転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3769話

「ちょっと……信じられませんでした……」

 

 俺が温泉から上がって暫くすると、大広間には鳴上達がTVの中の世界から戻ってきていた。

 そんな中で、花村が口にしたのがその言葉。

 その視線の先にはシェリルがいる。

 どうやらシェリルの戦闘力を間近で見て、衝撃を受けたらしい。

 

「そこまで気にする必要はないと思うぞ。シェリルは五飛やムラタ程ではないにしろ、相応の強さを持っているし」

 

 ペルソナ世界風……というか、タルタロスで表現するのなら、最上階付近でも普通に戦える実力は持っている。

 それだけに、今のTVの中の世界においては、出てくる敵はまだそこまで強くないので、圧倒的な無双が出来る訳だ。

 もっとも、今日は基本的に何らかの武器を持っていなかったようなので、魔法しか使っていなかったと思うが。

 

「そう言われてはいましたけど……」

 

 次にそう言ったのは鳴上。

 シェリルの実力を考えれば、自信をなくしてもおかしくはないのかもしれない。

 しれないが、それでも鳴上達には強くなって貰う必要があるのも事実。

 いやまぁ、最悪……本当に最悪、鳴上達でこの事件を解決できなくなっても、俺達が何らかの行動を起こすのは間違いないが。

 そうなれば、それはそれで色々と問題があるのも事実なんだが。

 原作の事件的に、恐らく鳴上でしか解決出来ない何らかの事態があってもおかしくはない。

 それが失敗して俺達が無理矢理解決した場合、何らかの悪影響があるかもしれない。

 ……まぁ、それを言うのなら、ニュクスの件も俺がニーズヘッグを使って強引に解決したので、何らかの悪影響が出ている可能性は否定出来なかったのだが。

 

「取りあえず頑張れ。お前達がこの件に関わったのは、恐らく何らかの意味があっての事だ」

 

 原作とか、原作とか、原作とか、原作とかな。

 

「……分かりました。アクセルさんにそう言われた以上、頑張ってみます」

「そうしろ。後は疲れた分、ゆっくりと温泉で汗を流してくるといい。今日の食事は恐らくちょっと豪華だろうし」

 

 そう言いつつ、疲労困憊といった鳴上達とは違い、特に汗らしい汗も掻いていないシェリルを見る。

 世界的な有名人のシェリルが泊まるという事で、板前達も張り切って料理を作るだろう。

 美鶴もシェリルがいるという事で、夕食を少し豪華にするって言ってたし。

 この辺はこういう場所には滅多に来られないシェリルをもてなすという意味もあるだろうし、それ以外にもシェリルがいるという事でシャドウワーカーの面々が盛り上がっており、それをマヨナカテレビの事件解決に繋げる為に士気を高揚させるという意味もあるのだろう。

 もしかしたら他にも何かあるのかもしれないが。

 

「マジっすか。うわ……でも、俺は家に帰らないといけないんだよなぁ……」

「げ、それは俺もだ」

 

 俺と鳴上の話を聞いていた巽と花村が、それぞれ残念そうな様子を見せる。

 この2人は、鳴上や堂島と違って天城屋旅館に泊まっている訳ではない。

 花村も巽も、双方共に家族の事があるからという理由で自分の家で寝泊まりしている。

 花村の場合は、何しろ足立がジュネスを自由に行き来して食料品を始めとして色々な物を盗んでいっている。

 そんなジュネスの店長だけに、両親が何らかの理由で足立に狙われるとも限らなかった。

 巽は、外見に似合わず母親思いだ。

 それこそ母親が夜に眠れないからという理由で暴走族を潰すくらいには。

 そして巽も足立によってTVの中の世界に入れられた以上、その巻き添えとして母親が狙われてないとも限らなかった。

 勿論、その可能性がある以上は桐条グループから警備員が数人派遣されているらしいので、そこまで心配はいらないのだが……足立はTVの中の世界に入れるという手段がある。

 そうである以上、普通の警備員では対処出来ない可能性は十分にあった。

 花村と巽もそれを心配して、天城屋旅館ではなく自分の家で寝泊まりをしているのだろう。

 ……ぶっちゃけ、効率だけを考えればどうかと思うが、家族の情を考えると、仕方がない事なのだろう。

 もっとも、そうして実家で寝泊まりしているので、今回のようにいつもより豪華な夕食が出るという時もその宴に参加出来ないのだが。

 

「ふむ、そうだな。では家に連絡をして、夕食はここで食べて行ったらどうだ?」

「え? いいんですか!?」

 

