転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3767話

「うおおおおおおっ! マジっすか!?」

 

 花村の歓声が大広間に響く。

 とはいえ、驚いてるのは花村だけではなく、里中や鳴上、巽、早紀といった他の高校生組も同様だった。

 雪子なんかは、シェリルのような世界的な有名人が来た為か、驚くというよりも半ば恐怖に近い表情すら浮かべていた。

 ……無理もないか。

 もしシェリルが天城屋旅館に不満があって、それを何らかの手段で発信した場合、この天城屋旅館は大きな被害を受けるのは間違いないのだから。

 それこそ最悪の場合は老舗旅館としてやって来た天城屋旅館が閉められる……という事になってもおかしくはない。

 以前……雪子がまだこの旅館を継ぐのを嫌がっていた時なら、あるいはシェリルがそういう行動をしてもそこまで気にする事はなかっただろう。

 だが、今の雪子は天城屋旅館を継ぐのに積極的だ。

 そんな中でシェリルが来て、ネガティブな感想を口にしたりした場合……と、多分だけどそんな事を考えているのだろう。

 

「えっと、その……アクセルさん。一応、本当に一応聞きますけど、本物ですよね?」

 

 早紀がシェリルから視線を離せないままの状況で聞いてくる。

 早紀にとってもシェリルは憧れの存在なのだろう。

 誰から聞いたのかはちょっと忘れたが、早紀は八十神高校においてもいわゆるクラスで主導権を握っている……こういうのを何と言うんだったか。そう、クラスカースト? そのトップの1人なんだとか。

 お洒落とかそういうのに敏感でセンスがいいとか。

 そんな早紀だけに、シェリルについては当然のように知っていたらしい。

 いやまぁ、そういうのに殆ど興味を持ってなさそうな里中や巽ですらシェリルについて知っていたのだから、そのような状況で早紀がシェリルについて知らないという事はないと思うが。

 

「ああ、本物だ。……知ってるかどうかは分からないが、シェリルの所属している事務所は桐条グループの傘下にある。そう考えれば、ここにシェリルがいても不思議じゃないだろう?」

「それはそう……って、おかしいですよ? 明らかにおかしいですよ?」

 

 ちっ、上手く誤魔化せるかと思ったんだが、どうやら駄目だったらしい。

 とはいえ、それでもシェリルがここにいる以上は仕方のない事なんだが。

 

「まぁ、簡単に言えば……シェリルもシャドウに対抗するだけの力を持っているからというのもあるが、それ以上に少し骨休めに来たというのが正しいな」

「え……こんな状況の稲羽市にですか? 住んでる私が言うのもなんですけど、何も特別なところはないですよ?」

「あら、そうでもないでしょう? この天城屋旅館の温泉はかなり良いと聞いてるわよ?」

「……えっと、はい。その……」

 

 さり気なく会話に混ざってくるシェリルに、早紀はどう反応したらいいのか分からないらしい。

 そんな早紀の様子に笑みを浮かべたシェリルは、更に言葉を続ける。

 

「それにアクセルがここにいるんだから、アクセルに会うには私がここに来るしかないでしょう?」

「えっと……その……シェリルさんはアクセルさんとどういう関係なんでしょう?」

 

 先の言葉に、シェリルは笑みを浮かべて俺の腕を抱く。

 腕によって潰される、シェリルの柔らかな双丘の感触。

 それは早紀から見ても、理解出来たのだろう。

 驚きと羞恥……いや、圧倒的に驚きの方が強いまま、俺とシェリルに視線を向けている。

 

「ちょっ、雪子!?」

 

 シェリルの柔らかな感触を楽しんでいると、不意にそんな声が聞こえてきた。

 その声に、俺だけではなく早紀も……そして他の面々も声のした方に視線を向ける。

 するとそこでは、雪子が驚きの表情を浮かべてこっちを見ていた。

 我知らず、後ろに数歩後退ってバランスを崩しそうになり、里中に支えられている。

 やっぱりシェリルが俺とそういう関係だというのは、雪子のようなそういう経験が少ない者にしてみればショックが大きいのか?

