもハワイを攻撃される危険があった。それを思えば、自分の為でもあるけど」

 

 これは必ずしも嘘という訳ではない。

 俺がエリクを捕らえた時、裏切り者とかそんな風に言われていた。

 それを思えば、ルナ・ジオンの領土であるハワイが狙われる可能性も……かなり低いが、ない訳でもなかった。

 ジオン軍残党にとって、ルナ・ジオンというのは憎悪を向けるに十分な相手なのだから。

 実際、インビジブル・ナイツの動きの一連と関係してるのだろうが、俺がハワイに降りてからすぐにジオン軍残党に襲撃されたし。

 

『いえ、それでも助かったのは間違いありません。……その、彼女はどうしてますか?』

 

 彼女と名前を言わず、その言葉だけで尋ねてくるという事は、シェリーの事だろう。もしくはタチアナと本名で呼んだ方がいいのかもしれないが。

 

「無事だ。現在は月で家族と無事に暮らしている」

『家族と……? そうですか、分かりました』

 

 家族という言葉に不思議そうな様子を見せるマオ。

 だが、ユーグからイフリートにはシェリーの兄が乗っていたという話は上がっていてもいいと思うんだが。

 もしくは、ユーグはシェリーの為を思って何も言ってなかったのか。

 マオは分かっていなかった様子だったが、恐らく後でユーグに聞くなりなんなりするだろう。

 

「じゃあ、悪いけど俺はそろそろ母艦に戻らせて貰う。フィフス・ルナの件は大変だったが、取りあえず今回の一件は解決したんだし、それで満足しておけ」

『色々と思うところはありますが……仕方がないですね。ここで不満を言うのなら、それこそ最初からしっかりと結果を出しておけばよかったのでしょうし』

 

 マオの言葉とは裏腹に、そこに悔しさはない。

 あるいは内心では悔しく思っているのかもしれないが。

 もしくはスパイだったとはいえ、一時的には部下だったシェリーの無事を知ったので、これ以上追求するつもりはなくなったのか。

 理由はともあれ、ジャマイカンの部下にいる強硬派が妙な扇動をしても動かないらしいというのは、こっちにとっても悪くない。

 もっとも、スチュアートがどういう反応をするのかは分からないが。

 見た感じ、典型的な小物といった様子だったし。

 それだけに、ここで俺を倒して大きな利益になるのならファントムスイープ隊に無理矢理命令をして攻撃させるという可能性もある。

 もっとも、その命令にマオ達が素直に従うかどうかは分からないが。

 

「ファントムスイープ隊が精鋭部隊なのは間違いない。次は同じような事があっても、容易に対処出来ると思っている」

 

 ファントムスイープ隊が精鋭部隊なのは間違いないが、同時に問題児の送り先でもある。

 ただの問題児ではなく、相応の技量を持つ者達だが。

 その上で、当初はジム・コマンドだったが、今は全員がジーラインを装備している。

 ちなみにジーラインは高性能なMSだが、ジム・コマンドもまた現状の連邦軍においてはかなり高性能な部類に入る。

 もっとも、ジム・ライトアーマーやジム・スナイパーⅡもジム・コマンドに負けず劣らず高性能な機体だったのだが……まぁ、多分ジム・コマンドはそれなりの数が量産されたという話だし、機体を集めるのはそっちの方が簡単だったのだろう。

 ともあれ、問題児揃いではあるが腕利きで高性能MSを運用しているファントムスイープ隊は、間違いなく精鋭部隊と呼ぶに相応しい。

 ファントムスイープ隊と戦った時は、エリクの技量とイフリートという地上用の高性能MSがあったり、インビジブル・ナイツ側が常に仕掛ける側だったので、防御側のファントムスイープ隊はどうしても不利だった。

 しかし、インビジブル・ナイツのような特殊部隊ではなく、本当に普通のジオン軍残党を相手にした場合、ファントムスイープ隊の実力なら容易に制圧出来る。

 それは俺がファントムスイープ隊と行動を共にしていた時の件から明らかだ。

 もっとも、マオやユーグにしてみれば敵が強かったから負けたという情報は決して許容出来るものではないのだろうが。

 

『そうですね。次に今回のようなことがあった場合、決してこちらが負けるような事はしたくありません』

「頑張ってくれ。インビジブル・ナイツの件はもう終わったが、ジオン軍残党はまだいるだろうし」

 

 実際、今回の水天の涙の関係でジオン軍残党は結構な戦力を使っている筈だ。

 地上ではグラブロ、宇宙ではビグロといったようにMAも使っていたし。

 1年戦争が終わって、初めての大規模なジオン軍残党の動きだったとはいえ、そこに投入された戦力はかなり多い。

 そう考えると、これからジオン軍残党の動きは鈍くなるという可能性は十分にあった。

 とはいえ、それでもジオン軍残党がいなくなったとは思えない。

 例えば、今回のインビジブル・ナイツはキシリア派である以上、ギレン派のジオン軍残党は沈黙していた可能性は十分にある。

 そうなると、これからジオン軍残党が大きく動くのは、ギレン派が行動する時……となる可能性は十分にあった。

 もっとも、これはあくまでも俺の予想だが。

 ジオン軍残党の中には、派閥関係なく協力していこうという者もいるだろうし。

 