 美鶴の言葉に、花村が真っ先に反応する。

 花村にしてみれば、美味い夕食を食べられて、その上シェリルと話も出来るかもしれないのだ。

 それに喜ぶなという方が無理だろう。

 巽もまた、シェリルの件はそこまで気にしてはいないようだったが、美味い料理には惹かれているらしく、嬉しそうな様子を見せている。

 

「構わん。たまにはそういう時があってもいいだろう」

「けど美鶴。里中はどうするんだ? 結局今日はTVの中の世界に行かなかったみたいだけど。……まだここにいるのか?」

 

 雪子と一緒に大広間を出て行ってから、里中の姿は見ていない。

 一体何があったのかは分からないが、こうして宴会をするというのなら、里中もいた方がいいだろう。

 雪子もいた方がいいのは間違いないが、雪子の場合は旅館の手伝いとかがあるしな。

 あ、でも今はまだ客もそこまで多くはないし、多少は休めたりするのかもしれないな。

 

「ふむ、いるのなら夕食に呼ぼう。……花村、少し呼んできてくれるか?」

「え? 俺がですか? いえ、それは構いませんけど……その、本当に俺でいいんですか? アクセルさんの方がいいんじゃ?」

「アクセルが行くと、余計な騒動が起きそうなのでな」

「あー……なるほど。分かりました」

 

 いや、分かるなよ。

 そう突っ込みたくなったが、今までの俺の状況を考えると、反論出来ない点があるのも事実。

 それにわざわざ花村が説明をしに行ってくれるのだから、別にそれを止める必要もないだろう。

 

「じゃあ、ちょっと聞いてきますね。……完二、お前も来てくれ」

「え? 俺もっすか? まぁ、別にいいけどよ。……何でわざわざ?」

「だって、天城の部屋に行くんだぜ? そこに俺だけで行ったら、何か下心があるように思われるかもしれないだろ!」

「あー……それはそうかもしれないっすね。じゃあ、行きましょうか」

 

 そう言い、花村と巽は大広間から出ていく。

 

「じゃあ、シェリルは今日の夕食も一緒だって事でいいんだな? 菜々子も好きだったようだから、喜ぶと思う」

 

 花村達が出ていくと、堂島が俺にそう聞いてくる。

 そう言えば、菜々子もシェリルの存在にかなり喜んでいたな。

 早紀はそんな菜々子の様子に色々と思うところがあったようだったが。

 

「ああ、そのつもりでいてくれ。もっとも、シェリルは忙しい。今夜は泊まるが、明日には帰ると思う。ゆっくりと話す機会があるのは、夕食とその後くらいだと思っておいてくれ。……で、そう言えばシェリルは?」

 

 堂島と話しながらシェリルの姿を捜すが、いつの間にか消えていた。

 

「シェリルなら部屋に戻ったぞ。温泉にはまだ入れないが、着替えをしてくるそうだ」

「……着替え? あるのか?」

 

 シェリルは特に何も持たずに、ペルソナ世界に来た。

 最初から天城屋旅館で一泊していくつもりだったのなら、それこそ着替えとかそういうのを持ってきてもいいと思うんだが。

 

「私の着替えを貸すことにした。それに天城屋旅館にも浴衣の類もあるから、それを借りるのだろう」

 

 下着は?

 そう聞きたくなったが、それはここで聞かない方がいいだろうと判断する。

 もしここでそのようなことを聞けば、それこそ面倒な事になりそうだったし。

 そんな訳で、俺はその場では特に何も聞かない事にしておく。

 下着くらいなら、俺に見えないように持ってきていても不思議じゃないし、あるいはジュネス辺りに買いに行ってもいいし。

 

「そうか。シェリルは疲れて……はいないだろうけど、それでも休むくらいはしたいだろうし、今はいいか。ちなみにシェリルが温泉を貸し切りに出来るのはいつになるんだ?」

「夜だな。さすがに夕食の前後ともなれば、温泉に入りたい者は多いと言われた」

「だろうな。まぁ、それでも……って、ちょっと待った。今のシェリルは変装していったか? 変装してないと……」

「心配ない。シェリルも相応の準備はしてある。ここで大きな騒動を起こしたくはないだろう」

 

 美鶴がそう言うのなら、取りあえず安心だろう。

 そう判断し、俺は美鶴や堂島との会話を続けるのだった。

 

 

 

 

 

「では、シェリルの歓迎とその他諸々色々な事を祝して……乾杯!」

『乾杯!』

 