 あるいはシェリルのファンだけに、俺という恋人がいるのがショックだったとか。

 

「取りあえず、雪子はまだ仕事もあるだろうし部屋で休ませた方がいいんじゃないか?」

「あ、うん。そうね。分かった。……雪子、行こう。旅館の仕事が忙しくなる前に、今は休んでおいた方がいいわよ」

「え? ……あ、そうね。じゃあ、そうしようかしら」

「ほら、私が部屋まで送るから」

 

 そう言い、里中は雪子と一緒に大広間を出ていく。

 

「何だったんだ?」

「……アクセルは知らない方がいいと思うわ。女には色々とあるのよ」

「シェリル?」

 

 大広間から出ていった2人を心配していると、シェリルがそんな風に言ってくる。

 恐らくシェリルは何かがあったと理解しているんだろうが……この様子を見る限りだと、俺が何を聞いても素直に話してくれそうにはないな。

 シェリルの性格からして、その辺は頑固だったりするし。

 

「シェリルさん……色々と大変そうですね」

 

 近くにいた早紀が、何故かシェリルとの距離を一気に縮めていた。

 一体何があった?

 シェリルはシェリルで、そんな早紀に笑みを浮かべているし。

 この2人、意外と気が合うのか?

 

「何だか分からないが、取りあえず雪子は大丈夫という事でいいのか?」

「そうね。本人に本当にその気があるのなら、これから自分で行動を起こすでしょうし」

「……行動?」

 

 シェリルの言葉に疑問を抱く。

 雪子が天城屋旅館を継ぐ決意をしたのは、もう知っている。

 その為に、以前よりも熱心に旅館の仕事を行っているのも、当然のように知っている。

 そういう意味ではもう行動に移しているのだが、シェリルが言う行動はそれとは別の事なのか?

 いや、話の流れからするとそうなのかもしれないが、それ以上に雪子が行動するというのは何の事なのか……ちょっと分からない。

 

「大変そうですね」

「でしょう?」

 

 そして早紀とシェリルが先程と同じようなやり取りをまだ行っていた。

 ただ、先程と違うのは……

 

「だからこそ、いいんだけどね」

「そうなんですか? こう言っては何ですけど、シェリルさんの趣味が分かりません」

「ふふっ、お子様にはそうかもしれないわね。その辺が分かるようになれば、大人の女……もしくは良い女と呼ばれるようになるのよ?」

 

 いや、大人の女って……時の指輪で年齢は変わっていないが、今のシェリルは17歳。

 つまり、高校3年の早紀よりも年下……あるいは誕生日によっては同年齢かもしれないが、とにかく本人が言う程に大人の女って訳じゃないんだが。

 いやまぁ、その身体はもう少女ではなく完全に大人の女なのは俺も否定しないけど。

 ただ、その辺は年齢差というよりも発育のいい白人系のシェリルと、日本人の早紀の差だろう。……俺との夜の行為がシェリルの身体の一部の成長に関係していないとも言い切れないが。

 とはいえ、その辺についてここで突っ込みはしない方がいいか。

 

「さて、そろそろ落ち着いて貰おう。今日の予定についてだが、見ての通りシェリルが来ている。既にアクセルから聞いた者もいるだろうが、シェリルはシャドウに対抗する力を持っている。それもペルソナ使いとしてではなく、魔力を使ってのものだ」

 

 その言葉に、シェリルに向けられる視線が変わる。

 特に早紀だ。

 今まで話していた相手が、実はペルソナを使うでもなくシャドウを倒せるというのは、早紀にとって驚きでしかなかったのだろう。

 これがシェリルでなければ、早紀も……いや、話を聞いていた鳴上、花村、巽といった面々も驚いたりはしなかった筈だ。

 だが、シェリル……世界的に有名な歌手のシェリルが、ペルソナを使わずにシャドウを倒す実力を持っているというのだ。

 それに驚くなという方が無理だった。

 

「ちなみに、さすがに五飛やムラタ程には強くないけど、それでも今回の件でペルソナ使いになった面々よりは強いぞ」

 

 シェリルは世界的な歌手……それもペルソナ世界だけではなく、他の世界でも同様に有名な歌手だ。

 ストーカーや襲撃してくる相手への対処を考えると、しっかりと強くなっておく必要があった。

 それでも実働班の面々と比べると、どうしても劣ってしまうのだが。

 これは仕方がないだろう。

 実働班は非常時……出撃するようなことがない場合、訓練こそが仕事となる。

 PTを始めとした人型機動兵器に乗って模擬戦を行ったりもするが、ペルソナ世界のように生身での戦いが主流である世界の事も考えると、そちらも十分に鍛える必要がある。

 あるいはPTのような人型機動兵器を使った戦いのある世界でも、撃墜や故障、それ以外にも何らかの理由によって自分の機体が動けなくなった場合、コックピットから出た後は生身で行動する事になるのだ。