『アクセル代表が良い噂を聞けるように頑張ろうと思います』

「そうしてくれ。……じゃあ、いつまでもここにいる訳にもいかないから、俺はそろそろ行く。ユーグとの結婚式には出られないかもしれないけど、悪いな」

『なっ!?』

 

 瞬時に頬を赤く染めたマオを見ながら、通信を切る。

 あの様子からすると、通信が切れた後でもブリッジで色々と騒いでいそうだったが……うん。まぁ、マオとユーグの幸せを祈るとしよう。

 そう考えつつ、ゼロ・ジ・アールを反転させてカトンボに戻る。

 もしかしたら……本当にもしかしたらだが、ゼロ・ジ・アールが後ろを向いた時に背後から攻撃をしてくる者がいるのではないかと思ったのだが、生憎そのような連中はいなかったらしい。

 考えてみれば、無理もないか。

 ジャマイカンの率いるMS隊のジム・コマンドが撃ったビームライフルのビームは、ゼロ・ジ・アールのIフィールドによって弾かれたのだから。

 こうして後ろを向いた時に攻撃しても、恐らく同じ結果になるだろうと予想するのは難しい話ではない。

 Iフィールドの類がなければ、再度攻撃してきた可能性は十分にあったが。

 そんな訳で、その場から移動する。

 ゼロ・ジ・アールの加速力と、何よりフィフス・ルナの大きさを考えれば、マスドライバーの付近で待機しているカトンボのいる場所まで移動するのはそう難しい話ではない。

 

「何か問題はあるか?」

 

 カトンボの側まで移動し、牽引ロープでゼロ・ジ・アールを固定する作業を終えてからカトンボのブリッジに連絡をする。

 すると、すぐに映像モニタに軍人の姿が現れるが、首を横に振る。

 

『いえ、特に問題らしい問題はありません。サイクロプス隊もインビジブル・ナイツも全機収容しました。また、インビジブル・ナイツの面々は現在武装解除をして1つの部屋に纏めてあります』

「そうか」

 

 エリクの性格を考えれば、この状況で騒動を起こしたりはしないだろうと思っていたので、その報告には特に驚くような事はない。

 

『それで、ペズンに帰還という事でよろしいでしょうか?』

「ああ、そうしてくれ。ただ、インビジブル・ナイツはペズンで下ろすんじゃなくて、月まで連れていくから、そのつもりでいて欲しい」

『了解しました』

 

 そう言い、通信が切れるとカトンボが動き出す。

 当然のように、カトンボに牽引されるゼロ・ジ・アールもゆっくりとだが動き出す。

 ……いっそ、ゼロ・ジ・アールは空間倉庫に収納して動いた方がよかったかもしれないなと思うのだが、カトンボに乗っているディアナの技術者達にしてみれば、この状況でも少しでもデータ取りがしたいのだろうから、却下されそうだなと思う。

 今頃は牽引ワイヤーを使って少しでもデータを解析しているディアナの技術者の事はいいか。

 インビジブル・ナイツの事だ。

 インビジブル・ナイツの面々の生け捕りは、クリストとシェリーからの要望だった。

 そうである以上、ペズンで下ろして牢屋に入れるとか、そういう事は出来ないだろう。

 ……もっとも、クリストやシェリーの説得で素直にルナ・ジオン軍に所属してくれるかどうかは分からないが。

 その辺については、それこそクリストやシェリーに任せるか、ルナ・ジオン軍の連中に任せる……もしくは、セイラに会わせてみるのもいいかもしれないな。

 キシリア派だったとはいえ、インビジブル・ナイツもジオン共和国に所属していたのだ。

 そうである以上、ジオン・ズム・ダイクンというのは非常に大きな意味を持つ。

 その娘にして、ジオン・ズム・ダイクンが唱えたニュータイプ……それもUC世界最高のニュータイプともなれば、セイラに従うという選択肢を選んでもおかしくはない。

 セイラはその生まれもあるんだろうが、一種のカリスマ性とでも呼ぶべきものがある。

 本人が意識しているのか、もしくは無意識なのかは分からないが。

 普通ならカリスマ性とかは育ちが影響するんだろうが……セイラの場合はジオン・ズム・ダイクンの娘として生まれたが、父親が暗殺されてからはサイド3を脱出して、地球やコロニーで一般人――金持ちの義理の娘としてだが――として育ったらしい。

 そうなると、やっぱりカリスマ性は生まれ持ったもの、あるいは俺と接触してニュータイプとして覚醒して手に入れたのかもしれないな。

 ともあれ、セイラに会えば恐らくはインビジブル・ナイツの面々も素直にルナ・ジオンに協力してくれると思う。

 ただ、特定の一部みたいにニュータイプという存在……自分達オールドタイプがニュータイプによって駆逐されるかもしれないと、そんな風に思う者もいる可能性は十分にあった。

 連邦の中にそういう連中は多いんだよな。

 勿論、1年戦争時代に連邦に亡命したクルストのように、ジオン側にもそういう奴がいたりする可能性はある。

 とはいえ、インビジブル・ナイツの面々はそこまでニュータイプという存在に神経質になっているようには思えないので、恐らく大丈夫だとは思うが。

 とにかくインビジブル・ナイツがどのようになるのかは、やはり月に戻ってからの話になるだろう。

 一応そこまで酷い事にはならないと思うが。

 その辺は他の面々の活躍に期待するとしよう。 

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