 大広間の、シャドウワーカーが仕事をしているのとは違う場所に用意された、夕食。

 いつも朝食や夕食はここで食べているので、既にここでこうして食べるのには慣れているのだが……ただ、今日はシェリルが来たという事で、美鶴が余分に金を払って豪華な夕食となっている。

 それこそクロマグロの刺身であったり、ブランド牛のステーキであったり。

 他にも1人用の鍋には地元の食材が使われており、どれも美味い。

 個人的には、鮎の塩焼きがあるのもありがたい。

 ……とはいえ、季節的には6月の下旬でまだちょっと早いんだが……ただ、これは冷凍とか養殖の鮎ではないらしい。

 ちなみに鮎の釣りの解禁という意味では、もう大丈夫らしいんだが。

 ただ、解禁したからといって鮎がいるかどうかはまた別の話で……そう考えると、この鮎は旅館の方でも少し無理をして仕入れたのだろう。

 そんな天然の鮎……あるいは稚魚の放流とかそういうのをしてるのかもしれないが、とにかくこの鮎は美味い。

 外側はパリッと焼かれているのに、中の身はホロリと柔らかい。

 内臓は……鮎の内臓は嫌う者もいるらしいが、俺は特に問題なく食べる。

 とはいえ、焼く前に最低限の処理をしていると知っているからこそだが。

 せめて糞出しくらいは当然のようにやって貰う必要がある。

 老舗旅館の料理人だけに、当然ながらその辺はしっかりと処理されている。

 

「あら、この豆の煮物……美味しいわね」

 

 少し意外だったのは、シェリルがタケノコと黒豆の煮物を美味そうに食べていた事だ。

 よくある煮物なんだが。

 とはいえ、シェリルにしてみればそういう料理が珍しく、美味いと感じるのかもしれないな。

 千鶴辺りならこういう料理も作れそうな気がするから、今度頼んでみてもいいかもしれない。

 

「あの、シェリルさん。こっちのお肉も美味しいですよ」

「あら、そう? ……そうね。柔らかくて、それでいてしっかりと肉の味がしているわ。味付けも控え目なのが好印象だわ」

 

 里中に勧められ、ステーキを口に運んだシェリルが笑みを浮かべてそう言う。

 その言葉に、里中は嬉しそうな表情を浮かべる。

 里中は肉が好きという……女子高生としてはちょっと珍しい嗜好をしている。

 いやまぁ、女子高生であっても肉は普通に好きだったりするんだろうが、それでも肉以上に、果物であったり野菜であったり……もっと言えばスィーツのような菓子を好む者が多いのだが、里中の場合は肉に全振りといった感じなんだよな。

 勿論、それ以外の食べ物を食べない訳ではないが。

 現に今も、出された料理を嬉しそうに食べているし。

 

「美味いっすね、これ。さすが先輩のところの板前さんだ」

「そう? ありがとう。それを聞けば喜んで貰えると思うわ」

 

 巽の言葉に雪子が嬉しそうに笑みを浮かべてそう言う

 夕食の時間で忙しいかと思っていたのだが、客の数があまり多くないという事もあり、何よりお得意様のシャドウワーカー……といか、桐条グループの美鶴と一緒の食事という事でこの場にいる事が許されたらしい。

 

「そう言えば、今更だけど……雪子は自分の両親にペルソナとかマヨナカテレビとか、シャドウとか、そういう関係について言ってるのか?」

「え? ……言ってません」

 

 俺の言葉に一瞬驚いた様子で動きを止めた雪子だったが、すぐにそう言ってくる。

 どうやら本当に両親に事情を説明していないらしい。

 だとすると、今まではあまり家を空ける事がなかった雪子がそれなりに出掛けたり、何より大広間に頻繁にやって来ているのは、どう思ってるんだろうな。

 あるいは美鶴がその辺についての説明をしているのか。

 それこそお得意様という立場を最大限に利用してる?

 まぁ、それはそれで構わないとは思うが。

 美鶴の事だから、あまり乱暴な行為とかはしないだろうし。

 

「そうなると、これから色々と大変なんじゃないか?」

 

 雪子はこの天城屋旅館の後継者だ。

 その雪子がTVの中の世界で行動しているとなると、当然ながらその分だけ旅館の仕事が出来なくなる。

 次期女将の雪子としては、色々と不味いだろう。

 

「大丈夫です。その辺は何とかしますから」

 

 俺の言葉にそう返す雪子。

 何だ? 何だか今の雪子の態度に少し違和感があるような……?

 そう疑問に思ったが、雪子はすぐにいつもの態度に戻り、里中と話をするのだった。

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