 その時の為にも、生身での戦闘訓練は必須となる。

 そんな訳で、実働班の面々は生身での戦闘訓練も相応に重点を置いて行われている。

 それと比べると、シェリルは実働班以外の面々と比べると、自衛の意味も込めて相応に訓練を行っているが、それでも実働班の者達と比べると、どうしても時間で劣る。

 ……密度という点では、シェリルも決して実働班に負けてはいないのだが。

 特に五飛もムラタも、実働班の中でも自分を鍛える……修行をするという意味では間違いなくトップクラスだ。

 それこそ実働班の訓練の時間以外でも、趣味として訓練をするといったくらいには。

 そんな五飛やムラタだけに、シェリルより強いのは当然だった。

 もっとも、シェリルが五飛やムラタよりも弱いからといって、鳴上達がシェリルに勝てるかと言えば微妙なところなのだが。

 あるいは、鳴上はこの事件の原作の主人公である以上、今は無理でも将来的……この事件の終盤にはシェリルに勝てるようになる可能性は否定出来なかったが。

 ただ、結局のところ重要なのは今なのだ。

 

「すげえ……世界的な歌手で、その上シャドウとも……」

 

 花村が驚きのあまりにそう言葉を漏らす。

 花村にしてみれば、シェリルはまさに何でも出来るように思えるのだろう。

 実際にはそこまで気にするような事ではない……というのは、シャドウミラーにいる面々が色々な意味で有能な面子が揃っている為か。

 レモンなんかは、まさに万能の天才と呼ぶに相応しい存在だし。

 機械工学以外にも様々な方面の研究を行い、パイロットとしての腕も超一流。そして医者でもあり、本人は桁外れの美貌を持つ。

 唯一の難点は、若干快楽主義的なところがある事か。

 ……まぁ、快楽主義という意味では俺もあまりレモンの事を言えなかったりするが。

 他にもマリューは技術者という意味ではレモンに若干劣るものの、それでもSEED世界でPS装甲を開発したグループの一員で、若干甘いものの艦長としての能力を持ち、シャドウミラーに入る前から生身でコーディネイターと互角に戦えるだけの戦闘力があり、更にはこちらもまた突出した美貌の持ち主だ。

 夜の行為の時は、マリューと同じく魔乳と呼ばれる程だし。……千鶴もそれには負けていないが。

 まぁ、その件についてはこれ以上ここで考える必要はないか。

 

「もっとも、シェリルがここにいるにはあくまでも観光の為だ。TVの中の世界には行く予定がない。……とはいえ、足立の件がある以上、油断は出来ないが」

「もしその足立とかいう人が私をTVの中の世界に入れても、対処は出来るから安心してちょうだい」

 

 美鶴に続いてそう言うシェリルの言葉に、話を聞いていた者達は微妙な表情を浮かべる。

 シェリルの言う通り、足立がちょっかいを出さない方がいいのは間違いないが、もし足立がちょっかいを出した場合、シェリルともう少し親しくする事が出来るというところか。

 もっとも、そうなったら場合によってはシェリルのシャドウと戦うような事になる可能性は十分にある。

 今の状態でも強いシェリルだ。

 そのシェリルのシャドウとなると……あ、でも俺や五飛、ムラタは何度もTVの中の世界に入っているけど、シャドウになっていないな。

 堂島も同じように自分のシャドウと戦った事を考えると、ペルソナ世界の人物特有なのかもしれないな。

 そして美鶴の場合は元からペルソナ使いなので問題はないと。

 ……寧ろ、美鶴のペルソナは現実世界でも出せるので、TVの中の世界でしかペルソナを出せないこの事件で覚醒したペルソナ使い達の上位互換的な感じなんだよな。

 あるいはTVの中の世界でのペルソナ召喚は、それなりに何らかのメリットがあるのかもしれないが。

 そのメリットがどういうものなのかは、生憎と俺には分からない。

 

「そんな訳で、私もちょっとTVの中の世界に行ってみたいんだけど……どうかしら?」

「おいおい、本気か?」

 

 呆れたように堂島がシェリルに向かって言う。

 シェリルの事を心配しているというのもあるが、どこか軽い様子なのが気にくわないのだろう。

 もっとも、シェリルが言い出した以上、改めてそれを否定するといったことは出来ないだろうし、何より俺や美鶴の説明だけではなく、実際にシェリルの実力を見せた方が説得力があるのも事実。

 美鶴に視線を向けると、美鶴もそう思ったのか頷きを返すのだった。

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