転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3758話

 妙な女との遭遇を終え、天城屋旅館に戻る。

 すると、廊下で雪子と遭遇した。

 どうやら俺があの女と話をしてる間に、高校は終わっていたらしい。

 

「アクセルさん? 一体いつ戻ってきたんですか?」

 

 畳んだタオルの山を手にした雪子だったが、俺を見て驚きの声を口にする。

 雪子にしてみれば2ヶ月近くいなくなっていた俺がこうして戻ってきたんだから、それで驚くのはそうおかしな話ではないか。

 

「丁度今日だよ。そっちは学校が終わってすぐに旅館の手伝いか? 頑張ってるな」

「あ、いえ。その……今日はもう少ししたら、TVの中の世界に行く予定なので。今のうちにやれる事はやっておこうかと」

「そうか。そっちの方も頑張ってるみたいだな」

「はい。マヨナカテレビの一件は出来るだけ早く解決したいので」

 

 そう言う雪子の口調には、強い決意がある。

 ……無理もないか。

 自分も足立によってTVの中の世界に入れられ、もう少しで死ぬところだったのだから。

 それこそ。こうして生き残ったのは、幸運に近い。

 幸運以外にも、里中とかとの絆とかもあったんだろうが。

 

「何とかして足立を見つける必要があるんだけど、それが難しいんだよな」

 

 俺の言葉に、雪子が真剣な表情で頷く。

 恐らく雪子達も、TVの中の世界に入ったら足立がいないかどうかを捜してはいるんだろう。

 しかし、それでも見つける事が出来ない。

 TVの中の世界での出来事については、それこそ足立の方が上といったところか。

 少し暗い表情になった雪子を見て、話題を逸らす。

 

「そう言えば、新しく仲間になった奴はどんな感じだ? 巽完二だったよな」

「ぷっ! ……完二がどんな感じだって……」

「……は?」

 

 何故か吹き出す雪子。

 持っているタオルを床に落としそうになり、慌ててそれを取り繕うが……今ので笑うところがあったか?

 いやまぁ、実際に雪子が笑ったのを考えると、何か笑う理由はあったんだろうが。

 駄洒落……だよな?

 けど、あの程度で吹き出す程に笑うかと言われれば、正直微妙なところなのも間違いのない事実。

 だとすれば、笑いのツボが俺とは全く違うか、実は駄洒落じゃなかった……後者はないか。

 雪子が自分で何を理由に笑ったのか言ってたし。

 俺も別に雪子と親しい訳じゃない。

 親しい訳じゃないが、それでもまさかこういうので笑うというのはちょっと予想外だった。

 

「あー……笑うのはその辺にしておいて……色々と聞きたいんだが」

「く……駄目、お腹が痛い……」

 

 そう言い、ひぃひぃと言う雪子。

 ……エロい意味でひぃひぃ言わせるぞというのは、ドラマとかそういうのでそれなりに聞く。

 ただ、実際にひぃひぃ言ってる奴を見るのはこれが初めてだな。

 夜の行為には慣れているものの、それでもここまで露骨にひぃひぃ言ったりはしないし。

 雪子は天城越えという言葉が出来るくらい、口説くのが難しい相手として知られている。

 そんな雪子をひぃひぃ言わせているのは間違いないが……これを見たら、雪子に惚れてる奴でも即座に恋心が壊れそうな気がするな。

 

「あー……そろそろ落ち着いたか?」

 

 数分が経過し、それでようやく静まった……かと思いきや、俺が聞いた瞬間に再び爆発する。

 

「ぷっ……ぷぷ……駄目……もう、駄目……」

 

 結局雪子が元に戻るのは、更に数分を要する事になる。

 天城屋旅館の廊下で笑っていた雪子だったが、幸いだったのは俺達以外に誰も廊下にいなかったし、通らなかった事だろう。

 一般的な雪子の印象というのは、基本的には大和撫子といったところだろう。

 そんな大和撫子が爆笑しているのを見れば、それを見た者は一体どういう風に思うのやら。

 今が6月下旬で、まだシーズン前ということで客が少なかったというのも影響してるのだろう。

 そして客が少なければ、従業員の仕事も減る。

 もっとも、それでも掃除であったり備品の補充であったりと、色々忙しいのは間違いない。

 実際に学校が終わったばかりの雪子もこうして畳んだタオルを手に、廊下を歩いていたのだから。

 他の従業員がいなかったのは、単なる偶然か。

 あるいは雪子のこの癖……癖? とにかくこれを従業員も知っていてもおかしくはないが。

 何しろ雪子は従業員と接する機会が多いのだから。

 

「あー……今度こそ本当に落ち着いたか?」

「……はい」

 

 さすがに俺の前で爆笑したのは恥ずかしかったのか、薄らと頬を赤くしながらそう言う。

 もっとも、その頬が赤いのは照れよりも爆笑した結果のような気がしないでもないが。

 

「それで、巽だったか。その巽はどんな感じなんだ?」

「ぷ……」

「いや、それはもういいから」

 

 まだ笑いの発作が治まってなかったらしく、雪子は再び笑いそうになる。

 完二という名前を出さずに巽と呼んでいても、まだ駄目らしい。

 それでもそこまで大きな発作ではなかったようで、ある程度落ち着いたところで口を開く。

 

「すいません」

「気にするな。で? どんな具合なんだ?」

 

 具体的な名前を出すと、また爆笑しそうなのでそんな風に尋ねる。

 それが功を奏したのか、それともある程度マシになったのか、とにかく雪子は今度こそ笑わずに口を開く。

 

「その……元々荒事には慣れていたみたいだから、シャドウとの戦いにはそこまで問題はないみたいです」

「そうか。なら、いいんだが」

 

 一般人がシャドウと戦うというのは、命懸けだ。

 五飛やムラタのように戦いに慣れている者、あるいは戦いを好む者であれば問題はない。

 だが、その手の経験が全くない者……そのような者が命懸けの戦いをするというのは、それなりに心構えが必要となる。

 もっとも、この事件の原作の登場人物だと考えれば、その辺はあっさりと乗り越えてもおかしくはないが。

 それに……足立によってTVの中の世界に入れられたという事を考えれば、その中で目覚めてもう1人の自分と向き合い、それによってペルソナ使いとなる。

 そう考えれば、自分のペルソナを使ってシャドウと戦うのはそこまで問題なかったりするのかもしれないな。

 

「じゃあ、俺はそろそろ行く。雪子達がTVの中の世界に行く時は、その巽というのも来るんだろう? その時に実際に会ってみるよ」

 

 そう言うと、雪子は納得してタオルを置きに俺の前から立ち去る。

 うーん……こう、俺の恋人の中には和服というか着物を着るようなタイプはいないんだよな。

 こうして雪子の後ろ姿は新鮮だ。

 いや、俺の恋人達の中でも千鶴辺りは着物が似合うか?

 一瞬そうも思ったが、すぐに却下する。

 誰から聞いた、あるいは何で見たのかはちょっと忘れたが、和服や着物の類は胸が大きいと似合わないとか何とか聞いた覚えがある。

 千鶴は俺の恋人の中でも最大級の胸を持っており、それを考えると着物は似合わないだろう。

 だとすると……凛やクリス辺りか?

 とはいえ、この2人も俺との夜の生活が影響してるのか、平均以上の大きさにはなってるんだよな。

 そうなると、和服や着物は似合わない……ん? あれ? それは浴衣だったか?

 正確には色々と違うのだろうが、その辺にあまり興味のない俺にしてみれば似たような物にしか見えないんだよな。

 そんな訳で、俺の恋人達が和服や着物を着るのは……あまり人前では着ない方がいいのかもしれない。

 もっとも、夜の行為の時には話が別だったが。

 そんな風に思いつつ、俺は大広間に向かう。

 雪子に会った以外は誰とも遭遇せず、普通に大広間に到着する。

 

「アクセルさん、戻ってきたって聞いてましたけど……お久しぶりです」

 

 大広間にいた花村が、俺を見てそう挨拶してくる。

 他の面々……鳴上や里中もいるし、1人見覚えのない男もいる。

 なるほど、これが巽か。

 見た感じ、体格は花村よりも上だ。

 顔つきも強面で、少し聞いた情報通りのように思える。

 

「ああ、そっちも新しい仲間がいるようだな」

「あ、あはは。……まぁ、その……おい、完二!」

「ああ? なんすか?」

「この人がアクセルさんだ。とんでもなく強い人だから、喧嘩を売ったりはするなよ」

「ちょっ、俺を何だと思ってるんすか!」

 

 いきなり喧嘩を売るなと言われた巽が、花村に対して不満そうに言う。

 この様子を見ると、外見は強面であっても実際にはそうでもないタイプか?

 

「だってお前、うるさいからって暴走族を潰したりしたんだろ? なら、アクセルさんにいきなり喧嘩を売ってもおかしくないと思わないか?」

 

 うん、どうやら外見と中身が違うというのは俺の気のせいだったらしい。

 

「それは……」

「陽介、その辺にしておきなよ。完二はお母さんの為を思ってやったことなんだから」

「ちょっ、鳴上先輩!? いきなり何を言ってるんすか! お袋の事なんか関係ないっすよ!」

 

 鳴上の言葉に、巽が叫ぶ。

 うーん、こうして見ると巽は強面だが、意外と弄られキャラなのかもしれないな。

 ちなみに強面なのは間違いないが、俺にしてみればそこまで気にする程ではない。

 今まで戦ってきた面々を思えば何て事はないし、それを抜きにしても同じペルソナ使いという意味で荒垣の方がもっと迫力がある。

 ……まぁ、話を聞いてる限り、巽はチンピラのように見えるが実際はそうではないのに対して、荒垣はチンピラ達が集まる場所で一種の顔だったのだから、その辺の違いだろう。

 

「とにかくだ。……俺はアクセル・アルマーだ。巽に分かりやすく言えば、ムラタや五飛の上司と思って貰えればいい」

「まぁ……その、話は聞いてるっすよ。それにあの2人の強さも知ってるし、その上司だと考えれば、アクセルさんも強いんすよね?」

「そうだな。俺も強さには自信がある」

 

 生身にしろ、PTを使った戦闘にしろ、俺は今まで多くの……それこそ、数え切れない程の戦いを繰り広げてきた。

 その戦いの経験から、そして何より俺がこれまで倒してきた者達の事を思えば、そのような者達に勝利してきた俺が自分の強さに自信はないなんて事は、到底言えない。

 

「ならいいっす。足立とかいう奴をぜってーボコる。それを目的に行動してるっすから。それに、俺と同じような目に誰かが遭わねえようにするにも、それが最善の行動でしょうし」

 

 そう告げる巽の目には、強い思いが宿っている。

 本人にしてみれば、マヨナカテレビの一件は絶対にどうにかしたいと……するべきだと、そのように思っているのだろう。

 

「それに……小西の姉ちゃんを助けたのも、アクセルさんだって聞いてますし」

「小西の姉ちゃん?」

 

 小西という事で思い浮かぶのは、早紀の事だ。

 自分に父親くらい……というのは少し大袈裟かもしれないが、とにかくかなり年上の堂島に恋をしている人物。

 一種の吊り橋効果的なものではないかと思ったのだが、俺がいない2ヶ月の間にも着々と堂島に対して攻勢を強めているらしいのを考えると、吊り橋効果の類じゃなくて普通に恋をしてるのかもしれないな。

 

「あー、どうやら早紀先輩の弟と完二は幼馴染みみたいで。それで早紀先輩の事も知ってたみたいです」

「何でも、このままだと尚紀の奴も足立って奴に狙われていたかもしれないとか。それを匿って貰ってるんすから、感謝しない訳にはいかないっすよ」

 

 外見に似合わず、友人思いらしい。

 あるいは強面で人に誤解されやすいので、友人思いになったのかもしれないが。

 

「早紀の家族を助けたのは、俺じゃなくて美鶴だ。感謝するなら美鶴にしろ」

「勿論感謝はしたっすよ。ただ、桐条さんからアクセルさんのお陰でもあるって聞いたんで」

「まぁ、そう言うのなら取りあえずその感謝は受け取っておくか。……幼馴染みに会いたいのなら、取りあえずこの件を早く解決しないとな」

「そうっすね」

 

 そんな風に話していると、やがて早紀が姿を現す。

 1人だけ遅かったのは、恐らく3年だからだろう。

 ……考えてみれば3年のこの時期にこういう騒動に巻き込まれるってのは、最悪だよな。

 進学なり就職なりで考えないといけないってのに。

 もっとも、一昔前と違って最近では高校を卒業して即就職という者は……いない訳ではないが、かなり数は少ないらしい。

 基本的には大学、あるいは短大や専門学校に通うのが一般的だ。

 そう考えると、早紀も恐らく進学なのだろうが……堂島との関係を考えると、就職は就職でも永久就職、堂島のお嫁さんを目指している可能性もあったりする。

 少し話を聞いた限りだと、堂島の娘の菜々子と早紀はかなり仲が良いようだし。

 将を射んと欲すればまず馬を射よを地でいってる感じか。

 そんな風に思っていると、堂島を捜しているのだろう早紀と視線が合う。

 すると早紀は一瞬驚きの表情を浮かべるも、笑みを浮かべてこっちに近付いてきた。

 早紀が好きなのは堂島だ。

 それは間違いない。

 だが、同時に俺もまた足立によってTVの中に入れられそうなところで助けたという事実がある。

 そんな訳で、早紀にとって俺は恋する相手ではないが、恩人や友人として好意を抱いているらしい。

 もしかしたら、早紀の好きな相手が俺になっていた……そんな未来があった可能性もあるんだよな。

 もっとも、そうなればなったで、花村との間で色々と問題が起きたと思うが。

 そんな風に思いながら、俺は早紀と話をするのだった。

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